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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  B21B
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  B21B
管理番号 1121081
異議申立番号 異議2003-73793  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-06-17 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-06-13 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3456077号「タンデム圧延機の板幅制御方法」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 本件特許異議の申立てを却下する。 
理由 I.手続の経緯
特許第3456077号の請求項1、2に係る発明についての出願は、平成7年11月30日に特許出願され、平成15年8月1日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、特許異議申立人平居博美より請求項1に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年4月21日に訂正請求がなされたものである。

II.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
(1a)訂正事項a
請求項1の「【請求項1】被圧延材を圧延する複数のスタンドを有するタンデム圧延機の板幅を制御するタンデム圧延機の板幅制御方法において、前段側における板幅制御対象領域となる所定スタンド間をルーパレス構成とし、当該所定スタンド間の後段側の中間スタンド出側に設置した中間スタンド板幅計で前記被圧延材の板幅を検出し、該板幅計の板幅検出値と目標板幅設定値との偏差に基づいて前記板幅制御対象領域を挟む少なくとも一方のスタンドの圧延速度を張力検出を行うことなく制御して当該板幅制御対象領域の張力制御を行うことを特徴とするタンデム圧延機の板幅制御方法。」を、 「【請求項1】被圧延材を圧延する複数のスタンドを有するタンデム圧延機の板幅を制御するタンデム圧延機の板幅制御方法において、前段側における板幅制御対象領域となる所定スタンド間をルーパレス構成とし、当該所定スタンド間の後段側の中間スタンド出側に設置した中間スタンド板幅計で前記被圧延材の板幅を検出し、該板幅計の板幅検出値と目標板幅設定値との偏差に基づいて前記板幅制御対象領域を挟む少なくとも一方のスタンドの圧延速度を張力検出を行うことなく制御して当該板幅制御対象領域の張力制御を行い、当該板幅制御対象領域の張力制御は、板幅検出値から目標板幅設定値を減算した偏差に基づいて比例積分制御量を算出し、当該偏差が正で且つ所定値以下であるときに前回制御量と所定設定値とに基づいて制御量を算出することを特徴とするタンデム圧延機の板幅制御方法。」と訂正する。
(1b)訂正事項b
請求項2を削除する。
(1c)訂正事項c
明細書段落【0007】を、「【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、請求項1のタンデム圧延機の板幅制御方法は、被圧延材を圧延する複数のスタンドを有するタンデム圧延機の板幅を制御するタンデム圧延機の板幅制御方法において、前段側における板幅制御対象領域となる所定スタンド間をルーパレス構成とし、当該所定スタンド間の後段側の中間スタンド出側に設置した中間スタンド板幅計で前記被圧延材の板幅を検出し、該板幅計の板幅検出値と目標板幅設定値との偏差に基づいて前記板幅制御対象領域を挟む少なくとも一方のスタンドの圧延速度を張力検出を行うことなく制御して当該板幅制御対象領域の張力制御を行い、当該板幅制御対象領域の張力制御は、板幅検出値から目標板幅設定値を減算した偏差に基づいて比例積分制御量を算出し、当該偏差が正で且つ所定値以下であるときに前回制御量と所定設定値とに基づいて制御量を算出することを特徴としている。」と訂正する。
(1d)訂正事項d
明細書段落【0009】を削除する。
(1e)訂正事項e
明細書段落【0010】の「この請求項2の発明においては、通常時は板幅制御対象領域のスタンド間張力制御を、」を、「しかも、通常時は板幅制御対象領域のスタンド間張力制御を、」と訂正する。

