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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A23L
管理番号 1121871
審判番号 無効2001-35426  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-05-07 
種別 無効の審決 
審判請求日 2001-09-28 
確定日 2005-06-23 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2787254号発明「ヒアルロン酸吸収用食品及びその食品の製造方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2787254号の請求項1ないし2に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2787254号の請求項1ないし2に係る発明についての出願は、平成3年10月21日に出願され、平成10年6月5日にその発明について特許の設定登録がなされ、その後、平成13年9月28日付けで請求人 株式会社メディカライズ、株式会社アポ・メディカル・ジャパン、株式会社加ショウ(編集不可につき前記のとおり表記した)、ジャパンメディカル株式会社、有限会社ヒアルロン酸開発研究所、ユーライフ株式会社より特許無効審判が請求され(無効審判2001ー35426号事件)、平成14年12月12日に口頭審理を行って事件の争点整理をし、その後、平成15年5月2日付けで無効理由を通知し、平成15年7月14日付けで訂正請求がなされたものである。

2.訂正の可否に対する判断
ア.訂正の内容
明細書の段落【0007】の第5行ないし7行(特許第2787254号公報第2頁第4欄14行ないし16行)に記載の「そしてさらに、前記液状や粉末状の食品を主原料又は添加物として、例えばスープ等にしてもよい。」との記載を、明りょうでない記載の釈明を目的として削除する。

イ.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載の「ヒアルロン酸吸収用食品」とは、ヒアルロン酸の吸収を目的とした食品である。
上記訂正は、明細書の発明の詳細な説明に記載の「前記液状や粉末状の食品を・・・添加物として、例えばスープ等にしてもよい。」との記載を削除することにより、通常の飲食品にヒアルロン酸を吸収させる以外の目的で極く少量のヒアルロン酸を配合した食品は、上記「ヒアルロン酸吸収用食品」には含まれないことを明確にしたものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記訂正は、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

ウ.むすび
したがって、平成15年7月14日付けの訂正は、特許法第134条第5項の規定によって準用する特許法第126条第2、3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.当事者の主張
3-1 請求人の主張
上記請求人らは、審判請求書において、下記の無効理由1〜5を挙げて、本件特許は無効にすべきものであると主張している。
(1)無効理由1(29条柱書き違反)
「蛋白質分解酵素で酵素分解したペプタイドを併用すれば、ヒアルロン酸が体内に吸収される」とか、「蛋白質分解酵素で酵素分解したペプタイドを併用すれば、体内の組織細胞にヒアルロン酸を供給できる」などということは、技術常識的には考えられないところ、本件明細書には、この特異性を合理的に説明する実証データやその他の技術情報が何一つ示されていない。したがって、本件発明、請求項1及び請求項2とも、特許法第29条柱書きに規定する「産業上利用できる発明」とはいえない。
(2)無効理由2(36条4項違反)
特許権者は、「蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を摂取すると、身体の内部からヒアルロン酸が吸収される」というのであるから、「身体の内部からヒアルロン酸を吸収させるペプタイド」につき、追試可能なように明細書に技術的根拠が記載されていなくてはならない。
どのように製造したもので、どのような組成のものであり、ヒアルロン酸に対してどの程度の量で効果が生じるのか、どのような実験によって身体の内部からヒアルロン酸が吸収されることを確認したのかが当然に示されるべきところ、これらのことが本件明細書には全く記載されていない。本件発明は、同法第36条第4項の規定に違背したものである。
なお、請求人は、審判請求書に「36条3項」と記載しているが、その主張する内容からみて、「36条3項」は誤記であり、正しくは「36条4項」であると認める。(本件特許は平成3年10月21日に出願され、平成13年9月28日に審判請求されたものである。)

(3)無効理由3(36条5項違反)
「蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイドとヒアルロン酸とを併用摂取すると、両者の相互関係によって「ヒアルロン酸が吸収される」のであれば、「ヒアルロン酸が吸収される」ための条件が必要のはずである。
本件発明の場合には、実証データが全くないため、必須要件の評価のしようもないが、本件発明の特許請求の範囲には、発明の必須要件が記載されておらず、請求項1及び2とも、同法第36条第4項にも違背している。
なお、請求人は、審判請求書に「36条4項」と記載しているが、その主張する内容からみて、「36条4項」は誤記であり、正しくは「36条5項」であると認める。(本件特許は平成3年10月21日に出願され、平成13年9月28日に審判請求されたものである。)

(4)無効理由4(29条1項3号違反)
本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明と同一であり、特許法第29条第1項第3号に違背するものである。
(5)無効理由5(29条2項違反)
本件請求項1及び2に係る発明は、甲第1〜3号証に記載された発明と出願時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり、同法第29条第2項の規定に違背するものである。

