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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H04N |
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管理番号 | 1121095 |
異議申立番号 | 異議2003-72561 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2001-09-07 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-10-21 |
確定日 | 2005-05-18 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3398138号「画像処理装置および画像処理方法」の請求項1ないし21に係る特許に対する特許異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3398138号の請求項1ないし16に係る特許を取り消す。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第3398138号の請求項1ないし21に係る発明についての出願は,平成12年12月21日(優先権主張平成11年12月24日)に出願され,平成15年2月14日に設定登録され,その後,金子和弘から特許異議の申立てがなされ,取消理由通知がされ,その指定期間内である平成16年9月7日に訂正請求がなされたものである。 第2 訂正の適否 1 訂正事項 (1) 特許請求の範囲の請求項1ないし21(以下「旧請求項1」などという。)を添付された訂正明細書のとおり請求項1ないし16と訂正する。 (2) 明細書の段落【0010】ないし【0020】を添付された訂正明細書のとおり訂正する。 2 訂正目的について (1) 請求項1について 旧請求項5は,「前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段の符号化部を共有化したことを特徴とした請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。」であり,請求項1は,旧請求項5の旧請求項1を引用する部分を独立させたものであり,実質的な変更でなく,明りょうでない記載の釈明に該当する。 (2) 請求項2及び3について 引用する請求項1の内容が訂正されたことから請求項2及び3も訂正されたこととなるが,この訂正は,請求項1の訂正と同様,旧請求項5の旧請求項2又は3を引用する部分を独立させたものであり,実質的な変更でなく,明りょうでない記載の釈明に該当する。 (3) 請求項4について 旧請求項4は,「前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。」であり,請求項4は,旧請求項4の旧請求項1を引用している記載を独立形式に変更したものであり,実質的な変更でなく,明りょうでない記載の釈明に該当する。 (4) 請求項5について 請求項5は,旧請求項6を「画像データを,静止画像として符号化する静止画像符号化手段と,前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と,前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と,前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し,前記動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを一時的に退避させるための記憶手段を備え,この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり,前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることを特徴とする画像処理装置。」 と訂正するものであり,訂正箇所は,旧請求項6の「1フレーム分の画像データを一時的に記憶する記憶手段を備える」であり,これを「1フレーム分の画像データを一時的に退避させるための記憶手段を備え,この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり,前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われる」と訂正するものである。 そして,この訂正は,「記憶手段」の位置を「フレームバッファ内の記憶領域」と特定し,さらに「記憶手段」の容量を「記憶領域の容量が許す限り」と限定するものである。 したがって,該訂正は,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (5) 請求項6について 請求項6は,請求項5を引用する形式であり,請求項5についての判断と同様,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (6) 請求項7について 旧請求項10は,「前記記憶手段に記憶された1フレーム分の画像データは,前記画像補正手段による補正後の画像データであることを特徴とする請求項6又は7に記載の画像処理装置。」であり,請求項7は,旧請求項10の旧請求項6を引用する部分を独立させたものであり,実質的な変更でなく,明りょうでない記載の釈明に該当する。 (7) 請求項8について 旧請求項11は,「前記制御手段は,前記動画像符号化手段による符号化処理の終了後に,前記記憶手段に記憶されている画像データを静止画像として生成すべく前記静止画像符号化手段に送出することを特徴とした請求項10に記載の画像処理装置。」であり,請求項8は,旧請求項11が引用する形式の旧請求項10が更に引用する形式の請求項6の部分を独立させたものであり,実質的な変更でなく,明りょうでない記載の釈明に該当する。 (8) 請求項9について 請求項9は,旧請求項12の内容を「静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,前記画像補正手段において,前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と,前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせ,かつ前記画像データを静止画像として符号化する手段および動画像として符号化する手段の符号化部を共有化したことを特徴とする画像処理方法。」と訂正するものであり,訂正箇所は,旧請求項12の「フィルタリング処理とを異ならせた」であり,これを「フィルタリング処理とを異ならせ,かつ前記画像データを静止画像として符号化する手段および動画像として符号化する手段の符号化部を共有化した」と訂正するものである。 この訂正は,動画像と静止画像とを符号化する手段を限定するものであり,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (9) 請求項10について 請求項10は,旧請求項13の旧請求項12を引用している部分を,上記訂正の請求項9を引用する形式とするものであり,請求項9についての判断と同様,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (10) 請求項11について 請求項11は,旧請求項14の旧請求項12又は13を引用している部分を,上記訂正の請求項9又は10を引用する形式とするものであり,請求項9についての判断と同様,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (11) 請求項12について 旧請求項15は,「前記画像補正手段において,前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことを特徴とする請求項12に記載の画像処理方法。」であり,請求項12は,旧請求項12を引用する形式から独立した形式に表現を変更したものであり,実質的な変更でなく,明りょうでない記載の釈明に該当する。 (12) 請求項13について 請求項13は,旧請求項16の「静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させることを特徴とした画像処理方法。」を「静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ,この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり,前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることを特徴とする画像処理方法。」と訂正するものであり,一時的に退避させる記憶手段を限定するもので,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (13) 請求項14について 請求項14は,旧請求項17が引用していた旧請求項16が,請求項13として訂正されたのを受けた訂正であり,請求項13についての判断と同様,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (14) 請求項15について 旧請求項16の「静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させることを特徴とした画像処理方法。」