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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) H01C |
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管理番号 | 1121866 |
審判番号 | 無効2001-35083 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1987-11-12 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-02-28 |
確定日 | 2005-03-11 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1623720号「金属箔抵抗器」の特許無効審判事件についてされた平成14年 4月11日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成14年(行ケ)第0259号平成16年 7月 6日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第1623720号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本件特許第1623720号「金属箔抵抗器」は、昭和61年5月6日に特願昭61-102162号として特許出願され、平成2年11月13日に特公平2-52402号として出願公告され、平成3年11月18日に設定登録(発明の数1)がなされたものである。 これに対し、平成13年2月28日に請求人日本ビシェイ株式会社より、本件特許第1623720号を無効とする、との審決を求める本件審判の請求がなされ、平成13年6月18日付で被請求人(特許権者)アルファ・エレクトロニクス株式会社より、本件審判の請求は成り立たない、との審決を求める答弁書とともに訂正請求書が提出され、また平成13年9月4日付で請求人より弁駁書が提出され、さらに上申書(請求人平成13年11月22日付)が提出されたものである。 【2】訂正の適否についての判断 〔2-1〕訂正の要旨 被請求人(特許権者)は平成13年6月18日付け訂正請求において、以下のとおりの訂正を求めるものである。 (1)訂正事項a 願書添付の明細書第1頁第7〜8行(公告公報第1欄第4〜5行) 「他側面に密着し他端部が」とあるのを、特許請求の範囲の減縮を目的として、次のように訂正する。 「他側面にその一辺のほぼ全長に亘る幅で密着しこの一辺に直交する方向にのびて他端部が」 またこれに伴って、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合をとるため、願書添付の明細書第3頁第9行(公告公報第2欄第22行)の同一部分 「他側面に密着し他端部が」を次のように訂正する。 「他側面にその一辺のほぼ全長に亘る幅で密着しこの一辺に直交する方向にのびて他端部が」 (2)訂正事項b 願書添付の明細書第5頁第16行および第6頁第1行(公告公報第4欄第8行および第13行) 「抵抗器」とあるのを「抵抗器32」と訂正する。 (3)訂正事項c 願書添付の明細書第6頁第1〜2行(公告公報第4欄第13〜14行) 「半田32」とあるのを、「半田34」と訂正する。 (4)訂正事項d 第1図を添付した訂正図面の通り訂正する。 〔2-2〕訂正の適否について 上記訂正事項a〜dについて、以下に検討する。 上記訂正事項aの前段は、明細書の特許請求の範囲に記載された板状外部接続端子が基板の一辺のほぼ全長に亘る幅で基板に密着することを限定するものであり、この点は第1、2図に明確に記載されているものである。したがって、この訂正事項は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 同じく訂正事項aの後段は、前段の訂正に伴い発明の詳細な説明の記載を特許請求の範囲の記載と整合させるもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 上記訂正事項b〜dは、図面の符号の訂正に関するもので、訂正事項bは、第1図で符号「32」が重複しているためにその一方を「34」とするものであり、訂正事項c、dは、発明の詳細な説明中関連する箇所の符号を訂正するものである。これらの訂正は誤記の訂正を目的とするものである。 また、上記訂正事項a〜dは、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 よって、上記訂正事項a〜dは、特許法第136条第2項ただし書の規定に該当し、特許法第第126条第1項ただし書、及び同法同条第2項の規定に適合するものであるから、当該訂正を認める。 【3】本件発明 訂正請求に係る本件特許発明の要旨は特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。(以下「本件発明」という。) 「一側面に金属箔抵抗体が貼着された絶縁性基板を樹脂で外装した金属箔抵抗器において、 一端部が前記外装樹脂内で前記絶縁性基板の他側面にその一辺のほぼ全長に亘る幅で密着しこの一辺に直交する方向に伸びて他端部が前記外装樹脂外へ延出した複数の板状外部接続端子と、前記金属箔抵抗体をこれら外部接続端子に前記外装樹脂内で接続するリード線とを備えることを特徴とする金属箔抵抗器。」 【4】審判請求人の主張 〔4-1〕無効とすべき理由の概要 本件審判請求人は、以下の証拠方法を提出するとともに、本件発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件発明の特許は、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものである旨、主張する。 <証拠方法> ・甲第1号証:BULLETIN R-700b VISHAY V53&M53/55 SERIES BULK METAL VALUE ENGINEERED PRECISION RESISTORS(1974年11月発行) ・甲第2号証:特開昭59-200448号公報(昭和59(1984)年11月13日発行) ・甲第3号証:Bulletin R-800A Announcing Vishay’s new“Super-S”precision resister-Model S102C(1977年発行) ・甲第4号証:特開昭60-86849号公報(昭和60(1985)年5月16日発行) ・甲第5号証:特開昭60-160639号公報(昭和60(1985)年8月22日発行) ・甲第6号証:特開昭60-81877号公報(昭和60(1985)年5月9日発行) ・甲第7号証:実願昭47-14317号(実開昭48-90147号)のマイクロフィルム(昭和48(1973)年10月30日発行) ・甲第8号証:特開昭59-61154号公報(昭和59(1984)年4月7日発行) ・甲第9号証:特開昭59-208756号公報(昭和59(1984)年11月27日発行) ・甲第10号証:BULLETIN R-700d VISHAY V53 & M53/55 SERIES BULK METAL VALUE ENGINEERED PRECISION RESISTORS(1975年10月発行) ・甲第11号証:米国特許第3,718,883号明細書(1973年2月27日発行) 〔4-2〕具体的無効理由 本件審判請求人は、審判請求書等において、具体的理由を概要以下のとおり主張する。 〔4-2-1〕審判請求書における主張 (1)甲第1号証の記載 甲第1号証として示す「BULLETIN R-700b VISHAY V53&M53/55 SERIES BULK METAL VALUE ENGINEERED PRECISION RESISTORS(1974年11月発行)」は、本件特許発明の出願時である昭和61(1986)年5月6日以前に発行されたものである。 