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審決分類 審判 訂正 2項進歩性 訂正する A63F
管理番号 1121876
審判番号 訂正2005-39053  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-01-07 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2005-03-28 
確定日 2005-06-28 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3084412号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3084412号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第一.手続の経緯
本件特許第3084412号(以下「本件特許」という)の請求項1〜12に係る発明は、
[1].昭和63年4月9日に出願された特願昭63-86289号を分割して特願平8-322027号とし、それを分割して特願平10-243033号とし、さらに、それを平成11年6月7日に分割して特願平11-159218号として新たな出願としたものであって、平成12年7月7日付で特許の設定登録がなされ、
[2].その後、本件特許に対して異議が申し立てられ、特許取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成13年9月25日に訂正請求なされたものであって、平成13年11月19日付けで、前記訂正を認め、本件特許の請求項1〜12に係る特許を取り消す旨の異議決定がなされ、
[3].当該異議決定に対して、その取消を求めて提訴(東京高等裁判所、平成14年(行ヶ)029号)され、その訴訟継続中である、平成17年3月28日に本件訂正審判が請求されたものである。


第二.請求の要旨
本件訂正審判請求の要旨は、特許第3084412号の明細書を、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明瞭でない記載の釈明を目的として、特許請求の範囲、明細書の段落【0007】、【0008】、【0033】、【0034】、【0035】、【0037】、【図面の簡単な説明】、及び【図12】を審判請求書に添付した明細書のとおりに訂正することを求めるものであるところ、特許請求の範囲に関する訂正事項は以下のとおりである。

[1].特許請求の範囲の請求項に記載された発明について、
(1).特許請求の範囲中の請求項1,2,3,4,5,7,8,9,10,11を削除し、請求項6,12を、それぞれ、訂正明細書の特許請求の範囲中の請求項1,2と訂正する。

(2).特許請求の範囲の請求項1について、
(i).訂正(i)
「所定の制御周期で各走行体の現在位置の座標値を順次検出する手段」を、「所定の制御周期で各走行体の現在時刻における位置の座標値を順次検出する手段」と訂正し、
(ii).訂正(ii)
「所定時間間隔で設定された一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブル」を、「前記所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブル」と訂正し、
(iii).訂正(iii)
「検出された現在位置の座標値と対応する走行目標位置の座標値とに基づき各走行体の進むべき走行方向、速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を順次演算し、」を、「検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、」と訂正し、
(iv).訂正(iv)
「前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに沿って走行する」を、「前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行する」と訂正し、
(v).訂正(v)
「前記走行テーブルは所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成される」を、「前記走行テーブルは、少なくとも観客がベットした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成される」と訂正し、
(vi).訂正(vi)
「ことを特徴とする請求項5記載の競争ゲーム装置。」を、「ことを特徴とする競争ゲーム装置。」と訂正し、
(vii).訂正(vii)
請求項1全体を以下のように訂正する(以下「訂正発明1」という)
「複数の模型体がフィールド上を順位を競って走行する競争ゲーム装置であって、
前記複数の模型体が自由走行可能に配置されたフィールド面と、
前記フィールド面の下方に配置された走行面と、
前記フィールド面を挟んで対応する模型体のそれぞれと磁力を介して結合するように前記走行面上に配置され、それぞれに搭載された駆動手段によって自走可能に構成された複数の走行体と、
前記複数の走行体のそれぞれについて、所定の制御周期で各走行体の現在時刻における位置の座標値を順次検出する手段と、
前記複数の走行体のそれぞれに対し、前記所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブルを設定する手段とを有し、
前記複数の走行体のそれぞれについて、検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、
これに基づき前記駆動手段を制御することにより、前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、 走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行するように構成されてなり、 前記走行テーブルは、少なくとも観客がベットした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成されることを特徴とする競争ゲーム装置。」
(なお、下線は訂正箇所を示す)

(3).特許請求の範囲の請求項2について、
(viii).訂正(viii)
「所定時間間隔で設定された一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブル」を、「所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブル」と訂正し、
(ix).訂正(ix)
「所定の制御周期で各走行体の現在時位置の座標値を順次検出し、」を、「前記所定の制御周期で各走行体の現在時刻における位置の座標値を順次検出し、」と訂正し、
(x).訂正(x)
「検出された現在位置の座標値と対応する走行目標位置の座標値とに基づき各走行体の進むべき走行方向、速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を順次演算し、」を、「検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、」と訂正し、
(xi).訂正(xi)
「前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに沿って走行する」を、「前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行し、」と訂正し、
(xii).訂正(xii)
「前記走行テーブルは所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成される」を、「前記走行テーブルは、少なくとも観客がベットした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成される」と訂正し、
(xiii).訂正(xiii)
「ことを特徴とする請求項11記載の競争ゲーム装置の制御方法。」を、「ことを特徴とする競争ゲーム装置の制御方法。」と訂正し、
(xiiii).訂正(xiiii)
請求項2を全体として以下のように訂正する。(以下「訂正発明2」という)
「複数の模型体がフィールド上を順位を競って走行する競争ゲーム装置の制御方法であって、
前記複数の模型体をフィールド面上に自由走行可能に配置し、
前記フィールド面の下方に配置された走行面上に、前記フィールド面を挟んで対応する模型体のそれぞれと磁力を介して結合するように複数の走行体を配置し、前記複数の走行体は、それぞれに搭載された駆動手段によって自走可能であり、
前記複数の走行体のそれぞれに対し、所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブルを設定し、前記複数の走行体のそれぞれについて、前記所定の制御周期で各走行体の現在時刻における位置の座標値を順次検出し、
前記複数の走行体のそれぞれについて、検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、これに基づき前記駆動手段を制御することにより、前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行し、 前記走行テーブルは、少なくとも顧客がベットした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成されることを特徴とする競争ゲーム装置の制御方法。」
(なお、下線は訂正箇所を示す)



第三.訂正要件の検討1(特許法第126条:目的、拡張、変更)
[1].特許請求の範囲の請求項について、
(a)訂正事項(i)、(ix)について
当該訂正は、「現在時刻位置の座標値」を「現在時刻における位置の座標値」と訂正することにより、明りょうな記載とするものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当するを目的としたものであり、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(b)訂正事項(ii)、(viii)について
当該訂正は 所定時間間隔に関して「所定の制御周期に対応」しているものである点、及び、一連の走行目標位置の座標値に関して「曲線を含む自由な走行ラインに沿った」ものである点を加入することにより、走行テーブルを具体的に限定したものであり、当該事項は各々段落【0015】、【0028】に記載されている。
したがって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、しかも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(c)訂正事項(iii)、(x)について
当該訂正は「現在位置」を「現在時刻における位置」と訂正し、「走行方向、速度」を「走行方向および速度」と訂正することにより、明りょうな記載とすると共に、「走行目標位置の座標値」の前に「次の時刻における」を加入し、「各走行体の進むべき」の前に「次の時刻までの間に」を加入し、「順次演算し」の前に「前記制御周期毎に」を加入することにより、駆動量の演算を具体的に限定したものであり、当該限定事項は、段落【0015】に記載されている。
したがって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明に該当し、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(d)訂正事項(iv)、(xi)について
当該訂正は、「走行テーブル」の後に「に格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ライン」を加入し、「…に沿って走行」の後に「し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行する」を加入することにより、明りょうな記載とすると共に、走行体の走行を具体的に限定したものであり、当該事項は、各々段落【0025】、及び訂正前の段落【0007】、訂正前の段落【0008】、段落【0028】に記載されている。
したがって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮、明りょうでない記載の釈明に該当し、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(e)訂正事項(v)、(xii)について
当該訂正は、「少なくとも観客がベットした状況を要素として」を加入することにより、走行テーブル作成の所定のアルゴリズムの内容を具体的に限定したものであり、当該事項は段落【0025】に記載されている。
したがって、当該訂正は、特許請求の範囲の減縮に該当し、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(d)訂正事項(vi)について
当該訂正は、訂正前請求項5が削除されたことに伴う訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
(d)訂正事項(xiii)について
当該訂正は、訂正前請求項11が削除されたことに伴う訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