なお、上記訂正事項cは、訂正請求書の「(3)訂正事項」欄には、「被圧延材を圧延する複数のスタンドを・・」と記載され、「上記目的を達成するために、請求項1のタンデム圧延機の板幅制御方法は、」が記載されていないが、訂正請求書添付の全文訂正明細書では「上記目的を達成するために、請求項1のタンデム圧延機の板幅制御方法は、被圧延材を圧延する複数のスタンドを・・」と記載されているので、上記のとおりの訂正事項として認定した。また、上記下線部が訂正箇所である。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(2a)上記訂正事項a、bは、請求項1に請求項2での特定事項を追加して限定し、請求項2を削除するもの、即ち実質的に請求項1を削除し、請求項2を新たに請求項1としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
よって、該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2b)上記訂正事項c〜eは、上記特許請求の範囲の訂正に基づき訂正後の請求項と整合するよう発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、又該訂正は、願書に添付した明細書に記載された事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.訂正の適否の結論
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについての判断
特許異議申立人は、甲第1〜3号証を提出し、訂正前の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、又は甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、訂正前の請求項1に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号、又は同条第2項の規定に違反して特許されたものであるから、訂正前の請求項1の特許は取り消されるべきである旨主張する。
しかしながら、上記「II.訂正の適否についての判断」で示したとおり、訂正前の請求項1に係る発明は、訂正の結果実質的に削除され、特許異議の申立ての対象が存在しないので、この特許異議の申立ては、不適法な申立てであって、その補正をすることができないものである。

IV.むすび
以上のとおりであるから、本件特許異議の申立ては、特許法第120条の6第1項で準用する第135条の規定によって却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
タンデム圧延機の板幅制御方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 被圧延材を圧延する複数のスタンドを有するタンデム圧延機の板幅を制御するタンデム圧延機の板幅制御方法において、前段側における板幅制御対象領域となる所定スタンド間をルーパレス構成とし、当該所定スタンド間の後段側の中間スタンド出側に設置した中間スタンド板幅計で前記被圧延材の板幅を検出し、該板幅計の板幅検出値と目標板幅設定値との偏差に基づいて前記板幅制御対象領域を挟む少なくとも一方のスタンドの圧延速度を張力検出を行うことなく制御して当該板幅制御対象領域の張力制御を行い、当該板幅制御対象領域の張力制御は、板幅検出値から目標板幅設定値を減算した偏差に基づいて比例積分制御量を算出し、当該偏差が正で且つ所定値以下であるときに前回制御量と所定設定値とに基づいて制御量を算出することを特徴とするタンデム圧延機の板幅制御方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被圧延材を圧延する複数のスタンドを有する熱間又は冷間のタンデム圧延機出側の板幅を制御するタンデム圧延機の板幅制御方法に関し、特に前段側で板幅制御する際にルーパによるスタンド間張力制御を用いることなく行うようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のタンデム圧延機の板幅制御方法としては、例えば特開昭63-80909号公報(以下、第1従来例と称す)及び特開昭63-199010号公報(以下、第2従来例と称す)に開示されているものがある。第1従来例は、熱間タンデム圧延機の所定の圧延スタンドの前後に板幅計を配置し、これら板幅計の検出値に基づいて圧延スタンドの前方及び後方の圧延材の張力変化による圧延スタンドの入・出側の圧延材の板幅変化を検出し、この前方及び後方の張力変化と板幅変化の相関関係から圧延材に対する張力算出し、算出した張力に基づいて圧延スタンド間に配置したルーパを制御して板幅を制御するようにしている。
【0003】