そして、上記主張を立証する証拠方法として、審判請求書と共に下記甲第1号証〜甲第8号証を提出し、平成14年7月22日付け弁ぱく書と共に下記参考資料1ないし5を提出し、平成14年12月12日付け口頭審理陳述要領書と共に下記参考資料6及び7を提出し、平成14年12月12日付け証拠提出書と共に下記参考資料8ないし12を提出し、平成15年1月17日付け上申書と共に下記参考資料13を提出している。

甲第1号証:特開平3ー35774号公報
甲第2号証:特開昭61ー47418号公報
甲第3号証:化学的合成品以外の食品添加物リスト
甲第4号証:特許権者が提出した検査証明書写し
甲第5号証:特開昭58ー113114号公報
甲第6号証:特開昭62ー 84024号公報
甲第7号証:フレグランス ジャーナル 臨時増刊 No.9(198
1)30〜33頁
甲第8号証:特開昭63ー51401号公報
参考資料1:商品CELLーMATRIXを説明するHP(甲第9号証
参照)
参考資料2:商品サンビエを説明するHP(甲第10号証参照)
参考資料3:商品アイブレーンを説明するHP(甲第11号証参照
参考資料4:特許権利者の登録商標を示すHP(甲第12号証参照)
参考資料5:本発明者の別出願を示す公開公報(甲第13号証参照)
参考資料6:審判請求人による証明書(甲第14号証参照)
参考資料7:履歴事項全部証明書(甲第15号証)
参考資料8:平成10年(行ケ)第95号判決、及び特開平6-225
765号公報(甲第16号証参照)
参考資料9:平成12年(行ケ)第354号判決、及び特開平10-2
9955号公報(甲第17号証参照)
参考資料10:平成9年(行ケ)第240号判決、及び特開平6-10
0455号公報(甲第18号証参照)
参考資料11:平成9年(行ケ)第320号判決、及び特開昭64-9
370号公報(甲第19号証参照)
参考資料12:平成12年(行ケ)第384号判決、及び特開平2-8
7121号公報(甲第20号証参照)
参考資料13:特開2000ー102362号公報

3ー2 被請求人の主張
被請求人は、答弁書と共に下記の乙第1号証〜乙第18号証を提出して、請求人が主張する上記無効理由1〜5に対して、次のとおり反論している。
(1)無効理由1に対して
明細書中に実証データがなくとも(但し、本特許権者は本件特許の審査、審判の過程で実証データを提出し、本件特許の効果を十分に裏付けている。)、発明の目的、構成、効果が明瞭であれば、実証データによる裏付けがなくとも産業上十分に利用可能である。
乙第14号証の7、8に示したように請求人も食用ヒアルロン酸やヒアルロン酸の体内吸収を目的とした健康食品を現に製造販売している。
(2)無効理由2及び3に対して
明細書には鶏冠を原料とする具体的な製造方法が記載されていてその記載に従えば当業者が容易に実施できるのであり、請求人が指摘するような実証データなど無くとも追試可能である。まして本件特許は、審査、審判の過程で多くのデータを提出して効果の確実性を証明しているのであり、請求人の主張は失当である。
(3)無効理由4に対して
甲第1号証の第2発明に記載された動物軟骨抽出物を添加した飲食物は、当業者の常識からしてコンドロイチン硫酸吸収食品(乙第11号証参照)と解するのが相当であり、本件特許発明1のヒアルロン酸吸収用食品とは同一ではない。
甲第2号証の健康増進・維持剤にはそもそもヒアルロン酸を体内吸収させる目的もなければ作用もない。そしてもし、甲第2号証の記載からたまたまペプタイドとヒアルロン酸を有する物質が読み取れる可能性があるとしても、その物質は胃粘膜保護作用、血中脂質低下作用、便秘改善作用という甲第2号証に記載された作用により用途が特定されるのであり、ヒアルロン酸とペプタイドを同時摂食することによりヒアルロン酸が体内吸収されるという作用・効果が当業者間で知られていない以上、本件特許発明1のヒアルロン酸吸収用食品と甲第2号証に記載された発明とは同一でない。
(4)無効理由5に対して
本件特許発明1は、単独では殆ど体内吸収されないヒアルロン酸が、ペプタイドと同時に摂食することにより効率よく体内吸収されるという相互関係の発見を基にヒアルロン酸吸収用食品を完成させたものであり、ヒアルロン酸の体内吸収を可能にしたという作用効果は、当業者の常識を覆すものである。ヒアルロン酸とペプタイドの相互関係について甲第1、2号証には一切記載がなく、加えてヒアルロン酸が体内吸収されにくい物質であるという当業者の常識からすれば、甲第1、2号証から本件特許発明1のヒアルロン酸吸収用食品を想到するのは容易でない。