[2].明細書の詳細な説明、及び図面の訂正について、
本件訂正において訂正された段落【0007】、【0008】、【0033】、【0034】、【0035】、【0037】、【図面の簡単な説明】、及び【図12】の削除は、特許請求の範囲が訂正されたことにより、その訂正と整合を図るための訂正であるから、明りょうでない記載の釈明に該当し、しかも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。



第四.訂正要件の検討2(特許法第126条:独立特許要件)
[1].前記平成13年11月19日付異議決定の概要は以下のとおりである。
<1>.本件特許の請求項1、2に係る発明、及び請求項7.8に係る発明と、本件特許の出願日とみなされる分割元の特許出願(特願昭63-86289号:以下「分割元出願」という)に係る特許(特許第2645851号)の請求項1に係る発明、及び請求項2に係る発明とは各々同一の発明であるから、本件特許出願は、特許法第44条第2項の規定が適用されないこととなる。
したがって、本件特許の請求項1〜12係る発明は、分割元出願の公開特許公報である特開平1-259404号公報に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けられないものである。

<2>.本件特許の請求項1〜12に係る発明は、次の刊行物2に記載された発明、及び刊行物3〜11に例示される周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである
(A).刊行物2(米国特許第2188619号明細書及び訳文)記載事項
(2-1).「本発明は、レーシングゲームに関し、詳細には、複数の目標体がレースのコースを推進されるゲームに関する。本発明の目的は、個々のオペレータにより駆動されるように設計されているが、レースの進行中に前記オペレータの完全な制御を受けない複数の形態を有するレーシングゲームを提供することである。ほかの目的は、レーシングの目標体が電気的に推進され、手動で駆動される電気的手段により部分的に制御され、かつ、自動的に駆動される電気的手段により部分的に制御されるレーシングゲームを提供することである。さらにほかの目的は、個々のオペレータの制御を受ける、モーターを備えている複数の電気駆動車(car)を有する電気的レーストラックを提供することであり、前記電気駆動車はまた、レーシング目標体をトラック上で前記駆動車で吸引し、これを移動する自動制御された電磁石を有する。さらに詳細には、本発明は、駆動車のモーターの速度を制御する、手動で作動される複数の加減抵抗器と、電磁石を流れる電流の強さを制御する、もう一組の自動で作動される複数の加減抵抗器とから成っている。従って、各オペレータは、オペレータの各駆動車の速度を制御することが出来る一方で、オペレータは、彼の駆動車の電磁石を流れる電流の強さを連続的に変化する加減抵抗器を制御しない。従って、その各レーシング目標体の電磁石の吸引が比較的に弱いとき、特に、駆動車がトラックのカーブ部分を通過しているとき、駆動車の速度が非常に速いならば、駆動車がレースから除外される可能性があるので、レースの勝利は、駆動車の速度により完全には支配されない。さらにほかの目的は、電磁石を流れる電流を制御する前記もう一組の加減抵抗器を自動作動するモーター駆動のカムを提供することである。」(甲第2号証の1頁左欄1〜43行[訳文の1頁2行〜24行]参照)、
(2-2).「図1,2,および2aに関し、数字10は、一般に、本発明の電気的レーシングゲームを示す。このゲームは、脚12により適切に支持されたテーブルまたはケーシング11から成っている。見てお分かりのように、テーブルは、非金属の滑らかで薄い上部13、中間の棚14、およびベースまたは底部15から構成している。以降に詳細に説明するように、操作機構とレーシング器の幾つかの構成要素のすべては、上部13とベース15との間のケーシング12に収容されており、従って、隠蔽されて見えない。数字16,17,および18は、それぞれがエンドレスのトラックを形成するように環状の、三つのトラックを表している。これらのトラックは単に表示されているだけで、すべての数字は、望むならば設定することが出来ることが理解されるであろう。トラックの真上に、トロリ集電レール20と21が、それぞれ各トラックに一つ配置されている。これらのレールは、上部13の下側に固定されており、以降に詳細に説明するように、トラックとレールは、電気回路の一部を形成するように構成されている。図2,4,および5に関し、各トラックは、車輪24に支持されたフレーム22から成る駆動車22(car)を乗せるように設計されており、これらの車輪24は、その各トラックのレールと噛み合って乗るように設計されている。各駆動車は、駆動車の一組の車輪駆動するシャフト26の一つへ動作可能に接続されたモーター25を備えている。望むならば、モーターは、数組の車輪を駆動する両方のシャフトと連動させることが出来る。トロリ集電輪27は、その各トロリレールと噛み合って、動作可能に接触して保持されるように、フレーム23の前の上部分に取り付けられ、車輪が縁づけされている。トロリ集電輪27は、ヨーク部またはブラケット29に軸受けされているシャフト28へ固定されている。シャフト28の端は、フレーム23の反対側に形成された縦方向の開孔30を貫通している。コイルスプリング31が、ブラケット29の基部とフレーム23のクロスバー32との間に配置されており、ブラケット、シャフト、およびトロリ集電輪をその各トロリ集電レールと動作可能に噛み合うに垂直に押しつけている。ブラケット構造体とトロリ集電輪の運動は、シャフト28の端が開孔30内で滑動可能であるので、行われる。電磁石33が、フレーム23の後ろの上端に取り付けられており、トロリ集電輪27へ電気的に接続されている。磁石は、望むならば、フランジの中心または前部に取り付けることが出来ることは理解されるであろう。見て分かるように(図5参照)、駆動車(car)22が各トラックに位置付けられると、電磁石の上端は、テーブルの上部13の下側に最も接近して配置され、起動されると、前記上部に支持された金属製目標体つまり図の姿状体(figure)34を、薄い非金属の上部13を通して吸引するように設計されている。これらの目標体は、どのような形状でもよく、この例では、レーシングカーの形を取っている。しかし、望むならば、各目標体は、競走馬、または、とのようなほかの従来のレーシング具を表現することが出来る。図1、9および10に関し、各駆動車のモーター25の速度は、三つの加減抵抗器35,36および37の一つにより制御されるように設計されており、前記加減抵抗器は、制御レバー38,39および40をそれぞれ備えており、テーブルまたはケーシングの外側で、各種の駆動車を操作し、制御するオペレータが握るのに都合良い位置に取り付けられている。これらの加減抵抗器は単に図示されているだけであり、それらはすべての周知の構造であり、それぞれは、トラック16,17,および18へ電気的に接続され、これにより、レバーの操作は,駆動車22のモーター25の速度を制御する。」(甲第2号証の1頁右欄38行〜2頁左欄61行[訳文の2頁23行〜4頁11行]参照)、
(2-3).「この様に説明した構造により、駆動車の操作は、制御レバー38,39および40を操作するオペレータにより完全に制御される。しかし、数人のオペレータの制御から少し外れて、駆動車の操作を行うため、本発明者は、個々の駆動車の電磁石33を通る電流の強さを自動的に制御する手段を提供する。この制御は、各レースの最終結果が予測できないように、完全に自動化される。従って、本発明は、個々の駆動車の速度がオペレータの制御内にあることを可能にする手段を提供するように設計されている。しかし、この手動制御は、テーブル上部13上の目標体を移動する場合の電磁石の作用を自動的に制御する手段を備えることにより、補われる。この構成により、駆動車が曲線路を通過するとき、電磁石の一つを流れる電流がかなり弱いので、速度は単にレースの勝利を保証せず、遠心力が目標体34の一つを磁石との電気的接触から投げだし、従って、目標体のオペレータをレースから除くことが可能である。電磁石を自動的に制御する手段は、もう一組の加減抵抗器52,53および54(図6,7参照)から成っている。これらの加減抵抗器は、駆動車22の磁石33を流れる電流を制御し、制御レバー55,56および57をそれぞれ備えている。これらの加減抵抗器とレバ-は、すべて、棚16とべース15との間に支持されたフレーム58に取り付けられている(図2aと9参照)。」(甲第2号証の2頁右欄10〜44行[訳文の4頁25行〜5頁12行]参照)、
(2-4).「この構造の場合、駆動車が、数本のトラック(図1参照)の指定されたスタート点に一直線に並ぶと、自動車34が、各磁石33の上の位置で上部板13の上に配置される。これらの磁石は、薄い上部板を通して自動車を吸引し、モーター25が起動されると、それらをテーブル上で搬送する。前述したように、個々のオペレータが、制御レバー38,39および40を手動で操作すると、駆動車22は、加減抵抗器のコイル上のレバーの動きに従って、各トラックの回りを進行する。同時に、モーター76の動きは、歯車70,71および72を回転し、これにより、各ピニオン64,65および65を回転する。これは偏心して取り付けられたカム61,62および63を回転し、これにより、レバー55,56および57をピボットの回りに回転し、従って、球状ライダー59を加減抵抗器52,53および54のコイル上で動かす。これは、磁石33を流れる電流の強さを変化する作用を行い、オペレータは、彼の駆動車の速度の制御を行う一方で、電磁石33により姿状体つまり自動車34へ加えられた磁気吸引を制御しない。」(甲第2号証の3頁右欄5〜15行[訳文の6頁14行〜6頁26行]参照)、
(2-5).「従って、レースの勝利は、駆動車が手動制御された加減抵抗器の操作により走行出来る位置に完全には依存されない。従って、各オペレータは、その駆動車の磁石の強さがいつも変化しており、オペレータが駆動車を時々余り速い速度にしているならば、オペレータが彼の駆動車をレースから投げ出す可能性があることを、各オペレータは考慮することが必要である。」(甲第2号証の3頁左欄21〜47行[訳文の7頁23行〜7頁19行]参照)。
(2-6).刊行物2には以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「非金属の滑らかで薄い上部13を走行する複数の金属製目標体34と、中間の棚14の環状トラック16,17,18のレールに噛み合って乗る車輪24に支持されモーター25を備える複数の駆動車22とが、前記非金属の滑らかで薄い上部13を通して、前記複数の駆動車22の電磁石33の磁力により互いに吸引するように配置されていて、各駆動車22のモーター25の速度は、三つの加減抵抗器35、36、37の一つにより制御されるように設計されており、前記加減抵抗器35、36、37はそれぞれ制御レバー38,39,40を備えていて、オペレータが制御レバー38,39,40を操作することにより各駆動車22の速度を制御することができるように設計され、さらに、非金属の滑らかで薄い上部13上に配置された金属製目標体34を吸引する駆動車22の電磁石33の磁力を自動的に制御する手段として、制御レバー55、56、57により自動制御される加減抵抗器52、53、54が設けられていて、前記加減抵抗器52、53、54が加減されると駆動車22の電磁石33の吸引力が変化するようになっており、複数の駆動車22のモーター25が起動されると各駆動車22は前記上部13上の対応する複数の金属製目標体34を搬送し、オペレータが制御レバー38,39,40を操作して加減抵抗器35、36、37を加減させると電流の強さが変化するモーター25によってレースの度毎に時間と共に速度及び位置が変化することにより各駆動車22の走行を制御して、前記複数の金属製目標体34を競争させる電気的レーシングゲーム、」

