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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C10L
管理番号 1121111
異議申立番号 異議2003-73140  
総通号数 69 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2003-05-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-16 
確定日 2005-05-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3464208号「複合固形燃料の製造方法及びその製造装置」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3464208号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 I.手続の経緯
特許第3464208号の請求項1ないし8に係る発明は、平成13年10月30日に特許出願され、平成15年8月22日にその特許権の設定登録がされ、その後、比嘉道子より特許異議の申立てがされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成17年4月5日に訂正請求がされたものである。
II.訂正の適否
平成17年4月5日付けの訂正請求は、本件特許第3464208号の願書に添付された明細書を、訂正請求書に添付された全文訂正明細書のとおり訂正することを求めるものである。
1.訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の記載を次の「請求項1ないし4」のとおり訂正する。
「【請求項1】水分率2〜15重量%の石炭粉末(12)に含まれる硫黄分を乾式選炭法である誘電体分離法により分離除去する乾式選炭装置(13)と、前記石炭粉末(12)にこの石炭粉末(12)に含まれる燃焼性硫黄の1〜2重量当量の脱硫剤粉末(14)を混合して第1混合物を調製する第1混合機(21)と、前記第1混合物に発熱量が3000kcal/kg以上であって水分率2〜20重量%の植物系高分子有機物粉末(16)を5〜45重量%混合して第2混合物(32)を調製する第2混合機(22)と、前記第2混合物(32)を貯留する成形用ホッパ(17)と、前記成形用ホッパ(17)に回転可能に収容され前記成形用ホッパ(17)内の第2混合物(32)を前記成形用ホッパ(17)の下方に圧送するスクリューフィーダ(18)と、前記成形用ホッパ(17)の下方に配設され外周面に多数の凹部(23b,24b)が整列して形成されかつ外周面が互いに圧接された状態で互いに反対方向に回転して前記スクリューフィーダ(18)により圧送された前記第2混合物(32)を圧縮成形する一対のロール(23,24)とを備えた複合固形燃料の製造装置であって、前記スクリューフィーダ(18)の先端に前記一対のロール(23,24)の圧接部に向う減圧スクリュー(52)が突設され、前記減圧スクリュー(52)の羽根(52a)の捩り方向が前記スクリューフィーダ(18)の羽根(18a)の捩り方向と逆向きに形成されたことを特徴とする複合固形燃料の製造装置。
【請求項2】一対のロール(23,24)を支持する一対の回転軸(23a,24a)のうち一方の回転軸(23a)がシリンダにより他方の回転軸(24a)に向って所定の圧力で圧接され、前記一対の回転軸(23a,24a)の軸間距離が距離センサにより検出され、前記距離センサの検出出力に基づいてコントローラが前記フィーダ用モータ(51)の回転速度を制御するように構成された請求項1記載の複合固形燃料の製造装置。
【請求項3】第2混合機(22)内の第2混合物(32)が搬送機により搬送されて成形用ホッパ(17)に貯留され、一端が前記成形用ホッパ(17)に接続された脱気パイプ(53)の他端が集塵機(56)を介して大気に開放され、更に前記集塵機(56)で捕集された前記第2混合物(32)が前記第2混合機(22)に戻されるように構成された請求項1又は2記載の複合固形燃料の製造装置。
【請求項4】請求項1ないし3いずれか1項に記載の装置により製造された複合固形燃料。」
イ.訂正事項b
発明の名称を「複合固形燃料の製造装置」と訂正する。
ウ.訂正事項c
段落番号【0001】の記載を、「本発明は、石炭粉末及び植物系高分子有機物粉末の混合物を圧縮成形した複合固形燃料の製造装置に関するものである。」と訂正する。
エ.訂正事項d
段落番号【0005】の記載を、「本発明の第1の目的は、乾式選炭法により石炭粉末中の硫黄分の大部分を除去して脱硫剤粉末の添加量を低減できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。本発明の第2の目的は、植物系高分子有機物粉末及び脱硫剤粉末が接触すること並びに脱硫剤粉末により植物系高分子有機物粉末がコーティングされることをなくすことにより脱硫剤粉末を有効利用できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。本発明の第3の目的は、植物系繊維等からなる産業廃棄物(段ボール紙や建築廃材等)を石炭粉末の結合材として有効利用できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。」と訂正する。
オ.訂正事項e
段落番号【0007】、【0008】及び【0009】の記載を削除する。
カ.訂正事項f
段落番号【0010】の記載を、「【課題を解決するための手段】請求項1に係る発明は、図2及び図3に示すように、水分率2〜15重量%の石炭粉末12に含まれる硫黄分を乾式選炭法である誘電体分離法により分離除去する乾式選炭装置13と、石炭粉末12にこの石炭粉末12に含まれる燃焼性硫黄の1〜2重量当量の脱硫剤粉末14を混合して第1混合物を調製する第1混合機21と、第1混合物21に発熱量が3000kcal/kg以上であって水分率2〜20重量%の植物系高分子有機物粉末16を5〜45重量%混合して第2混合物32を調製する第2混合機22と、第2混合物32を貯留する成形用ホッパ17と、成形用ホッパ17に回転可能に収容され成形用ホッパ17内の第2混合物32を成形用ホッパ17の下方に圧送するスクリューフィーダ18と、成形用ホッパ17の下方に配設され外周面に多数の凹部23b,24bが整列して形成されかつ外周面が互いに圧接された状態で互いに反対方向に回転してスクリューフィーダ18により圧送された第2混合物32を圧縮成形する一対のロール23,24とを備えた複合固形燃料の製造装置であって、スクリューフィーダ18の先端に一対のロール23,24の圧接部に向う減圧スクリュー52が突設され、減圧スクリュー52の羽根52aの捩り方向がスクリューフィーダ18の羽根18aの捩り方向と逆向きに形成されたことを特徴とする。」と訂正する。
キ.訂正事項g
段落番号【0011】の記載を、「この請求項1に記載された複合固形燃料の製造装置では、水を用いない乾式選炭装置13を用いて、乾燥した石炭粉末12を高電圧かつ微弱電流にて作られた電界中に通すので、この石炭粉末12に含まれる硫黄分の大部分と灰分が分離除去される。この硫黄分の大部分と灰分が分離除去された石炭粉末12aには第1混合機21により脱硫剤粉末14が添加・混合され、この第1混合物には第2混合機22により繊維質である植物系高分子有機物粉末16が添加・混合される。このため第一に石炭粉末12a及び脱硫剤粉末14が接触すること並びに脱硫剤粉末14により石炭粉末12aがコーティングされることが優先される。また第二に植物系高分子有機物粉末16及び脱硫剤粉末14が接触すること並びに脱硫剤粉末14により植物系高分子有機物粉末16がコーティングされることは殆どなくなる。この結果、脱硫剤粉末14の添加量を低減できるとともに、脱硫剤粉末14を有効利用できる。」と訂正する。
ク.訂正事項h
段落番号【0012】の記載を、「また成形用ホッパ17内でスクリューフィーダ18が回転して第2混合物32を一対のロール23,24間に押込むときに、減圧スクリュー52がスクリューフィーダ18直下の第2混合物32に作用する押込み圧力を分散して均等にするので、密度の均一な高品質の複合固形燃料11を連続製造できる。また減圧スクリュー52が磨耗しても、この減圧スクリュー52が複合固形燃料11の成形に支障をきたすことはなく、また減圧スクリュー52を交換するときには、この減圧スクリュー52を取外して交換するだけで済むので、その交換作業性を向上できる。なお、脱硫剤粉末14の混合量に用いた「1重量当量」とは、石炭に含まれる燃焼性硫黄1重量割合に対し、燃焼時その硫黄を灰中に固定化反応できる脱硫剤粉末の理論的必要量をいい、実際の脱硫剤粉末の混合量は1重量当量以上必要とされる。」と訂正する。