を,「静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ,前記画像補正手段による補正後の画像データを,前記記憶手段に退避させることを特徴とする画像処理方法。」と訂正するものであり,退避させる画像データが補正後の画像データであることを限定したものであるから,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (15) 請求項16について 請求項16は,旧請求項21の限定事項の一部である「動画像の記録後に,前記記憶手段に退避させた画像データを静止画像として符号化処理すること」を,旧請求項16が訂正された請求項15に付加するすることにより,退避させたデータの処理を限定する訂正であり,請求項15についての判断と同様,特許請求の範囲の減縮に該当する。 (16) 明細書の訂正について 明細書の段落【0010】ないし【0020】の訂正は,特許請求の範囲の訂正と整合させるための訂正であり,明りょうでない記載の釈明に該当する。 3 訂正についての新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 前記訂正事項は,明りょうでない記載の釈明又は特許請求の範囲の減縮に該当し,いずれも,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 4 むすび 以上のとおりであるから,上記訂正は,特許法120条の4第2項及び3項で準用する126条2,3項の規定に適合するので,当該訂正を認める。 第3 特許異議の申立てについて 1 異議申立の概要 特許異議申立人金子和弘は,下記証拠(1)ないし(3)を基に,訂正前の請求項1ないし21に係る発明は特許法29条1項又は2項の規定により特許を受けることができないから,特許を取り消すべきものと主張している。 (1) 特開平 4―129488号公報(以下「甲第1号証」という。) (2) 特開平10―327339号公報(以下「甲第2号証」という。) (3) 特開平11― 75148号公報(以下「甲第3号証」という。) 2 本件発明 本件発明は,前述のとおり訂正が認められるから,本件請求項1ないし16に係る発明は,訂正明細書及び図面の記載からみて,それぞれ,特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項によって特定されるとおりのものと認める。 3 証拠に記載された発明 (1) 甲第1号証に記載された発明(発明の名称:画像データ符号化前の適応フィルタ方式) ア [課題を解決するための手段]の項には,次の記載がある。 「第1図は本発明の原理ブロツク図である。 この第1図において,1は入力信号である画像デ-タを符号化する前にその画像デ-タに対し帯域制限処理を施すフィルタ,2は入力信号(画像デ-タ)に基づいて画像の動画像度あるいは静止画像度を判定する判定回路,3はこの判定回路2にて判定された動画像度あるいは静止画像度に応じて適応的にフィルタ1の帯域幅を変更する帯域幅変更手段である。」(公報2頁右上欄14行〜左下欄3行) イ 第1実施例の説明の項には,次の記載がある。 「第2図は本発明の第1実施例を示すブロツク図で,この第2図において,1Aは入力信号(画像デ-タ)を符号化する前にその画像デ-タに対し帯域制限処理を施すフィルタで,本実施例においては,5タップ構成のものを示す。 このフィルタ1Aは,遅延回路4a〜4dを有してなる4段のシフトレジスタ4と,静止画領域,動画領域それぞれの場合に適した変換用係数を各タップについて記憶するROM5a〜5eと,現時点の画像デ-タとシフトレジスタ4により得られる縦方向の変換については過去4ライン,横方向の変換については過去4画素の画像デ-タとのそれぞれにROM5a〜5eからの係数を乗算する乗算器6a〜6eと,各乗算器6a〜6eからの乗算結果をすべて加算して出力する加算器7とから構成されている。」(公報2頁右下欄10行〜3頁左上欄6行) ウ 「そして,本実施例におけるROM5a〜5eは,判定回路2A(判定部10)からの判定結果(係数切替信号)に応じて,静止画領域用係数もしくは動画領域用係数を選択して出力し,フィルタ1Aの帯域幅を適応的に変更する帯域幅変更手段として機能する。」(公報3頁9〜14行) エ 「また,上述した実施例では,所要のしきい値に基づく判定回路2A,2Bによる判定結果に応じて,静止画領域フィルタと動画領域フィルタのうちのいずれか一方を選択する構成としているが,画像の動画像度あるいは静止画像度に応じて,帯域幅の異なる3つ以上のフィルタから最適なものを選択するような構成としてもよい。この場合,判定部10,16において,差分回路11,18からの差分絶対値を複数のしきい値と比較して,最適なフィルタの選択を行なう。」(公報4頁左下欄2〜11行) (2) 甲第2号証に記載された発明(発明の名称:信号処理装置及び記録装置) オ 「【0017】メモリ部106に記憶されたデジタル画像信号は,後段の圧縮・符号化処理に適したデータ順となるよう,メモリ制御回路116により,書き込み時のアドレス順とは異なるアドレス順に読み出され,圧縮・符号化回路107に出力される。圧縮・符号化回路107はメモリ部106より読み出されたデジタル画像信号に対して周知のDCT・可変長符号化等の処理を施すことによりその情報量を圧縮し,記録処理回路108に出力する。」 カ 「【0019】本形態のDVCは動画像を記録する動画モードと静止画像を記録する静止画モードとを有し,ユーザは操作部112のモード切り換えスイッチを操作することにより各モードを切り換える。」 キ 「【0023】本形態では,装置の記録モードに従ってLPF103の特性を変更している。即ち,制御部111はフィルタ制御回路110を制御して,ユーザが操作部112により,前記動画モードが指定された場合と,静止画モードが指定された場合とでLPF103の特性を以下に説明する様に変更する。」 (3) 甲第3号証に記載された発明(発明の名称:ディジタルカメラ) ク 「【0062】この動画像記録モードの実行中に,静止画レリーズSW32が押下されると(図2(c)c2,(d)d2),この静止画記録の指示をサブマイコン14が検出する。そして,サブマイコン14はメインマイコン8に静止画記録を指示する。 【0063】これによりメインマイコン8は,撮像素子3で受像している画像について,静止画レリーズSW32が押下されたタイミングのフレームの画像をフレームメモリ9から抽出し,JPEG形式のディジタルデータに変換して静止画像モード時用記憶部22の記憶媒体に記憶させる(図2(f)f2)。」 ケ 「【0069】まず,サブマイコン14に接続された動画レリーズSW31が押下されると(図3(a)a1),この動画像記録モードでの記録開始の指示をサブマイコン14が検出する。そして,サブマイコン14はメインマイコン8に動画像記録モードでの記録開始を指示する。これによりメインマイコン8は,撮像素子3で受像した動画像をMPEG形式のディジタルデータに変換して動画像モード時用記憶部21の記録媒体に記録させる(図3(d)d1〜)。この動画像記録モードは,再度動画レリーズSW31が押下されるまで続行する(図3(a)a2〜(d)d2)。」 3 本件各発明について (1) 請求項1に係る発明(以下「本件発明1」という。)について ア 本件発明1は次のとおりのものである。 「画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と, 前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と, 前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と, 前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し, 前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と,前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせ,かつ前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段の符号化部を共有化したことを特徴とする画像処理装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明(以下「甲第1号証発明」という。)との対比 甲第1号証発明では,画像データとして動画と静止画を対象としており,画像データを符号化する前にフィルタを設け帯域制限処理を施していることから,本件発明1の画像補正手段及び符号化手段を備えていることが理解できる。 そして,これら手段の動作を制御するために,制御手段を備えることは当業者に自明の事項と認められる。 また,「静止画領域用係数もしくは動画領域用係数を選択して出力し,フィルタ1Aの帯域幅を適応的に変更する帯域幅変更手段」を備えていることから,静止画と動画でフィルタリング処理を異ならせていることが理解できる。 以上を踏まえると,本件発明1と甲第1号証発明とは次の一致点及び相違点を有する。 【一致点】「画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と,前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と,前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と,前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し,前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と,前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせたことを特徴とする画像処理装置。」 