(B).刊行物3(実願昭49-14153号(実開昭50-104785号)のマイクロフィルム)記載事項
(3-1).「ゲーム盤上に載置した複数台の永久磁石付き走行体の該永久磁石を吸着する複数個の移動永久磁石を、ゲーム盤の裏面に公転可能に配置した回転腕の先端に自転可能に枢支した支持板に固着し、さらにゲーム盤の裏面であって、該支持板の公転軌跡上に前記移動永久磁石の当接する最長辺を有する移動永久磁石用の位置規制板を配置し、前記規制板の最長辺の先端(A)に移動永久磁石の任意の1個が位置したときにおける各移動永久磁石の真上位置であってゲーム盤上面にサークル表示を付したことを特徴とするレース玩具。」(1頁4〜14行)
(3-2).「第1図はレース玩具1の斜視図で、2はゲーム盤3上に載置した複数台の永久磁石4付き走行体で、該永久磁石4はゲーム盤3の裏面に接して公転しかつ自転する移動永久磁石5に吸着されてゲーム盤3上を内側または外側寄りにずれながら円周コースを抜きつ抜かれつ走行してレース展開を行なうものであり、しかも各走行体2はゲーム盤3上のサークル表示25からスタートし、しかも順位は入れ変ってゴールするも、いずれも走行体2はサークル表示25の1着から4着までのどれかの位置で停止し、かつスタートするものである。そのための構造は後で順次説明する。前記走行体2は図示例では競輪選手を形どっているが、その他に競馬或いは自動車競争を行なうごとき形状としてもよく、少なくとも永久磁石4を有しているものであれば任意の形状にしてよい。」(3頁5行〜4頁5行)
(3-3).「したがって、前記走行体2は単にゲーム盤3上を所定の円周コースを走行するだけでなく、コースを互いに内側または外側寄りに移動しながら互にぶつかり合うことなく、抜きつ抜かれつ走行する。しかも、前記移動永久磁石5の自転運動は不規則に行なわれる。つまり、固定板17と回転板23のそれぞれの環状壁21,24はいずれも偏心位置に設けてあるので、回転腕7が公転する際ベルト22に緊張,弛緩状態が生じ、緊張状態においては確実に回転板23、移動磁石5に自転運動が伝えられるが、弛緩状態においては、これらに殆ど自転運動が伝えられず、したがってベルト22のこのような緊張,弛緩により移動永久磁石5に不規則な自転運動を起こさせるのである。」(6頁15行〜7頁13行)

(C).刊行物4(実公昭55-46222号公報)記載事項
(4-1).「本考案は、磁石を操作することにより自由に盤上の物体を動かすことのできる玩具に関する。」(1欄27〜28行)、
(4-2).「第1図は、盤を二層に形成したものであり、磁石4は4’より磁力が弱く形成されており、その結果磁石4,4’による磁力は盤1の表面においてほぼ等しくなるようにする。その結果、物体5,5’の磁石6,6’にはほぼ等しい磁気吸引力が作用する。したがってロッド7,7’によって磁石4,4’を自由自在に操作できる。」(2欄2〜8行)
(4-3).「第8図に第3の実施例を示す。これは、競馬ゲーム等、競争ゲーム盤であり、モーター(図示せず)等適当な動力により、回転する磁石が第1図と同様二層に設けられ、例えばそれぞれの回転中心をロッド7,7’によって動かす等して図示のごとく、コースを自由に選択できる。」(4欄18〜23行)