また、第2従来例は、複数の圧延スタンドの中間のスタンド間に中間スタンド間板幅計を設置し、この中間スタンド間板幅計の検出値に基づいてこれより下流側の圧延スタンド出側における目標板幅に対して生じる板幅偏差を予測演算し、この予測演算値に基づいて中間スタンド間板幅計より下流側の圧延スタンド間に配置したルーパを制御して圧延スタンド間張力を操作するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記第1従来例及び第2従来例のタンデム圧延機の板幅制御方法にあっては、何れも板幅を制御するためのスタンド間張力制御をルーパを使用して行うようにしているので、ルーパモータの制約上大きな張力を付加することができず、板幅の制御代が少なく、大幅な板幅変更を行うことができないという未解決の課題がある。
【0005】
この未解決の課題を解決するために、各スタンド間の体積速度(マスフロー)を制御したり、エッジャによる幅圧下制御を行うことが考えられるが、マスフローでは、メータ幅の材料で1mmオーダの板幅制御を実現するには0.1%の精度でマスフロー制御を行う必要があり、現状の技術では困難であり、エッジャについては新たに設備を設置する必要があり、既存の圧延設備のままで板幅制御を行うことができないという新たな課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来例の未解決の課題に着目してなされてものであり、前段側でルーパを用いることなくスタンド間張力を変更することにより板幅を制御することができるタンデム圧延機の板幅制御方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1のタンデム圧延機の板幅制御方法は、被圧延材を圧延する複数のスタンドを有するタンデム圧延機の板幅を制御するタンデム圧延機の板幅制御方法において、前段側における板幅制御対象領域となる所定スタンド間をルーパレス構成とし、当該所定スタンド間の後段側の中間スタンド出側に設置した中間スタンド板幅計で前記被圧延材の板幅を検出し、該板幅計の板幅検出値と目標板幅設定値との偏差に基づいて前記板幅制御対象領域を挟む少なくとも一方のスタンドの圧延速度を張力検出を行うことなく制御して当該板幅制御対象領域の張力制御を行い、当該板幅制御対象領域の張力制御は、板幅検出値から目標板幅設定値を減算した偏差に基づいて比例積分制御量を算出し、当該偏差が正で且つ所定値以下であるときに前回制御量と所定設定値とに基づいて制御量を算出することを特徴としている。
【0008】
この請求項1の発明にあっては、前段側の所定スタンド間を板幅制御対象領域とし、その後側のスタンドの出側に設置した板幅計で被圧延材の板幅を検出し、検出された板幅検出値と目標板幅設定値との偏差を求める。そして、板幅検出値が目標板幅設定値より大きすぎて余幅が多い場合には、例えば前側のスタンドの圧延速度を低下させることにより、所定スタンド間の張力を高くして板幅を減少させ余幅を減少させて、高精度で板幅制御を行う。このとき、所定スタンド間の被圧延材の張力制御をルーパ制御ではなく、圧延速度を制御することにより行うので、板幅の制御範囲を広くすることができ、しかも所定スタンドの後側の中間スタンドの出側で被圧延材の板幅を検出するので、無駄時間が少なく制御の応答性を向上させることができる。
【0009】
【0010】
しかも、通常時は板幅制御対象領域のスタンド間張力制御を、板幅偏差に基づく比例積分制御で行うので、スタンド間張力が急変することなく板幅偏差に追従して制御されるので、板厚変動等の影響を生じることがなく、良好な板幅制御を行うことができ、板幅偏差が正で且つ所定値以下であるときには比例積分制御に代えて前回制御量と所定設定値とに基づいて制御量を算出することにより、製品幅側へのオーバーシュートを防止する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を熱間仕上圧延機に適用した場合を示す概略構成図であって、熱間仕上圧延機は、被圧延材としての熱間ストリップSを圧延する例えば7列のスタンドF1〜F7を有する。各スタンドF1〜F7は、熱間ストリップSが通板される一対のワークロールWRとこれらワークロールWRに転接する一対のバックアップロールBRとで構成されている。
【0012】
各スタンドF1〜F7の夫々は、コントローラ1によって、予め設定された圧延条件から各スタンド出側厚を決定し、これに基づいて各スタンド単位に圧延理論に基づく演算によって仕上入側・出側厚、圧延荷重、板速度等を求め、且つ各スタンド間の体積速度(マスフロー)一定の条件が成立するように決定されたパススケジュールに従って、ワークロールWRのロール回転数が制御されると共に、最終スタンドF7の出側に配置された板厚計2の板厚検出信号に基づいて圧下量が制御される。
【0013】