【相違点】本件発明1では,静止画像符号化手段及び動画像符号化手段の符号化部を共有化しているのに対し,甲第1号証発明では共有化に関する記載がない点。 ウ 相違点の判断 甲第2号証には,図1の説明に関して,動画像を記録する動画モードと静止画像を記録する静止画モードとを有し,圧縮・符号化回路107はメモリ部106より読み出されたデジタル画像信号に対して周知のDCT・可変長符号化等の処理を施すことによりその情報量を圧縮し,記録処理回路108に出力する,ことが記載されており,圧縮・符号化回路107は,共有化されていることが図面上示されている。 甲第2号証の発明の詳細な説明には,共有化したことについては明記されていないが,原審の拒絶の理由で引用された特開平9―284718号公報(以下,「原審引用例」という。)を参酌すると,符号化部を共有化することには,なんら進歩性は認められない。 すなわち,原審引用例の請求項4には,「請求項1に記載の画像記録装置において,前記コーデック部は,MPEG方式の処理とJPEG方式の処理を共通化して行う回路であることを特徴とする画像記録装置。」と記載されており,符号化部を共有化することに進歩性が認められないことは,原審でも既に通知済みの事項である。 したがって,当該相違点は当業者であれば容易に推考できたものであり,効果においても格別なものは認められず,本件発明1は,甲第1号証発明及び甲第2号証発明に基づいて原審引用例を参酌することにより,当業者であれば容易に発明できたものと認められる。 (2) 請求項2に係る発明(以下「本件発明2」という。)について ア 本件発明2は次のとおりのものである。 「【請求項2】前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理を複数種類選択可能に構成し,この複数種のフィルタリング機能を選択するための選択手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明との対比・判断 甲第1号証には,「画像の動画像度あるいは静止画像度に応じて,帯域幅の異なる3つ以上のフィルタから最適なものを選択するような構成としてもよい。」(前掲エ)と記載されており,選択することから当然に選択手段を備えていると判断でき,本件発明2の特徴とする構成は,甲第1号証に記載されている事項である。 したがって,本件発明2は,本件発明1と同様,甲第1,2号証発明に基づいて原審引用例を参酌することにより,当業者であれば容易に発明できたものと認められる。 (3) 請求項3に係る発明(以下「本件発明3」という。)について ア 本件発明3は次のとおりのものである。 「【請求項3】 前記画像補正手段は,フィルタ部とこのフィルタ部のフィルタ機能を決定する係数を記憶する記憶部とを含むことを特徴とした請求項1又は2に記載の画像処理装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明との対比・判断 甲第1号証には,「ROM5a〜5eは,判定回路2A(判定部10)からの判定結果(係数切替信号)に応じて,静止画領域用係数もしくは動画領域用係数を選択して出力し」(前掲ウ)と記載されており,係数を記憶する記憶部を含むことことが示されていることから,本件発明3の特徴とする構成は,甲第1号証に記載されている事項である。 したがって,本件発明3は,本件発明1又は2と同様,甲第1,2号証発明に基づいて原審引用例を参酌することにより,当業者であれば容易に発明できたものである。 (4) 請求項4に係る発明(以下「本件発明4」という。)について ア 本件発明4は次のとおりのものである。 「【請求項4】 画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と,前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と,前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と,前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し,前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と,前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせ,前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことを特徴とする画像処理装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明との対比 本件発明1での検討と同様に,本件発明4と甲第1号証発明との一致点は次のとおりであり,後記相違点を有する。 【一致点】画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と,前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と,前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と,前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し,前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と,前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせたことを特徴とする画像処理装置。 【相違点】本件発明4では,画像補正手段において,静止画像符号化手段に対する画像データのフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としているのに対し,甲第1号証発明では,フィルタリング処理の設定に関して記載がない点。 ウ 相違点についての当審の判断 「恒等変換処理」について,本願明細書には,「【0045】・・・(ヘ)画像データ補正回路4のフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能にしても良い。その場合入力された静止画像データがそのまま出力される。この構成であれば,必要なときに容易に,フィルタリング処理機能を有効化できる。 【0046】なお,恒等変換を実現するためには,例えば,図4において,係数αnのみを1とし,その他の係数αn-1… …α2,α1を全て0に設定すれば良い。 【0047】本発明は,静止画像データおよび動画像データを画像データ補正回路4に通すことに特徴を有するのであり,恒等変換処理も当然にフィルタリング処理の概念に属する。」との記載がある。 フィルタリング処理は,通常「何も変化を与えない変換」,換言すれば入力信号をそのまま出力すること,を意味することは当業者に自明の事項であり,本件発明4においてもフィルタリング処理の一つとして恒等変換処理を位置づけている。 甲第1号証には,「画像の動画像度あるいは静止画像度に応じて,帯域幅の異なる3つ以上のフィルタから最適なものを選択するような構成としてもよい。この場合,判定部10,16において,差分回路11,18からの差分絶対値を複数のしきい値と比較して,最適なフィルタの選択を行なう。」(前掲エ)と記載されており,最適なフィルタを選択することは,当業者の設計的事項に属するものといえる。 さらに,甲第2号証によれば,段落0027及び0028に「【0027】本形態では,このように,フィルタ103の特性を切り換え,動画モードにおけるフィルタ103のカットオフ周波数を静止画モード時に比べて低くしているので,動画像信号の圧縮・符号化に伴うモスキートノイズの発生を抑圧することができる。【0028】一方,静止画像信号については動画モード時のようにカットオフ周波数を低くしていないので,より高精細な静止画像を得ることが可能となる。」と記載されており,静止画の場合,動画と比してカットオフ周波数を高くすることから,必要ならば入力信号をすべて通過させるカットオフ周波数に設定することも当業者であれば設計的に実施しうる事項と認められる。 したがって,恒等変換処理に設定可能とすることは,入力信号をそのまま出力することが可能なように設定することと同義であり,本件発明4は,甲第1,2号証発明に基づいて当業者であれば容易に発明できたものと認められる。 (5) 請求項5に係る発明(以下「本件発明5」という。)について ア 本件発明5は次のとおりのものである。 「【請求項5】 画像データを,静止画像として符号化する静止画像符号化手段と,前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と,前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と,前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し,前記動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを一時的に退避させるための記憶手段を備え,この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり,前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることを特徴とする画像処理装置。 イ 甲第1号証に記載された発明との対比 本件発明1での検討と同様に,本件発明5と甲第1号証発明との一致点は次のとおりであり,後記相違点を有する。 