(D).刊行物5(特開昭58-200177号公報)記載事項
(5-1).「本発明は、移動体の位置検出方法に関し、特に、自動車、船舶、航空機等の移動体の位置を自動的に測定し、移動体の自動運航や自動走行等に有効に利用され得る移動体の位置検出方法に関する。」(2頁右上欄8〜11行)
(5-2).「こうして、移動体(V)側から受光信号が発せられると、その時の方位角(α)及び(β)が識別信号と共にレーザー光源(1)側から移動体(V)側へ送信される。この信号は移動体(V)のアンテナを介し受信器(35)で受信され、方位角(α)及び(β)が演算制御部(33)に与えられる。演算制御部(33)は方位角(α)が0°の場合には反射光を受光したと判別して方位角(β)を受け取り、(α)が0°以外の場合にはレーザー光源(1)からの直接光を受光したと判別して方位角(β)を受けとる。よって、この方位角(α)及び(β)より三角測量の原理で受光器(31)の位置(R)を計算し、移動体(V)が所定コースを走行するように走行方向を制御する。」(3頁1〜13行)
(5-3).「第2図は別の実施例を図解したものであって、移動体(V)に受光器(31)としてコーナーキューブ(31a)を設けたものである。・・・この反射レーザー光線を発光器(11a)に固着の受光器(11b)で受光し、その時の角度を光源(1)の演算制御部(19a)に送るものである。この演算部(19a)の動作は第1図の車輌(V)の演算部(33)と同様に移動体(V)の位置を求め、これに基づいて移動体(V)をコントロールする信号を送信機(18a)から移動体(V)に送信する様に構成されている。そして、移動体(V)の受信器(37)でコントロール信号を受信し、駆動回路(38)は信号に基づいて移動体(V)を操縦する。第3図は更に別実施例を図解したものであって、移動体(V)の2つの位置にコーナーキューブ(31a),(31b)を設け、各々の位置(R1)及び(R2)を第2図と同様の方法で算出し、移動体(V)の現在位置及び進行方位を検出できるものである。これを利用して、所定コースを走行する様に移動体(V)をラジオコントロールすることも可能である。」(4頁左上欄1行〜4頁右上欄6行)。

(E).刊行物6(特開昭60-153509号公報)記載事項
(6-1).「このような状態において、コントローラ201は所定のタイミングで出力バッファ回路202を介してカウンタ203をクリアすると共に、パルス電流発生器204を動作させる。カウンタ203は、クロック発振器205のクロックパルス(パルス繰り返し周波数は例えば100MHz)のカウントを開始する。」(3頁左下欄2〜8行)
(6-2).「第19図は本発明の別の実施例を示す説明図である。同図において、110は座標位置検出装置、120は無人車、130は受信機、140は送信機、150は処理装置である。座標位置検出装置110は前述した座標入力装置4と同一構成からなるもので、そのタブレットは無人車120の移動範囲全域にわたる面積を有しており、無人車120はこのタブレット上で移動する。無人車120は第20図に示すようにその上部に受信機130を有すると共に、下部中央に位置指定用磁気発生器、例えば棒磁石121を取り付け、左右の後輪122,123にそれぞれ直結したモータ124,125を有している。また126は前輪である。」(6頁右下2〜15行)
(6-3).「まず、処理装置150に図示しないキーボード等より無人車120を誘導すべき座標位置を入力する。処理装置150は、座標位置検出装置110より無人車120の現時点の座標値を読み込む。この座標値は棒磁石121が座標位置検出装置110の磁極伝達媒体へバイアス磁界を加えている位置のものである。処理装置150は指定座標値と現座標値とを比較し演算処理し、必要な制御コードを送信機140のアナログスイッチ141へ送出する。この制御コードは送信用IC142で変調され、更に発光ダイオード143より無人車120へ向けて光信号によって送出される。この光信号は受信機130の受光ダイオード131で受信され、増幅器132,ローパスフィルタ133を介して受信用IC134へ送出され復調される。受信用IC134の出力は更にデコーダ135により制御コードにデコードされ、その出力はリレードライバ136-1〜136-4のいずれかを駆動しリレーRL1〜RL4のいずれかを動作させる。これによりモータ122,123が駆動され無人車120が指定座標位置まで誘導される。」(7頁左上欄12行〜7頁右上欄14行)

(F).刊行物7(特開昭59-100915号公報)記載事項
(7-1).「更に、前記車体(1)には、この車体(1)の移動距離を連続的に検出すべく単位走行距離(k)当り1回のパルスを発生する距離センサー(6)としての第5軸(6A)を設けるとともに、走行方向を検出する方位センサー(7)を設けている。」(2頁左下欄20行〜2頁右下欄4行)
(7-2).「一方、前記距離センサー(6)は、車体(1)の単位移動距離(k)毎に1回のパルスを発生して、このパルスを所定回数カウントすることによって所定移動距離(l0)を検出すべく構成してある。」(3頁左上欄18行〜3頁右上欄1行)、
「第4図に示すように、制御システムは、マイクロコンピュータを主要部とする演算制御装置(10)に入力インターフェース(11)を介して前記倣いセンサー(5A),(5B)、距離センサー(6)及び方位センサー(7)の各信号が入力されてあり、これら各センサーからの信号に基いて、電磁バルブ(12)を作動させて、アクチュエータである油圧シリンダ(8)を駆動して、前輪(2),(2)を操作すべく、出力インターフェース(13)に演算結果である制御信号を出力すべく構成してある。そして、第5図に示すように、芝刈作業地(14)における芝刈作業を行うに先だって、回向地(14A)部分を予め人為的に既刈地とすべく、作業者が運転して芝刈作業を行ないながら1行程走行し、この間に、前記距離センサー(6)および方位センサー(7)によって、作業地外周をサンプリングし、このサンプリング情報に基いて作業地概形をティーチングして、座標(Xo,Yo),(Xo,Ya)・・・(Xg,Yg)で示す各コーナー部における旋回角(θoa),(θab)・・・(θgo)を算出する。その後、前記予め人為的に既刈地とされた最外周部(14A)の内側の未刈地(14B)をこの未刈地(14B)と前記外周部(14A)との境界の前記倣いセンサー(5A),(5B)の検出結果に基いて倣い走行制御することにより2周目以降の外周刈取作業を自動的に行なうのである。そして、この外周刈取作業時に前記距離センサー(6)及び方位センサー(7)によって検出される走行距離(l)及び方位(θ)の変化をチェックし、作業幅(a)を減じた距離に相当する座標(Xn,Yn)に達した場合は、前記旋回角(θoa),(θab)・・・(θgo)に基いて、ステアリング角(k)を夫々所定角(θn)補正したステアリング角(θn±k)を基準にバンバン制御しながら所定方向へ自動的に旋回させるのである。」(3頁右上欄5行〜3頁左下欄19行)
(7-3).「1つのメインユニットと同メインユニットに結合され少なくとも1台のテーブルユニットよりなり、前記メインユニットは、出走前、出走中および出走後の画像、音声を表示するメイン表示装置と、レース番号、出走馬の如き出走体の名称、配当等を表示するサブ表示装置と、多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等を記憶し、前記多種類のレース展開、入賞組合等の内、適当なものを選出し所定のフローに従って画像、音声等の信号を前記両表示装置に送信し、コイン投入がなされて遊戯者の予想が当たった時に所定の賞金に相当するコインを払出しまたは数字を加算するように制御動作する中央処理装置とで構成され、前記テーブルユニットは、前記中央処理装置と後記コイン管理装置や操作パネルとの信号の送受を行なう入出力中継装置と、コインの投入枚数をカウントするとゝもに、投票数に対応してコインを減算しかつ賞金に相当するコイン金額の払出しを行ないあるいはこれを計算してゲーム終了時に余剰コイン金額に相当するコインを排出するコイン管理装置と、出走体の入賞を予想選定しその選定個数を表示する操作パネルとを有することを特徴とする競馬等の競走遊戯装置。」(1頁5行〜同2頁6行)
(7-4).「本案は前記したように構成されているので、メイン表示装置に出走前の出走体が表示されるとゝもに、サブ表示装置にレース番号、出走体の名称等が表示され、レース開始前の状況が再現される。この状態で前記各テーブルユニットの前に居る遊戯者は前記操作パネルで出走体の入賞を予想選定すると、投入コインから選定した個数だけ減算されて表示され、一定時間経過後または選定終了後、レーが開始され、その状況が前記メイン表示装置に表示される。そして出走体がゴールに達すると、入賞出走体の名称および配当が前記サブ表示装置に表示されるとゝもに、コイン投入が行われて配当があれば、当該テーブルユニットの操作パネルに配当金に相当するコインが加算される。この場合本案においては、前記中央処理装置に多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等が記憶されているため、レースを何回反覆して行なっても、レース展開、入賞組合せ等が変化し、遊戯者が飽ることがない。」(4頁11行〜5頁9行)