さらに、被請求人は、上記主張事実を立証するために、平成14年11月29日付け口頭審理陳述要領書と共に下記乙第19号証〜乙第30号証を提出し、平成15年1月17日付け上申書と共に下記参考資料1ないし4を提出し、平成15年7月14日付け意見書と共に下記乙第31号証〜乙第35号証を提出している。

乙第1号証:熱湯治癒促進作用実験データ
乙第2号証:特開平7ー241200号公報
乙第3号証:健康産業速報(平成11年6月29日)写し
乙第4号証:FOOD Style 21 1998.3(Vol.2
No.3)69頁〜72頁
乙第5号証:最新栄養学(株式会社建ぱく社発行)70〜71頁
乙第6号証:農林水産省食品総合研究所 河村幸雄著「機能性食品素材と してのタンパク質」6頁〜13頁
乙第7号証:特願昭59ー167775号における手続補正書及び拒絶理 由通知書の写し乙第8号証:特公平5ー34341号公報
乙第9号証:特公平6ー62425号公報
乙第10号証:特公平6ー62424号公報
乙第11号証:新聞の折込広告
乙第12号証:スポーツニッポン(平成11年3月8日)写し
乙第13号証:証明願謄本(証明者:菊池 誠)
乙第14号証の1〜8:類似製品のカタログ、写真、包装用容器の複写
乙第15号証:本件特許製品の広告写し
乙第16号証:証明願謄本(証明者:加藤 真)
乙第17号証:検査証明書(証明者:(財)日本食品油脂検査協会)
乙第18号証:天然物便覧第11版(株式会社食品と科学社)328頁
乙第19号証:実験報告書(林博道作成)
乙第20号証:商品ウルーラEXを説明するHP
乙第21号証:商品NEWヤングノバス28を説明するHP
乙第22号証の1〜7:平成3年特許願302449号の意見書に添付
のモニターパネル調査2、他社ブランド商品の受注推移
及び写真
乙第23号証:人による臨床モニター調査報告
乙第24号証:人による臨床モニター調査報告
乙第25号証:ファクシミリ送信ご案内
乙第26号証:取引基本契約書
乙第27号証:名刺写し
乙第28号証:受注確認書
乙第29号証:注文書
乙第30号証:り災証明書
参考資料1: 特許第3010017号公報
参考資料2の1:特開2001ー158801号公報
参考資料2の2:食品加工に使用する苛性ソーダ溶液の一般的な濃度を
示す資料
参考資料3:特開2000ー102362号公報
参考資料4:(株)日立システムアンドサービス電子版世界大百科事典
から出力した資料
乙第31号証の1: ヒアルロン酸の体内吸収を前提とする特許出願一覧 表
乙第31号証の2: 特開2000ー102362号公報
乙第31号証の3: 特開2001ー158801号公報
乙第31号証の4: 特開2002ー356432号公報
乙第31号証の5: 特開2002ー360292号公報
乙第32号証の1、2:新聞社の証明書
乙第32号証の3〜6:食品化学新聞写し
乙第33号証:FRAGRANCE JOURNAL 臨時増刊
No.15(1996)69〜74頁
乙第34号証:証明書
乙第35号証:特許第3010017号公報

4.当審において平成15年5月2日付けで通知した無効理由の概要
当審で通知した無効理由の概要は、「本件の請求項1及び2に係る発明は、刊行物1(特開昭58ー113114号公報)、刊行物2(特開平3ー35774号公報)及び刊行物3(特開昭51ー95116号公報)に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当する。」というものである。

5.当審の判断
当審で通知した上記無効理由について、以下検討する。
(1)本件発明
本件の請求項1ないし2に係る発明は、訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし2に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有するヒアルロン酸吸収用食品。
【請求項2】 蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有するヒアルロン酸吸収用食品の製造方法であって、少なくとも次の(1)〜(4)の工程からなる。
(1)鳥の鶏冠を洗浄してミンチにする。
(2)このミンチに苛性ソーダを加えてふやかす。
(3)ふやけたミンチに塩酸を加えてPH7〜8に戻し、蛋白質分解酵素を少量加えて酵素分解し、さらにこれを濾過する。
(4)前記濾過した濾液に少量の活性炭を加えて脱臭・脱色した後、その活性炭を除去する。」