【一致点】画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と,前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と,前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と,前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備したことを特徴とする画像処理装置。 【相違点】本件発明5では,動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを一時的に退避させるための記憶手段を備え,この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり,前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われるとしているのに対し,甲第1号証発明では,この点に関して記載がない点。 ウ 相違点についての当審の判断 甲第3号証には,「動画像記録モードの実行中に,静止画レリーズSW32が押下されると・・・撮像素子3で受像している画像について,静止画レリーズSW32が押下されたタイミングのフレームの画像をフレームメモリ9から抽出し,JPEG形式のディジタルデータに変換して静止画像モード時用記憶部22の記憶媒体に記憶させる。」(甲第3号証前掲ク)記載がある。 甲第3号証の「動画像記録モードの実行中」は,本件発明5の「動画像符号化手段による符号化処理中」に相当するものであり,同じく「静止画レリーズSW32が押下」は,本件発明5の「静止画像の記録指示信号」の発生に相当する。 甲第3号証には,「押下されたタイミングのフレームの画像をフレームメモリ9から抽出し・・・記憶媒体に記憶させる。」とあることから,抽出することは,本件発明5の退避に相当し,1フレーム分の画像データを退避しているといえる。 そうすると,記憶手段の領域と記憶領域の容量のみが本件発明5では甲第3号証と異なることとなる。 そこで検討するに,記憶手段の記憶領域は,フレームバッファに限定する格別な意義は明細書中には認められず,動画像記憶領域と別であれば,特に限定する必要はないものと認められ,静止画像モード時用記憶部22としてフレームメモリと異なる領域が示された甲第3号証の技術に替えて,フレームメモリ内に領域を確保することは,当業者であれば容易に推考できたものと認められる。 なお,電子カメラの従来技術である特開平10―108121号公報を参照すると,その段落0024に「請求項6の電子カメラでは,動画像の記録期間中に静止画像の記録指示が外部から与えられると,バッファ手段5は,その記録指示に同期して撮像手段1からの画像情報を一時的に記憶する。」とあり,バッファ手段がフレームバッファ又はフレームメモリと同義であることは自明の事項であることからも,前記記憶領域の特定になんら発明は認められない。 また,記憶領域の容量は,1フレーム分の画像データが蓄積できれば目的を達するものであり,甲第3号証発明でも,最低1フレーム分の画像データを退避しており,この点における本件発明5は甲第3号証と差違はなく,更に,必要に応じて容量を増加させることは当業者の設計的事項に属するものと認められる。 したがって,本件発明5は,甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に発明できたものである。 (6) 請求項6に係る発明(以下「本件発明6」という。)について ア 本件発明6は次のとおりのものである。 「【請求項6】前記画像補正手段において,前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と,前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせたことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明との対比・判断 本件発明6の特徴は,本件発明1が備えるものであり,本件発明1との対比においては,本件発明5と同じ相違点が認められ,判断も本件発明5の判断と同様,当業者であれば容易に発明できたものと認められる。 (7) 請求項7に係る発明(以下「本件発明7」という。)について ア 本件発明7は次のとおりのものである。 「【請求項7】画像データを,静止画像として符号化する静止画像符号化手段と,前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と,前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ,前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と,前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し,前記動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを一時的に記憶する記憶手段を備え,前記記憶手段に記憶された1フレーム分の画像データは,前記画像補正手段による補正後の画像データであることを特徴とする画像処理装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明との対比・判断 本件発明1及び本件発明5の検討を踏まえると,本件発明7の特徴とする事項は,記憶手段に記憶された1フレーム分の静止画の画像データは,画像補正手段による補正後の画像データであることと認められる。 甲第1号証発明によれば,画像データを符号化する前に画像補正手段により補正(前掲ア)しており,甲第3号証発明における「JPEG形式のディジタルデータに変換して静止画像モード時用記憶部22の記憶媒体に記憶させる。」との記載から,甲第3号証発明は,符号化の前に画像補正を行っているとみることが自然であるり,このように解することになんら阻害要因も認められない。 したがって,本件発明7は,甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に発明できたものである。 (8) 請求項8に係る発明(以下「本件発明8」という。)について ア 本件発明8は次のとおりのものである。 「【請求項8】前記制御手段は,前記動画像符号化手段による符号化処理の終了後に,前記記憶手段に記憶されている画像データを静止画像として生成すべく前記静止画像符号化手段に送出することを特徴とした請求項7に記載の画像処理装置。」 イ 甲第1号証に記載された発明との対比・判断 本件発明8の特徴とする事項は,動画の符号化処理の後に静止画の処理を行うことであるが,処理自体に格別な工夫は認められず,当業者であれば必要に応じて実施しうる設計的事項にすぎない。 なお,異議申立人はこの点が周知な技術であることを主張しており,前掲特開平10―108121号公報を参照すると,段落0024,0025に「請求項6の電子カメラでは,動画像の記録期間中に静止画像の記録指示が外部から与えられると,バッファ手段5は,その記録指示に同期して撮像手段1からの画像情報を一時的に記憶する。【0025】この状態で,画像圧縮手段7は,動画記録手段3の記録完了を待って,バッファ手段5に記憶された画像情報を圧縮する。静止画記録手段4は,このように圧縮された画像情報を記録媒体Rに記録する。したがって,動画像の記録中においても,スナップショットを確実に撮像することができる。」とあり,当業者に周知であることが認められる。 そして,本件発明8は,本件発明7を引用している部分を含め,甲第1号証及び甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者であれば容易に発明できたものである。 (9) 請求項9ないし16に係る発明(以下,まとめて「本件方法発明」という。)について ア 本件発明9ないし16は次のとおりのものである。 「【請求項9】静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,前記画像補正手段において,前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と,前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせ,かつ前記画像データを静止画像として符号化する手段および動画像として符号化する手段の符号化部を共有化したことを特徴とする画像処理方法。 【請求項10】 前記画像補正手段において,前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理を複数種類選択可能に構成し,選択手段からの選択信号に応じたフィルタリング処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の画像処理方法。 【請求項11】 前記画像補正手段は,フィルタ部とこのフィルタ部のフィルタ機能を決定する係数を記憶する記憶部とを含むことを特徴とした請求項9又は10に記載の画像処理方法。 【請求項12】静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,前記画像補正手段において,前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と,前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせ,前記画像補正手段において,前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことを特徴とする画像処理方法。 