(G).刊行物8(実願昭56-8254号(実開昭57-123191号)のマイクロフィルム)記載事項
(8-1).「1つのメインユニットと同メインユニットに結合され少なくとも1台のテーブルユニットよりなり、前記メインユニットは、出走前、出走中および出走後の画像、音声を表示するメイン表示装置と、レース番号、出走馬の如き出走体の名称、配当等を表示するサブ表示装置と、多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等を記憶し、前記多種類のレース展開、入賞組合等の内、適当なものを選出し所定のフローに従って画像、音声等の信号を前記両表示装置に送信し、コイン投入がなされて遊戯者の予想が当たった時に所定の賞金に相当するコインを払出しまたは数字を加算するように制御動作する中央処理装置とで構成され、前記テーブルユニットは、前記中央処理装置と後記コイン管理装置や操作パネルとの信号の送受を行なう入出力中継装置と、コインの投入枚数をカウントするとゝもに、投票数に対応してコインを減算しかつ賞金に相当するコイン金額の払出しを行ないあるいはこれを計算してゲーム終了時に余剰コイン金額に相当するコインを排出するコイン管理装置と、出走体の入賞を予想選定しその選定個数を表示する操作パネルとを有することを特徴とする競馬等の競走遊戯装置。」(1頁5行〜同2頁6行)、
(8-2).「本案は前記したように構成されているので、メイン表示装置に出走前の出走体が表示されるとゝもに、サブ表示装置にレース番号、出走体の名称等が表示され、レース開始前の状況が再現される。この状態で前記各テーブルユニットの前に居る遊戯者は前記操作パネルで出走体の入賞を予想選定すると、投入コインから選定した個数だけ減算されて表示され、一定時間経過後または選定終了後、レーが開始され、その状況が前記メイン表示装置に表示される。そして出走体がゴールに達すると、入賞出走体の名称および配当が前記サブ表示装置に表示されるとゝもに、コイン投入が行われて配当があれば、当該テーブルユニットの操作パネルに配当金に相当するコインが加算される。この場合本案においては、前記中央処理装置に多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等が記憶されているため、レースを何回反覆して行なっても、レース展開、入賞組合せ等が変化し、遊戯者が飽ることがない。」(4頁11行〜5頁9行)等々。
(8-3).「この場合本案においては、前記中央処理装置に多種類のレース展開、入賞組合せ等に関する画像、音声、配当等が記憶されているため、レースを何回反覆して行っても、レース展開、入賞組合せ等が変化し、遊技者が飽きることがない。」(第5頁第5〜9行)
(8-4).「第7図ないし第8図に図示のようなレース番号、レース展開予想、出走馬の名称、◎、○、△、▲等の予想マークを参考意見、入賞組合せ(連勝複式)、投票数を表示するサブ表示装置たる白黒ブラウン管6と、」(第6頁第12〜16行)

(H).刊行物9(特公昭52-38781号公報)記載事項
(9-1).「例えば、複数の競走用自動車模型を環状レースコース上で走らせて、到着順次を競う競走遊戯装置は、従来から数多くあった。」(1欄22〜24行)
(9-2).「その目的とする処は、複数の移動模型の内、どの模型が真先にゴールに到達するのか全く予想がつかずに遊戯者の興味をそそることができる競走遊戯装置を供する点にある。本発明は、前記したように案内手段と、該案内手段によって設定された一定の循環軌跡に沿って移動しうる循環手段と前記軌跡に沿いそれぞれ別個に往復動自在に前記循環手段に設けられた複数の移動模型と、該移動模型をそれぞれ別個に駆動させる駆動手段とで構成したため、スタートラインにおいて前記移動模型を一線に並ばせてから、前記循環手段をゴールに向けて出発させるとともに、前記駆動手段を始動させると、前記複数の移動模型はそれぞれ相対的にかつ時間の経過に伴って速度を変えながら前記一定の循環軌跡に沿って移動することができる。また本発明においては、前記駆動手段の作動タイミングを適宜変更させることにより、前記移動模型の往復動のストロークおよび往復動切換タイミングを自由に変えることができ、遊戯者に興味を充分に与えることができる。」(2欄1〜22行)

(J).刊行物10(特開昭62-105206号公報)記載事項
(10-1).「第1図は本発明の一実施例を示す構成図である。図において、3は無人誘導車、8は進行方向前方に無人誘導車に取付けられた操舵輪、9は無人誘導車を推進する駆動輪、10は路面との相対変位を直交2軸(X,Y)成分に分解して非接触で測定する変位センサで、無人誘導車3上の異なる2点P,Qに固定されている。Oは無人誘導車3の車輪8,9によって定まる中心点、I軸は無人誘導車3の進行方向に一致し中心点Oに固定された軸、II軸はI軸と直交し中心点Oに固定された軸である。X軸は変位センサ10の測定に用いる軸で、I軸とは約45度傾けてある。Y軸はX軸と直交する軸で、変位センサ10の測定に用いられる。11は、変位センサ10の信号から無人誘導車3の移動距離l及び移動方向φを演算する移動量演算手段、12は移動量演算手段11で演算した結果に基づいて無人誘導車3の現在位置と無人誘導車3が到達すべき位置との偏差を求める偏差演算手段、13は偏差演算手段12に到達すべき位置を伝達する指令手段で、必要に応じて一連の移動位置を指定できる。14は偏差演算手段12で求めた偏差の方向に基づいて操舵輪8を製御する操舵手段、15は偏差量に基づいて駆動輪9を制御する駆動手段である。このように構成された装置においては次の如く動作する。一般力学の知識によると、剛体の平面内の運動は剛体内の2点の運動ベクトルが決まると確定する。そこで、変位センサ10のP点,Q点に於ける直方2方向の変位(X,Y)を測定すると、当該2点の運動ベクトルが確定する。次に無人誘導車3の移動距離lと移動方向φは、移動量演算手段11を用いて計算される。」(2頁左下欄2行〜2頁右下欄13行)
(10-2).「第3図は変位センサ10の他の具体例を示す要部構成図で、ここでは一軸方向の移動を検出する空間フィルタを示してある。図において、40は空間フィルタを構成するフォトダイオードアレイ(PDA)、41はPDA40に間隔P/3で3n個設けられた光電感応部で、互いに2つおきに接続され、n段ピッチpの3個の空間フィルタになっている。42は3個の空間フィルタの信号を増幅する増幅器、43は増幅器42の出力を順次走査するスイッチ、44はスイッチ43によって接続された信号を増幅する加算増幅器、45はスイッチ43の切換えによって生ずる高周波成分を除去するローパスフィルタ、46はローパスフィルタ45の出力信号の周波数fを検出する検出回路で、基準の周波数f0との差をとり、移動量演算手段11に出力する。47は周波数3f0のクロック(CLK)に応じてスイッチ43を切換える制御回路で、スイッチ43のひとつだけをONする。」(3頁左下欄4行〜3頁右下欄1行)