この甲第1号証における第3頁上段中央及び右欄には、「V SERIES」との表題の下に、以下に示す構成要件から成る金属箔抵抗器が記載されている。 (a)防湿用のエポキシ樹脂コーティング(Moisture-proof epoxy coating) (b)シリコーンゴムの封止材(Silicone Rubber encapsulation) (c)エッチング処理により形成された金属箔抵抗パターン(Etched bulk metal) (d)接合されたフレキシブル細線(Flexible welded ribbon leads) (e)セラミック基板(Ceramic substrate) (f)すずめっき銅リード(Tinned copper leads) 以上のような甲第1号証に記載された発明と本件特許発明の構成要件とを比較すると、以下のようになる。 まず、甲第1号証の第3頁上段中央に示すように、「セラミック基板」の一側面には、エッチング処理により「金属箔抵抗パターン」が形成されており、「シリコーンゴムの封止材」及び「防湿用のエポキシ樹脂コーティング」によって外装されている。従って、この点で甲第1号証の発明は、「一側面に金属箔抵抗体が貼着された絶縁性基板を樹脂で外装している」という本件特許発明と共通している。次に、甲第1号証の第3頁上段中央及び右欄に示すように、「複数のすずめっき銅リード」の一端部は、「シリコーンゴムの封止材」内で「セラミック基板」における「金属箔抵抗体」とは反対の側面に密着し、他端部が外装樹脂外へ延出している。従って、甲第1号証の発明は、「一端部が外装樹脂内で絶縁性基板の他側面に密着し、他端部が外装樹脂外へ延出している複数の板状外部接続端子」を備えている本件特許発明と、外部接続端子が「板状」であることを除いて共通している。さらに、甲第1号証の第3頁上段中央に示すように、「フレキシブルな細線」は、「金属箔抵抗体」と「すずめっき銅リード」とを、「シリコーンゴムの封止材」内において電気的に接続している。従って、この点で甲第1号証の発明は、「金属箔抵抗体を外部接続端子に外装樹脂内で接続するリード線」を備えた本件特許発明と共通している。 以上のことから、甲第1号証に記載された発明は、本件特許発明の外部接続端子に相当する「すずめっき銅リード」が、「板状」ではなく丸棒状の線材である点のみにおいて本件特許発明と相違し、その他の本件特許発明の構成要件は、甲第1号証に全て開示されている。 また、甲第1号証の第2頁第2段左欄第8行〜第10行(第2パラグラフ冒頭)には、甲第1号証の抵抗器の製造の際に、半導体と同様の技術を適用できる旨が、次のように記載されている。 半導体製造の際のプロセス技術と同様のバッチハンドリング技術を用いることによって、均一な品質を確保している(Batch handling,similar to the process used in semi-conductor manufacture,ensures uniformquality)。 (2)甲第2号証の記載 甲第2号証として示す特開昭59-200448号公報(昭和59(1984)年11月13日発行)は、本件特許発明の出願時である昭和61(1986)年5月6日以前に発行されたものである。 この甲第2号証の第1頁左欄第17行〜右欄第15行には、本件特許発明と同様の技術分野に属する樹脂封止型の半導体装置について、本件特許発明と同様の作用効果を示唆する以下のような記載が存在する。 樹脂封止された素子の内部発熱の熱放散経路としては、外部引出しリード線を介して熱放散される部分と、外部引出しリード線を介さずに封止樹脂より外部へ熱放散される部分がある。但し、封止樹脂は外部引出しリード線よりも熱伝導が悪いため、外部引出しリード線を介して熱放散される部分の方が支配的である。 また、甲第2号証の第2頁左欄第3行〜第18行、第3図及び第4図には、以下のような半導体装置が記載されている。 (a)一側面にペレット22を接着した金属板33が接着された絶縁体基板66を、封止樹脂11で外装した半導体装置。 (b)金属板33のペレット22と反対側の面に封止樹脂11より熱伝導の良好な絶縁体基板66を接着し、各々の外部引出しリード線44の先端を絶縁性基板66に接着。 (c)金属板33上のペレット22と、各々の外部引出しリード線44とを、封止樹脂11内部で接続するボンディング線55を備えた半導体装置。 以上のような甲第2号証に記載された発明と本件特許発明の構成要件とを比較すると、以下のようになる。まず、甲第2号証の発明は、金属板33の一側面に半導体のペレット22が接着されており、このペレット22の反対の面が絶縁体基板66に接着され、これが封止樹脂11で外装されている。従って、甲第2号証の発明は、「一側面に金属箔抵抗体が貼着された絶縁性基板を樹脂で外装している」という本件特許発明と、金属箔抵抗体に相当する部分がペレット22を接着した金属板33であることを除いて共通している。次に、甲第2号証の発明は、複数の外部引出しリード44の一端部が、封止樹脂11内において、絶縁体基板66の金属板33と反対側の側面に接着され、他端部が封止樹脂11外へ延出している。従って、この点で甲第2号証の発明は、「一端部が外装樹脂内で絶縁性基板の他側面に密着し、他端部が外装樹脂外へ延出している複数の板状外部接続端子」を備えている本件特許発明と共通している。さらに、甲第2号証の発明のボンディング線55は、ペレット22と外部引出しリード線44とを、封止樹脂11内部で接続している。従って、この点で甲第1号証の発明は、「金属箔抵抗体を外部接続端子に外装樹脂内で接続するリード線」を備えた本件特許発明と共通している。 以上のことから、甲第2号証に記載された発明と本件特許発明とは、絶縁性基板の上に、単に金属箔抵抗体が接着されているか、あるいは金属板に乗った半導体素子(ペレット22)が接着されているかだけの点において相違するのみであり、その他の本件特許発明の構成要件は、甲第2号証に全て開示されている。 特に、甲第2号証の第3図から明らかなように、外部引出しリード線44は、甲第1号証のような丸棒状の線材ではなく、比較的幅の広い板状の部材から構成されている。この板状の外部引出しリード線44は、半導体素子であるペレット22と外部引出しリード線44とを電気的に接続するボンディング線55等に比較して、はるかに幅が広い部材である。 しかも、甲第2号証の第2頁左欄第19行〜同頁右欄第5行には、この第3図および第4図に記載の半導体装置の作用効果として、次のような記載がある。 直流電力、あるいはパルス電力を印加した場合、熱放散経路は、金属板33、熱伝導の良好な絶縁体基板66、外部引出しリード線44となり封止樹脂11を通さずに熱を逃がすことができ、過渡熱、抵抗、さらには熱抵抗を小さくすることができる。 かかる作用効果は、内部素子の発熱を、絶縁性基板を介して板状外部接続端子から外部へ放散することによって、内部素子の性能を向上させることができるものであり、「抵抗チップの熱を外部接続端子を介して外部へ速やかに逃がすことができ、抵抗チップが過度に高温になるのを防止することができるため、抵抗値の精度を高めることが可能になる」という本件特許発明の作用効果と何ら異なることはない。 (3)本発明の出願当時の技術水準を立証するための証拠 (3-a)樹脂封止型の電子部品においては、外部接続端子からの熱放散が大きいことが周知であることを立証するための証拠 甲第3号証として示す Bulletin R-800A Announcing Vishay's new“Super-S”precision resister-Model S102C(1977年発行)、甲第4号証として示す特開昭60-86849号公報(昭和60(1985)年5月16日発行)、甲第5号証として示す特開昭60-160639号公報(昭和60(1985)年8月22日発行)、甲第6号証として示す特開昭60-81877号公報(昭和60(1985)年5月9日発行)は、本件特許発明の出願時である昭和61(1986)年5月6日以前に発行されたものである。 