【請求項13】 静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ,この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり,前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることを特徴とする画像処理方法。 【請求項14】 前記画像補正手段において,前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と,前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせたことを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。 【請求項15】静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって,動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて,1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ,前記画像補正手段による補正後の画像データを,前記記憶手段に退避させることを特徴とする画像処理方法。 【請求項16】 動画像の記録後に,前記記憶手段に退避させた画像データを静止画像として符号化処理することを特徴とした請求項15に記載の画像処理方法。」 イ 甲第1号証に記載された発明との対比・判断 本件発明9は,本件発明1を方法として記載したものに相当し,本件発明1で検討したことと同じ理由により,当業者であれば容易に発明できたものである。 同様に,本件発明10ないし16は,それぞれ,本件発明2ないし8を方法として記載したものに相当し,本件発明2ないし8で検討したことと同じ理由により,当業者であれば容易に発明できたものである。 (10) 本件発明1ないし本件発明16の効果について 本件発明1ないし16の効果についても,甲第1ないし3号証に照らして鑑みれば当業者が予測し得ない格段の効果は認められない。 第4 むすび 以上のとおりであるから,訂正請求書により訂正された請求項1ないし16に記載された発明は,甲第1号証ないし甲第3号証に記載された発明に基づいて,原審引用例を参酌することにより,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1ないし16についての特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものであり,同法113条2号に該当し,取り消されるべきものである。 よって結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 画像処理装置および画像処理方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と、前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせ、かつ前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段の符号化部を共有化したことを特徴とする画像処理装置。 【請求項2】 前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理を複数種類選択可能に構成し、この複数種のフィルタリング機能を選択するための選択手段を設けたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。 【請求項3】 前記画像補正手段は、フィルタ部とこのフィルタ部のフィルタ機能を決定する係数を記憶する記憶部とを含むことを特徴とした請求項1又は2に記載の画像処理装置。 【請求項4】 画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と、前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせ、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことを特徴とする画像処理装置。 【請求項5】 画像データを、静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを一時的に退避させるための記憶手段を備え、この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり、前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることを特徴とする画像処理装置。 【請求項6】 前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と、前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせたことを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。 【請求項7】 画像データを、静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを一時的に記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段に記憶された1フレーム分の画像データは、前記画像補正手段による補正後の画像データであることを特徴とする画像処理装置。 【請求項8】 前記制御手段は、前記動画像符号化手段による符号化処理の終了後に、前記記憶手段に記憶されている画像データを静止画像として生成すべく前記静止画像符号化手段に送出することを特徴とした請求項7に記載の画像処理装置。 【請求項9】 静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と、前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせ、かつ前記画像データを静止画像として符号化する手段および動画像として符号化する手段の符号化部を共有化したことを特徴とする画像処理方法。 【請求項10】 前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理を複数種類選択可能に構成し、選択手段からの選択信号に応じたフィルタリング処理を行うことを特徴とする請求項9に記載の画像処理方法。 【請求項11】 前記画像補正手段は、フィルタ部とこのフィルタ部のフィルタ機能を決定する係数を記憶する記憶部とを含むことを特徴とした請求項9又は10に記載の画像処理方法。 【請求項12】静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と、前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせ、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことを特徴とする画像処理方法。 【請求項13】 静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ、この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり、前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることを特徴とする画像処理方法。 【請求項14】 前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と、前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせたことを特徴とする請求項13に記載の画像処理方法。 【請求項15】静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ、前記画像補正手段による補正後の画像データを、前記記憶手段に退避させることを特徴とする画像処理方法。 【請求項16】 動画像の記録後に、前記記憶手段に退避させた画像データを静止画像として符号化処理することを特徴とした請求項15に記載の画像処理方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、画像処理装置および画像処理方法に係り、例えば、画像データをMPEG(Moving Picture Expert Group)およびJPEG(Joint PhotographicCodibg Expert Group)規格に従って圧縮符号化して記録する技術に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 近年、19世紀以来の銀塩写真技術を使用したカメラに代わって、電子スチルカメラの需要がますます拡大している。電子スチルカメラにおいては、画像データを伝送および蓄積する際に、画像データを圧縮してデータ量を減らすことにより効率的に処理するために、データの圧縮・伸張技術として「JPEG」方式が用いられている。このJPEG方式は、ISO(International Organization for Standardization)/IEC(Intarnational Electrotechnical Commission)傘下のJPEG委員会(ISO/IEC10918-1)によって標準化されている。 