(2)引用刊行物に記載の発明
当審の合議体が通知した無効理由に引用した刊行物1(特開昭58ー113114号公報)には、下記の(a)〜(j)の事項が記載されている。
(a)「臍体、鶏トサカを細切し、これをプロナーゼで消化し、ついで濾過して得られる抽出エキスを配合してなる化粧料。」(特許請求の範囲)
(b)「本発明は化粧料、特に保水性を有し、しわとりの効果のすぐれた荒れ症肌に適用するに適した化粧料に関するものである。」(1頁左下欄8行〜10行)
(c)「本発明は臍帯、鶏のトサカを細切し、これをプロナーゼで消化し、ついで濾過して得られる抽出エキスを含有する化粧料である。・・・・・プロナーゼはストレプトマイセス・グリセウスの産生する蛋白分解酵素で、各種基質蛋白質のペプチド結合を殆ど無差別に開裂する。酵素活性はpH5〜9で安定であり、至適pHは7〜8である。」(2頁左上欄15行〜同右上欄9行)
(d)「本発明の化粧料の配合成分の抽出エキスを得る方法は、前記の臍帯、鶏のトサカを細切し、蛋白分解酵素の一種であるプロナーゼを加える。この場合、原料を水で予め十分膨潤させ、適宜の細切機で細切してプロナーゼを加えるか、または、原料を細切して後、これを水に漬けて十分膨潤させ、要すれば、この膨潤液をホモジナイズして後、プロナーゼを加えるかして、酵素処理を行う。プロナーゼ処理は通常、pH6〜8程度の液性において行う。この場合、作業条件その他からみてほぼ中性で行うのが好適である。」(2頁右上欄18行〜同左下欄10行)
(e)「このプロナーゼ処理により、原料の臍帯、鶏のトサカの組織中のムコ多糖類と蛋白質の複合体が分解して、各種のムコ多糖類、蛋白質、ペプタイド、アミノ酸等のプロナーゼ分解物が得られる。」(2頁左下欄14行〜18行)
(f)「このようにして得られたプロナーゼ処理液より、不溶解物を適宜の濾過手段によって除去して、本発明の化粧料の配合成分を得る。この配合成分は、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等の酸性多等類を主体とし、これに蛋白質、アミノ酸が混合した液である。例えば・・・・・鶏のトサカから得られるものはヒアルロン酸60〜80重量%、コンドロイチン硫酸20〜40重量%より成っている。」(2頁右下欄12行〜3頁左上欄4行)
(g)「この臍帯又は鶏のトサカから得られたプロナーゼ処理物、もしくは、その混合液を化粧料の形態として皮膚に塗布すると、・・・・・その結果、荒れ症肌を予防または治療することができ、併せてすぐれたしわとり効果も達成される。」(3頁左上欄5行〜13行)
(h)「上述の臍帯、鶏のトサカの抽出エキスを化粧料とする場合は、そのまま、または、抽出エキスを脱色等の処理を施し、更に精製して化粧料基材に配合して化粧料とする。」(3頁左下欄16行〜右下欄1行)
(i)「参考例2 新鮮な鶏のトサカ1kgを水洗後、5倍量の水を加えてミキサーで細切し、プロナーゼを加えて60℃で8時間加温しつつ処理を行う。後参考例1と同様に処理して鶏トサカの抽出エキス1〜2kgを得る。」(4頁左上欄1行〜6行)
(j)「実施例3 次の各成分を混合撹拌してローションを得る。
エタノール 10g グリセリン 2.0g クエン酸 0.5g 参考例2で得られた配合成分 5.0g パラオキシ安息香酸メチル 0.2g 香料 0.05g 精製水を加えて100gとする。」(4頁左下欄の実施例3)
上記(a)ないし(j)の記載からみて、刊行物1には、鶏のトサカを水洗後細切し、これを水に漬けて十分膨潤させ、プロナーゼを加えてpH6〜8程度の液性において酵素処理を行い、ついで濾過して得られるヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸等のムコ多糖類、蛋白質、ペプタイド、アミノ酸等を含む抽出エキスを調製し、該抽出エキスに脱色等の処理を施し、更に精製して化粧料基剤に配合して化粧料を製造すること、及び該化粧料を皮膚に塗布することにより、荒れ症肌を予防または治療することができ、併せてすぐれたしわとり効果も達成されることが記載されているものと認める。