甲第3号証には、第1頁左下欄の下から第10行〜第6行及び右欄の図面に、「絶縁性基板と、放熱効率に優れた特性を持つリード部材との組み合わせが、S102C'S(抵抗器)の優れた耐湿性及び耐高温放置特性と、負荷寿命特性の向上の要因となっている(It is this combination of ceramic substrate and the more efficient heat-transfer characteristics of the lead assembly which is largely responsible for the S102C's excellent moisture resisitance,high-temperature-exposure resistance,and improved load-life capabilities.)。」と記載されている。 甲第4号証には、第2頁左上欄第12行〜同頁右上欄第2行に「樹脂封止された半導体装置では、チップからパッケージ外への熱の伝導は、封止材料である樹脂よりも、リードを構成する金属材料の熱伝導度の方がはるかに大きいので、放熱効率の良い樹脂封止型半導体装置をつくるには、この金属材料を有効に熱伝導に利用する必要がある。」と記載されている。さらに、この甲第4号証の第2頁左下欄第15行〜同頁右下欄第13行、第2図には、「チップ1で発生する熱が、セラミック平板であるチップ載置板6を通して、すみやかに板状のリード3にまで達し、金属材料から成るリード3によって効率良くパッケージ外に放出される。」と記載されている。 甲第5号証の第2頁左上欄第3行〜第12行には、「半導体チップからの熱放散経路としては、素子の固着されているリードより基板へ達する経路が考えられ、このリードからの熱放散が最も大きいと考えられる。」と記載されている。 甲第6号証の第2頁左上欄第1行〜第7行には、「リードフレームにボンディングされ、樹脂によって包まれた素子より発生した熱損失は、そのほとんどがリードフレームを伝わって外部に放散される。」と記載されている。 (3-b)外部接続端子の表面積が大きいほど、放熱効果が高いことが周知であることを示す証拠 甲第7号証として示す実願昭47-14317号(実開昭48-90147号)のマイクロフィルム(昭和48(1973)年10月30日発行)、甲第8号証として示す特開昭59-61154号公報(昭和59(1984)年4月7日発行)、甲第9号証として示す特開昭59-208756号公報(昭和59(1984)年11月27日発行)は、本件特許発明の出願時である昭和61(1986)年5月6日以前に発行されたものである。 甲第7号証には、第1頁第17行〜第2頁第5行、第2頁第10行〜第16行及び第1図において、「混成集積回路等の印刷回路基板に直接取付けるコンデンサ、抵抗等の電子部品は、一般にフェイスボンディングに適するようにリード線端子に代って板状端子2が用いられる」との記述がある。そして、「これらの板状端子2の金属は、一般に熱伝導性も良く、電子部品を印刷配線板上に装着取付けるときのハンダ付けの熱を、板状端子を通じて電子部品本体に伝え易い」ことが記載されている。 甲第8号証には、第2頁左下欄第5行〜第20行において、「放熱効果は、熱伝導率と表面積に比例するから、半導体素子をマウントしたダイステージのフレーム部の表面積を大とすることが望ましい。」と記載されている。 甲第9号証には、第3頁左上欄第15行〜第18行において、「より効果的にチップの発生熱を除去するためには、広い表面積を有する放熱フィンの一部を上記熱放散面に押し当てて、空冷により熱を放散させるのが好ましい。」と記載されている。 (4)甲第1号証及び甲第2号証から本件特許発明を容易に発明できる理由 (4-a)構成および作用効果の共通性 上述のように、甲第1号証には、外部接続端子が「板状」であること以外は、本件特許発明の構成要件が全て開示されている。そして、樹脂封止型の半導体装置の外部接続端子である外部引出しリード線を「板状」とした発明は、甲第2号証に開示されている。しかも、甲第2号証の「板状」の外部接続端子は、本件特許発明と同様に、絶縁性基板における素子と反対側の側面に接着された上で、樹脂封止されており、これにより「素子の発熱が絶縁性基板を通って外部接続端子から外部に放散される」という本件特許発明と何ら異なることのない作用効果を得ることができるものである。 (4-b)技術分野の共通性 これらの甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明は、その対象が金属箔抵抗器と半導体装置という差はあっても、いずれも樹脂封止型の電子部品に係るものであるから、この技術分野における通常の知識を有する者であれば、甲第2号証に記載された発明に基づいて、甲第1号証に記載された金属箔抵抗器の外部接続端子を「板状」とすることは容易に想到できるといえる。特に、甲第1号証の発明と甲第2号証の発明とは、外部接続端子を絶縁性基板における電子部品と反対側の側面に接着し、ワイヤボンディングによって電子部品と外部接続端子との電気的な接続を行なった後、樹脂で封止するという点で、ほぼ同様の製造工程、製造設備等を用いることができ、設計開発に携わる技術者を共通にしている。従って、相互に同一技術を適用可能であり、一方の電子部品に他方の電子部品の外部接続端子を適用するといった程度の技術の転用が慣習的になされていることは、周知の事実である。 (4-c)組み合わせに対する示唆の存在 特に着目すべき点は、甲第1号証の第2頁第2段左欄第8行〜第10行に、抵抗器の製造の際に半導体と同様の技術を適用できる旨が記載されており、このような示唆が与えられているのであるから、甲第1号証のような金属箔抵抗器の製造に当たって甲第2号証のような半導体装置の技術を適用することは当業者にとって容易になし得ることにすぎないことは明かである。 (4-d)解決すべき課題とその解決手段の周知性 本件特許発明の目的は、抵抗体及び基板を樹脂で外装したにもかかわらず、抵抗体および基板の放熱性が良好で、抵抗体自身の発熱による抵抗値変化を抑制し、広い使用条件に対して高い精度を得ることができる金属箔抵抗体を提供することにある。 しかし、樹脂封止した電子部品の内部で発生した熱の放散が、外部接続端子を介してなされることは、外部接続端子が金属であり、その端部が外部に露出している以上、当然のことであり、このことは、甲第3号証〜第6号証の記載からも周知の技術であるといえる。特に、甲第3号証及び甲第4号証に示すように、電子部品からの発熱を、絶縁性基板を介して外部接続端子から放散させるという発想も、本件特許発明の出願時において既に周知である。また、外部接続端子を板状とする等によって、金属製の部品の表面積を拡大すれば、放熱効果が高まることも周知の技術であり、このことは、甲第7号証〜第9号証の記載からも明らかである。 しかも、このような電子部品の放熱が外部接続端子からなされることは、半導体装置に限らず、本発明や甲第1号証の発明と同一技術分野である抵抗体においても知られていることは、甲第3号証の抵抗器や甲第7号証にも記載されている。以上のことから、絶縁性基板を介して抵抗体の発熱を外部接続端子から放散させるという課題解決のための手段も本発明の出願前から周知の技術であるから、甲第1号証の金属箔抵抗器における外部接続端子を「板状」として本件特許発明を構成することは、樹脂封止型の電子部品の製造に係る通常の知識を有する者にとっては何らの困難性も有しないといえる。 (5)結 論 上述の通り、甲第1号証に記載された金属箔抵抗体の外部接続端子を、甲第2号証に記載された電子部品に基づいて,「板状」とすることによって、本件特許発明と同一の金属箔抵抗器を構成することは、当業者にとって容易に成しうることである。 