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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01C
管理番号 1120995
審判番号 不服2004-17263  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-01-08 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-19 
確定日 2005-08-10 
事件の表示 特願2003-182876「乗用田植機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月 8日出願公開、特開2004- 241〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成3年11月26日に出願された特願平3-310628号の一部を特願2001-267292号として新たに出願し、さらにその一部を特願2003-182876号として新たに出願したものであって、その請求項1に係る発明は、平成16年9月21日提出の手続補正書により全文補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】左右前輪4と左右後輪5を装備した走行車体1に座席9の左右側部から車体前部のハンドル15の左右両側に至るフロア面を有する左右ステップフロア8を設け、該左右ステップフロア8の左右外側に立設した支持フレーム35に苗を載せる苗台37を備えた予備苗載台34を取り付け、該走行車体1の後部にリンク24を介して苗載台26を装備した苗移植作業機2を連結した乗用田植機において、予備苗載台34の支持フレーム35はその基部が前輪4よりも前側で機体正面視で機体左右方向に延びてその左右端部から更に上方に向けて設けた構成とし、該上方に向けて設けた支持フレーム35部に前記予備苗載台34の苗台37を設けて、該苗台37を車体平面視でハンドル15の左右両側のフロア面上に重なる前側に移動した状態と、該状態より左右方向外方に位置する後側に移動した状態とに左右移動しながら前後移動できる構成とすると共に、前記左右ステップフロア8の上面より低い乗降ステップ部8bを機体側面視において前輪4と後輪5との間で機体平面視において座席9の左右側部のフロア面部分の外側方に設け、乗降ステップ部8bの前端とハンドル15の後端とを前後方向で近づけて配置し、苗台37を前側に移動した状態にしたとき、該苗台37がハンドル15の後端より前側で且つ乗降ステップ部8bの左右外端より左右内側に位置し、前記リンク24の走行車体1側の回動支点を前記フロア面部分8と一体のカバ-8aの後端より前側に設けた乗用田植機。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され、この出願の日前に頒布された下記の刊行物1及び2には、以下の事項が記載されている。

【刊行物】
刊行物1:特開昭59-140807号公報
刊行物2:実願昭62-171865号(実開平1-74717号)
のマイクロフィルム

(1)刊行物1:特開昭59-140807号公報
刊行物1には、「乗用田植機における苗の補給装置」に関し、以下のように記載されている。
1-a.「(1)は、機台で、前方から原動機を被ったボンネット(2)と運転席(3)と植付装置(4)とが設けられ、植付装置(4)の苗載台(5)が運転席(3)の後方に位置している。(6)は、ステップで、ボンネット(2)の左右の両側に設けられている。(7)は、補助苗載台で、上から見ると、苗の大きさに適応する長方形をし、マット状の苗が苗箱ごと或は単独で一段或は多段に載せられるようになり、機台(1)からステップ(6)の外方に於て突出された縦方向の軸(8)に、後縁の中央よりも内寄りにおいて回動自在に軸着されている。
なお、図中、(9)は前輪、(10)は後輪、(11)は植付杆、(12)はフロート、(13)は連結杆を示す。」(1頁右下欄14行〜2頁左上欄6行)
1-b.「この発明は、・・・オペレータが乗用田植機えの乗り下りや補助苗載台(7)えの予備苗の供給並びに補助苗載台(7)から苗載台(5)えの予備苗の補給のすべてがたやすく行なわれる特徴がある。」(2頁右上欄9行〜左下欄1行)

上記記載及び図面の記載からみて、刊行物1には、
「左右前輪(9)と左右後輪(10)を装備した機台(1)に運転席(3)の左右前部から機台(1)前部のハンドルの左右両側に至るステップ(6)を設け、該ステップ(6)の左右外側に立設した縦方向の軸(8)に苗を載せる苗台を備えた補助苗載台(7)を取り付け、該機台(1)の後部に連結杆(13)を介して苗載台(5)を装備した植付装置(4)を連結した乗用田植機において、補助苗載台(7)の縦方向の軸(8)は機体正面視で機体左右方向に延びてその左右端部から更に上方に向けて設けた構成とし、該上方に向けて設けた縦方向の軸(8)部に前記補助苗載台(7)の苗台を設けて、該苗台を機台(1)平面視でハンドルの左右両側のステップ(6)上に重なる後側に移動した状態と、該状態より左右方向外方に位置する前側に移動した状態とに左右移動しながら前後移動できる構成とする乗用田植機。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)刊行物2:実願昭62-171865号(実開平1-74717号)
のマイクロフィルム
刊行物2には、「苗植機の苗受装置」に関し、以下のように記載されている。
2-a.「図例第1図〜第3図において、車体(7)の前部両側には、支枠(1)を立設し、この支枠(1)には適当段数に所定の間隔を有して固定苗受台(3)を配設する。各固定苗受台(3)の外側に・・・可動苗受台(4)を設ける」(4頁4〜8行)
2-b.「車体(7)は、・・・前車輪(10)・・・を設け、」(5頁5〜7行)
2-c.「操縦席(11)の左右側部から車体前部のステアリングハンドル9の左右両側に至るフロア面を有する左右フロア(14)を設ける」点。(第1図)
2-d.「苗受台(3)(4)の支枠(1)の基部を前車輪(10)よりも前側に設けた」点。(第3図)
2-e.「昇降リンク(19)の車体(7)側の回動支点をフロア面部分と一体のカバーの後端より前側に設けた」点。(第1、3図)