同じく無効理由に引用した刊行物2(特開平3ー35774号公報)には、下記の(k)〜(p)の事項が記載されている。
(k)「(1)動物性粘性物質を添加してなる飲食物。
(2)動物の軟骨をアルカリ存在下蒸煮して加水分解し、その分解物を一旦中和し未溶解分を除去した後、エタノールを添加して得られる沈殿物である動物性粘性物質を通常の食品原料に添加してなる飲食物。」(請求項1及び2)
(l)「この発明は、これを常用摂食することにより肌がよくなる飲食物にかかわるものである。」(1頁左下欄13行〜14行)
(m)「ムコ多糖類は動物性粘性物質の主成分であり、これにはコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン酸、ケラト硫酸などがあり、これらはすべて保湿性を有している。従来はこれらのムコ多糖類を添加した化粧品を使用して直接的に皮膚を物理的に保護したり又はこれら成分を経皮的に吸収させて美肌の目的を達しようとしている。本発明では、このような美肌物質を通常の飲食物に添加し、従来行われていなかった経口摂食によって体内に摂取することにより、ごく自然に美肌の効果を発現させんとするものである。かかる経口投与によっても美肌効果があることは、従来全く知られていなかったものである。」(1頁右下欄4行〜17行)
(n)「動物性粘性物質は、その起源としてはさい帯、・・・・・、鶏冠等がある。本願の第1発明(・・・・・)ではその起源を問わず採用され、・・・・・」 (1頁右下欄19行〜2頁左上欄5行)
(o)「先ず、原料軟骨をアルカリ存在下、蒸煮して加水分解する。・・・・・残った沈殿物が第2発明において使用される粘性物質であり、大よそ分子量20,000〜100,000程度、成分としては大よそ次のとおりである。 コンドロイチン硫酸 60% ヒアルロン酸 1% ヘパリン酸 5% ケラト硫酸 9% 粗タンパク(アミノ酸) 25% ・・・・・かかる動物性粘性物質は、通常、飲食物中に大よそ0.1%〜10%添加する。摂取方法としても通常の通りでよく、添加対象飲食物も特定ではない。即ち、米飯、パン、麺、菓子、飲料その他がある。」(2頁左上欄9行〜14行)
(p)「本発明飲食物で経口摂取されてのち、如何なる経過を経て美肌効果を示すことになるのかの詳細は、まだ一切知られていない。動物性粘性物質は分子量も大きいから一旦は胃や腸で分解され吸収されるのであろうが、それが体内の何処で再合成されるのか、再合成されたものが如何なる経過により皮膚に達するのか、又はその他の如何なる理由により美肌効果を発するのかの情報は今後の研究にまたれる。」(2頁左下欄)

同じく無効理由に引用した刊行物3(特開昭51-95116号公報)には、鶏冠を原料としてヒアルロン酸を製造する方法に関し「原料の鶏冠としてはとくに制限はないが、・・・・・蛋白分解酵素の使用に先立つて原料の脱脂乾燥粉末を0.1規定の水酸化ナトリウム溶液に24時間程度浸漬して組織を膨潤せしめておくことが好ましく、・・・・・」(2頁右下欄11行〜19行)及び「実施例5 実施例1で用いた鶏冠の脱脂粉末20gに0.1NーNaOH水溶液300mlを加えて24時間放置したのち、0.1NーHCL水溶液でpHを7.3に補正し、プロナーゼ0.4gを加え、37℃の孵卵器内で24時間消化した。」(4頁右上欄の実施例5)と記載されている。

(3)対比・判断
(請求項1に係る発明について)
訂正明細書の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と刊行物1に記載の発明を対比すると、刊行物1に記載の「プロナーゼ」は、本件発明1の「蛋白質分解酵素」に該当するから、両者は、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有する物質の利用技術である点で共通し、前者は、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有する物質を用いてヒアルロン酸吸収用食品とするのに対して、後者は、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有する物質を化粧料基剤に配合して化粧料とする点で、両者は相違する。

上記相違点について検討する。
(i.)先ず、本件発明1の「ヒアルロン酸吸収用食品」の意味するところについて検討する。
訂正明細書(以下、「本件明細書」という。)の発明の詳細な説明には、「本発明の製造方法によれば、鳥の鶏冠に含まれているヒアルロン酸を体内で吸収し易い状態にした食品を提供することができる。また、本発明の食品は、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有するため、これを摂取することによって、身体の内部からヒアルロン酸が吸収され、老化に伴う体内の組織細胞の水分減少を効果的に抑えることができる。」(特許公報4欄段落0008)と記載され、かかる記載からみて、本件発明1のヒアルロン酸吸収用食品を経口摂食すると、ヒアルロン酸が体内でよく吸収され、その結果として「老化に伴う体内の組織細胞の水分減少を効果的に抑える」ことができるものと認められる。
そして、上記「老化に伴う体内の組織細胞の水分減少を効果的に抑える」は、身体全体に及ぶ広範な効果を意味するとしても、少なくとも、「老化に伴う体内の組織細胞の水分減少を効果的に抑えた」結果として、肌が若返る、美肌になる、うるおいのある肌になる等の美肌効果が発現するのであるから、本件発明1において、肌が若返る、美肌になる、うるおいのある肌になる等の目的で「ヒアルロン酸吸収用食品」を経口摂食する実施の形態においては、本件発明1の「ヒアルロン酸吸収用食品」は、ヒアルロン酸の体内吸収を通して美肌効果が発現するところの「美肌用食品」、「美肌健康食品」、あるいは「美容健康食品」等と言い換えることができる。
すなわち、本件発明1の「ヒアルロン酸吸収用食品」は、体内へのヒアルロン酸の吸収を通して肌が若返る、美肌になる、うるおいのある肌になる等の目的で摂食するところの「美肌用食品」、「美肌健康食品」、あるいは「美容健康食品」等を包含している。
また、本件明細書の発明の詳細な説明の記載からみて、通常の飲食品の製造段階でペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を添加した飲食品であっても、その添加の目的が体内へのヒアルロン酸の吸収にある場合には、かかる飲食品の摂取により本件発明1の目的、効果が達成されるのであるから、本件発明1は、通常の飲食品の製造段階で、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を添加して「ヒアルロン酸吸収用食品」とする実施の形態を包含するものと認められる。

