ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 C08G |
---|---|
管理番号 | 1121173 |
異議申立番号 | 異議2003-72754 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1995-04-18 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-11-11 |
確定日 | 2005-07-20 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3404825号「2-ヒドロキシカルボン酸系オリゴマーの製造方法」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3404825号の請求項1ないし4に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3404825号に係る出願は、平成5年10月8日に出願され、平成15年3月7日に特許権の設定登録がなされ、その後、その請求項1〜4に係る特許について、特許異議申立人金子しの(以下、「申立人」という。)より特許異議の申立がなされ、平成16年5月13日付の取消理由が通知され、その指定期間内に特許異議意見書が提出されたものである。 2.本件発明 本件請求項1〜4に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明4」という。)は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された以下の事項によって特定されるとおりのものである。 「【請求項1】2-ヒドロキシカルボン酸を、分縮器を取り付けた反応装置を用い、脱水縮合することを特徴とする、重量平均分子量が500〜10000の2-ヒドロキシカルボン酸系オリゴマーの製造方法。 【請求項2】2-ヒドロキシカルボン酸が、乳酸であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。 【請求項3】分縮器が、クロロベンゼン/エチルベンゼン系による常圧での段数測定で、0.2段以上10段以下の充填塔であることを特徴とする請求項1記載の製造方法。 【請求項4】25〜400Torrの減圧下で、脱水することを特徴とする請求項1記載の製造方法。」 3.特許異議の申立についての判断 (1)取消理由の概要 取消理由の概要は、本件発明1〜4は、下記刊行物1〜3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反して特許がなされたというものである。 (2)各刊行物等の記載事項 (ア)刊行物1:特開昭61-111326号公報(甲第1号証) a.「本発明のポリ乳酸類の製造法において、原料として用いられる乳酸及び/又はグリコール酸としては、それらの低分子重合物を用いてもよいし、」(2頁右上欄16〜18行) b.「該低分子重合物…を製造する際…5〜6時間減圧下加熱反応させることにより水分を除去すればよい。このようにして、分子量約2000〜4000の低分子重合物…が容易に得られる。」(2頁左下欄8〜16行) c.「実施例 1. (乳酸単独重合) 85%乳酸水溶液 160g(乳酸として1.5mol)に…350〜30mmHgで段階的に6時間減圧加熱を行ない留出水を除去した。」(4頁左上欄2〜6行) (イ)刊行物2:嶋田吉英、仁木正夫著「プラスチック材料講座4 ポリエステル樹脂」46〜49頁、日刊工業新聞社、昭和36年6月15日発行(甲第2号証) d.「反応釜には原則として,…パーシャルコンデンサーの取付け口が付属している。」(46頁下から16〜14行) e.「還流コンデンサーまたはパーシャルコンデンサーは反応系物質の散逸を防止し,主としてグリコールと水を分離する役目を果たすものである.…そして水を反応系外に追い出し,グリコールを反応系に還流させるのである.」(46頁下から6〜3行) (ウ)刊行物3:特開昭61-221224号公報(甲第3号証) f.「主としてテレフタル酸からなるジカルボン酸と、主としてエチレングリコールからなるグリコールとを棚段精留塔を設けられた反応缶を用いてエステル化反応する…。」(特許請求の範囲第1項) g.「第1図は本発明の方法を示す一実施態様例の概略図である。…反応により発生する蒸気は配管3によって棚段精留塔4へ送られ、水…は塔頂より配管5よりコンデンサー6を経て抜出され、…また精留塔底の配管10よりエチレングリコールが抜出され、原料として再び使用される。」(3頁右上欄17行〜左下欄13行) h. (第1図) (3)特許法第29条第2項違反について (ア)本件発明1 刊行物1には、2-ヒドロキシカルボン酸である乳酸を原料として、350〜30mmHg、すなわち350〜30Torrの減圧下にて、留出水を除去しつつ、低分子重合物を合成すること(摘示事項c.)、低分子重合物の分子量は約2000〜4000であること(摘示事項b.)が記載されている。この分子量が重量平均分子量であるか否か明らかでないが、「約2000〜4000」との数値からみて、刊行物1に記載の低分子重合物の重量平均分子量は「500〜10000」の範囲を満たすものと解するのが相当である。 