【0003】 JPEG方式はJPEGアルゴリズムとも呼ばれ、その技術の核となるのが離散コサイン変換(DCT;Discrete Cosine Transform)である。そして、JPEG方式は、電子スチルカメラだけでなく、CD-ROM(CD-Read Only Memory)システム等の画像データの処理にも広く利用されている。また、JPEG方式によれば動画像データの圧縮・伸張を行うことも可能であるため、JPEG方式を用いた電子スチルカメラには動画像の撮影機能を備えたものもある。このようにJPEG方式を用いて動画像データの圧縮・伸張を行う技術は、M-JPEG(Motion-JPEG)と呼ばれる。 【0004】 ところで、マルチメディアで扱われる情報は、膨大な量で且つ多種多様であり、これらの情報を高速に処理することがマルチメディアの実用化を図る上で必要となってくる。情報を高速に処理するためには、データの圧縮・伸長技術が不可欠となる。そのようなデータの圧縮・伸長技術としては「MPEG」方式があげられる。このMPEG方式は、ISO/IEC傘下のMPEG委員会(ISO/IECJTC1/SC29/WG11)によって標準化されている。 【0005】 MPEG方式で用いられる技術の核となるのが、動き補償付予測(MC;Motion Compensated prediction)とDCTである。MCとDCTを併用した符号化技術は、ハイブリッド符号化技術と呼ばれる。つまり、MPEG方式は、JPEG方式にMCを組み合わせた技術であるといえる。MPEG方式は、各種蓄積メディア(ビデオCD(Compact Disc)、CD-ROM、DVD、ビデオテープ、不揮発性半導体メモリを用いたメモリカード、等)、LAN(Local Area Network)等の各種通信メディア、各種放送メディア(地上波放送、衛星放送、CATV(Community Antenna Television))を含む伝達メディア全般に対応している。 【0006】 このようなMPEG方式を利用した電子スチルカメラにあっては、動画像の撮影中に動画像の1フレーム(1画面)分に相当する静止画像をスナップショットとして記録できるようにすることが要望されている。通常、静止画像として記録された画像情報は、ビデオプリンタなどを使用して紙媒体にプリントされることが多いので、高画質が要求されるが、動画像をこのような高画質で記録した場合、直ぐにメモリ容量が足りなくなってしまう。したがって、このような機能を実現する場合、従来は、静止画像は1フレーム分のそのままの画素密度で記録し、動画像は、画素密度が小さくなるようにフィルタリング処理することが行われている。 【0007】 動画像のフィルタリング処理には、一般的には、空間フィルタとしての非循環型デジタルフィルタ(以下、FIR(Finite Impulse Response)フィルタという)が用いられており、このFIRフィルタの重み付け係数を設定することにより、画素密度の変換を行う。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 従来例にあっては、静止画像はフィルタリング処理することなくJPEG回路に入力されるため、例えば、静止画像のエッジを滑らかにしたい場合や逆にエッジを強調したい場合のような需要を満足することができず、また、このような機能を付加するためには新たにフィルタ回路を増設しなければならず、コストが高くなる問題がある。 【0009】 本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、画像処理装置において、動画像および静止画像の記録機能を低コストで向上させることにある。 また、本発明の第2の目的は、動画像および静止画像の記録機能を低コストで向上させることが可能な画像処理方法を提供することにある。 【0010】 【課題を解決するための手段】 請求項1の画像処理装置は、画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と、前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせ、かつ前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段の符号化部を共有化したことをその要旨とする。 【0011】 請求項2の画像処理装置は、請求項1に記載の発明において、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理を複数種類選択可能に構成し、この複数種のフィルタリング機能を選択するための選択手段を設けたことをその要旨とする。 【0012】 請求項3の画像処理装置は、請求項1又は2に記載の発明において、前記画像補正手段は、フィルタ部とこのフィルタ部のフィルタ機能を決定する係数を記憶する記憶部とを含むことをその要旨とする。 【0013】 請求項4の画像処理装置は、画像データを静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と、前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせ、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことをその要旨とする。 【0014】 請求項5の画像処理装置は、画像データを、静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを一時的に退避させるための記憶手段を備え、この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり、前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることをその要旨とする。 請求項6の画像処理装置は、請求項5に記載の発明において、前記画像補正手段において、前記静止画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理と、前記動画像符号化手段に対する前記画像データのフィルタリング処理とを異ならせたことをその要旨とする。 【0015】 請求項7の画像処理装置は、画像データを、静止画像として符号化する静止画像符号化手段と、前記画像データを一連の動画像として符号化する動画像符号化手段と、前記静止画像符号化手段および動画像符号化手段に至る前記画像データの入力経路中に設けられ、前記画像データをフィルタリング処理する画像補正手段と、前記各手段の動作を制御する制御手段とを具備し、前記動画像符号化手段による符号化処理中における静止画像の記録指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを一時的に記憶する記憶手段を備え、前記記憶手段に記憶された1フレーム分の画像データは、前記画像補正手段による補正後の画像データであることをその要旨とする。 請求項8の画像処理装置は、請求項7に記載の発明において、前記制御手段は、前記動画像符号化手段による符号化処理の終了後に、前記記憶手段に記憶されている画像データを静止画像として生成すべく前記静止画像符号化手段に送出することをその要旨とする。 【0016】 請求項9の画像処理方法は、静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と、前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせ、かつ前記画像データを静止画像として符号化する手段および動画像として符号化する手段の符号化部を共有化したことをその要旨とする。 請求項10の画像処理方法は、請求項9に記載の発明において、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理を複数種類選択可能に構成し、選択手段からの選択信号に応じたフィルタリング処理を行うことをその要旨とする。 【0017】 請求項11の画像処理方法は、請求項9又は10に記載の発明において、前記画像補正手段は、フィルタ部とこのフィルタ部のフィルタ機能を決定する係数を記憶する記憶部とを含むことをその要旨とする。 請求項12の画像処理方法は、静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と、前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせ、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能としたことをその要旨とする。 【0018】 請求項13の画像処理方法は、静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ、この記憶手段はフレームバッファ内の記憶領域であり、前記静止画像の退避は前記記憶領域の容量が許す限り行われることをその要旨とする。 【0019】 請求項14の画像処理方法は、請求項13に記載の発明において、前記画像補正手段において、前記静止画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理と、前記動画像として符号化すべき画像データに対するフィルタリング処理とを異ならせたことをその要旨とする。請求項15の画像処理方法は、静止画像として符号化すべき画像データと動画像として符号化すべき画像データとの双方を共通の画像補正手段でフィルタリング処理するものであって、動画像の符号化処理中における静止画像の符号化指示信号に応じて、1フレーム分の画像データを静止画像として符号化すべき画像データとして一時的に記憶手段に退避させ、前記画像補正手段による補正後の画像データを、前記記憶手段に退避させることをその要旨とする。 