(ii)以上の事実を踏まえた上で上記相違点についてみると、刊行物2の上記(m)、(o)及び(p)の記載からみて、刊行物2には、従来化粧品に美肌物質として配合していたコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン酸、ケラト硫酸などのムコ多糖類を通常の飲食物に添加し、該飲食品を経口摂食することによって美肌効果を発現させるという技術思想が開示されている。
また、刊行物2には、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン酸、ケラト硫酸などのムコ多糖類を主成分とする動物性粘性物質を添加して飲食物を製造するにあたって、動物性粘性物質をサメの皮、クジラの軟骨、鶏冠等から調製できることが記載され、さらに、原料軟骨から調製したコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン酸、ケラト硫酸、粗タンパク(アミノ酸)からなる混合物を動物性粘性物質として飲食品に添加することが具体的に記載されている。
かかる記載に接した当業者であれば、上記「粗タンパク(アミノ酸)」中にペプタイドが含まれていることは直ちに理解できることであり、また、鶏の鶏冠を原料とする場合には、軟骨を原料とする場合と同様に、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などのムコ多糖類、蛋白質、ペプタイド、アミノ酸等が混在する鶏冠の抽出物の形態で飲食品に添加できると考えるのが自然である。
しかも、刊行物2の記載から上記のとおり導き出せる「鶏冠の抽出物」と刊行物1に記載の鶏冠の抽出エキスとは、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などのムコ多糖類、蛋白質、ペプタイド、アミノ酸等を含む点で異なるところはないことも、当業者ならば容易に予想できることである。
してみると、経口摂食による美肌効果を期待して、刊行物1に記載の荒れ症肌を予防または治療する目的で化粧料基剤に配合するための抽出エキス、すなわち鶏冠をプロナーゼで酵素分解して得られるペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸等を含む抽出エキスを、美肌効果が発現するのに必要な量飲食物に添加して本件発明1のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
この点について、被請求人は、平成15年7月14日付け意見書において、「およそ食品分野に属する当業者が『化粧品』そのものを飲食物に添加するという捉え方をすることなど常識的にあり得ない。」(意見書5頁4行〜6行)と主張する。
しかし、刊行物1に記載の鶏冠の抽出エキスは、化粧料基剤に配合する1成分であり、化粧料そのものではない。上記抽出エキスが『化粧品』そのものとは言えない以上、被請求人の上記主張は採用しない。
また、被請求人は、上記意見書において「刊行物2は、従来化粧品に美肌目的で配合されていたムコ多糖類を経口摂食して得られる美肌効果に着目し、そのようなムコ多糖類を経口摂食させるために動物性粘性物質(・・・)を飲食物に添加した、という内容に理解され、もちろん化粧品自体を食べるというような記載も示唆も存在しないのであり、食品の分野に属する当業者をして刊行物1に記載の化粧品原料を経口摂食させるような動機付けにはなり得ない。」(意見書5頁12行〜17行)と述べ、刊行物2に記載された事項が、刊行物1に記載の鶏冠の抽出エキスを経口摂取する動機付けにはならないとの主旨の主張をしている。
被請求人が主張するとおり、刊行物2は、動物性粘性物質を添加してなる飲食物に係わるものであるが、上記したとおり、従来化粧品に美肌物質として配合していたコンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン酸、ケラト硫酸などのムコ多糖類を通常の飲食物に添加し、該飲食品を経口摂食することによって美肌効果を発現させるという技術思想が刊行物2に開示され、かつ、動物性粘性物質として、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸などのムコ多糖類、蛋白質、ペプタイド、アミノ酸等が混在している鶏冠の抽出物を使用できることが、上記のとおり刊行物2に教示されていることからすれば、経口摂取による美肌効果を期待して、刊行物1に記載の鶏冠起源の抽出エキスを飲食品に添加してヒアルロン酸吸収用食品(美肌用食品)とする程度のことは、当業者において格別困難なことではない。