ケ.訂正事項i
段落番号【0013】の記載を、「請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図2及び図3に示すように、スクリューフィーダ18がフィーダ用モータ51により駆動され、一対のロール23,24を支持する一対の回転軸23a,24aのうち一方の回転軸23aがシリンダにより他方の回転軸24aに向って所定の圧力で圧接され、一対の回転軸23a,24aの軸間距離が距離センサにより検出され、距離センサの検出出力に基づいてコントローラがフィーダ用モータ51の回転速度を制御するように構成されたことを特徴とする。
この請求項2に記載された複合固形燃料の製造装置では、距離センサが一対の回転軸23a,24aの軸間距離を検出し、この距離センサの検出出力に基づいてコントローラがフィーダ用モータ51の回転速度、即ちスクリューフィーダ18の回転速度を制御するので、スクリューフィーダ18により第2混合物32の押込み圧力を常に最適な値に保つことができる。」と訂正する。
コ.訂正事項j
段落番号【0014】の記載を、「請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、更に図2に示すように、第2混合機22内の第2混合物32が搬送機により搬送されて成形用ホッパ17に貯留され、一端が成形用ホッパ17に接続された脱気パイプ53の他端が集塵機56を介して大気に開放され、更に集塵機56で捕集された第2混合物32が第2混合機22に戻されるように構成されたことを特徴とする。この請求項3に記載された複合固形燃料の製造装置では、成形用ホッパ17内に第2混合物32の中に含まれる大部分の空気は脱気パイプ53を通り、集塵機56でこの空気に含まれる第2混合物32が捕集された後に、大気に排出される。また集塵機56で捕集された第2混合物32は第2混合機22に戻されるので、第2混合物32の歩留りの低減を防止できる。」と訂正する。
サ.訂正事項k
段落番号【0015】の記載を、「請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に記載の装置により製造された複合固形燃料である。これら請求項4に記載された複合固形燃料を燃焼すると、この複合固形燃料の石炭粉末中に残存する硫黄分と脱硫剤粉末とが反応して、硫黄分が灰中に石膏などとして残るため、SOxの発生を低減できる。」と訂正する。
シ.訂正事項l
段落番号【0038】及び【0039】の記載を削除する。
ス.訂正事項m
段落番号【0040】の記載を、「【発明の効果】 以上述べたように、本発明によれば、成形用ホッパ内に回転可能に収容されたスクリューフィーダの先端に一対のロールの圧接部に向う減圧スクリューを突設し、この減圧スクリューの羽根の捩り方向をスクリューフィーダの羽根の捩り方向と逆向きに形成したので、成形用ホッパ内でスクリューフィーダが回転して第2混合物を一対のロール間に押込むときに、減圧スクリューがスクリューフィーダ直下の第2混合物に作用する押込み圧力を分散して均等にする。この結果、密度の均一な高品質の複合固形燃料を製造できる。一方、減圧スクリューが磨耗しても、この減圧スクリューが複合固形燃料の成形に支障をきたすことはなく、また減圧スクリューを交換するときには、この減圧スクリューを取外して交換するだけで済むので、その交換作業性を向上できる。また一対のロールを支持する一対の回転軸の軸問距離を距離センサにより検出し、この距離センサの検出出力に基づいてコントローラがフィーダ用モータの回転速度を制御するように構成すれば、スクリューフィーダの回転速度が制御されるので、スクリューフィーダにより第2混合物の押込み圧力を常に最適な値に保つことができる。この結果、高品質の複合固形燃料を連続製造できる。」と訂正する。
セ.訂正事項n
段落番号【0041】の記載を、「また第2混合機内の第2混合物を搬送機により搬送して成形用ホッパに貯留し一端が成形用ホッパに接続された脱気パイプの他端を集塵機を介して大気に開放し、集塵機で捕集された第2混合物を第2混合機に戻すように構成すれば、成形用ホッパ内に第2混合物中に含まれる空気は脱気パイプを通り、集塵機でこの空気に含まれる第2混合物が捕集された後に、大気に排出される。この結果、第2混合物中に含まれる空気を成形用ホッパ内から素早く排出できるので、この空気が成形用ホッパ内における第2混合物のスクリューフィーダによる押込み工程の邪魔をすることはなく、集塵機で捕集された第2混合物は第2混合機に戻されるので、第2混合物の歩留りの低減を防止できる。更に上記装置を用いて製造された複合固形燃料を燃焼すると、この複合固形燃料の石炭粉末中に残存する硫黄分と脱硫剤粉末とが反応して、硫黄分が灰中に石膏などとして残るため、SOxの発生を低減できる。」と訂正する。
2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
ア.上記訂正事項aは、訂正前の請求項1、2、4及び7を削除し、訂正前の請求項3、5、6、8を順次繰り上げて請求項1ないし4とするものであるから、特許請求の範囲の減縮あるいは明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
イ.訂正事項b〜訂正事項nは、訂正事項aの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と不整合となる発明の名称及び発明の詳細な説明の記載を整合させるためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした訂正に該当する。
そして、上記訂正事項aないしnは、いずれも願書に添付した明細書及び図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3.むすび
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

III.特許異議申立てについての判断
1.特許異議申立ての理由の概要
訂正前の本件の請求項1ないし8に係る発明は、その出願前頒布された甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というにある。
[甲号各証]
甲第1号証:「平成10年度調査報告書 CO2削減のための中華人民共和国重慶直轄市の低品位石炭質の改善プロジェクト(バイオブリケット製造事業の調査)」、新エネルギー・産業技術総合開発機構、(平成11年3月発行)表紙、まえがきおよび目次i〜xi、1〜2、45〜49、52〜53、59〜91、95、180〜187頁
甲第2号証:第41回大気環境学会年会 講演要旨集、平成12年(社)大気環境学会:1C0945 坂本和彦ら、「石炭クリーン燃料化(乾式選炭とバイオブリケット)によるSO2、CO2の排出抑制に関する研究」、(平成12年9月発行、講演同9月26日)表紙、目次等、212頁
甲第3号証:第41回大気環境学会年会 講演要旨集、平成12年(社)大気環境学会:1C1000 玉青躍ら、「中国低品位石炭の有効利用のための日中共同乾式選炭の開発研究(2)」、(平成12年9月発行、講演同9月26日)表紙、目次等、213頁
甲第4号証:特公平7-68530号公報
甲第5号証:特開平11-123598号公報
甲第6号証:国際公開WO99/52705号パンフレット

2.本件発明
前述のとおり、本件訂正が認められるから、本件の請求項1ないし4に係る発明(以下、「本件発明1ないし4」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、II.1.ア.訂正事項a中、請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものである。

3.甲号各証の記載事項
甲第1号証には、次の事項が記載されている。
ア.「4.2.バイオブリケットの特徴
石炭原料にバイオマス(大鋸屑、バガス、モミガラ、稲ワラ等の植物性廃棄物)を15〜30%配合し、生石灰、消石灰等の硫黄固定剤を予め配合した混合物を、タブレットテスト、バイオブリケット実験用成形装置ならびに重慶市江北区のバイオブリケット実証プラントの成形研究用装置を用い、室温での高圧成形(線圧約3〜5toncm-1)プロセス2〜3、10)によって、ピロー形状(20〜30g)あるいはアーモンド形状(6〜10g)等のバイオブリケットを製造することができる。」(第60頁1〜7行)