【0020】 請求項16の画像処理方法は、請求項15に記載の発明において、動画像の記録後に、前記記憶手段に退避させた画像データを静止画像として符号化処理することをその要旨とする。 【0021】 【発明の実施の形態】 本発明を具体化した一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、JPEGおよびMPEG方式を用いた電子スチルカメラ1のブロック回路図である。電子スチルカメラ1は、撮像デバイス2、信号処理回路3、画像データ補正回路4、JPEGコア回路5、MPEGコア回路6、フレームバッファ7、表示回路8、ディスプレイ9、メモリカード10、入出力回路11、データバス12,13、制御コア回路14、操作ボタン群15から構成されている。 【0022】 制御コア回路14は、操作ボタン群15のON/OFF信号に応じて、電子スチルカメラ1の各構成要素2〜13を制御する。図1では操作ボタン群15のうち代表的なボタンのみを示しており、操作ボタン群15は、静止画記録ボタン15aおよび動画記録ボタン15bを有している。撮像デバイス2はCCD(Charge Coupled Device)等から構成され、被写体画像を撮影して出力信号を生成する。信号処理回路3は、A/D変換回路を含み、撮像デバイス2の出力信号をA/D変換した後、ホワイトバランス調整やガンマ補正等を行って、1画面(画素数:縦1200×横1600)ずつの原画像データを生成する。信号処理回路3の生成したデジタルの原画像データは、データバス12を介して、フレームバッファ7または表示回路8の少なくともいずれかへ転送される。 【0023】 表示回路8は、データバス12を介して転送されてきた1画面ずつの画像データから画像信号を生成する。ディスプレイ9は、表示回路8の生成した画像信号を被写体画像として表示する。フレームバッファ7は書き換え可能な半導体メモリ(例えば、SDRAM(Synchronous Dynamic RAM)、DRAM、ラムバスDRAM、等)から構成され、データバス12を介して転送されてきた1画面(1フレーム)ずつの画像データを書き込んで記憶すると共に、記憶した画像データを1画面ずつ読み出す。また、このフレームバッファ7には、動画記録中、静止画記録ボタン15aのON信号に応じて、該当する1フレーム分の静止画像データを一時的に退避して記憶する記憶領域7aを備えている。尚、記憶領域7aが本発明における「記憶手段」の一例である。 【0024】 フレームバッファ7から読み出された1画面ずつの画像データは、データバス12を介して画像データ補正回路4へ転送される。画像データ補正回路4は、信号処理回路3から入力された画像データに対し、後述する補正処理を行う。画像データ補正回路4の生成した補正処理後の1画面ずつの画像データは、データバス12を介して、JPEGコア回路5又はMPEGコア回路6へ転送される。尚、画像データ補正回路4が本発明における「画像補正手段」の一例である。 【0025】 メモリカード10は電子スチルカメラ1に対して着脱可能に装着されており、メモリカード10内にはフラッシュメモリ10aが設けられている。フラッシュメモリ10aは、データバス13を介して転送されてきた1画面ずつの圧縮画像データを書き込んで記憶すると共に、記憶した圧縮画像データを1画面ずつ読み出してデータバス13へ転送する。尚、フラッシュメモリ10aが本発明における「記録媒体」の一例である。 【0026】 入出力回路11は、データバス13を介して転送されてきた1画面ずつの画像データを、電子スチルカメラ1に接続された外部機器(例えば、外部ディスプレイ、パーソナルコンピュータ、プリンタ、等)へ出力すると共に、当該外部機器から入力された画像データをデータバス13へ転送する。メモリカード10から読み出された画像データまたは入出力回路11を介して入力された画像データは、データバス13を介してJPEGコア回路5又はMPEGコア回路6へ転送される。 【0027】 JPEGコア回路5は、図2に示すとおり、DCT回路16、量子化回路17、ハフマン符号化回路18、ハフマン復号化回路19、逆量子化回路20、逆DCT(IDCT;Inverse DCT)回路21から構成されている。JPEGコア回路5においては、1画面の画像データがJPEG方式の規格によって定められた複数のマクロブロックに分割され、その各ブロック毎に圧縮・伸張処理が行われる。ここで、DCT回路16,量子化回路17,ハフマン符号化回路18はJPEGエンコーダを構成し、静止画像データの圧縮・符号化処理を行い、ハフマン復号化回路19,逆量子化回路20,逆DCT回路21はJPEGデコーダを構成し、静止画像データの伸張・復号化処理を行う。尚、JPEGコア回路5(JPEGエンコーダ)が本発明における「静止画像符号化手段」の一例である。 【0028】 DCT回路16は、フレームバッファ7から読み出された1画面ずつの画像データに対して、1画面の画像データを1ブロック単位で取り込み、その画像データに対して2次元の離散コサイン変換(DCT:Discrete Cosine Transform)を行ってDCT係数を生成する。量子化回路17は、DCT回路16から供給されたDCT係数を、図示しないRAMに記憶された量子化テーブルに格納されている量子化しきい値を参照して量子化する。 【0029】 ハフマン符号化回路18は、量子化回路17にて量子化されたDCT係数を、図示しないRAMに記憶されたハフマンテーブルに格納されているハフマン符号を参照して可変長符号化することにより、圧縮された画像データを1画面ずつ生成する。ハフマン符号化回路18の生成した圧縮画像データは、データバス13を介して、メモリカード10または入出力回路11の少なくともいずれかへ転送される。 【0030】 MPEGコア回路6は、JPEGコア回路5にMC回路22a,22bを付加して構成される。したがって、DCT回路16、量子化回路17、ハフマン符号化回路18、ハフマン復号化回路19、逆量子化回路20、逆DCT回路21は、JPEGコア回路5とMPEGコア回路6とで共有化され、制御コア回路14からの切替信号により、JPEGコア回路5を使用するのか、また、これにMC回路22a,22bを付加したMPEGコア回路6を使用するのかが選択される。但し、JPEGとMPEGとは、上記した量子化テーブルおよびハフマンテーブルを別々に備えるものとする。 【0031】 MPEGコア回路6においては、1画面の画像データがMPEG方式の規格によって定められた複数のマクロブロックに分割され、その各ブロック毎に圧縮・伸張処理が行われる。ここで、DCT回路16,量子化回路17,ハフマン符号化回路18、MC回路22aはMPEGエンコーダを構成し、動画像データの圧縮符号化処理を行い、ハフマン復号化回路19,逆量子化回路20,逆DCT回路21、MC回路22bはMPEGデコーダを構成し、動画像データの伸張・復号化処理を行う。尚、MPEGコア回路6(MPEGエンコーダ)が本発明における「動画像符号化手段」の一例である。 【0032】 そして、MPEGエンコーダの生成した圧縮画像データも、データバス13を介して、メモリカード10または入出力回路11の少なくともいずれかへ転送される。JPEGコア回路5又はMPEGコア回路6において、ハフマン復号化回路19は、データバス13を介して転送されてきた1画面ずつの圧縮画像データを、ハフマン符号を参照して可変長復号化することにより、伸張された画像データを1画面ずつ生成する。 【0033】 逆量子化回路20は、ハフマン復号化回路19の生成した1画面ずつの伸張画像データを、量子化しきい値を参照して逆量子化することにより、DCT係数を生成する。逆DCT回路21は、逆量子化回路20の生成したDCT係数に対して2次元の離散コサイン逆変換(IDCT:Inverse DCT)を行う。ここで、MPEGコア回路6においては、逆DCT回路21にて離散コサイン逆変換が行われた1画面ずつの伸張画像データに対しMC回路22bによりMC処理を施す。 【0034】 JPEGコア回路5又はMPEGコア回路6からの伸張画像データは、データバス12を介してフレームバッファ7へ転送される。そして、フレームバッファ7は、JPEGコア回路5又はMPEGコア回路6からデータバス12を介して転送されてきた1画面ずつの画像データを書き込んで記憶する。また、表示回路8は、フレームバッファ7からデータバス12を介して転送されてきた1画面ずつの画像データから画像信号を生成し、その画像信号はディスプレイ9上で被写体画像として表示される。 【0035】 画像データ補正回路4は、図3に示すとおり、デジタルフィルタ部23、ROM24およびタイミング制御部25から構成されている。デジタルフィルタ部23は、FIRフィルタを含み、図4に示すとおり、信号処理回路3から入力されたnビットの入力信号をサンプリング周期毎に遅延させるためのn個の遅延器26…と、n+1個の乗算器27…と、この乗算器27…からの信号を畳み込むための加算器28とから構成される。乗算器27…の各係数αn,αn-1… …α2,α1は、フィルタの特性を決定する係数であり、動画像データをフィルタリング処理する場合の係数と静止画像データをフィルタリング処理する場合の係数とが予めROM24内に書き込まれてある。ROM24に記憶させている係数は、予め製造段階においてシミュレーションにより適切な値に設定される。 【0036】 例えば、動画像データをフィルタリング処理する場合には、線形補間等の考え方を用い、サンプリング周期毎に各係数の値を変化させることで、良好な低画素密度画像を得る。一例として、横方向の画素数を2/3にする場合を考える。