3.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「機台(1)」、「運転席(3)」、「ステップ(6)」、「縦方向の軸(8)」、「補助苗載台(7)」、「連結杆(13)」、「植付装置(4)」が、本願発明1の「走行車体1」、「座席9」、「フロア面を有する左右ステップフロア8」、「支持フレーム35」、「予備苗載台34」、「リンク24」、「苗移植作業機2」に、それぞれ相当するから、
両者は、
「左右前輪と左右後輪を装備した走行車体に座席の左右から車体前部のハンドルの左右両側に至るフロア面を有する左右ステップフロアを設け、該左右ステップフロアの左右外側に立設した支持フレームに苗を載せる苗台を備えた予備苗載台を取り付け、該走行車体の後部にリンクを介して苗載台を装備した苗移植作業機を連結した乗用田植機において、予備苗載台の支持フレームは機体正面視で機体左右方向に延びてその左右端部から更に上方に向けて設けた構成とし、該上方に向けて設けた支持フレーム部に前記予備苗載台の苗台を設けて、該苗台を車体平面視でハンドル15の左右両側のフロア面上に重なる状態と、該状態より左右方向外方に位置する状態とに左右移動しながら前後移動できる構成とする乗用田植機。」で一致し、以下の点で相違する。
<相違点>
(相違点1)
フロア面が、本願発明では、座席の左右「側部」からハンドルの左右両側に至るのに対して、引用発明では、座席の左右前部からである点。
(相違点2)
本願発明では、支持フレーム35は「その基部が前輪4よりも前側」に設けたのに対して、引用発明では、そうではない点。
(相違点3)
本願発明では、苗台が車体平面視でハンドルの左右両側のフロア面上に重なるのは、苗台を「前側に移動した状態」であるのに対して、引用発明では、後側に移動した状態であり、本願発明では、苗台が左右方向外方に位置するのは、「後側に移動した状態」であるのに対して、引用発明では、前側に移動した状態である点。
(相違点4)
本願発明では、「左右ステップフロア8の上面より低い乗降ステップ部8bを機体側面視において前輪4と後輪5との間で機体平面視において座席9の左右側部のフロア面部分の外側方に設け、乗降ステップ部8bの前端とハンドル15の後端とを前後方向で近づけて配置し、苗台37を前側に移動した状態にしたとき、該苗台37がハンドル15の後端より前側で且つ乗降ステップ部8bの左右外端より左右内側に位置し」ているのに対して、引用発明では、そのような構成を備えていない点。
(相違点5)
本願発明では、「リンク24の走行車体1側の回動支点を前記フロア面部分8と一体のカバ-8aの後端より前側に設けた」のに対し、引用発明では、そのような構成を備えているのかどうか明確でない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
i.相違点1について
乗用田植機において、座席の左右側部からハンドルの左右両側に至るフロア面は、上記刊行物2に記載されている(2-c.参照。)ように周知技術であり(他に、下記周知例1〜3参照。)、本願発明の上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。
ii.相違点2について
刊行物2には、苗受台(3)(4)(本願発明の「予備苗載台34」に相当する。以下、括弧内は、本願発明の相当する部分を示す。)の支枠(1)(支持フレーム35)の基部を前車輪10(前輪4)よりも前側に設けた点が記載されており(2-d.参照。)、引用発明に上記刊行物2に記載の技術手段を適用して、本願発明の上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。
iii.相違点3について
苗台が車体平面視でハンドルの左右両側のフロア面上に重なるのは、苗台を前側に移動した状態であり、苗台が左右方向外方に位置するのは、後側に移動した状態である点は、周知技術であり(例えば、下記周知例1参照。)、引用発明に上記周知技術を適用して、本願発明の上記相違点3に係る構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。
iv.相違点4について
乗用型田植機において、左右ステップフロアの上面より低い乗降ステップ部を機体側面視において前輪と後輪との間で機体平面視において座席の左右側部のフロア面部分の外側方に設ける点は、周知技術であり(例えば、下記周知例2及び3参照。)、該周知技術を引用発明に適用することは、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。そして、上記周知技術を引用発明に適用するにあたり、乗降用のステップ部は、車体外方からの乗車時に使うものであるから、車体外方からの乗車時に苗台が邪魔にならないようにすることは、当業者が当然に考慮すべき事項である。そうすると、上記「iii.」で述べたように、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎないところの、苗台が車体平面視でハンドルの左右両側のフロア面上に重なる、苗台を前側に移動した状態において、該苗台がハンドルの後端より前側で且つ乗降ステップ部の左右外端より左右内側に位置する点も、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。また、乗降ステップ部の前端とハンドルの後端とを前後方向で近づけて配置する点も、格別顕著な作用効果を奏するものでもなく、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。
v.相違点5について
乗用型田植機において、リンクの走行車体側の回動支点をフロアの後端より前側に設けることは、刊行物2に記載されている(2-e.参照。)ように周知技術であり(他に、下記周知例2及び3参照。)、引用発明に上記周知技術を適用して、本願発明の上記相違点5に係る構成とすることは、当業者が必要に応じて適宜になし得る程度の設計的事項にすぎない。

そして、全体として、本願発明の効果は、引用発明(刊行物1に記載された発明)、刊行物2に記載された発明及び上記周知技術から当業者が当然に予測し得る程度のものである。

【周知例】
周知例1:特開平3-244303号公報
周知例2:特開昭62-155006号公報
周知例3:特開平3-50047号公報

5.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、上記刊行物1、2に記載された発明及び上記周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-23 
結審通知日 2005-04-12 
審決日 2005-06-02 
出願番号 特願2003-182876(P2003-182876)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小野 忠悦  
特許庁審判長 藤井 俊二
特許庁審判官 白樫 泰子
川島 陵司
発明の名称 乗用田植機  

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