イ.「5.3.2.バイオブリケットの試験製造
日本の技術を用いた高圧成形機は水分5%以下の原料にのみ利用可能であるために、高湿度条件である重慶市における利用には、乾燥装置を付加し、混合物原料の水分を5%以下にする必要があることが判明した。」(第87頁下から6行〜同3行)
ウ.「6.3.バイオブリケットプラントのプロセスと設備選択
6.3.1.バイオブリケットプラントのプロセス
図6.3-1にバイオブリケットプラントのプロセスフローチャートを示す。原料である原炭、バイオマス、硫黄固定剤は、粉砕し、粒度を制限する。原炭とバイオマスは乾燥後、さらに粉砕する。その後乾燥させ、バイオブリケットの強度を保証する。
これまでの研究により、石炭は、粒度3mm以下、水分(Wt)5%以下、バイオマス粒度1mm以下、水分(Wt)10%以下、硫黄固定剤(石灰岩)は粒度1mm以下にすることが好ましいことが判明している。
13mm以上の塊炭は、スクリーンで篩い分けし、乾燥前に13mm以下に粗粉砕する。粉砕する原炭ならびにバイオマスは、成形行程に入る前に粒度を制限し、乾燥し、さらに粉砕する。とくにバイオマスの茎のままの場合は、2回の粉砕行程が必要となる。硫黄固定剤(石灰岩)は、成形行程以前の粉砕行程において水の使用量をできる限り押さえ、水分の混入を防ぐ必要がある。
乾燥工程により、乾燥した粉塵を生成するため、粉塵汚染あるいは煤塵爆発を引き起こす恐れがある。したがって、原料(原炭、バイオマス、硫黄固定剤)を集中的に除塵し、安全かつ環境保全の要求を満足する対策をとる必要がある。」(第180頁1〜17行)とあり、バイオブリケットの製造工程のフローが「図6.3-1バイオブリケットの生産プロセス例」として記載されている(第181頁)。


エ.「6.3.2.設備選択
バイオブリケットプラントの出勤制度は毎年330日間とし、1日24時間で生産する。100万トン/年バイオブリケットプラントの企画は20万トン/年と10万トン/年の2種類のプラントがある。製造技術の要求によってケースI(中国制設備を主とする)とケースII(全部日本製設備)に対してそれぞれ選択した。表6.3-1はケースIの主要のプロセス設備であり、表6.3-2はケースIIの主要設備である。」(第180頁18〜23行、第182〜185頁の表6.3-1、表6.3-2参照)
甲第2号証には、次の事項が記載されている。
オ.「【はじめに】現在中国では、低品位石炭の燃焼により発生するSO2による、大気汚染や酸性雨の問題が深刻化している。本研究ではそれらの石炭からのSO2排出抑制技術として、従来から研究が行われ高い硫黄固定率を示しているバイオブリケット化技術と、静電気を用いた乾式選炭を併用することによって、さらに高い脱硫率と共に、CO2排出削減と、灰分中に含まれる重金属の低減をはかった。」(第212頁1〜4行)
カ.「【実験方法】選炭には中国の酸性雨地域で使用されている芙蓉炭(成都産)を粒径125〜250μmに粉砕したものを使用した。本研究で使用した静電気分離に基づく乾式選炭装置の概略を図1に示す。炭素分と金属分や無機硫黄分を含む灰分からなる原炭粒子は、針電極でコロナ放電による正の電荷を受け、電気を通しにくい炭素分は表面に電荷をためるため、負の電荷を持つ回転ドラムに付着し、電気を通しやすい鉱石分は電荷をうち消し、さらにドラムから負の電荷を受けるので飛散する。分離された石炭(精炭)の灰分割合は精炭1gをマッフル炉により燃焼後灰の重さを重量測定し、燃焼排ガス中のSO2は燃焼装置で燃焼後、陰イオンクロマトグラフで、金属分は灰分をフッ酸抽出後、ICP-AESを用いて測定した。」(第212頁5〜18行)
キ.「【実験結果】選炭前後の石炭の灰分割合と、燃焼時に排出されたSO2-Sを図2に示す。原炭に比べ、精炭は灰分量や硫黄の排出量が約3割程度減少している。これは、選炭により原炭に含まれる無機硫黄分のうち、黄鉄鉱(FeS2)が減少したためと考えられる。」(第212頁19〜23行)
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
ク.「このような観点から、本研究では、中国向けのベンチスケールの静電気方式乾式選炭装置(写真1)を試作し、中国重慶市南桐炭鉱選炭工場に導入し、石炭の選別実験を行った。民生用燃料等として使用されている低品位切込炭に関して、現在、日中共同研究チームによって、装置の電極形状、電圧、石炭粒径等の諸条件を変化させそれぞれが選炭に及ぼす影響と特性の実験を行っている。」(第213頁5〜9行)
ケ.「2.実験装置および方法 石炭はフィーダによって一定の周速度で回転しているドラムセンター直上に落下させる。落下した石炭は電極によって廃石、中間物と精炭が下部に設置した3個の箱に選別される。なお、無通電状態は3の箱へすべての石炭が落下する。電極には梯子状電極と針電極線(密と粗)の2種類を石炭粒径に応じて適用した。」(第213頁11〜22行)
コ.「3.実験結果 図1に示したように、2mm以下の石炭に密針線電極を用いた精炭の収率は80%と良好であり、灰分と硫黄分は、20.0%から、17.7%、4.1%から2.8%にそれぞれ減少し、脱灰率11.5%、脱硫率31.5%と算出された。廃石は、1%と極めて少なく、中間物は19%であった。」(第213頁25〜29行)
甲第4号証には、次の事項が記載されている。
サ.「混合工程(II)では、上記の工程で粒度、水分を調整した原料を用い、石炭粉100重量部に対して繊維質バイオマス粉15〜45重量部と、さらに石炭の有する燃焼性硫黄分の100〜150%当量に相当する重量の消石灰を配合し、均一に攪拌混合する。本発明では燃焼性硫黄分が1.0wt%以上の石炭を対象(「対称」は誤記。)としており、それ未満の石炭を使用した成型燃料では硫黄分のきわめて少ないバイオマスが配合されたため、硫黄酸化物の発生の点で、実用上あまり問題にならない。」(第2頁左欄34〜42行)
シ.「原炭は熱分解温度の低い黄鉄鉱のような鉱物質を多く含んでおり、硫黄分のきわめて高い低品位の(「を」は誤記。)石炭で、そのままでは燃焼時(「燃料時」は誤記。)における大量の硫黄酸化物が発生するため使用に耐えない。しかしバイオマスと消石灰を配合することによってリグナイト原炭に比して硫黄酸化物の発生量を大幅に低減され得た。」(第2頁右欄28〜33行)
甲第5号証には、次の事項が記載されている。
ス.「【0012】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明では、回転する2つのロール間に粉体を供給して圧縮成形し、ブリケットを製造するブリケッティングマシンにおいて、前記ロール間に前記粉体を供給するスクリュー出口端からロールの圧縮領域内に、その粉体の前記ロール間への食い込み量を調整するための調整板(審決注.図1の「3」に該当する。)を、前記ロールの軸方向に沿わせて設けた構成とする。そして、前記粉体は粉状の石炭とする事ができる。
【0013】 また、前記調整板と前記ロール間との距離を変更する事により、前記食い込み量を調整する構成とする。さらに、前記調整板端部と前記ロール間との距離を、その調整板中央部とそのロール間との距離よりも長くする事により、前記原料粉体の前記ロール間への食い込み量が前記ロール軸方向に沿って均一となるようにした構成とする。」

(段落番号【0012】〜【0013】、【図1】)
甲第6号証には、次の事項が記載されている。
セ.「本発明のさらに他の粉粒体処理装置は、並設された一対の圧縮ローラを備え、前記圧縮ローラの間に粉粒体を供給してその圧縮成形物を形成する粉粒体処理装置であって、前記粉粒体が前記圧縮ローラの間にて圧縮される際に前記粉粒体が受ける圧力によって生じる前記圧縮ローラ間の距離の微動を検出する微動量検出手段と、前記微動量検出手段によって得られた前記圧縮ローラ間の微動量に基づいて、前記圧縮ローラから送り出される前記粉粒体の硬さを調整する制御手段とを有している。」(第6頁10〜16行)
ソ.「本発明の粉粒体処理装置では、前記圧縮ローラに対し前記粉粒体を送給する粉粒体圧送手段をさらに設け、前記制御手段が、前記粉粒体圧送手段を制御して前記粉粒体の送給量を調整するようにしても良い。また、前記制御手段が、前記圧縮ローラの回転数を制御するようにしても良い。」(第6頁27行〜7頁1行)