従って、本件特許発明は、その出願前に頒布された刊行物である甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものと認められ、特許法第29条第2項に該当するので、同法第123条第1項第2号により無効とすべきものである。 〔4-2-2〕答弁書に対する弁駁書における主張 本件審判の被請求人は、平成13年6月18日付の答弁書において、甲第1、3号証が「刊行物」か否か不明であること(理由1)、甲第1号証には「金属箔抵抗器」が明示的に開示されていないこと(理由2)、本件特許発明が解決する課題が斬新であること(理由3)、を理由として、本件審判請求は成り立たない旨を主張している。 しかし、被請求人のこの主張は、以下に説明するようにその妥当性を欠くものである。 …(略)… (4)結論 以上のことから、被請求人の訂正請求は認められず、訂正前の本件特許発明についても、審判請求書において述べた通り、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項に該当し、同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきである。 〔4-2-3〕上申書における主張 (1)上申書提出の趣旨 甲第1号証が、特許法第29条第1項第3号にいう「頒布された刊行物」に該当すること、甲第1号証には「金属箔抵抗器」が開示されていることを証明するために、これを補強する証拠を提出する。 (2)証拠の説明 甲第11号証として示す米国特許公報3,718,883(1973年2月27日発行)は、本件特許発明の出願時である昭和61(1986)年5月6日以前に発行されたものであり、特に、甲第1号証が頒布された時点として記載された1974年11月以前に、既に特許公報として発行されて公知となっていたものである。 また、この特許は、譲受人として、ビシェイ社の名称が含まれていることから、請求人であるビシエイ社の所有している特許である。 (3)頒布性について 甲第11号証に記載された金属箔抵抗器は、後述の対比に示すように、ビシェイ社の技術を宣伝する甲第1号証に記載された金属箔抵抗器と同様のものである。つまり、この金属箔抵抗器に関する特許は、ビシェイ社の持つ特徴的な技術であり、甲第1号証の刊行物によって顧客へ宣伝する際の前提として、当然に特許出願され、特許権が取得されていたものであることは明らかである。 従って、甲第1号証は、既に特許権が取得され公知技術となっているものと同内容の製品を販売するために用いられたものであり、単なる内部資料として秘匿すべき性質のものではなく、むしろビシェイ社の製品を積極的に宣伝するために広く頒布されたものと推定することが合理的といえる。 (4)金属箔抵抗器について 後述するように、甲第11号証は、ビシエイ社の金属箔抵抗器の技術について開示した文献である。特に、甲第11号証には、その第3欄第9行目以降に、「The bulk metal film applied to the substrate can be made from a suitable resistive alloy(後略).」と記載されているように、「bulk metal」の用語を、基板上に貼着された薄い金属箔抵抗体を示すものとして使用している。従って、この技術を背景に製造され、甲第1号証に開示された抵抗器は、金属箔抵抗器であることは明らかである。 (5)証拠の対比 甲第11号証のFig5A〜5C、Fig6A〜6Cには、 (a) 保護コーティング(protective coating)55、65 (b) 抵抗チップ(resistor chip)10 (c) フレキシブル細線(flexible leads)47、48、58、59 (d) 接続端子(connectors)50、52、62、63 によって構成された金属箔抵抗器が開示されている。 ここで、保護コーティング55、65は、第5欄第30行目〜第38行目に記載されているように、内側の保護コーティングとして、比較的柔らかいシリコーンゴムを選択することができ、最終的な(外側の)保護コーティングとして、比較的硬質の樹脂(例として、エポキシ樹脂を挙げている)を選択することができる旨が記載されている(For example, the inner protective coating can be selected from a relatively soft silicone rubber whereas the final protective coating can be made from a relatively inflexible rubber or plastic material which has desirable insulating and sealing properties, such as hard rubber, polyesters, and epoxy resins.)。 従って、保護コーティング55、65は、甲第1号証に記載された「シリコーンゴムの封止材」及び「防湿用のエポキシ樹脂コーティング」と同じである。 また、抵抗チップ10は、第3欄第6行目〜第24行目に記載されているように、セラミック基板とこの基板にエッチング処理により形成された金属箔抵抗体によって構成されている(The substrate for thin film resistors can be made of any suitable material such as a ceramic material(中略).The bulk metal film applied to the substrate can be made from a suitable resistive alloy(中略)Typically, the metallic film applied to the substrate is phtoetched to a pattern (後略).)。 従って、抵抗チップ10は、甲第1号証に記載された「セラミック基板」と「エッチング処理により形成された金属箔抵抗パターン」と同じである。 フレキシブル細線47、48、58、59と、接続端子50、52、62、63は、第4欄第29行目〜第35行目、第5欄第4行目〜第13行目に記載されているように、フレキシブル細線47、48、58、59の一端は抵抗チップ10の接続部に接合され、他端は接続端子50、52、62、63に接合され、接続端子50、52、62、63は、抵抗チップ10の背面(抵抗体と反対側の面)に貼着されている(As seen in FIGS.5A and 5B one end of flexible leads 47 and 48 is bonded to contact pads 44 and 45, respectively, on chip 10.The other ends of the flexible leads extend over back of chip 10 and are bonded to rigid electrical connectors 50 and 52, respectively, which are affixed to chip 10 by cement 53.(後略).)。 従って、フレキシブル細線47、48、58、59と、接続端子50、52、62、63は、甲第1号証に記載された「フレキシブル細線」、「すずめっき銅リード」と同じである。 以上のことから、甲第11号証には、甲第1号証と同様の金属箔抵抗器が開示されている。 【5】被請求人の主張 被請求人(特許権者)は、訂正請求書により特許請求の範囲を減縮するとともに、答弁書において、概要以下のとおり答弁している。 〔5-1〕答弁の概要 請求人の主張はいずれも理由の無いことが明らかであるから、本件特許発明は無効とすることはできない。 〔5-2〕答弁の具体的理由 <理由1> 請求人は、甲第1号証および甲第3号証をもって「金属箔抵抗器」が本件特許発明の出願前に公知であった刊行物に記載されている、と主張している。