また、中間スタンドとなる例えば第2スタンドF2の出側に熱間ストリップSの板幅を検出する中間スタンド板幅計3が配置されていると共に、最終スタンドF7の出側にも仕上出側板幅計4が配置されている。そして、前段側の第1スタンドF1及び第2スタンドF2間が板幅制御対象領域に設定され、この板幅制御対象領域のスタンド間張力が、中間スタンド板幅計3から出力される例えばアナログ電圧値でなる板幅検出値WFが入力された前段側板幅制御装置5によってコントローラ1からの前側スタンドF1におけるワークロールWRの駆動モータMに対する制御電流値を補正することにより、ルーパを用いることなく制御される。
【0014】
前段側板幅制御装置5は、図2に示すように、中間スタンド板幅計3の板幅検出値WFがリミッタ6に供給されて所定のレベル範囲に制限され、このリミッタ6の出力信号がアナログ電圧値でなる中間スタンド板幅目標値WTFが入力された減算器7に供給されて、中間スタンド板幅目標値WTFから板幅検出値WFを減算して中間スタンド偏差ΔWを算出する。
【0015】
ここで、中間スタンド板幅目標値WTFは、熱間ストリップSの製品幅に対して所謂余幅と称する余裕代を加算した値を最終スタンドF7の出側板幅目標値として設定し、これから後段側スタンドF3〜F7で調整可能な板幅を減算した値に設定されている。そして、減算器7から出力される偏差ΔWがゲイン調整器8で所定のゲインを乗算して制御指令値VCとして選択回路9の一方の入力側に供給される。この選択回路9の他方の入力側に“0”のアナログ電圧でなる制御停止指令値VSが供給されている。そして、選択回路9には、熱間ストリップSへの水乗り異常を表す異常信号SAが入力されており、熱間ストリップSへの水乗りがなく異常信号SAが論理値“0”である正常時には、前記ゲイン調整器8から出力される制御指令値VSを選択して出力されるが、熱間ストリップSへの水乗りが発生して異常信号SAが論理値“1”となった水乗り異常時には、制御指令値VCに代えて制御停止指令値VSを選択して出力する。
【0016】
この選択回路9の選択出力は、比例積分(PI)制御回路10に入力されて、この比例積分制御回路10で、制御指令値VCに対する比例積分制御量VPIを演算し、この比例積分制御量VPIが選択回路11の一方の入力側に供給される。この選択回路11の他方の入力側には代替制御量演算回路12からの代替制御量VPI′が供給されている。ここで、代替制御量演算回路12は、前回の比例積分制御量VPI(n-1)に定数(例えば0.9)を乗算して代替制御量VPI′を算出する。
【0017】
そして、選択回路11は制御条件判定回路13からの選択信号SJが論理値“0”であるときには、比例積分制御回路10の比例積分制御量VPIを選択して出力し、論理値“1”であるときには、代替制御量演算回路12の代替制御量VPI′を選択して出力する。ここで、制御条件判定回路13は、比例積分制御回路10の比例積分制御量VPI及び減算器7の中間板幅偏差ΔWが入力され、中間板幅偏差ΔWが1mm以下で且つ比例積分制御量VPIが正(VPI>0)であるときには、論理値“1”の選択信号SJを選択回路11に出力し、それ以外のときには論理値“0”の選択信号SJを選択回路11に出力する。
【0018】
この選択回路11の選択出力は、リミッタ14に供給されて所定のレベル範囲内に制限されてから板幅制御用張力補正信号としてコントローラ1から出力される第1スタンドF1に対する回転数制御信号SRが入力された加算器15に供給され、この加算器15で加算されたモータ速度制御信号SRがスタンド速度設定器16、速度調節器17を介して駆動モータMに供給される。
【0019】
一方、第4スタンド以降の後段側スタンド間には、従来例と同様に第3及び第4スタンドF3,F4間、第4及び第5スタンドF4,F5間、第5及び第6スタンドF5,F6間、第6及び第7スタンドF6,F7間に夫々ルーパ20が配設され、これらルーパ20が最終スタンドF7の出側に配置された仕上出側板幅計4の板幅検出値WRが入力された後段側板幅制御装置22によって制御される。この後段側板幅制御装置22は、板幅検出値WRと目標板幅設定値WTとの偏差ΔWRを算出し、この偏差ΔWRに基づいて各スタンド間のルーパ20を駆動する駆動モータ21に対する駆動電流を制御することにより、スタンド間張力制御を行って板幅を目標値WTに一致させるように制御する。
【0020】
このように、前段側スタンドF1,F2間でルーパを使用することなく、スタンドのワークロールの回転速度を制御する張力制御によって板幅制御を行い、後段側でルーパを使用した張力制御によって板幅制御を行う理由は、本発明者が実機について種々の実験を行った結果、図3に示すように、後段側の例えばスタンドF4,F5間、スタンドF5,F6間及びスタンドF6,F7間でルーパを使用してスタンド間張力を個別にステップ状に増加させたときには、仕上出側板幅計4の板幅検出値WRと目標板幅設定値WTRとの板幅偏差ΔWRの変化には殆ど影響を与えないが、前段側スタンドF1,F2間でルーパレススタンド間張力制御を行ったときには、同一の張力の変化に対しても仕上出側板幅計4の板幅検出値WRと目標板幅設定値WTRとの板幅偏差ΔWRは4mm以上の有為な幅変動を生じることが知見された。