タ.「以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、・・・ローラ38a、38bの状態をフレーム42に取り付けたセンサ51によって検出しているが、導入圧縮部50における粉粒体の圧力を圧力センサにて直接測定したり、サイドシール37の変位量や歪みの測定、ローラ38a、38bの軸間距離の測定、軸の歪み等でもその状態を検知することは可能である。」(第23頁4〜13行)
チ.「ここで、この乾式造粒法においては、両圧縮ローラは、圧縮成形に際し圧縮力の反作用として、供給された粉粒体からそれらの間を押し開こうとする力を受ける。このため、一方の圧縮ローラに油圧機構を設けて圧縮ローラを押圧しその逃げを防止しているのが通例である。」(第1頁13〜16行)
ツ.「本発明の粉粒体処理装置は、並設された一対の圧縮ローラを備え、前記圧縮ローラの間に粉粒体を供給してその圧縮成形物を形成する粉粒体処理装置であって、前記圧縮ローラの前段に配設され、前記圧縮ローラに供給される粉粒体を貯留する投入ホッパと、前記投入ホッパと接続されて前記投入ホッパと前記圧縮ローラとの間に配置され、前記圧縮ローラに粉粒体を圧送する粉粒体圧送手段とを有し、前記粉粒体圧送手段は、粉粒体圧送用のスクリュー部材を内部に備えた搬送管を有している。本発明の粉粒体処理装置では、前記搬送管が、前記スクリュー部材を格納し空気は通過可能であるが粉粒体は通過しない部材にて形成された脱気バレルと、前記脱気バレルを外装しその一部に脱気口が設けられた脱気ジャケットとからなるようにしても良い。」(第7頁2〜12行)
テ.「次いで、ホッパ19内の粉粒体は、搬送手段17を介してローラ機構18に送られる。すなわち、圧送手段20のスクリュー23によってホッパ19から下方に送られる。このとき、スクリュー23の回転と共にスクレーパー28も回転し、ホッパ19内の粉粒体は自重とスクリュー23の回転によって下方の搬送管69に送られる。
搬送管69は、ホッパ19の短管部29と連通しており、粉粒体は短管部29を介して搬送管69のバレル24内に送られる。この場合、バレル24は通気性のある部材によって形成されており、その周囲には、図示しない真空ポンプに接続されたジャケット25が配されている。また、その下部には、密閉部材36およびローラ機構18が配されている。従って、バレル24内の粉粒体は、その流れが密閉部材36およびローラ機構18によって一時貯留され絞られるような状態で、負圧下においてスクリュー23によって圧送されることになる。このため、粉粒体はバレル24において圧縮され、その内部の空気が脱気される。そして、粉粒体に含まれていた空気は、バレル24の微孔より脱気室35を通り、ジャケット25の脱気口26から強制的に真空引きされる。」(第18頁14〜28行)

4.対比・判断
[本件発明1について]
甲第1号証ないし甲第3号証は、中華人民共和国の硫黄酸化物の排出抑制を目的とする日中共同プロジェクトであり、「低品位石炭質の改善プロジェクト」で相互に一環する発明が記載されているから、本件発明1と甲1号証ないし甲第3号証記載の発明とを対比する。
甲第2号証、甲第3号証(摘示オ〜コ参照)には、本件発明1の特定事項である、石炭粉末に含まれる硫黄分を乾式選炭法である誘電体分離法により分離除去する乾式選炭装置(静電気を用いた乾式選炭装置)が記載され、また、甲第1号証(摘示ア〜オ参照)には、本件発明1の特定事項である、石炭粉末に燃焼性硫黄の1〜2重量当量の脱硫剤粉末を混合して第1混合物を調製する混合機と、前記第1混合物に植物系高分子有機物粉末を混合して第2混合物を調製する第2混合機と、前記第2混合物を貯留する成形用ホッパと、前記成形用ホッパに回転可能に収容され前記成形用ホッパ内の第2混合物を前記成形用ホッパの下方に圧送するスクリューフィーダと、前記成形用ホッパの下方に配設され外周面に多数の凹部が整列して形成されかつ外周面が互いに圧接された状態で互いに反対方向に回転して前記スクリューフィーダにより圧送された前記第2混合物を圧縮成形する一対のロールとを備えた複合固形燃料の製造装置が記載され、また、石炭粉末の水分率、植物系高分子有機物粉末の発熱量、水分率、混合割合等も本件発明1のものと格別な相違はないといえるが、本件発明1では、スクリューフィーダ(18)の先端に前記一対のロール(23,24)の圧接部に向う減圧スクリュー(52)が突設され、前記減圧スクリュー(52)の羽根(52a)の捩り方向が前記スクリューフィーダ(18)の羽根(18a)の捩り方向と逆向きに形成されているのに対して、甲第1号証ないし甲第3号証には、バイオブリケット成形装置のそのような細部が記載されていない点で相違する。
その相違する点について検討すると、甲第4号証には、スクリューフィーダの形状についての記載はなく、甲第5号証には、ブリケッティングマシンのロール間に粉体を供給するスクリュー出口端からロールの圧縮領域内に、その粉体の前記ロール間への食い込み量を調整するための調整板を、前記ロールの軸方向に沿わせて設けること(摘示ス参照)が記載されているものの、本件発明1のスクリューフィーダとは、形状、機能が異なるものである。
また、甲第6号証記載のスクリューフィーダにも減圧スクリューはみあたらない。
そして、本件発明1では、前記の減圧スクリューを採用することにより、「減圧スクリュー52がスクリューフィーダ18直下の第2混合物32に作用する押込み圧力を分散して均等にするので、密度の均一な高品質の複合固形燃料11を連続製造できる。また減圧スクリュー52が磨耗しても、この減圧スクリュー52が複合固形燃料11の成形に支障をきたすことはなく、また減圧スクリュー52を交換するときには、この減圧スクリュー52を取外して交換するだけで済むので、その交換作業性を向上できる。」(段落【0012】、【0041】)という効果を奏することは、甲第1号証ないし甲第6号証には記載されておらず、格別なものといえる。
したがって、本件発明1は、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
[本件発明2ないし4について]
本件発明2ないし4は、本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1と同様に、甲第1号証ないし甲第6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては本件発明1ないし4に係る特許をを取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
複合固形燃料の製造装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 水分率2〜15重量%の石炭粉末(12)に含まれる硫黄分を乾式選炭法である誘電体分離法により分離除去する乾式選炭装置(13)と、
前記石炭粉末(12)にこの石炭粉末(12)に含まれる燃焼性硫黄の1〜2重量当量の脱硫剤粉末(14)を混合して第1混合物を調製する第1混合機(21)と、
前記第1混合物に発熱量が3000kcal/kg以上であって水分率2〜20重量%の植物系高分子有機物粉末(16)を5〜45重量%混合して第2混合物(32)を調製する第2混合機(22)と、
前記第2混合物(32)を貯留する成形用ホッパ(17)と、
前記成形用ホッパ(17)に回転可能に収容され前記成形用ホッパ(17)内の第2混合物(32)を前記成形用ホッパ(17)の下方に圧送するスクリューフィーダ(18)と、
前記成形用ホッパ(17)の下方に配設され外周面に多数の凹部(23b,24b)が整列して形成されかつ外周面が互いに圧接された状態で互いに反対方向に回転して前記スクリューフィーダ(18)により圧送された前記第2混合物(32)を圧縮成形する一対のロール(23,24)と
を備えた複合固形燃料の製造装置であって、
前記スクリューフィーダ(18)の先端に前記一対のロール(23,24)の圧接部に向う減圧スクリュー(52)が突設され、前記減圧スクリュー(52)の羽根(52a)の捩り方向が前記スクリューフィーダ(18)の羽根(18a)の捩り方向と逆向きに形成されたことを特徴とする複合固形燃料の製造装置。
【請求項2】 一対のロール(23,24)を支持する一対の回転軸(23a,24a)のうち一方の回転軸(23a)がシリンダにより他方の回転軸(24a)に向って所定の圧力で圧接され、
前記一対の回転軸(23a,24a)の軸間距離が距離センサにより検出され、
前記距離センサの検出出力に基づいてコントローラが前記フィーダ用モータ(51)の回転速度を制御するように構成された請求項1記載の複合固形燃料の製造装置。