しかしこの甲第1、3号証は、特許法第29条第1項第3号にいう「刊行物」に該当するものか否か不明である。 甲第1、3号証は「VISHAY RESISTIVE SYSTEMS GROUP」の製品説明資料と思われるが、公に頒布されたものか否か不明である。「刊行物」というためには、「公衆に対し頒布により公開を目的として複製された文書・図書・写真等の情報伝達媒体」であることが必要であるが、甲第1、3号証がこのようなものであるとの証明は無く、単なる社内用の技術資料である可能性もある。 またこの甲第1号証の最終頁には、「5M11/74AN」「Printed in U.S.A.」と記されているが、これらをもって請求人のように「1974年11月発行」の意味に解する点にも納得できない。「5M」や「AN」の意味が不明であるにも拘わらず「11/74」の部分を抜き出して「1974年11月」と解釈する理由が不明であり、また「Printed」は通常「印刷」されたという意味であって、請求人が主張するように「発行」(publish)するという意味ではない。 <理由2> 甲第1号証には「金属箔抵抗器」が明示的に示されていない。甲第1号証には「Etched bulk metal」と記載されているが、これがなぜ「金属箔抵抗器」の意味に解されるのか不明である。「bulk metal」は単純に訳せば「大きなかさばった金属」というような意味であるが、これは「TM」の添字があることからVISHAY社の商標であると理解される。「bulk metal」の説明が無いにもかかわらずこれを「金属箔抵抗器」と解する理由が不明である。 従って甲第1号証をもって本件特許発明の対象である「金属箔抵抗器」がその出願前に刊行された「刊行物」に記載されている、という請求人の主張には理由が無い。 <理由3> 請求人は、甲第1号証に示された抵抗器(resistor)と本件特許発明との相違点は、前者のリードが「丸棒状の線材」であるのに対し後者のリードが「板状」である点のみである、と主張している(審判請求書第7頁第4〜7行等)。そしてこの相違点は、「板状」の外部引出しリードが記載された甲第2号証に基づいて容易に想到可能である、と主張している。しかしこの主張は、本件特許発明の対象である「金属箔抵抗器」の特殊性を無視したものであって、到底納得できない。 電力制御用の抵抗器では元々発熱量が大きいので従来より冷却フィンや冷却風を用いることがよく知られている。しかし計測装置などに用いる微少電流用の表面実装型の抵抗器では、その発熱量も極く僅かであるため従来問題としていなかった。また従来の抵抗器では抵抗値変化の許容範囲が大きかったため、僅かな温度変化があっても問題が無かったのである。 これに対し本件特許発明が対象とする「金属箔抵抗器」は、「基板の線膨張係数と抵抗体の抵抗温度係数とを適合させることにより」抵抗体の温度抵抗変化を、基板の線膨張を利用して抵抗体に応力を加えて相殺し、抵抗温度係数を小さくしたものであり(本件特許の出願公開公報第1頁左下欄第22行〜右下欄第4行、公告公報第1欄第22行〜第2欄第4行を参照)、抵抗温度係数は通常極めて小さく、数ppm/℃程度である。なお、通常の表面実装型の固定抵抗値では抵抗温度係数は数100ppm/℃程度である。 このように本件特許発明が対象とする金属箔抵抗器は極めて高い精度を必要とする超精密抵抗器であって、このために抵抗体自身の発熱による温度変化が問題になるのである。これに対し精度が低い従来の抵抗器ではこのような温度変化による抵抗値変化を問題にするものではないから、これを冷却するという技術思想さえも生じ得ないものである。 また本件特許発明の表面実装型の金属箔抵抗器は極めて小さいものであり、通常長さが3mm程度である。一般に表面積は外形寸法の2乗のオーダで変化すると考えられるから、このような微小部品ではその外形寸法が小さくなるのに伴って表面積は著しく小さくなる。このため表面の放熱面積が小さくなる。ここに抵抗体を樹脂封止した場合には表面の放熱が一層悪くなる。 このように本件発明は、樹脂封止した極めて小さい超精密抵抗器において初めて問題になる放熱性を上げるという特有な課題を解決するものである。このために本件発明ではリードを板状として絶縁基板にできるだけ広い面積で接触するように貼り付け、熱をこの板状のリードを通して外へ導くという着想を得たものである。 甲第2、4、5、6、8、9号証は、いずれも「半導体素子」のパッケージに関するものである。甲第7号証には「チップ状部品」の例としてコンデンサや抵抗が挙げられているが、この甲第7号証ははんだ付けの熱がチップ部品の内部素子を傷めるのを防ぐためにリードを細くして部品内に熱が入り難くしたものであり、抵抗素子の熱を外へ逃がすものではない。 従ってこれらの甲号証からは、従来より半導体素子では放熱が重要な問題であったことは理解できるが、樹脂封止した表面実装型の超精密抵抗器では放熱は問題となっていなかったことをこれらの甲号証は図らずも明らかにすることになった。このように放熱が問題とならなかった部品(金属箔抵抗器)において放熱を向上させるという本件発明の斬新性が、これらの甲号証によって立証されることになった、というべきである。 【6】当審の判断 〔6-1〕本件発明 本件発明は、当審における訂正請求により前記【2】のとおり訂正が認められ、その訂正された発明(本件発明)は、訂正明細書の特許請求の範囲第1項に記載された前記【3】記載のとおりである。 〔6-2〕甲各号証の記載乃至開示事項 (1)甲第1号証 甲第1号証における第3頁上段中央及び右欄には、「V SERIES」との表題の下に、以下に示す形状と構成(DESIGN AND COSTRUCTION)からなるものが記載乃至開示されている。 (a)防湿用のエポキシ樹脂コーティング(Moisture-proof epoxy coating) (b)シリコーンゴムの封止材(Silicone Rubber encapsulation) (c)エッチング処理により形成されたバルクメタル(Etched bulk metal) (d)接合されたフレキシブル細線(Flexible welded ribbon leads) (e)セラミック基板(Ceramic substrate) (f)すずめっき銅リード(Tinned copper leads) また、甲第1号証の第2頁第2段左欄第8行〜第10行(第2パラグラフ冒頭)には、甲第1号証の抵抗器の製造の際に、半導体と同様の技術を適用できる旨が、次のように記載されている。 半導体製造の際のプロセス技術と同様のバッチハンドリング技術を用いることによって、均一な品質を確保している(Batch handling, similar to the process used in semi-conductor manufacture, ensures uniform quality.)。 (2)甲第2号証 甲第2号証の第2頁左欄第3行〜第18行、第3図及び第4図には、以下のような半導体装置が記載乃至開示されている。 (a)一面に半導体素子(ペレット)22を接着した金属板33が接着された絶縁体基板66を、封止樹脂11で外装した半導体装置。 (b)金属板33の半導体素子(ペレット)22と反対側の面に封止樹脂11より熱伝導の良好な絶縁体基板66を接着し、各々の板状の外部引出しリード線44の先端を絶縁性基板66に接着すること。 (c)金属板33上の半導体素子(ペレット)22と、各々の板状の外部引出しリード線44とを、封止樹脂11内部で接続するボンディング線55を備えた半導体装置。 (3)甲第3号証 甲第3号証には、第1頁左下欄の下から第10行〜第6行及び右欄の図面に、「絶縁性基板と、放熱効率に優れた特性を持つリード部材との組み合わせが、S 102C’s(抵抗器)の優れた耐湿性及び耐高温放置特性と、負荷寿命特性の向上の要因となっている(It is this combination of ceramic substrate and the more efficient heat-transfer characteristics of the lead assembly which is largely responsible for the S102C's excellent moisture resisitance, high-temperature-exposure resistance, and improved load-life capabilities.)。」と記載されている。 (4)甲第4号証 甲第4号証には、第2頁左上欄第12行〜同頁右上欄第2行に、「樹脂封止された半導体装置では、チップからパッケージ外への熱の伝導は、封止材料である樹脂よりも、リードを構成する金属材料の熱伝導度の方がはるかに大きいので、放熱効率の良い樹脂封止型半導体装置をつくるには、この金属材料を有効に熱伝導に利用する必要がある。」との主旨の記載が認められる。 さらに、この甲第4号証の第2頁左下欄第15行〜同頁右下欄第13行、第2図には、「チップ1で発生する熱が、セラミック平板であるチップ載置板6を通して、すみやかに板状のリード3にまで達し、金属材料から成るリード3によって効率良くパッケージ外に放出される。」との主旨の記載が認められる。 (5)甲第5号証 甲第5号証の第2頁左上欄第3行〜第12行には、「半導体チップからの熱放散経路としては、素子の固着されているリードより基板へ達する経路が考えられ、このリードからの熱放散が最も大きいと考えられる。」との主旨の記載が認められる。 (6)甲第6号証 甲第6号証の第2頁左上欄第1行〜第7行には、「リードフレームにボンディングされ、樹脂によって包まれた素子より発生した熱損失は、そのほとんどがリードフレームを伝わって外部に放散される。」との主旨の記載が認められる。 (7)甲第7号証 甲第7号証には、第1頁第17行〜第2頁第5行、第2頁第10行〜第16行及び第1図において、「混成集積回路等の印刷回路基板に直接取付けるコンデンサ、抵抗等の電子部品は、一般にフェイスボンディングに適するようにリード線端子に代って板状端子2が用いられる」「これらの板状端子2の金属は、一般に熱伝導性も良く、電子部品を印刷配線板上に装着取付けるときのハンダ付けの熱を、板状端子を通じて電子部品本体に伝え易い」との主旨の記載が認められる。そして、第3頁第11行〜第13行には「この欠点即ち端子(注;「板状端子2」のこと)からの熱伝導を避けることは、端子を細くすることで或る程度小さくすることはできる」との記述がある。 (8)甲第8号証 甲第8号証には、第2頁左下欄第5行〜第20行において、「放熱効果は、熱伝導率と表面積に比例するから、半導体素子をマウントしたダイステージのフレーム部の表面積を大とすることが望ましい。」との主旨の記載が認められる。 (9)甲第9号証 甲第9号証には、第3頁左上欄第15行〜第18行において、「より効果的にチップ(15)の発生熱を除去するためには、広い表面積を有する放熱フィンの一部を上記熱放散面(12a)に押し当てて空冷により熱を放散させるのが好ましい。」と記載されている。 〔6-3〕対比・判断 (A)刊行物の公知性(頒布性)について はじめに、被請求人(特許権者)は、甲第1、3号証について、その公知性を争うので、まずこの点について検討する。 (A-1)甲第1、3号証の作成時期及び頒布の有無について (i)作成時期について、甲第1号証は、Vishay Intertechnology, Inc.(以下「Vishay社」という。)のVISHAY RESISTIVE SYSTEMS GROUP(以下「Vishayシステム」という。)の作成した印刷物であると認められる。また、Vishayシステムが作成したと認められる甲第3号証にも、その2枚目の末尾に、「Copyright 1977 Vishay Resistive Systems Group. All rights reserved. Printed in U.S.A.」と記載されており、1977年(昭和52年)に印刷されたものと認められる。 そして、甲第1号証の4枚目の末尾には、「5M 11/74 AN Printed in U.S.A」との記載がある。この記載のうち「74」は、甲第1号証が1974年に印刷されたと認められること、「AN」には、「in the year」の意味があること(研究社 リーダーズ英和辞典初版)から、1974年を意味するものと認められる。 (ii)頒布の有無について、甲第1、3号証には、それぞれその一枚目の右上部に「BULLETIN」の語が、同枚目の末尾には、Vishayシステムの住所と電話番号等が記載されている。「BULLETIN」とは、「公報、会報、小新聞」という意味である(前記辞典)。また、甲第1、3号証は、その表題などから見て、例えば開発に関する文書のように、限られた特定の範囲において配布され、閲覧される性質のものではなく、また、Vishayシステムの連絡先が明記され、その製品の特徴を強調する内容となっていることからすると、社外、例えば顧客等に向けて頒布されることを予定して印刷されたものであると認めることができる。そうすると、これらの文書は、特段の事情が認められない限り、その取引先等に頒布されたと推認するのが相当であり、本件においては、それらの頒布の事実を否定すべき特段の事情は認められない。 (iii)以上のとおりであるから、甲第1、3号証は、その印刷後間もない時期、遅くとも本件出願時まで(おおよそ9年ないし12年の期間がある。)には、頒布されていたと認めることができる。 (A-2)被請求人の主張について 被請求人は、答弁書において「甲第1、3号証は「VISHAY RESISTIVE SYSTEMS GROUP」の製品説明資料と思われるが、公に頒布されたものか否か不明である。「刊行物」というためには、「公衆に対し頒布により公開を目的として複製された文書・図書・写真等の情報伝達媒体」であることが必要であるが、甲第1、3号証がこのようなものであるとの証明は無く、単なる社内用の技術資料である可能性もある。」(答弁書第2頁第17〜22行)旨主張している。 しかしながら、甲第1、3号証に頒布性が認められることは前記したとおりであり、本件発明の出願当時の周知技術(例えば、甲第11号証に記載の技術的事項)を勘案してもこれを推認することができる。 したがって、被請求人の当該主張については採用することができない。 (なお、この甲第1、3号証に係る刊行物の公知性(頒布性)の認定は、先の判決(平成14年(行ケ)第259号平成16年7月6日判決言渡)の確定により拘束される。) (B)進歩性についての判断 本件発明と甲第1号証に記載された発明とを対比する。 ・甲第1号証記載の「バルクメタル」について 甲第1号証の第2頁上段左欄第3行目〜第8行目に「バルクメタルは、セラミック基板に貼り付けられ、その抵抗パターンはフォトエッチングにより施される(A proprietary BULK METAL of known and controllable properties is applied to a special ceramic substrate. A resistive pattern is then photoetched by an ultra-fine technique developed by Vishay.)。」と記載されていること、甲第1号証の第2頁上段中欄第3行目〜第10行目に「バルクメタルは、他の巻線型、蒸着型の抵抗器の製造過程に生じる冶金学的変化とは異なる特別の過程によって、基板に施される(It is set on the substrate by a unique and proprietary process which does not subject the Vishay resistor element to the metallurgical changes that occur during the winding of wire, or during the evaporative process used in other forms of precision resistor manufacture.)