(iii)そして、本件発明1の効果についてみても、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ヘパリン酸、ケラト硫酸などのムコ多糖類を主成分とする動物性粘性物質を通常の飲食物に添加して、該飲食物を経口摂食することにより美肌効果が得られることが刊行物2に記載されている以上、たとえ美肌効果発現のメカニズムが刊行物2に記載されていないとしても、本件明細書に記載の「老化に伴う体内の組織細胞の水分減少を効果的に抑えることができる」結果として、美肌になるという効果は、刊行物2の記載から当業者が予測できる範囲内のものというべきである。
本件発明1の効果について、被請求人は、平成15年7月14日付け意見書において、「刊行物1、2から予測可能な効果がせいぜい美肌であるのに対し、本件特許の請求項1の発明はそのような美肌効果を量的・質的に上回り且つ当時の当業者の常識に反する予測不能且つ顕著な効果を発揮する。」(意見書11頁3行〜5行)と主張する。
しかし、本件明細書には、効果について「老化に伴う体内の組織細胞の水分減少を効果的に抑えることができる」と記載されているのみで、被請求人が上記主張するような効果を具体的に説明する記載は何もないし、上記主張を裏付ける実験データの開示もない。
また、本件発明1が刊行物2に記載の飲食物に比べて、美肌効果の点で量的・質的に上回る顕著な効果を奏することを実証する比較実験データの提出もない。
したがって、被請求人の上記主張は採用しない。
以上のとおり、本件発明1は、刊行物1及び2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(請求項2に係る発明について)
本件の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)と刊行物1に記載の発明を対比すると、刊行物1に記載の「プロナーゼ」及び「抽出エキス」は、本件発明2の「蛋白質分解酵素」及び「濾液」にそれぞれ該当するから、両者は、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有する物の製造方法であって、(1)鳥の鶏冠を洗浄してミンチにし、(2)このミンチをふやかし、(3)ふやけたミンチのpHを7〜8に調整し、蛋白質分解酵素を少量加えて酵素分解し、さらにこれを濾過して濾液を得る点で共通する。
しかしながら、下記(A)及び(B)の点で、両者は相違する。
(A)前者は、最終工程を終えた濾液を用いてヒアルロン酸吸収用食品を製造する方法であるのに対して、後者は、最終工程を終えた濾液を用いて化粧料を製造する方法である点。
(B)前者は、上記(2)の工程で苛性ソーダを加え、上記(3)の工程で塩酸を加えてpH7〜8に戻し、上記(3)の工程の後に(4)前記濾過した濾液に少量の活性炭を加えて脱臭・脱色した後、その活性炭を除去する工程を有するのに対して、後者は、上記(2)の工程で苛性ソーダを加えておらず、上記(3)の工程でpHを7〜8に調整する手段について具体的な記載はなく、また上記(4)の工程について記載されていない点。
上記相違点について検討する。
相違点(A)について
本件発明1における相違点の判断と同じ理由により、刊行物1に記載の鶏の鶏冠の抽出エキスを、美肌効果が発現するのに必要な量飲食物に添加してヒアルロン酸吸収用食品(美肌用食品)とすることは、刊行物2の記載に基づいて当業者が容易に想到し得ることである。
相違点(B)について
刊行物1に記載の抽出エキス(濾液)を飲食品に利用するにあたり、抽出エキス(濾液)の製造方法を請求項2に記載のとおり変更することは、下記のとおり刊行物3及び周知事項に基づいて当業者が容易になし得ることである。
刊行物3には、鶏冠を原料として蛋白質分解酵素を用いてヒアルロン酸を製造するにあたり、蛋白質分解酵素の使用に先立つて鶏冠粉末を水酸化ナトリウム溶液に浸漬して組織を膨潤させることが好ましいことが記載されていることから、上記(2)のミンチをふやかす工程で苛性ソーダを加えることは、当業者が容易に想到し得ることである。
また、刊行物3には、塩酸を加えてpHを7.3に補正することが記載されていることから、上記(3)の工程で塩酸を加えてpH7〜8に戻すことは当業者が容易になし得ることであり、さらに、動物組織からの抽出液に活性炭を加えて脱臭・脱色することは当業者の慣用手段であることから、濾過した濾液に少量の活性炭を加えて脱臭・脱色した後、その活性炭を除去する工程を付加することは、当業者が適宜なし得ることである。
そして、本件発明2の効果は、本件発明1の効果について判断したとおりの理由により、刊行物2の記載から当業者が予測できる範囲内のものというべきである。
したがって、本件発明2は、刊行物1ないし3に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する上記無効理由1ないし5について判断するまでもなく、本件の請求項1及び2に係る発明は、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、当該発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ヒアルロン酸吸収用食品及びその食品の製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有するヒアルロン酸吸収用食品。
【請求項2】蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有するヒアルロン酸吸収用食品の製造方法であって、少なくとも次の▲1▼〜▲4▼の工程からなる。