【0021】
この理由は、熱間仕上圧延機においては、後段スタンドより前段スタンドの方が熱間ストリップSの温度が高く且つスタンド間滞留時間が長いため、クリープ変形を生じ易いことによるものである。したがって、前段側及び後段側のスタンド間張力を同一に変化させたときには、前段側が後段側に対して大きな板幅変化を生じさせることができ、このときの張力変化をルーパを使用しないルーパレス制御で行うことにより、ルーパモータの制約がなく張力変更の自由度を大きく設定することができる。
【0022】
次に、上記実施形態の動作を説明する。
今、各スタンドF1〜F7のワークロールWRに水乗りを生じていない熱間ストリップSが通板されて仕上圧延が行われているものとする。この状態では、第4スタンドF4以降の後段側スタンド間では、最終スタンドF7の出側に配置された仕上出側板厚計4で検出された板幅検出値WRに基づいて後段側板幅制御装置22によって各スタンド間に配設されたルーパ20の駆動モータ21に対する駆動電流が制御されて、最終スタンドF7の出側における熱間ストリップSの板幅が目標板幅と一致するように板幅制御される。
【0023】
これに対して、前段側の第1及び第2スタンドF1,F2間の板幅制御対象領域では、ルーパが配設されていないが、第3スタンドF3の出側に配置された中間スタンド板幅計3の板幅検出値WFが前段側板幅制御装置5に供給ることにより、この前段側板幅制御装置5によって第1スタンドF1におけるワークロールWRの駆動モータMに供給する駆動電流が制御される。
【0024】
すなわち、今、中間スタンド板幅計3の板幅検出値WFと中間スタンド目標板幅設定値WTとが等しい状態を継続しているものとすると、減算器7から出力される中間スタンド偏差ΔWFが“0”を継続しており、比例積分制御回路10の比例積分制御量VPIも“0”を継続している。このとき、制御条件判定回路13では、ΔWF<1mmを満足するが比例積分制御量VPIがVPI≦0であるので、選択信号SJが論理値“0”となり、選択回路11で“0”の比例積分制御量VPIが選択され、これがリミッタ14を介して板幅制御用張力補正信号として減算器15に出力される。
【0025】
したがって、板幅制御用張力補正信号が“0”であるので、コントローラ1による第1スタンドF1におけるワークロールWRの速度制御が継続される。一方、後段側のスタンドF4〜F7では、後段側板幅制御装置22によって仕上出側板幅計4の板幅検出値WRに基づいて各スタンドF4,F5間、F5,F6間、F6,F7間に配設されたルーパ20の駆動モータ21が制御されて最終スタンドF7の出側の板幅が余幅を含めた目標値に制御される。
【0026】
この状態から中間スタンド板幅計3の板幅検出値WFが中間スタンド板幅目標値WTFより大きくなって、減算器7から出力される中間スタンド板幅偏差ΔWFが正の値となると、これにゲイン調整器8でゲインが乗算されて比例積分制御回路10で正の比例積分制御量VPIが算出される。このとき、板幅偏差ΔWFが1mmを越えるまでの間は、制御条件判定回路13で設定された板幅偏差ΔWFが1mm以下で且つ比例積分制御量VPIが正となる条件を満足するので、論理値“1”の選択信号SJが出力され、これによって選択回路11で代替制御量演算回路12の代替制御量VPI′が選択される。このとき、代替制御量VPI′は、前回の比例積分制御量VPIが“0”であることにより“0”となり、これが選択回路11を介し、リミッタ14を介して減算器15に供給される。
【0027】
このため、板幅制御用張力補正信号としては“0”の状態を継続するので、引き続きコントローラ1による第1スタンドF1におけるワークロールWRの速度制御が継続される。この状態から、板幅偏差ΔWFが1mmを越える状態となると、制御条件判定回路13の設定条件を満足しなくなるので、選択信号SJが論理値“0”に復帰し、これによって選択回路11で比較積分制御回路10の比較積分制御量VPIが選択され、これがリミッタ14を介して板幅制御用張力補正信号として減算器15に供給される。
【0028】
このため、減算器15の出力即ちモータ速度制御信号SRは、コントローラ1からの速度指令値から板幅制御用張力補正信号が減算されることになり、前回までの速度指令値に対して板幅制御用張力補正信号分だけ小さい値となり、これがスタンド速度設定器16、速度調節器17を介して駆動モータMに供給される。このため、第1スタンドF1におけるワークロールWRの駆動モータMの回転速度が低下し、これに応じて熱間ストリップSの通板速度が低下することにより、第1及び第2スタンドF1,F2間の板幅制御領域の張力が強くなり、熱間ストリップSの板幅が狭くなる方向に制御される。