(K).刊行物11(特開昭63-65512号公報)記載事項。
(11-1).「(1)車体上の異なる2ケ所において路面との相対変位を直交2成分に分解して非接触で測定する変位センサと、これらの変位センサの信号から車体の移動距離及び移動方向を演算する移動量演算手段と、この移動量演算手段で演算した結果に基づいて車体の現在の位置と指令された位置との偏差を求める偏差演算手段とを備え、この偏差演算手段の演算に基づいて車体を当該指令位置に誘導するようにしたことを特徴とする無人誘導車の誘導装置。」(1頁左欄5〜16行)、
(11C-2).「所定の位置関係で配設され、それぞれ電波測量用の電波を送信する主局および2つの従局を地上装置とし、前記車両に配設され、前記地上装置から送信された電波を受信する受信手段と、この受信手段によって受信された各電波の受信時間差に基づいて、該車両の位置を検出する車両位置検出手段と、予め設定された該車両の目標経路およびこの目標経路上での車速指令を記憶している目標経路記憶手段と、前記車両位置検出手段によって検出された該車両の位置、および前記目標経路記憶手段から読み出した該車両の目標経路に基づいて、該車両の操舵角指令を演算する演算手段と、実際の操舵角を検出する操舵角センサと、実際の車速を検出するセンサと、前記演算手段によって演算された操舵角指令、および前記操舵角センサによって検出された実際の操舵角に基づいて、該車両の操舵角を制御する操舵角制御手段と、前記目標経路記憶手段から読み出した車速指令、および前記車速センサによって検出された実際の車速に基づいて、該車両の車速を制御する車速制御手段とを該車両の車載装置として備えたことを特徴とする車両の走行自動化システム。」(1頁左欄5行〜1頁右欄12行)、
(11-3).「磁界によって車両1に設けられた4つのピックアップコイル37a,37b,37cおよび37dに磁界強度に応じた信号がそれぞれ発生すると、これらの信号がピックアップアンプ38を介して第2の車両制御演算手段36に加えられる。第2の車両制御演算手段36はこれらの信号を入力すると、ピックアップコイル37aと37bの信号出力の差、およびピックアップコイル37cと37dの信号出力の差に基づいて車両1の誘導線に対するコースずれ量および姿勢角を検出する。そして、これらのコースずれ量および姿勢角に基づいて操舵角指令を求めるとともに、目標経路記憶手段3から上記角座標位置に対応する各車速指令を読み出し、これらの操舵角指令および各車速指令を示すそれぞれの信号を車両制御選択手段7に加える。車両制御選択手段7はこれらの信号を入力すると、上記操舵角指令に基づいて操舵制御を行うとともに、上記各車速指令に基づいて車速制御を行う。」(5頁左上欄1〜19行)等々。
(11-4).「車両位置検出手段5は上記のようにして車両1の現在位置(X、Y)をインターバルタイムτで求め、この位置を示す信号を第1の車両制御演算手段6に加える。第1の車両制御演算手段6は、この信号を入力すると、目標経路記憶手段3から目標経路Aについての各座標位置(XA1、YA1)〜(XAn、YAn)および車速指令を読出し、目標経路Aについての各座標位置及び車両1の現在位置に基づいて操舵指令を算出する。」(第3頁右上欄第17行〜同頁左下欄第5行)


[2].当審の判断
<1>.独立特許要件(特許法第29条第1項第3号)の検討
異議決定において、分割元出願と同一とされた、本件特許の請求項1、2、7、8は本件訂正にて削除されたものであるから、当該拒絶理由は解消されたものである。

<2>.独立特許要件(特許法第29条第2項)の検討
前記刊行物2〜11には、本件の請求項1及び請求項2に記載されている、「少なくとも観客がベットした状況」によってレース展開が変化する旨の記載、及びそれを示唆する記載は認められないから、「少なくとも観客がベットした状況」によってゲームのレース展開が変化する点は、当業者が容易に想到できたものとは認められない。
また、他に拒絶の理由を発見しない。