したがって、本件発明1と刊行物1に記載された発明とは、「2-ヒドロキシカルボン酸を脱水縮合する、重量平均分子量が500〜10000の2-ヒドロキシカルボン酸系オリゴマーの製造方法」で一致し、本件発明1は、該製造方法において「分縮器を取り付けた反応装置を用い」るのに対し、刊行物1に記載された発明は、反応工程にて留出水を除去することの記載はあるものの、この手段は明らかでないことで相違する。 この点に関し、刊行物2には、ポリエステルの合成反応において、反応系物質の散逸の防止を目的として、反応成分(グリコール)と水とを、「還流コンデンサーまたはパーシャルコンデンサー」を用いて分離し、反応成分を反応系に還流させること(摘示事項e.)、該コンデンサーは反応釜に付属させること(摘示事項d.)が記載されている。そして該コンデンサーは、その機能から見て分縮器に相当し、また、反応系物質の散逸の防止という作用により効率よく水のみを留去するものと認められる。刊行物2には2-ヒドロキシカルボン酸の重合に係る直接の記載はないものの、刊行物2に記載された発明はポリエステルの合成に係るものであることからみて、ポリエステルの一種であるポリヒドロキシカルボン酸の合成に係る刊行物1に記載された発明において、反応工程における留出水の除去手段として、刊行物2に記載されるように、「還流コンデンサーまたはパーシャルコンデンサー」、すなわち分縮器を反応装置に取り付けてみることは、当業者が容易になし得ることと認められ、またそうすることによる効果においても、格別のものは見いだせない。 また、刊行物3には、ポリエステルの合成反応において、反応により発生する蒸気を反応缶(反応装置)から棚段精留塔へ送り、原料であるエチレングリコールと水とを精留塔を用いて分離し、エチレングリコールを原料として再び使用すること(摘示事項g.及びh.)が記載されている。そして、棚段精留塔は分縮器に相当する。刊行物3には2-ヒドロキシカルボン酸の重合に係る直接の記載はないものの、刊行物3に記載された発明はポリエステルの合成に係るものであることからみて、ポリエステルの一種であるポリヒドロキシカルボン酸の合成に係る刊行物1に記載された発明において、反応工程における留出水の除去手段として、刊行物3に記載されるように、棚段精留塔、すなわち分縮器を反応装置に取り付けてみることは、当業者が容易になし得ることと認められ、またそうすることによる効果においても、格別のものは見いだせない。 よって、本件発明1は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、また、刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 (イ)本件発明2 本件発明2は、本件発明1における2-ヒドロキシカルボン酸を乳酸に限定するものであるが、刊行物1には、2-ヒドロキシカルボン酸である乳酸を原料として低分子重合物を合成すること(摘示事項c.)が記載されている。 よって、本件発明2は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、また、刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 (ウ)本件発明3 本件発明3は、本件発明1における分縮器を、クロロベンゼン/エチルベンゼン系による常圧での段数測定で、0.2段以上10段以下の充填塔に限定するものである。 しかしながら、「クロロベンゼン/エチルベンゼン系による常圧での段数測定で、0.2段以上10段以下」との段数設定が従来技術からかけ離れた特殊なものということはできず、そして、分縮器の段数をどの程度にするかは、その分離対象となる物質の分離性能を勘案して、当業者が試行錯誤し、適宜設定するものと認められる。 よって、本件発明3は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、また、刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 (エ)本件発明4 本件発明4は、本件発明1における脱水条件を、25〜400Torrに限定するものであるが、刊行物1には、350〜30mmHg、すなわち350〜30Torrの減圧下にて、低分子重合物を合成すること(摘示事項c.)が記載されている。 よって、本件発明4は、刊行物1及び2に記載された発明に基づいて、また、刊行物1及び3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本件発明1〜4は、本件出願前に頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、また、本件出願前に頒布された刊行物1及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本件発明1〜4についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-05-31 |
出願番号 | 特願平5-253019 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Z
(C08G)
|
最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 森川 聡 |
特許庁審判長 |
宮坂 初男 |
特許庁審判官 |
大熊 幸治 船岡 嘉彦 |
登録日 | 2003-03-07 |
登録番号 | 特許第3404825号(P3404825) |
権利者 | 大日本インキ化学工業株式会社 |
発明の名称 | 2-ヒドロキシカルボン酸系オリゴマーの製造方法 |
代理人 | 高橋 勝利 |