【請求項3】 第2混合機(22)内の第2混合物(32)が搬送機により搬送されて成形用ホッパ(17)に貯留され、一端が前記成形用ホッパ(17)に接続された脱気パイプ(53)の他端が集塵機(56)を介して大気に開放され、更に前記集塵機(56)で捕集された前記第2混合物(32)が前記第2混合機(22)に戻されるように構成された請求項1又は2記載の複合固形燃料の製造装置。
【請求項4】 請求項1ないし3いずれか1項に記載の装置により製造された複合固形燃料。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、石炭粉末及び植物系高分子有機物粉末の混合物を圧縮成形した複合固形燃料の製造装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の製造方法として、燃焼性硫黄分を1.0重量%(無水基)以上を含有する石炭粉100重量部に対して、繊維質バイオマス粉15〜45重量部と適当量(例えば、15〜19重量%)の消石灰を配合した混合物をブリケット状に高圧成型した後に、得られる造粒物について重量比がパラフィン:A重油=1:9〜5:5範囲の溶液により表面処理する成型燃料の製造法が開示されている(特公平7-68530号)。
この方法で製造された成型燃料は、従来の石炭・木質廃材成型燃料と同様に優れた燃料特性を有するとともに、原料の混合・成型時に加熱を必要とせず、かつ耐水性を付与することができる。また高硫黄分石炭を用いているにも拘らず、石炭粉にバイオマス及び消石灰を配合することにより、硫黄酸化物の発生量を大幅に低減できる。
【0003】
一方、回転する一対のロール間に向って開口するフィーダ内にフィーダスクリューが回転可能に設けられ、石炭粉末のロール間への食込み量を調整する調整板がフィーダ下部にロールの軸方向に延びて設けられたブリケッティングマシンが開示されている(特開平11-123598号)。このブリケッティングマシンでは、一対のロールのうち一方のロールの軸受が油圧装置により支持され、所定圧力以上になると一方のロールが後退するように構成される。
このように構成されたブリケッティングマシンでは、調整板をロールの圧縮領域(フィーダ下部)に設けることにより、ブリケットの体積に合致した石炭粉末が一対のロール間に食込むので、ブリケットが過剰な圧縮力を受けるのを防止でき、最適な圧縮力でブリケットを成形できるようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の特公平7-68530号公報に示された成型燃料の製造法では、石炭粉と繊維質バイオマス粉と消石灰とを同時に混合する。このため石炭粉及び消石灰が接触しかつ消石灰により石炭粉がコーティングされる。同時に繊維質バイオマス粉及び消石灰が接触しかつ消石灰により繊維質バイオマス粉がコーティングされる。この結果、脱硫剤粉末である消石灰及び石炭粉の接触が低下し、消石灰を有効に利用できない不具合があった。
また、上記従来の特開平11-123598号公報に示されたブリケッティングマシンでは、調整板が磨耗すると、石炭粉末の食込み圧により調整板が変形するため、この変形が著しくなると、調整板がブリケットの成形を妨げるとともに、調整板の交換時にフィーダスクリューのみならず、フィーダも取外さなければならない問題点があった。
【0005】
本発明の第1の目的は、乾式選炭法により石炭粉末中の硫黄分の大部分を除去して脱硫剤粉末の添加量を低減できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。
本発明の第2の目的は、植物系高分子有機物粉末及び脱硫剤粉末が接触すること並びに脱硫剤粉末により植物系高分子有機物粉末がコーティングされることをなくすことにより脱硫剤粉末を有効利用できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。
本発明の第3の目的は、植物系繊維等からなる産業廃棄物(段ボール紙や建築廃材等)を石炭粉末の結合材として有効利用できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。
【0006】
本発明の第4の目的は、減圧スクリューが磨耗しても複合固形燃料の成形を妨げることがなく、また減圧スクリューの交換時の作業性を向上できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。
本発明の第5の目的は、スクリューフィーダによる第2混合物の押込み圧力を常に最適な値に保つことにより、高品質の複合固形燃料を連続製造できる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。
本発明の第6の目的は、第1又は第2混合物中に含まれる空気を成形用ホッパ内から素早く排出でき、この排出された空気に含まれる第2混合物を捕集して第2混合機に戻すことができる、複合固形燃料の製造装置を提供することにある。
【0007】
【0008】
【0009】
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、図2及び図3に示すように、水分率2〜15重量%の石炭粉末12に含まれる硫黄分を乾式選炭法である誘電体分離法により分離除去する乾式選炭装置13と、石炭粉末12にこの石炭粉末12に含まれる燃焼性硫黄の1〜2重量当量の脱硫剤粉末14を混合して第1混合物を調製する第1混合機21と、第1混合物21に発熱量が3000kcal/kg以上であって水分率2〜20重量%の植物系高分子有機物粉末16を5〜45重量%混合して第2混合物32を調製する第2混合機22と、第2混合物32を貯留する成形用ホッパ17と、成形用ホッパ17に回転可能に収容され成形用ホッパ17内の第2混合物32を成形用ホッパ17の下方に圧送するスクリューフィーダ18と、成形用ホッパ17の下方に配設され外周面に多数の凹部23b,24bが整列して形成されかつ外周面が互いに圧接された状態で互いに反対方向に回転してスクリューフィーダ18により圧送された第2混合物32を圧縮成形する一対のロール23,24とを備えた複合固形燃料の製造装置であって、スクリューフィーダ18の先端に一対のロール23,24の圧接部に向う減圧スクリュー52が突設され、減圧スクリュー52の羽根52aの捩り方向がスクリューフィーダ18の羽根18aの捩り方向と逆向きに形成されたことを特徴とする。
【0011】
この請求項1に記載された複合固形燃料の製造装置では、水を用いない乾式選炭装置13を用いて、乾燥した石炭粉末12を高電圧かつ微弱電流にて作られた電界中に通すので、この石炭粉末12に含まれる硫黄分の大部分と灰分が分離除去される。この硫黄分の大部分と灰分が分離除去された石炭粉末12aには第1混合機21により脱硫剤粉末14が添加・混合され、この第1混合物には第2混合機22により繊維質である植物系高分子有機物粉末16が添加・混合される。このため第一に石炭粉末12a及び脱硫剤粉末14が接触すること並びに脱硫剤粉末14により石炭粉末12aがコーティングされることが優先される。また第二に植物系高分子有機物粉末16及び脱硫剤粉末14が接触すること並びに脱硫剤粉末14により植物系高分子有機物粉末16がコーティングされることは殆どなくなる。この結果、脱硫剤粉末14の添加量を低減できるとともに、脱硫剤粉末14を有効利用できる。
【0012】
また成形用ホッパ17内でスクリューフィーダ18が回転して第2混合物32を一対のロール23,24間に押込むときに、減圧スクリュー52がスクリューフィーダ18直下の第2混合物32に作用する押込み圧力を分散して均等にするので、密度の均一な高品質の複合固形燃料11を連続製造できる。また減圧スクリュー52が磨耗しても、この減圧スクリュー52が複合固形燃料11の成形に支障をきたすことはなく、また減圧スクリュー52を交換するときには、この減圧スクリュー52を取外して交換するだけで済むので、その交換作業性を向上できる。
なお、脱硫剤粉末14の混合量に用いた「1重量当量」とは、石炭に含まれる燃焼性硫黄1重量割合に対し、燃焼時その硫黄を灰中に固定化反応できる脱硫剤粉末の理論的必要量をいい、実際の脱硫剤粉末の混合量は1重量当量以上必要とされる。
【0013】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明であって、更に図2及び図3に示すように、スクリューフィーダ18がフィーダ用モータ51により駆動され、一対のロール23,24を支持する一対の回転軸23a,24aのうち一方の回転軸23aがシリンダにより他方の回転軸24aに向って所定の圧力で圧接され、一対の回転軸23a,24aの軸間距離が距離センサにより検出され、距離センサの検出出力に基づいてコントローラがフィーダ用モータ51の回転速度を制御するように構成されたことを特徴とする。