いま、仮に原画像において3個の画素p1〜p3が横向きに配列されており、動画像データに対するフィルタリング処理により、これらの画素を2個の画素q1,q2に変換する。このために、q1とq2をそれぞれp1,p2,p3の一次線形和で表現する。すなわち、画素数をどの程度減らすか、その比率を定めた上で、線形和の各係数を実験等で定めればデータ量低減のためのフィルタリング処理が実現する。一例として、画素数を例えば縦480×横720に低減しても良い。一方、静止画像データをフィルタリング処理する場合には、高周波領域を強調するように各係数の値を設定し、ハイパスフィルターを形成しても良い。こうすることで、画素数を一定に維持したまま、エッジ部の劣化のない鮮明化された画像を得ることができる。 【0037】 尚、本実施形態にあっては、n=8に設定しているが、これには当然設計の自由度がある。タイミング制御部25は、制御コア回路14の制御に従って、ROM24からの係数の読み出しのタイミング、入出力データのラッチのタイミング、フィルタ演算のタイミング等を制御する。斯かる構成に基づいて、画像データの記録動作を説明する。 (静止画像記録)撮像デバイス2から取り込まれた原画像データは、静止画記録ボタン15aのON信号に対応するタイミングで信号処理回路3に入力され、ここで1画面のデジタルの原画像データに変換されて、画像データ補正回路4に取り込まれる。そして、画像データ補正回路4において、上述した静止画像対応の補正処理が行われ、JPEGコア回路5に入力され、所定の圧縮・符号化処理が行われた後、フラッシュメモリ10aに記録される。 (動画像記録)撮像デバイス2から取り込まれた原画像データは、動画記録ボタン15bのON信号に対応するタイミングで信号処理回路3に入力され、ここで1画面ずつのデジタルの原画像データに変換されて、画像データ補正回路4に取り込まれる。そして、画像データ補正回路4において、上述した動画像対応の補正処理が行われ、MPEGコア回路6に入力され、所定の圧縮・符号化処理が行われた後、フラッシュメモリ10aに記録される。この動作は、動画記録ボタン15bから再びON信号が送出されるまで続行される。 (スナップショット記録)動画像の記録期間中に、静止画記録ボタン15aからON信号が送出されると、制御コア回路14は、スナップショットのためのスチル撮影が外部から指示されたと判断し、1フレーム分の画像データをフレームバッファ7の記録領域7aに一時的に退避・記憶させる。この退避動作のあいだ、動画像の記録動作はそのまま継続する。尚、静止画像の退避は、記憶領域7aの容量が許す限り、複数フレーム分行なわれる。 【0038】 動画像記録が終了すると、制御コア回路14は、動画像の記録動作中に、上記した静止画像の退避動作が行われたか否かを判定し、退避動作が行われている場合、記憶領域7aに記憶されている1フレーム分のデータをデータバス12を介して画像データ補正回路4に転送し、上述した静止画像記録と同様の動作を行わせる。 【0039】 以上に説明した本実施形態の電子スチルカメラ1にあっては、以下のとおりの作用効果を奏する。 (1)動画像の撮影中に、スナップショットとして静止画像を抽出することができるので、電子スチルカメラとしての機能が向上する。 (2)静止画像データをデータ補正回路4を用いて、より最適な画像に補正することができる。 【0040】 (3)動画像データはもとより、静止画像データも必ずデータ補正回路4を通過するよう構成されているので、静止画像に別途補正処理したい場合であっても、ROM24内に係数を記憶させるだけでよく、低コストで機能を向上させることができる。しかも、別途、静止画像専用の補正回路を設ける必要がないので、機器の大型化および消費電力の増大を防止することができる。 【0041】 (4)JPEGコア回路5およびMPEGコア回路6において、DCT回路16、量子化回路17、ハフマン符号化回路18、ハフマン復号化回路19、逆量子化回路20、逆DCT(IDCT;Inverse DCT)回路21を共用しているので、電子スチルカメラ1の構成や演算処理アルゴリズムなどを簡略化することができる。 【0042】 (5)スナップショットのためのスチル撮影が指示された場合に、1フレーム分の画像データを一時的に退避・記憶させるための記録領域7aを設けたので、静止画像と動画像の区分および検索が容易になり、素早く再生することができる。 (6)スナップショットのためのスチル撮影が指示された場合に、画像データ補正回路4に入力する前の1フレーム分の画像データを記録領域7aに一時的に退避・記憶させるので、その後に画像データ補正回路4においてフィルタリング処理する際、垂直方向にフィルタリング処理したりズーム処理したりすることが容易になるとともに動画像記録を中断することなく行うことができる。 【0043】 本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、以下のように変更してもよく、その場合でも同等もしくはそれ以上の作用・効果を得ることができる。 (イ)メモリカード10に代えて、光磁気ディスク、光ディスク、磁気ディスクなどを用いる。 (ロ)スナップショットのためのスチル撮影が指示された場合に、画像データ補正回路4に入力した後の1フレーム分の画像データを記録領域7aに一時的に退避・記憶させる。こうすることにより、その後にJPEGコア回路5で所定の圧縮処理を行う際にデータの取り出し処理を容易に行うことができる。また、例えば、現在撮影中の動画像を表示しているディスプレイ9上に、動画面に代えて又は動画面の片隅に一時的に静止画像を表示させるような機能を容易に付加することができる。 【0044】 (ハ)静止画像データをフィルタリング処理する場合に、高周波領域を強調しないように各係数の値を設定し、ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタなどを形成してもよい。こうすることで、エイリアシングや斜め線のギザギザ(シャギー)を抑えることができる。 (ニ)上記(ハ)の別例として、静止画像データをフィルタリング処理する場合に、エッジ部を強調したり、色信号のダイナミックレンジを拡大したりして、メリハリのきいた鮮やかな画像を得るように各係数の値を設定する。その他、用途又は使用者の好みに応じて、任意の線形、非線形フィルタを利用することができる。 【0045】 (ホ)図1に示すとおり、上記実施形態および上記(ハ)(ニ)の補正機能を選択するための選択ボタン15cを設ける。こうすることで、ユーザーの好みに応じた静止画像を作成することができ、電子スチルカメラ1としての機能が更に向上する。尚、選択ボタン15cをが本発明における「選択手段」の一例である。 (ヘ)画像データ補正回路4のフィルタリング処理を恒等変換処理に設定可能にしても良い。その場合入力された静止画像データがそのまま出力される。この構成であれば、必要なときに容易に、フィルタリング処理機能を有効化できる。 【0046】 なお、恒等変換を実現するためには、例えば、図4において、係数αnのみを1とし、その他の係数αn-1… …α2,α1を全て0に設定すれば良い。 【0047】 本発明は、静止画像データおよび動画像データを画像データ補正回路4に通すことに特徴を有するのであり、恒等変換処理も当然にフィルタリング処理の概念に属する。 【0048】 【発明の効果】 本発明は、画像処理装置において、動画像および静止画像の記録機能を低コストで向上させることができる。また、本発明は、動画像および静止画像の記録機能を低コストで向上させることが可能な画像処理方法を提供することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明を具体化した実施形態における電子スチルカメラのブロック回路図である。 【図2】 本実施形態におけるJPEGコア回路およびMPEGコア回路の概略を示すブロック図である。 【図3】 本実施形態における画像データ補正回路の概略を示すブロック図である。 【図4】 本実施形態における画像データ補正回路のフィルタ部を示す回路図である。 【符号の説明】 1 電子スチルカメラ 2 撮像デバイス 3 信号処理回路 4 画像データ補正回路 5 JPEGコア回路 6 MPEGコア回路 7 フレームバッファ 8 表示回路 9 ディスプレイ 10 メモリカード 10a フラッシュメモリ 11 入出力回路 12,13 データバス 14 制御コア回路 15a 静止画記録ボタン 15b 動画記録ボタン 15c 選択ボタン 16 DCT回路 17 量子化回路 18 ハフマン符号化回路 19 ハフマン復号化回路 20 逆量子化回路 21 逆DCT回路 22a,22b MC回路 23 デジタルフィルタ部 24 ROM 25 タイミング制御部 26 遅延器 27 乗算器 28 加算器 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2005-03-30 |
出願番号 | 特願2000-388760(P2000-388760) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
ZA
(H04N)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 鈴木 明 |
特許庁審判長 |
杉山 務 |
特許庁審判官 |
新宮佳典 原 光明 |
登録日 | 2003-02-14 |
登録番号 | 特許第3398138号(P3398138) |
権利者 | 三洋電機株式会社 |
発明の名称 | 画像処理装置および画像処理方法 |
代理人 | 森下 賢樹 |
代理人 | 芝野 正雅 |
代理人 | 芝野 正雅 |
代理人 | 森下 賢樹 |