▲1▼鳥の鶏冠を洗浄してミンチにする。
▲2▼このミンチに苛性ソーダを加えてふやかす。
▲3▼ふやけたミンチに塩酸を加えてPH7〜8に戻し、蛋白質分解酵素を少量加えて酵素分解し、さらにこれを濾過する。
▲4▼前記濾過した濾液に少量の活性炭を加えて脱臭・脱色した後、その活性炭を除去する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ヒアルロン酸吸収用食品及びその食品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
皮膚の水分保有効果を高める物質として従来からヒアルロン酸が知られている。このヒアルロン酸は、その性質を利用して化粧品に配合され、皮膚の老化防止に役立っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにヒアルロン酸は、化粧品への利用例に代表されるように、主に皮膚の表面から塗り込んで使用するという考え方が支配的であり、体内の組織細胞にヒアルロン酸を供給するという思想がなかった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のヒアルロン酸吸収用食品は、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有することを特徴とする。
また、そのヒアルロン酸吸収用食品の製造方法は、少なくとも、次の▲1▼〜▲4▼の工程からなる。
▲1▼鳥の鶏冠を洗浄してミンチにする。
▲2▼このミンチに苛性ソーダを加えてふやかす。
▲3▼ふやけたミンチに塩酸を加えてPH7〜8に戻し、蛋白質分解酵素を少量加えて酵素分解し、さらにこれを濾過する。
▲4▼前記濾過した濾液に少量の活性炭を加えて脱臭・脱色した後、その活性炭を除去する。
【0005】
【作用】
蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を有するヒアルロン酸吸収用食品を摂取すると、ヒアルロン酸が体内でよく吸収される。ヒアルロン酸は、組織細胞の保水効果が高いため、老化に伴う体内での組織細胞の水分減少を抑えることができる。
【0006】
【実施例】
以下に本発明のヒアルロン酸吸収用食品の具体的な製造方法を説明する。
▲1▼鳥の鶏冠は通常冷凍されているため先ずこれを解凍する。そして、解凍した鶏冠を、0.1%の塩素を溶かした精製水でよく洗浄する。次に、洗浄した鶏冠をミンチ機によってミンチにする。
▲2▼ミンチを反応釜に入れ、苛性ソーダを加えて15時間程度放置する。これによってミンチが十分ふやける。
▲3▼ふやけたミンチに塩酸を加えてPH7〜8に戻し、蛋白質分解酵素たるプロテアーゼを0.5%加え、約2.5時間程度酵素分解した後、50メッシュのスクリーンで一次濾過をし、さらに、目詰まり防止のために濾過助剤としてセライトを1%加えて10ミクロンの濾紙で二次濾過をする。
▲4▼前記濾過した濾液に活性炭を0.5%加えてよく撹拌する。この活性炭によって脱臭・脱色された濾液をさらに1ミクロンの濾紙で濾過して活性炭を取り除く。
【0007】
上記▲4▼の工程を終えた濾液は、蛋白質分解酵素で酵素分解されてペプタイド状になった蛋白質とヒアルロン酸を主成分とするヒアルロン酸吸収用食品である。
また、前記濾液を凍結乾燥してフェザーミル、ピンミルで粉末状に粉砕すれば、長期保存にも耐え得るヒアルロン酸吸収用食品となる。
【0008】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、鳥の鶏冠に含まれているヒアルロン酸を体内で吸収し易い状態にしたヒアルロン酸吸収用食品を提供することができる。
また、本発明のヒアルロン酸吸収用食品は、蛋白質分解酵素で酵素分解してペプタイド状にした蛋白質とヒアルロン酸を主成分とするため、これを摂取することによって、身体の内部からヒアルロン酸が吸収され、老化に伴う体内の組織細胞の水分減少を効果的に抑えることができる。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-04-07 
結審通知日 2004-04-08 
審決日 2004-04-21 
出願番号 特願平3-302449
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (A23L)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 河野 直樹
種村 慈樹
登録日 1998-06-05 
登録番号 特許第2787254号(P2787254)
発明の名称 ヒアルロン酸吸収用食品及びその食品の製造方法  
代理人 福島 三雄  
代理人 青野 秀治  
代理人 青野 秀治  
代理人 清原 義博  
代理人 清原 義博  
代理人 野中 誠一  
代理人 小山 方宣  
代理人 野中 誠一  
代理人 福島 三雄  
代理人 野中 誠一  
代理人 福島 三雄  
代理人 野中 誠一  
代理人 清原 義博  
代理人 小山 方宣  
代理人 福島 三雄  
代理人 小山 方宣  
代理人 武蔵 武  
代理人 武蔵 武  
代理人 野中 誠一  
代理人 野中 誠一  
代理人 福島 三雄  
代理人 小山 方宣  
代理人 青野 秀治  
代理人 小山 方宣  
代理人 小山 方宣  
代理人 青野 秀治  
代理人 福島 三雄  
代理人 青野 秀治  
代理人 清原 義博  
代理人 清原 義博  
代理人 青野 秀治  
代理人 清原 義博  

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