この請求項2に記載された複合固形燃料の製造装置では、距離センサが一対の回転軸23a,24aの軸間距離を検出し、この距離センサの検出出力に基づいてコントローラがフィーダ用モータ51の回転速度、即ちスクリューフィーダ18の回転速度を制御するので、スクリューフィーダ18により第2混合物32の押込み圧力を常に最適な値に保つことができる。
【0014】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明であって、更に図2に示すように、第2混合機22内の第2混合物32が搬送機により搬送されて成形用ホッパ17に貯留され、一端が成形用ホッパ17に接続された脱気パイプ53の他端が集塵機56を介して大気に開放され、更に集塵機56で捕集された第2混合物32が第2混合機22に戻されるように構成されたことを特徴とする。
この請求項3に記載された複合固形燃料の製造装置では、成形用ホッパ17内に第2混合物32の中に含まれる大部分の空気は脱気パイプ53を通り、集塵機56でこの空気に含まれる第2混合物32が捕集された後に、大気に排出される。また集塵機56で捕集された第2混合物32は第2混合機22に戻されるので、第2混合物32の歩留りの低減を防止できる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1ないし3いずれか1項に記載の装置により製造された複合固形燃料である。
これら請求項4に記載された複合固形燃料を燃焼すると、この複合固形燃料の石炭粉末中に残存する硫黄分と脱硫剤粉末とが反応して、硫黄分が灰中に石膏などとして残るため、SOXの発生を低減できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図3に示すように、複合固形燃料11の製造装置は、石炭粉末12に含まれる硫黄分等の不純物を誘電体分離法により分離除去する乾式選炭装置13と、大部分の硫黄分等の不純物が分離除去された石炭粉末12a(後述する所定割合以上の炭質分を含む粉末)に脱硫剤粉末14を混合して第1混合物を調製する第1混合機21と、第1混合物に植物系高分子有機物粉末16を混合して第2混合物32を調製する第2混合機22と、第2混合物32を貯留する成形用ホッパ17と、この成形用ホッパ17に回転可能に収容されたスクリューフィーダ18と、成形用ホッパ17の下方に配設された一対のロール23,24とを備える。上記石炭粉末12は、炭質分(可燃成分)と不純物(磁性体、灰分、硫黄分、廃石、黄鉄鉱など)とが混在した石炭原料を磁性体除去装置28、乾燥装置26、粉砕装置27及び篩(ふるい)29にこの順に通すことにより製造される(図1)。この石炭粉末12の水分率は2〜15重量%、好ましくは3〜7重量%である。石炭粉末12の水分率を2〜15重量%に限定したのは、2重量%未満では乾燥コストが増大するとともに飛散による歩留りが低下する不具合があり、15重量%を越えると水分過多により石炭粉末が装置に付着するとともに成形後の強度が低下する不具合があるからである。
【0017】
またこの実施の形態では、上記石炭粉末12のうち所定割合以上の炭質分を含む粉末12a(炭質分を多く含む粉末)はプラスに帯電するか或いは全く帯電せず、所定割合未満の炭質分を含む粉末12b(灰分、硫黄分、廃石、黄鉄鉱等の不純物を多く含む粉末)はマイナスに帯電するものとする。上記篩29により、この実施の形態では、2.0〜0.1mmの範囲の粒径の石炭粉末12と、0.1以下の粒径の石炭粉末12に分級される。ここで石炭粉末12の粒径の下限値を0.1mmに限定したのは、粉塵爆発(石炭の粉塵による爆発)を阻止するためであり、石炭粉末12の粒径の上限値を2.0mmに限定したのは、この粒径が複合固形燃料11として固形化可能な最大粒径であり、またこの粒径より大きくすると石炭原料の粒子中に複数の鉱物質が含まれてしまい、帯電による選炭性能が低下するためである。なお、篩により、2.000〜1.000mm、1.000〜0.500mm、0.500〜0.250mm、0.250〜0.125mm及び0.125mm未満の範囲の粒径の石炭粉末12にそれぞれ細かい範囲に分級してもよい。
【0018】
乾式選炭装置13は、上記篩29により分級された所定の粒径範囲の石炭粉末12を貯留する選炭用ホッパ33と、この選炭用ホッパ33から供給された石炭粉末12を搬送する選炭用フィーダ34と、この選炭用フィーダ34により搬送された石炭粉末12を誘電体分離法により所定割合以上の炭質分を含む粉末12aと所定割合未満の炭質分を含む粉末12bとに分離する静電セレクタ36とを有する(図1)。選炭用ホッパ33の円錐部外周面にはヒータ37が設けられ、選炭用ホッパ33の細径筒部外周面には高圧パルス発生装置(図示せず)で発生した高圧パルスを受ける帯電促進部材38が設けられる。ヒータ37は、選炭用ホッパ33内の石炭粉末12を加熱することにより、石炭粉末12のうち分極している石炭粉末12に焦電効果(分極している石炭粉末12の分極が大きくなってこの分極を打消す方向に上記分極している石炭粉末12の表面の電荷が高くなる現象)が現れ、これにより上記分極している石炭粉末12を帯電し易くするために設けられる。また帯電促進部材38は、高圧パルス発生装置で発生した高圧パルスを受けることにより、選炭用ホッパ33内の石炭粉末12に電子を照射して、或いはこの石炭粉末12から電子を奪って、帯電可能な石炭粉末12の帯電を促進するために設けられる。なお、選炭用フィーダ34はこの実施の形態では振動フィーダである。
【0019】
静電セレクタ36は、選炭用フィーダ34により搬送された石炭原料12を外周面に受ける回転可能なドラム状の第1電極41と、第1電極41の外周面から所定の距離だけ離れた位置に設けられ針状又は線状の第2電極42とからなる(図1)。第1電極41はSUS304、SS400等の鋼材により形成されるとともに接地され、第2電極42はSUS304、樹脂等により形成されるとともに直流電源43のプラス極に接続される。第2電極42には直流電流により+8〜+20kVの範囲の高電圧が印加される。また第1電極41はプラス極の第2電極42に近接して設けられているため、第1電極41には電子が集りマイナス極となる。
【0020】
針状の第2電極42は、図示しないが樹脂製のプレートに基端が固着されたSUS304製の多数の短い針金の先端を第1電極41の外周面に向って突設することにより構成され、0.1〜0.5mmの範囲の粒径の石炭粉末の選炭に適する。また線状の第2電極は、図示しないが第1電極41の円周方向に所定の間隔をあけて延びるSUS304製の一対のフレーム間に等間隔にSUS304製の複数のワイヤを架設することにより構成され、0.5〜2.0mmの範囲の粒径の石炭粉末の選炭に適する。従って、上記粒径の範囲に分級して針状の第2電極と線状の第2電極とを併用することが好ましい。第1電極41の下方には炭質分用バケット44が置かれ、第1電極41の下方から外れた側の炭質分用バケット44の隣には不純物用バケット46が置かれる。なお、図1の符号47は第1電極41の外周面から石炭原料を離脱させるブラシである。
【0021】
脱硫剤粉末14としては、平均粒径が0.01〜0.2mm、好ましくは0.02〜0.1mmである消石灰(Ca(OH)2)、生石灰(CaO)及び炭酸カルシウム(CaCO3)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の粉末が用いられる。これら3種の脱硫剤粉末において、純度の高い単一種の粉末はそれぞれ高価であるため、上記3種の脱硫剤粉末の混合体を用いるのが一般的である。複合固形燃料11を製造するために用いられる脱硫剤粉末として、上記3種の脱硫剤粉末の混合体の使用は、次の3つの特徴を有するため、適切な混合割合で使用する限り何ら支障はない。
▲1▼ 消石灰は、無機硫黄(特に黄鉄鉱)との反応に有効であり、複合固形燃料11を製造するために用いられる上記3種の脱硫剤粉末の中では脱硫効果が最も高い。
▲2▼ 生石灰は、石炭付着水分と容易に水和反応するため、この石炭付着水分を減少させる効果が大きい。
▲3▼ 炭酸カルシウムは、有機硫黄との反応性が良好である。
【0022】