第五.まとめ
以上のように、訂正後の請求項1,2に記載された発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができない発明ではないから、本件審判請求は、平成6年改正前の特許法第126条第1項所定の事項を目的とし、同条2項乃至3項の規定にも適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
競争ゲーム装置及びその制御方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】複数の模型体がフィールド上を順位を競って走行する競争ゲーム装置であって、
前記複数の模型体が自由走行可能に配置されたフィールド面と、
前記フィールド面の下方に配置された走行面と、
前記フィールド面を挟んで対応する模型体のそれぞれと磁力を介して結合するように前記走行面上に配置され、それぞれに搭載された駆動手段によって自走可能に構成された複数の走行体と、
前記複数の走行体のそれぞれについて、所定の制御周期で各走行体の現在時刻における位置の座標値を順次検出する手段と、
前記複数の走行体のそれぞれに対し、前記所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブルを設定する手段とを有し、
前記複数の走行体のそれぞれについて、検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、これに基づき前記駆動手段を制御することにより、前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行するように構成されてなり、
前記走行テーブルは、少なくとも観客がベットした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成されることを特徴とする競争ゲーム装置。
【請求項2】複数の模型体がフィールド上を順位を競って走行する競争ゲーム装置の制御方法であって、
前記複数の模型体をフィールド面上に自由走行可能に配置し、
前記フィールド面の下方に配置された走行面上に、前記フィールド面を挟んで対応する模型体のそれぞれと磁力を介して結合するように複数の走行体を配置し、
前記複数の走行体は、それぞれに搭載された駆動手段によって自走可能であり、
前記複数の走行体のそれぞれに対し、所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブルを設定し、前記複数の走行体のそれぞれについて、前記所定の制御周期で各走行体の現在時刻における位置の座標値を順次検出し、
前記複数の走行体のそれぞれについて、検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、これに基づき前記駆動手段を制御することにより、前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行し、
前記走行テーブルは、少なくとも観客がベッドした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成されることを特徴とする競争ゲーム装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は複数の走行体が走行面を走行する競争ゲーム装置及びその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、工場内で製品等の荷物を運搬する無人運搬車のような自走車の走行は、床などの走行面に例えば白線により走行ラインを描き、自走車がこの走行ラインに沿って走行することにより行われている。無人運搬車が白線から外れそうになると、白線からのずれを無人運搬車が検知して、そのずれを無くすように無人運搬車の走行方向を修正している。
【0003】
このように、従来の無人運搬車は予め決められた走行ラインに沿って動くものであるため、無人運搬車の走行ラインを変えるには、走行ライン自体を引き直さなければならなかった。また、自走車が大きく走行ラインを外れた場合には修正が困難であった。さらに、状況を判断して自走車の走行ラインを変えたりすることは不可能であった。
【0004】
また、競馬、自動車レース等を模倣した従来の競争ゲームは、環状のトラック上を馬や自動車模型のような自走車を走らせて、到着順位を競ったり、到着順位を予想するものである。
しかしながら、この競争ゲームでは、自走車をあくまで決められた環状のトラック上しか走らせることができず、フィールド上の自由なコースを走って競争する実際の競馬や自動車レースに比べて臨場感に薄れ、興味も半減したものとならざるを得なかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来は、予め決められた走行ラインを外れないように自走車の走行を制御するものであり、走行ラインを必要に応じて変えたり、走行状況に応じて変えることができないので、無人運搬車の場合は必要に応じた適切な制御ができず、競争ゲームの場合は臨場感のあるゲームができなかった。
【0006】
本発明は、上記事情を考慮してなされたもので、臨場感に溢れ興味深い競争ゲームを楽しむことができる競争ゲーム装置及びその制御方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、複数の模型体がフィールド上を順位を競って走行する競争ゲーム装置であって、前記複数の模型体が自由走行可能に配置されたフィールド面と、前記フィールド面の下方に配置された走行面と、前記フィールド面を挟んで対応する模型体のそれぞれと磁力を介して結合するように前記走行面上に配置され、それぞれに搭載された駆動手段によって自走可能に構成された複数の走行体と、前記複数の走行体のそれぞれについて、所定の制御周期で各走行体の現在時効における位置の座標値を順次検出する手段と、前記複数の走行体のそれぞれに対し、前記所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブルを設定する手段とを有し、前記複数の走行体のそれぞれについて、検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、これに基づき前記駆動手段を制御することにより、前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行するように構成されてなり、前記走行テーブルは、少なくとも観客がベットした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成されることを特徴とする競争ゲーム装置によって達成される。
【0008】
また、上記目的は、複数の模型体がフィールド上を順位を競って走行する競争ゲーム装置の制御方法であって、前記複数の模型体をフィールド面上に自由走行可能に配置し、前記フィールド面の下方に配置された走行面上に、前記フィールド面を挟んで対応する模型体のそれぞれと磁力を介して結合するように複数の走行体を配置し、前記複数の走行体は、それぞれに搭載された駆動手段によって自走可能であり、前記複数の走行体のそれぞれに対し、所定の制御周期に対応して所定時間間隔で設定された、曲線を含む自由な走行ラインに沿った一連の走行目標位置の座標値を含む走行テーブルを設定し、前記複数の走行体のそれぞれについて、前記所定の制御周期で各走行体の現在時刻における位置の座標値を順次検出し、前記複数の走行体のそれぞれについて、検出された現在時刻における位置の座標値と対応する次の時刻における走行目標位置の座標値とに基づき次の時刻までの間に各走行体の進むべき走行方向および速度を含む前記駆動手段を制御するための駆動量を前記制御周期毎に順次演算し、これに基づき前記駆動手段を制御することにより、前記走行体のそれぞれが設定された走行テーブルに格納された制御周期毎の前記位置座標値によって規定される前記走行ラインに沿って走行し、走行体に牽引される各模型体が順位を競って前記自由な走行ラインに沿って走行し、前記走行テーブルは、少なくとも観客がベットした状況を要素として所定のアルゴリズムに従ってレースの度毎に作成されることを特徴とする競争ゲーム装置の制御方法によって達成される。
【0009】
本発明は、以上のように構成されているので、走行体の位置と進行方向を正確に検出することができ、走行体を自在に走行させることができるので、臨場感に溢れ興味深い競争ゲームを楽しむことができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明を図示の一実施形態により説明する。
図1乃至図9は本発明による自走車の走行制御装置を自動車レースゲームに応用した場合の実施形態について示している。
自動車レースゲーム全体の外観を図2に示す。横長の基台2の上面には環状のコース4が設けられ、このコース4上には模型自動車6が6台走行自在に配されている。基台2中は、図3に示すように中空になっており、この中空部分を介しコース4と対向して別個の走行面8が敷設されている。走行面8上には、コース4上の模型自動車6を走行させるための自走車10が配されている。模型自動車6には、コース4の表面から若干の隙間を介して磁石6aが固定されている。
【0011】
自走車10は前輪12と左右の後輪14l、14rにより支えらていて、後輪14l、14rはそれぞれモータ16l、16rにより独立に駆動される。自走車10の天板部分にはバネ18を介して板部材20が設けられている。板部材20にはコース4の下面を滑らかに移動するためにローラ22、24が設けられていて、板部材20全体がばね18によりコース4側に押付けられている。板部材20のコース4側には、コース4を介して模型自動車6の磁石6aと相対するように磁石26が取付けられている。なお、自走車10の前部には制御装置本体側からの光信号を受信するための受光素子27が取り付けられている。
【0012】
走行面8上を自走車10が走行すると、磁石26と磁石6aの吸着力により、コース4上の模型自動車6も同じ走路を走行する。したがって、自走車10の走行を制御することにより、模型自動車6の走行を制御することになる。
走行面8には後述する位置検出板28が全面に設けられていて、自走車10がどこにいても、その位置を検出できるようになっている。自走車10の下部には、位置検出板28と若干の隙間を介してコイル30f、30rが設けられている。コイル30fは前輪12近傍の自走車10の前部に取付けられており、コイル30rは後輪14l、14r近傍の自走車10の後部に取付けられている。これらコイル30f、30rと位置検出板28内に張巡らされた配線との相互作用により位置検出ができる。なお、種々の形態をしたコース4に対応するため、走行面8にはコース4のような走行コースはなく、配線は位置検出板28の全面になされている。
【0013】