【0029】
これに応じて、中間スタンド板幅計3の板幅検出値WFが減少することにより、減算器7から出力される板幅偏差ΔWFも減少して、これが1mm以下となると、前述したように、制御条件判定回路13の制御条件を満足するので、論理値“1”の選択信号SJが出力されて、選択回路11で代替制御量演算回路12の代替制御量VPI′が選択される。このとき、代替制御量VPI′は、前回の比例積分制御量VPIが正の値であることにより、これに0.9を乗算した値即ち制御量が1割低下した値に設定され、これがリミッタ14を介して減算器15に供給される。
【0030】
このため、引き続き、第1スタンドF1におけるワークロールWRの回転速度が徐々に回復し始め、これに応じて板幅制御領域の張力は徐々に弱くなるが、熱間ストリップSの板幅は依然として狭くなる方向に制御される。この制御を繰り返して、中間スタンド板幅計3で検出された板幅検出値WFが中間スタンド目標板幅設定値WTFに一致すると、減算器7から出力される板幅偏差ΔWFが“0”となり、これによって比例積分制御回路10から出力される比例積分制御量VPIも“0”となり、制御条件判定回路13で制御条件を満足しなくなるので、選択回路11で比例積分制御回路10の比例積分制御量VPI(=0)が選択され、これがリミッタ14を介して減算器15に供給される。
【0031】
このため、板幅速度補正量が“0”となって、第1スタンドF1におけるワークロールWRの回転速度がコントローラ1によって設定された値に復帰し、第1及び第2スタンドF1,F2間の板幅制御領域の張力も目標張力に復帰して、良好な仕上圧延状態に復帰する。一方、上記とは逆に中間スタンド板幅計3の板幅検出値WFが目標板幅より製品幅側に減少した場合には、減算器7から出力される中間スタンド板幅偏差ΔWFが負の値となり、これにゲイン調整器8で所定ゲインが乗算された値が比例積分制御回路10に供給されることになり、この比例積分制御回路10から負の比例積分制御量VPIが出力される。
【0032】
このとき、制御条件判定回路13では、比例積分制御量VPIが負であることにより、制御条件を満足せず選択信号SJが論理値“0”となるので、選択回路11で比例積分制御回路10からの比例積分制御量VPIが選択され、これがリミッタ14を介して減算器15に板幅制御用張力補正信号として供給される。したがって、減算器15から出力されるモータ速度制御信号SRは、コントローラ1からの速度指令値から負の板幅制御用張力補正信号が減算されることになり、前回までの速度指令値に対して板幅制御用張力補正信号分だけ大きい値となり、これがスタンド速度設定器16、速度調節器17を介して駆動モータMに供給される。このため、第1スタンドF1におけるワークロールWRの駆動モータMの回転速度が増加し、これに応じて熱間ストリップSの通板速度が上昇することにより、第1及び第2スタンドF1,F2間の板幅制御領域の張力が弱くなり、熱間ストリップSの板幅が広くなる方向に制御される。
【0033】
この熱間ストリップSの目標板幅から製品板幅側への変化に対しては、その逆側への変化のように、代替制御量VPI′を使用せず、目標板幅に素早く復帰するように制御している。そして、中間スタンド板幅計3の板幅検出値WFが中間スタンド目標板厚設定値WTFに復帰すると、第1スタンドF1におけるワークロールWRの回転速度がコントローラ1で設定された回転速度に復帰し、第1及び第2スタンドF1,F2間の板幅制御領域の張力が目標値に復帰する。
【0034】
なお、板幅制御状態で、熱間ストリップSに水乗り異常が発生すると、異常信号SAが論理値“1”となり、これによって選択回路9が制御停止指令値VSを選択して、板幅制御が停止される。このように、上記実施形態によると、クリープ変形による広い板幅制御範囲を有する前段側ではルーパを使用することなくスタンドにおけるワークロールの回転速度を制御することによってスタンド間張力を変化させて板幅を制御するようにしているので、ルーパ制御に比較して高いスタンド間張力を得ることが可能となって板幅調整量を多くとることができ、中間スタンドで大きな板幅変動を生じたときにこれに正確に対応することができ、後段側ではルーパによる板幅制御を行って仕上出側板幅を目標板幅に正確に制御することができ、狙い幅精度を大幅に向上させることができる。
【0035】
この結果、上記実施形態による場合には、図4に示すように、従来のルーパを使用した板幅制御における余幅設定値6.0mmに対して本実施形態では、3.0mmに減少させることができ、大きな余幅削減効果を発揮して、製品の歩止まりを向上させることができる。しかも、上記実施形態では、板幅制御対象領域となる第1及び第2スタンドF1,F2の後段側の第2スタンドF2の出側に中間スタンド板幅計3を設置したので、応答遅れを最小限にすることができ、制御ゲインを大きくしてルーパレス板幅制御を良好に行うことができる。