上記脱硫剤粉末14の添加割合は、石炭粉末に含まれる燃焼性硫黄に対し、燃焼時その硫黄を灰中に固定化反応できる脱硫剤粉末の理論的必要量以上、即ち1〜2重量当量、好ましくは1.2〜1.5重量当量である。また植物系高分子有機物粉末16としては、発熱量が3000kcal/kg以上、好ましくは4000〜4500kcal/kgであって、水分率が2〜20重量%、好ましくは5〜10重量%である産業廃棄物(農林産廃棄物、未利用植物及び植物性繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上の産業廃棄物)が用いられる。例えば、植物(オガ屑、樹皮などの木質廃材、バガス(サトウキビの絞り粕)、ビートパルプ、籾殻、稲藁、綿実油の絞り粕など)を乾燥・粉砕した粉末のみならず、段ボール紙や建築廃材を乾燥・粉砕した粉末が挙げられる。この植物系高分子有機物粉末16の添加割合は第2混合物32に対して5〜45重量%、好ましくは10〜25重量%であり、その平均粒径は0.2〜5mm、好ましくは1〜3mmである。
【0023】
なお、脱硫剤粉末14の平均粒径を0.01〜0.2mmの範囲に限定したのは、0.01mm未満では混合中に飛散する不具合があり、0.2mmを越えると複合固形燃料の成形不良や石炭粉末からの脱硫率の低下を招く不具合があるからである。脱硫剤粉末14の添加量を、石炭粉末12に含まれる燃焼性硫黄に対して1〜2重量当量の範囲に限定したのは、1重量当量未満では脱硫及び硫黄の固定化反応が完了せず不十分となる不具合があり、2重量当量を越えると燃料中に灰分が増加するとともにコストが増大する不具合があるからである。
【0024】
植物系高分子有機物粉末16の発熱量を3000kcal/kg以上に限定したのは、3000kcal/kg未満では自己継続燃焼が困難であるため助燃材として有効でないからである。また植物系高分子有機物粉末16の水分率を2〜20重量%に限定したのは、2重量%未満では乾燥コストが増大する不具合があり、20重量%を越えると水分過多となり低位発熱量が低下するとともに成形後の強度が不足する不具合があるからである。植物系高分子有機物粉末16の添加量を5〜45重量%の範囲に限定したのは、5重量%未満では成形後の強度が不足するとともに未燃分が過多となる不具合があり、45重量%を越えると成形後の強度が不足するとともに成形不良が発生する不具合があるからである。更に植物系高分子有機物粉末16の平均粒径を1〜5mmの範囲に限定したのは、1mm未満では設備費が増大するとともに成形後の強度が不足する不具合があり、5mmを越えると成形後の強度が不足する不具合があるからである。
【0025】
一方、スクリューフィーダ18はフィーダ用モータ51(図1)により駆動され、成形用ホッパ17内の第2混合物32を成形用ホッパ17の下方に圧送するように構成される(図2及び図3)。一対のロール23,24は一対の回転軸23a,24aによりそれぞれ支持される。一方の回転軸23aは一方のロール23を回転可能に支持する従動軸であるとともに、油圧シリンダ(図示せず)により他方の回転軸24aに向って所定の圧力で圧接される。他方の回転軸24aは軸受(図示せず)により回転可能に支持されかつロール用モータ(図示せず)により駆動される駆動軸であり、他方のロール24は他方の回転軸24aに固定される。
【0026】
上記一対のロール23,24の外周面には多数の凹部23b,24bがそれぞれ整列して形成され、これらのロール23,24の外周面が互いに圧接された状態で互いに反対方向に回転することにより、スクリューフィーダ18にて圧送された第2混合物32が圧縮成形されるように構成される。またスクリューフィーダ18の先端(下端)には、一対のロール23,24の圧接部に向う減圧スクリュー52が突設される。この減圧スクリュー52の羽根52aの捩り方向はスクリューフィーダ18の羽根18aの捩り方向と逆向きに形成される。更に一対の回転軸23a,24aの軸間距離は距離センサ(図示せず)により検出される。この距離センサの検出出力はコントローラ(図示せず)の制御入力に接続され、コントローラの制御出力はフィーダ用モータ51に接続される。
【0027】
図1に戻って、第1混合物は搬送機(図示せず)により第1混合機21から第2混合機22に搬送され、第2混合物32は搬送機(図示せず)により第2混合機22から成形用ホッパ17に搬送される。ここで第1及び第2混合機21,22の中で、又は混合機から搬送機への乗移り時に、或いは搬送機から混合機への乗移り時に、第1及び第2混合物中には必ず空気が混入される。成形用ホッパ17の上端には脱気パイプ53の一端が接続され、この脱気パイプ53の他端は脱気用ブロア54の吸入口に接続され、その吐出口は大気に開放される。また脱気パイプ53には集塵機56が設けられ、集塵機56で捕集された第2混合物32は第1搬送路61を通って第1搬送機71により第2混合機22に戻されるように構成される。
【0028】
更に一対のロール23,24の下方に一端が位置するようにベルトコンベヤ57が設けられ、ベルトコンベヤ57の他端には開口が網58aにより覆われた箱状の粉末分離器58が設けられる。この網58aの目開きは複合固形燃料11の直径より小さく形成される。粉末分離器58に貯まった第2混合物32は第2搬送路62を通って第2搬送機72により第2混合機22に戻されるように構成される。図1の符号63及び64は浮遊する第2混合物32を捕集するフードであり、これらのフード63,64は脱気パイプ53に接続される。また図1の符号55は脱気パイプ53を通る空気の流量を調整するために設けられたダンパである。更に図1の符号81及び82は細かい第2混合物にバインダ(廃糖密など)を混合して約1mmの粒径に造粒する予備造粒装置である。
【0029】
このように構成された装置による複合固形燃料11の製造方法を図1〜図7に基づいて説明する。
図4に示すように、石炭原料の処理・貯留工程において処理・貯留された石炭粉末と、脱硫剤貯留工程において貯留された脱硫剤粉末と、植物系高分子有機物の処理・貯留工程において処理・貯留された植物系高分子有機物粉末と、集塵・リサイクル工程において集められた石炭粉末とを混合・成形工程に供給し、この混合・成形工程において、上記石炭原料、脱硫剤粉末及び植物系高分子有機物粉末を混合・成形することにより、複合固形燃料(製品)が製造される。
【0030】
具体的には、先ず図1及び図5に示すように、炭質分と不純物とが混在した石炭原料中の磁性体を磁性体除去装置28で除去した後に、乾燥装置26で乾燥し、粉砕装置27で粉砕し、更に篩29にかけることにより2.0〜0.1mmの範囲の粒径の石炭粉末12と、0.1mm以下の石炭粉末12に分級する。次いで2.0〜0.1mmの範囲の粒径の石炭粉末12を選炭用ホッパ33に供給する。このとき石炭粉末12は互いに摩擦し合って、帯電し易い石炭粉末12はそれらの極性に応じてプラス又はマイナスにそれぞれ帯電する。なお、0.1mm以下の石炭粉末12は予備造粒装置81により約1mmの粒径に造粒された後に、第2混合機22に供給される。
【0031】
この第1電極41の外周面に供給された石炭粉末12のうちプラスに帯電した石炭粉末12a(所定割合以上の炭質分を含む粉末)は、第1電極41とのクーロン力により第1電極41(マイナス極)の外周面に付着したまま第1電極41の下端まで移動してブラシ47により第1電極41の外周面から引き剥がされ、炭質分用バケット44に収容される。また第1電極41の外周面に供給された石炭粉末12のうち帯電しない石炭粉末12a(所定割合以上の炭質分を含む粉末)は、第1電極41の外周面の側面に達したときにその自重により第1電極41の外周面から離脱し、炭質分用バケット44に収容される。更に第1電極41の外周面に供給された石炭粉末12のうちマイナスに帯電した石炭粉末12b(所定割合未満の炭質分を含む粉末)は、第2電極42とのクーロン力により第1電極41の外周面から所定の距離だけ飛出して不純物用バケット46に収容される。ここで、篩29で分級された石炭粉末12の燃焼性硫黄分の含有率は5〜6重量%であったのに対し、炭質分用バケット44に収容された石炭粉末12aの硫黄分の含有率は1〜2重量%と極めて少なくなり、石炭粉末12中の大部分の硫黄分が灰分とともに上記乾式選炭装置13により除去される。
【0032】
一方、図6に示すように、植物系高分子有機物16(農林産廃棄物、未利用植物及び植物性繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上の産業廃棄物)中の磁性体を磁性体除去装置16aで除去した後に、乾燥装置16bで乾燥し、粉砕装置16cで粉砕して有機物用ホッパ16dに貯留する。
【0033】