。」と記載されていることから、甲第1号証の第3頁上段中央欄の図面に記載された、絶縁性基板にエッチングにより施されているバルクメタルすなわち抵抗体が「金属箔抵抗体」であることは、当業者にとって明らかである。 さらに,甲第1号証の第2頁中段左欄第1行目〜第12行目には、半導体と同様の精密な技術を適用する旨が記載されていることからも、高い精度が要求される「金属箔抵抗器」であるといえる。 ・甲第1号証の第3頁上段中央に示すように、「セラミック基板」の一側面には、エッチング処理により「(金属箔)抵抗パターン」が形成されており、「シリコーンゴムの封止材」及び「防湿用のエポキシ樹脂コーティング」によって外装されている。したがって、この点で甲第1号証の発明は、「一側面に金属箔抵抗体が貼着された絶縁性基板を樹脂で外装した」本件発明と共通している。 ・また、甲第1号証の第3頁上段中央及び右欄に示すように、「複数のすずめっき銅リード」の一端部は、「シリコーンゴムの封止材」内で「セラミック基板」における「金属箔抵抗体」とは反対の側面に密着し、他端部が外装樹脂外へ延出している。したがって、この点で甲第1号証の発明は、「一端部が外装樹脂内で絶縁性基板の他側面に密着し、他端部が外装樹脂外へ延出している複数の外部接続端子」を備えている本件発明と共通している。 ・さらに、甲第1号証の第3頁上段中央に示すように、「フレキシブルな細線」は、「金属箔抵抗体」と「すずめっき銅リード」とを、「シリコーンゴムの封止材」内において電気的に接続している。したがって、この点で甲第1号証の発明は、「金属箔抵抗体を外部接続端子に外装樹脂内で接続するリード線」を備えた本件発明と共通している。 したがって、両者は、以下のとおりの一致点及び相違点を有するものである。 (一致点) 「一側面に金属箔抵抗体が貼着された絶縁性基板を樹脂で外装した金属箔抵抗器において、 一端部が前記外装樹脂内で前記絶縁性基板の他側面に密着し他端部が前記外装樹脂外へ延出した複数の外部接続端子と、前記金属箔抵抗体をこれら外部接続端子に前記外装樹脂内で接続するリード線とを備える金属箔抵抗器。」 (相違点) 甲第1号証に記載された発明は、外部接続端子(すずめっき銅リード)が本件発明のように「板状」ではなく、また、外部接続端子の一端部が外装樹脂内で絶縁性基板の他側面に密着する幅が本件発明のように「その一辺のほぼ全長に亘る幅で」はなく、「この一辺に直交する方向に伸びて」いるものではない点。 (検討) 前記相違点について検討すると、 チップ型電子部品において、外部接続端子を「板状」に構成することは、甲第2号証に開示されており、また従来より周知の技術的事項(前掲甲第7号証参照)であるから、甲第1号証における外部接続端子を板状として構成することは当業者が容易になし得ることと認められる。 また、外部接続端子の一端部が外装樹脂内で絶縁性基板の他側面に密着する幅が「その一辺のほぼ全長に亘る幅で」あり、「この一辺に直交する方向に伸びて」いる構成について、本件発明がこのような構成を採用することの技術的意義は、「本件発明は、樹脂封止した極めて小さい超精密抵抗器において初めて問題になる放熱性を上げるという特有な課題を解決するものである。このために本件発明はではリードを板状として絶縁基板にできるだけ広い面積で接触するように貼り付け、熱をこの板状のリードを通して外へ導くという着想を得たものである。」(答弁書第4頁第15〜19行)としている。 しかしながら、この構成に係る技術的意義を勘案しても、甲第2号証及び甲第3、7号証に開示された周知の技術的事項を参酌すると、この構成も以下のとおり当業者が容易になし得ることと認められる。 すなわち、 ・甲第2号証には、「本発明による半導体装置は、金属板の半導体素子と反対の面に熱伝導の良い絶縁体基板を接着し、各々の外部引出しリード線の先端を絶縁体基板に装着させる。かかる構成により封止樹脂を通さずに外部へ熱放散を行うことができ、過渡熱抵抗を小さくすることが可能となる。」(第2頁左上欄3〜8行)と記載されている。 ・甲第3号証は、甲第1号証と同構造の抵抗器であり、この甲第3号証には、その特徴として、「不要な冶金学的又は構造的変化を導かない独特の工程によって、注意深くセラミックの基板に貼り合わされます。その後、“幅広のリード(Paddle leads)”が、抵抗器チップに溶接されます。セラミック基板と、より一層放熱効率に優れた特性を持つリード部材との組み合わせが、S102C(抵抗器)の優れた耐湿性及び耐高温放置特性と、負荷寿命耐性の向上の大きな要因となります。」(甲第3号証1枚目左欄本文11〜18行)と記載されており、これは、“幅広のリード(Paddle leads)”を用いることにより、より効率的な熱放散ができ、耐熱性が高まることを開示しているものと認められる。 ・甲第7号証には、「この欠点即ち端子(注;「板状端子2」のこと)からの熱伝導を避けることは、端子を細くすることで或る程度小さくすることはできる」との記載があり、板状端子の幅と熱伝導との関連が示され、板状端子の幅を広いものにすれば、これを介する熱伝導が高くなることが開示されている。 ・これら甲第2号証及び甲第3、7号証からは、熱伝導の良い絶縁性基板に貼着されたリード(甲第1号証に記載された発明の「Tinned copper lead」、本件発明の外部接続端子に該当する)が、熱放散効果を上げ得ること、この熱放散効果は、リードの幅が広いほど高くなることが、本件出願当時周知の技術であり、かつ、そのような熱放散効果は、甲第1号証に記載された発明と同構造で、棒状のリードの代わりに幅広のリード(Paddle leads)を採用する甲第3号証において、好ましい性質(高い耐熱性、負荷寿命特性)をもたらすと考えられていたものと認めることができる。 ・以上のような周知の技術的事項が認められるとともに、甲第1号証に記載された発明において、板状の外部接続端子を採用し、かつ、チップ抵抗器の相対する二面から、それぞれ端子を引き出す構成とすることを、当業者が容易に推考できることは、前記のとおりである。そして、当業者であれば、このような構成を採用する場合、なるべく広い面積で絶縁性基板に接合させるため、板状の外部接続端子の幅を絶縁性基板の一辺のほぼ全長に亘る幅とすることは、熱放散が最も高くなる基本的な態様の一つとして、容易に推考できる、設計的な事項である、と認められる(なお、それ以上幅を広くしても、接触面積を増やすという観点からは無意味であり、むしろ、部品の小型化という観点からは有害となるといえる。)。また、その場合、外部接続端子が、絶縁性基板の一辺に直交する方向に延びている構成となることは、ごく自然なことである。 したがって、このように構成することも前記甲第2号証及び甲第3、7号証に開示された周知の技術的事項に基づいて当業者が容易になし得ることと認められる。 なお、この点について、被請求人は、本件発明の抵抗体が「金属箔抵抗体」であり、精密な抵抗値におけるものであるから「本件特許発明の対象である「金属箔抵抗器」の特殊性を無視したものであって、到底納得できない。」(答弁書第3頁第18〜20行)、「本件特許発明が対象とする金属箔抵抗器は極めて高い精度を必要とする超精密抵抗器であって、このために抵抗体自身の発熱による温度変化が問題になるのである。これに対し精度が低い従来の抵抗器ではこのような温度変化による抵抗値変化を問題にするものではないから、これを冷却するという技術思想さえも生じ得ないものである。」(答弁書第4頁第4〜8行)旨、種々主張している。 しかしながら、その作用効果である効率的な熱放散、耐熱性は前記のとおり周知の事項であり、前記抵抗体自身の発熱による温度変化を防止できることは「金属箔抵抗体」に係わらず抵抗体などの電子部品における作用効果として当業者が予測しうる程度のものであるから、本件発明特有の困難性を有するものではなく、この板状等にする構成を採用することに格別のものを要するものとは認められない。