【0036】
なお、上記実施形態においては、板幅制御対象領域の出側スタンドF2の出側に中間スタンド板幅計3を設置した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第3スタンドF3の出側に中間スタンド板幅計3を設置するようにしてもよく、要はルーパレス張力制御を行うスタンド間の出側近傍に中間スタンド板幅計3を設置すればよい。
【0037】
また、上記実施形態においては、前段側の第1及び第2スタンドF1,F2間をルーパレスによる板幅制御対象領域に設定した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、第2及び第3スタンドF2,F3間でもルーパレス張力制御を行うようにしてもよく、この場合には第3スタンドF3の出側に中間スタンド板幅計3を設置する必要がある。
【0038】
さらに、上記実施形態においては、板幅制御対象領域を設定した前側のスタンドのワークロール回転速度を制御する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、後ろ側のスタンドのワークロール回転速度を制御するようにしてもよく、この場合は板幅検出値が目標板幅設定値より大きくなったときにワークロール回転速度を上昇させるように制御すればよい。
【0039】
さらにまた、上記実施形態においては、スタンド数が7である場合について説明したが、これに限定されるものではなく、任意数のスタンドを有する圧延機に本発明を適用し得るものである。なおさらに、上記実施形態においては、本発明を熱間圧延機に適用した場合について説明したが、これに限定されるものではなく、冷間圧延機に本発明を適用することができる。
【0040】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、前段側のルーパレス構成とした所定スタンド間を板幅制御対象領域とし、その後側のスタンドの出側に設置した板幅計で被圧延材の板幅を検出し、検出された板幅検出値と目標板幅設定値との偏差に基づいて所定スタンドの何れか一方の圧延速度を、張力検出を行うことなく制御することによりスタンド間張力を調整するので、ルーパを使用することなく張力調整を行うことが可能となり、板幅の制御範囲を広くすることができ、しかも所定スタンドの後側の中間スタンドの出側で被圧延材の板幅を検出するので、無駄時間が少なく制御の応答性を向上させることができるという効果が得られる。
【0041】
しかも、通常時は板幅制御対象領域のスタンド間張力制御を、板幅偏差に基づく比例積分制御で行うので、スタンド間張力が急変することなく板幅偏差に追従して制御されて、板厚変動等の影響を生じることがなく、良好な板幅制御を行うことができ、板幅偏差が正で且つ所定値以下であるときには比例積分制御に代えて前回制御量と所定設定値とに基づいて制御量を算出することにより、製品幅側へのオーバーシュートを防止することができ、余幅を削減して製品歩止まりを向上させることができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】
図1の前段側板幅制御装置の具体例を示すブロック図である。
【図3】
各スタンド間張力変化と仕上出側板幅計の板幅検出値及び目標板幅設定値の偏差との関係を示す説明図である。
【図4】
本実施形態と従来例との余幅削減実績を示す説明図である。
【符号の説明】
F1,F2 前段側スタンド
F3〜F7 後段側スタンド
1 コントローラ
3 中間スタンド板幅計
4 仕上出側板幅計
5 前段側板幅制御装置
7 減算器
10 比例積分制御回路
11 選択回路
12 代替制御量演算回路
13 制御条件判定回路
15 減算器
16 スタンド速度設定器
17 速度調節器
WR ワークロール
M モータ
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-05-24 
出願番号 特願平7-312823
審決分類 P 1 652・ 113- XA (B21B)
P 1 652・ 121- XA (B21B)
最終処分 決定却下  
前審関与審査官 國方 康伸  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 瀬良 聡機
市川 裕司
登録日 2003-08-01 
登録番号 特許第3456077号(P3456077)
権利者 JFEスチール株式会社
発明の名称 タンデム圧延機の板幅制御方法  

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