次に図1及び図7に示すように、上記炭質分用バケット44に収容された石炭粉末12aを脱硫剤粉末14とともに第1混合機21に供給して第1混合物を調製した後に、この第1混合物を上記植物系高分子有機物粉末16とともに第2混合機22に供給して第2混合物32を調製する。このため第一に石炭粉末12a及び脱硫剤粉末14が接触すること並びに脱硫剤粉末14により石炭粉末12aがコーティングされることが優先される。また第二に植物系高分子有機物粉末16及び脱硫剤粉末14が接触すること並びに脱硫剤粉末14により植物系高分子有機物粉末16がコーティングされることは殆どない。この結果、脱硫剤粉末14の添加量を低減できるとともに、脱硫剤粉末14を有効利用でき、燃料としての品質を向上できる。また植物系高分子有機物粉末16として、農林産廃棄物、未利用植物及び植物性繊維からなる群より選ばれた1種又は2種以上の産業廃棄物(植物のみならず、段ボール紙や建築廃材等の廃品)を乾燥・粉砕した粉末を用いることにより、これらの粉末を石炭粉末12aの結合材として有効に利用できる。
【0034】
上記第2混合物32が成形用ホッパ17に供給されると、第2混合物32はスクリューフィーダ18により一対のロール23,24間に押込まれる(図2及び図3)。このとき減圧スクリュー52がスクリューフィーダ18直下の第2混合物32に作用する押込み圧力を分散して均等にするので、密度の均一な高品質の複合固形燃料11を製造できる。ここで成形用ホッパ17内の第2混合物32中に含まれる空気は脱気パイプ53を通り、集塵機56でこの空気に含まれる第2混合物32が捕集された後に、大気に排出される(図1及び図7)。この結果、第2混合物32中に含まれる大部分の空気を成形用ホッパ17内から素早く排出できるので、この空気が成形用ホッパ17内における第2混合物32のスクリューフィーダ18による押込み工程の邪魔をすることはない。
【0035】
一方、複合固形燃料11を搬送するベルトコンベヤ57上には、複合固形燃料11とともに粉末状の第2混合物32も落下するけれども、ベルトコンベヤ57近傍を浮遊する粉末状の第2混合物32はフード63から第3戻り管73を通って集塵機56で捕集される(図1)。またベルトコンベヤ57上の複合固形燃料11及び粉末状の第2混合物32は粉末分離器58に供給され、この粉末分離器58により粉末状の第2混合物32は複合固形燃料11から分離された後に、第2搬送機72により第2搬送路62を通って第2混合機22に戻される。更に複合固形燃料11が粉末分離器58から排出されると、この複合固形燃料11に付着していた粉末状の第2混合物32は離脱して浮遊し、フード64から第4戻り管74を通って集塵機56で捕集される。上記集塵機56で捕集された第2混合物32は第1搬送機71により第1搬送路61を通り、かつ予備造粒装置82により約1mmの粒径に造粒された後に第2混合機22に戻される。この結果、第2混合物32の歩留りの低減を防止できる。
【0036】
更にスクリューフィーダ18の回転により一対のロール23,24間に押込まれる第2混合物32の押込み圧力はその水分量や粒径の相違により微妙に変化する(図2及び図3)。即ち、成形用ホッパ17内の第2混合物32の押込み圧力が変化すると、フィーダ用モータ51(図1)の負荷が変動するとともに、一対のロール23,24を支持する一対の回転軸23a,24aの軸間距離も変化する(図1〜図3)。コントローラはこの軸間距離を検出する距離センサの検出出力に基づいてフィーダ用モータ51の回転速度を制御する。具体的には、コントローラは、第2混合物32の押込み圧力が増大して上記軸間距離が大きくなると、フィーダ用モータ51の回転速度を下げることにより押込み圧力を低下させ、第2混合物32の押込み圧力が低下して上記軸間距離が小さくなると、フィーダ用モータ51の回転速度を上げることにより押込み圧力を増大させる。この結果、スクリューフィーダ18(図2及び図3)による第2混合物32の押込み圧力を常に最適な値に保つことができるので、高品質の複合固形燃料11を連続製造できる。
【0037】
なお、長年の使用により減圧スクリュー52が磨耗しても、この減圧スクリュー52が複合固形燃料11の成形に支障をきたすことはなく、また減圧スクリュー52を交換するときには、この減圧スクリュー52を取外して交換するだけで済むので、その交換作業性を向上できる。
このように製造された複合固形燃料11を燃焼すると、この燃料11の石炭粉末中に残存する硫黄分と脱硫剤粉末とが反応して、硫黄分が灰中に石膏などとして残るため、SOXの発生を効率良く低減できる。
【0038】
【0039】
【0040】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、成形用ホッパ内に回転可能に収容されたスクリューフィーダの先端に一対のロールの圧接部に向う減圧スクリューを突設し、この減圧スクリューの羽根の捩り方向をスクリューフィーダの羽根の捩り方向と逆向きに形成したので、成形用ホッパ内でスクリューフィーダが回転して第2混合物を一対のロール間に押込むときに、減圧スクリューがスクリューフィーダ直下の第2混合物に作用する押込み圧力を分散して均等にする。この結果、密度の均一な高品質の複合固形燃料を製造できる。一方、減圧スクリューが磨耗しても、この減圧スクリューが複合固形燃料の成形に支障をきたすことはなく、また減圧スクリューを交換するときには、この減圧スクリューを取外して交換するだけで済むので、その交換作業性を向上できる。
また一対のロールを支持する一対の回転軸の軸間距離を距離センサにより検出し、この距離センサの検出出力に基づいてコントローラがフィーダ用モータの回転速度を制御するように構成すれば、スクリューフィーダの回転速度が制御されるので、スクリューフィーダにより第2混合物の押込み圧力を常に最適な値に保つことができる。この結果、高品質の複合固形燃料を連続製造できる。
【0041】
また第2混合機内の第2混合物を搬送機により搬送して成形用ホッパに貯留し、一端が成形用ホッパに接続された脱気パイプの他端を集塵機を介して大気に開放し、集塵機で捕集された第2混合物を第2混合機に戻すように構成すれば、成形用ホッパ内に第2混合物中に含まれる空気は脱気パイプを通り、集塵機でこの空気に含まれる第2混合物が捕集された後に、大気に排出される。この結果、第2混合物中に含まれる空気を成形用ホッパ内から素早く排出できるので、この空気が成形用ホッパ内における第2混合物のスクリューフィーダによる押込み工程の邪魔をすることはなく、集塵機で捕集された第2混合物は第2混合機に戻されるので、第2混合物の歩留りの低減を防止できる。
更に上記装置を用いて製造された複合固形燃料を燃焼すると、この複合固形燃料の石炭粉末中に残存する硫黄分と脱硫剤粉末とが反応して、硫黄分が灰中に石膏などとして残るため、SOXの発生を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明実施形態の複合固形燃料の製造装置を示す構成図。
【図2】
図1のA部拡大断面図。
【図3】
図2のB-B線断面図。
【図4】
その複合固形燃料の製造方法の全体の工程を示すブロック線図。
【図5】
その複合固形燃料の製造方法のうち石炭原料の処理・貯留工程を示すブロック線図。
【図6】
その複合固形燃料の製造方法のうち植物系高分子有機物の処理・貯留工程を示すブロック線図。
【図7】
その複合固形燃料の製造方法のうち混合・成形工程及び集塵・リサイクル工程を示すブロック線図。
【符号の説明】
11 複合固形燃料
12 石炭粉末
13 乾式選炭装置
14 脱硫剤粉末
16 植物系高分子有機物粉末
17 成形用ホッパ
18 スクリューフィーダ
18a,52a 羽根
21 第1混合機
22 第2混合機
23,24 ロール
23a,24a 回転軸
23b,24b 凹部
32 第2混合物
51 フィーダ用モータ
52 減圧スクリュー
53 脱気パイプ
56 集塵機
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-27 
出願番号 特願2001-331802(P2001-331802)
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C10L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉住 和之  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 佐藤 修
原田 隆興
登録日 2003-08-22 
登録番号 特許第3464208号(P3464208)
権利者 ユニレックス株式会社
発明の名称 複合固形燃料の製造装置  
代理人 須田 正義  
代理人 須田 正義  

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