したがって、被請求人の当該主張は採用することができない。 (まとめ) 以上のとおりであり、本件発明(訂正された本件特許請求の範囲第1項に係る発明)は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明及び甲第2、3、7号証に記載された周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、本件発明(訂正された本件特許請求の範囲第1項に係る発明)についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 【7】まとめ 以上のとおりであって、本件審判における訂正の請求を認めることとし、本件特許請求の範囲第1項に係る発明の特許は、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項によって準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 金属箔抵抗器 (57)【特許請求の範囲】 一側面に金属箔抵抗体が貼着された絶縁性基板を樹脂で外装した金属箔抵抗器において、 一端部が前記外装樹脂内で前記絶縁性基板の他側面にその一辺のほぼ全長に亘る幅で密着しこの一辺に直交する方向に伸びて他端部が前記外装樹脂外へ延出した複数の板状外部接続端子と、前記金属箔抵抗体をこれら外部接続端子に前記外装樹脂内で接続するリード線とを備えることを特徴とする金属箔抵抗器。 【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は、絶縁性基板に金属箔抵抗体を貼着し、外部接続端子の一部を除いて全体を樹脂で外装した金属箔抵抗器に関するものである。 (発明の背景) アルミナやガラス等の絶縁性基板に、ニッケル、クロームなどを含む金属箔抵抗体を粘着し、この金属箔抵抗体にフォトエッチングなどにより抵抗パターンを形成し、リード線をこの抵抗体に接続した後、全体を樹脂で外装した金属箔抵抗器が従来よりある。 この種の抵抗器では、基板の線膨張係数と抵抗体の抵抗温度係数とを適合させることにより、抵抗値の温度に対する変動を抑制し、高精度な抵抗器を得ることができる。すなわち温度上昇に伴なう抵抗体の抵抗値の変化を、基板の線膨張を利用して抵抗体に応力を加えることにより相殺し、抵抗温度係数を小さくするものである。 しかし抵抗体および基板は放熱性の悪い樹脂にで外装されているため、抵抗体自身の発熱により抵抗体および基板の温度が上昇し易い。このため抵抗器の使用条件によっては抵抗値変化が大きくなり、抵抗値の所定の精度を得ることができなくなることがあり得るという問題があった。 (発明の目的) 本発明はこのような事情に鑑みなされたものであり、抵抗体および基板を樹脂で外装したにもかかわらず、抵抗体および基板の放熱牲が良好で、抵抗体自身の発熱による抵抗値変化を抑制し、広い使用条件に対して高い精度を得ることができる金属箔抵抗器を提供することを目的とする。 (発明の構成) 本発明によればこの目的は、一側面に金属箔抵抗体が貼着された絶縁性基板を樹脂で外装した金属箔抵抗器において、一端部が前記外装樹脂内で前記絶縁性基板の他側面にその一辺のほぼ全長に亘る幅で密着しこの一辺に直交する方向に伸びて他端部が前記外装樹脂外へ延出した複数の板状外部接続端子と、前記金属箔抵抗体をこれら外部接続端子に前記外装樹脂内で接続するリード線とを備えることを特徴とする金属箔抵抗器により達成される。 (実施例) 第1図は本発明の一実施例の断面図、第2図はその組立工程を示す分解斜視図である。 これらの図において符号10は絶縁性基板であり、アルミナ、グレーズドアルミナ、ホウケイ酸ガラス、ソーダガラスあるいはダイヤモンド、サファイヤ、ステアタイト等が用いられる。12は金属箔抵抗体であり、ニッケル、クローム、銅、アルミニウム等を含む合金を圧延して箔に仕上げ、さらに真空中(約10-6Torr)で熱処理して圧延に伴なう加工ひずみを除去し所望の抵抗温度特性を得ている。この抵抗体12は基板10の一方の面に接着剤14により粘着される。ここに接着剤14としては耐熱性のよい接着剤などが適する。 このように基板10に抵抗体12を接着した後、抵抗体12にはフォトエッチング等の手法によって抵抗パターンが形成され抵抗チップ16ができる。この抵抗体12には金線などのリード線18、18の一端が超音波溶接などで接続される。 20、20は一対の外部接続端子であり、スズメッキ軟銅板などの金属板で作られている。この外部接続端子20は拡幅した端部を第2図(A)に示すように対向配置し、その一方の面には前記基板10の抵抗体12と反対の面がチップ固定樹脂22(第1図)により接着される。このチップ固定樹脂22としては熱硬化性エポキシ樹脂やゴム系接着剤などが使用でき、特にゴム系接着剤を用いれば外部接続端子20により基板10に応力が直接加わらず好ましい。そして前記リード線18の他端はこの外部接続端子20に超音波溶接などで接続される(第2図(B)参照)。 このように組立てられた後、基板10の周囲は適当な弾性を有するゴム系樹脂24と、硬質樹脂26とで二重に外装される。その結果板状の外部接続端子20の一部が外装樹脂26から外部へ突出する。この端子20の外部突出部分は外装樹脂26の下面に沿うようにコ字状に折曲される。また外装樹脂26の下面中央付近には凸部28が形成され、各端子20、20はこの凸部28を挾んで対向する。 この抵抗器32は、例えばディップフロー方式によりプリント基板30に実装される。プリント基板30の所定位置に接着剤によって凸部28を接着して紫外線硬化し、その後噴流半田槽などにより半田ディップし、プリント基板30上のプリント配線部とこの抵抗器32の外部接続端子20とを半田34により接続する。 外部接続端子20は板状であって、しかも抵抗体12が貼着された基板10に接着されているので、抵抗体12が発生する熱は基板10を介してこの外部接続端子20に伝えられる。この外部接続端子20の一端は外部に露出しているので放熱性が良く、抵抗チップ16が過度に高温になることがない。このため抵抗値変化を抑制でき、広い使用条件に対して高い精度を保証できる。 (発明の効果) 本発明は以上のように、外部接続端子を板状とし、抵抗チップの基板をこの外部接続端子に貼着し、抵抗チップ周囲を樹脂で外装したものであるから、抵抗チップの熱を外部接続端子を介して外部へ速やかに逃がすことができ、抵抗チップが過度に高温になるのを防止することができる。このため抵抗値の精度を高めることが可能になる。 【図面の簡単な説明】 第1図は本発明の一実施例の断面図、第2図はその組立行程を示す分解斜視図である。 10…基板、 12…抵抗体、 18…リード線、 20…外部接続端子、 26…外装樹脂。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2002-01-08 |
結審通知日 | 2002-01-16 |
審決日 | 2002-04-11 |
出願番号 | 特願昭61-102162 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
ZA
(H01C)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 高橋 武彦 |
特許庁審判長 |
吉村 宅衛 |
特許庁審判官 |
内田 正和 矢島 伸一 |
登録日 | 1991-11-18 |
登録番号 | 特許第1623720号(P1623720) |
発明の名称 | 金属箔抵抗器 |
代理人 | 山田 文雄 |
代理人 | 山田 文雄 |
代理人 | 山田 洋資 |
代理人 | 木内 光春 |
代理人 | 山田 洋資 |
代理人 | 大熊 考一 |