本実施形態の全体構成を図1に示す。同図右側が自走車10の構成を示し、左側が制御装置本体の構成を示している。
先ず、制御装置本体の構成を説明する。
位置検出板28内には、図1に示すように、X軸の位置を検出するために縦方向に多数の電線34xが張られており、各電線34xの一端はX走査部36xの各スイッチに接続され、他端は共通接続されている。同様に、Y軸の位置を検出するために横方向に多数の電線34yが張られており、各電線34yの一端はY走査部36yの各スイッチに接続され、他端は共通接続されている。
現在走査しているX軸の座標値はX座標カウンタ40xのカウント値であり、このカウント値はXデコーダ38xによりデコードされ、X走査部36x中のそのカウント値に対応するスイッチがオンされる。同様に、現在走査しているY軸の座標値はY座標カウンタ40yのカウント値であり、このカウント値はYデコーダ38yによりデコードされ、Y走査部36y中のそのカウント値に対応するスイッチがオンされる。
【0014】
X座標検出手段42xとY座標検出手段42yにより自走車10の位置、正しくは自走車10のコイル30f、30rの位置が検出される。発振しているコイル30f、30rが電線34x、34yの上に位置すると、そのときには電線34x、34yにコイル30f、30rのそれぞれの発振周波数の電流が誘導する。X座標検出手段42xとY座標検出手段42yはこの誘導電流を検出して、X座標とY座標を検出する。
【0015】
X座標検出手段42xは、誘導電流が検出されたときのX座標カウンタ40xの値を座標値メモリ44に読込ませ、Y座標検出手段42yは、誘導電流が検出されたときのY座標カウンタ40yの値を座標値メモリ44に読込ませる。これにより、座標値メモリ44にコイル30f、30rの位置の座標が格納される。
走行テーブル46は、所定の走行ルートに沿い、所定の速度で動く自走車10の制御周期毎の位置座標を格納したものである。この位置座標が自走車10の目標位置の座標となる。走行テーブル46の具体例を図4に示す。各自走車10に図4(a)のような走行ルートをとらせたい場合には、図4(b)のような走行テーブル46となる。すなわち、各自走車10の各時刻における目標位置の座標値から走行テーブル46は構成されている。
角度誤差演算部48は、座標値メモリ44に格納された自走車10のコイル30f、30rの現在の位置座標と、走行テーブル46に定められた次の時刻の目標位置座標から、自走車10の角度誤差を演算する。同様に、接線方向誤差演算部50は、座標値メモリ44に格納された自走車10のコイル30f、30rの現在の位置座標と、走行テーブル46に定められた次の時刻の目標位置座標から、自走車10の接線方向誤差を演算する。また、平均速度演算部52は走行テーブル46の目標位置座標から、その時刻の平均速度γを演算する。
【0016】
角度誤差αと接線方向誤差βの演算方法を図5を用いて説明する。走行ルートをLとし、時刻tnにおける目標点をPnとする。目標点Pn,Pn+1,…を結ぶと走行ルートLになる。今、時刻tn-1とし、現在のコイル30fの位置をA、コイル30rの位置をBとする。ベクトルAPnとベクトルABのなす角が角度誤差αとなる。また、ベクトルAPnの絶対値と目標間隔lとの差が接線方向誤差βとなる。ここで目標間隔lは時刻tn-1から時刻tnの間に進むべき走行距離、すなわち、Pn-Pn-1である。なお、平均速度演算部52による平均速度γは(Pn-Pn-1)/(tn-1-tn)となる。
【0017】
右モータ速度演算部54rは自走車10の右側のモータ16rの駆動速度Vrを演算するもので、左モータ速度演算部54lは自走車10の左側のモータ16lの駆動速度Vlを演算するものである。平均速度γに基づいて駆動速度Vr、Vlのベース値を定め、接線方向誤差βに基づいて駆動速度Vr、Vlのベース値を同じ量だけ増減させ、角度誤差αが零になるように左右の駆動速度Vr、Vlをそれぞれ逆方向に増減させる。すなわち、駆動速度Vr、Vlは次式で示される関数形となる。
【0018】
Vr=f(γ)+g(β)+h(α)
Vl=f(γ)+g(β)-h(α)
命令作成部56は、右モータ速度演算部54rと左モータ速度演算部54lにより演算された駆動速度Vr、Vlでモータ16r、16lを駆動する命令を作成する。
【0019】
また、命令作成部56は、発振器68f、68rの発振をオンオフする命令も作成している。
命令作成部56で作成される命令の具体例を図6に示す。命令は、図6(a)に示すように、アドレス部と命令コードとデータ部とエラーをチェックするチェックコードから構成されている。
【0020】
アドレス部は命令する自走車10を特定するためのもので、このアドレス部の内容により命令される自走車10が定まる。
命令コードは命令の種類を示すものである。命令の種類としては、図6(b)に示すように、発振器68fを発振させる命令「11」と、発振器68rを発振させる命令「10」と、左モータ16lを駆動する命令「01」と、右モータ16rを駆動する命令「00」とがある。命令「11」と命令「10」のデータ部は発振器68f、68rをオンさせるかオフさせるかを指示し、命令「01」と命令「00」のデータ部は、モータ16r、16lの駆動速度を指示している。
【0021】
光通信ユニット58は、作成された命令を自走車10に通信するための光信号を生成して発信する。なお、自走車10が走行面8上のどの位置にいても光信号を受信できるように、光通信ユニット58の発光素子(図示せず)は、コース4と走行面8との間に形成される中空部の壁面に多数設けることが望ましい。
次に図1右側に示された自走車10の構成を説明する。
【0022】
増幅器60は、自走車10の前部に設けられた発光素子27からの受信信号を増幅し、復調直並列変換器62に出力する。復調直並列変換器62は、受信信号をデジタルデータに復調し、復調された直列のデータを並列のデータに変換する。
復調された命令のうち、命令コードは命令デコーダ64に送られる。命令デコーダ64はどの命令であるかどうかをデコードし、その結果をラッチ66r、66l、発振器68f、発振器68rに出力する。
【0023】
命令デコーダ64によるデコード結果がモータ駆動命令である場合は、データ部の内容をラッチ66l、66rにラッチする。
D/A変換器70l、70rは、ラッチ66l、66rにラッチされたデジタル信号の駆動速度をアナログ信号に変換する。増幅器72l、72rは変換されたアナログ信号を増幅して、左モータ16l、右モータ16rを駆動する。
【0024】
発振器68f、68rは、命令デコーダ64のデコード結果と復調直並列変換器62によりオンオフし、発振信号はコイル30f、30rから出力される。
次に本実施形態の動作を説明する。
図7は自動車レースゲームの進行状況を示すフローチャートである。
本実施形態は観客が自動車レースの到着順位を予想し、予想順位を賭けて楽しむものである。
【0025】
先ず、観客に対して表示装置(図示せず)にベットする条件を示す(ステップS1)。観客はその条件を見てそれぞれの予想に従ってベットする(ステップS2)。すると、自動車レースゲーム装置側では、▲1▼観客がベットした状況、▲2▼各自走車に性格付けされた条件(先行型、追上型等)、▲3▼ランダム性、▲4▼レースの面白さ、等を考慮して走行テーブル46の内容を決定する(ステップS3)。例えば、図8のように走行テーブル46の内容を決定する。図8で74はスタート位置であり、76はゴール位置である。丸数字は各時刻における各自動車の位置である。なお、図8では簡単のため3台の走行コースしか示していない。走行テーブル46の内容は、レースのたびに所定のアルゴリズムに従って作成してもよいし、多数種類の走行テーブルを用意しておいて選択するようにしてもよい。
【0026】
走行テーブル46の内容が決定されると、それに従って各自走車10を走行させる(ステップS4)。走行は制御周期毎に行われる。各制御周期における動作を図9のタイムチャートを用いて説明する。同図(a)は制御装置本体から自走車10に送られる光信号を示し、同図(b)は制御装置本体の動作を示す。先ず、命令作成部56が一方のコイル30fを発振させる命令を作成し、光送信ユニット58で光信号により送信する。すると、X座標カウンタ40x、Y座標カウンタ40yが0からカウントを開始し、X走査部36x、Y走査部36yがX方向とY方向のサーチを開始する。X座標検出手段42x、Y座標検出手段42yがコイル30fからの発振信号を検出すると、座標値メモリ44にX座標カウンタ40x、Y座標カウンタ40yのカウント値を格納するようにする。これにより自走車10の前部のコイル30fの位置座標を知ることができる。同様にコイル30rについても発振命令により発振させ、X座標検出手段42x、Y座標検出手段42yによりコイル30rからの発振信号を検出して、コイル30rの位置座標が座標値メモリ44に格納される。
【0027】
コイル30f、30rの位置の座標が座標値メモリ44に格納されると、角度誤差演算部48、接線方向誤差演算部50、平均速度演算部52により角度誤差α、接線方向誤差β、平均速度γを演算する。演算結果に従って、右モータ速度演算部54r、左モータ速度演算部54lは各モータ16r、16lの速度を演算する。この演算結果に従って命令作成部56がモータ駆動命令を作成し、この命令を光通信ユニット58が光信号にして発信する。自走車10の受光素子27がこの光信号を受信して、最終的にモータ駆動命令に従ってモータ16l、16rを駆動する。
【0028】
上記制御を制御周期毎に行ってレースが終了すると、そのレース結果に応じてベットした人に必要な支払いを行う。
このように本実施形態によれば自動車模型を自由な走行ラインに従って自在に走行させることができるので、臨場感に溢れ興味深い自動車レースゲームを楽しむことができる。
【0029】
図10及び図11は本発明による自走車の走行制御装置を自動車レースゲームに応用した場合の他の実施形態について示している。上記実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
本実施形態では位置検出板28の電線34x、34yを発振器78により発振させる。コイル受信命令によりコイル30f、30rは受信状態になり、受信器80f、80rにより電線34x、34yの発振を検出する。検出信号は増幅器82f、82rで増幅され、発光素子84に出力される。発光素子84は、検出信号に応じた光信号を発する。
【0030】
この光信号は光受信ユニット86で受信される。この受信信号は、タイミング調整部88によりタイミングの遅延が調整されて座標値メモリ44に入力され、X座標カウンタ40x、Y座標カウンタ40yのカウント値が格納される。
次に、各制御周期における動作を図11のタイムチャートを用いて説明する。同図(a)は制御装置本体から自走車10に送られる光信号を示し、同図(b)は制御装置本体の位置検出板28の電線34x、34yの発振信号を示し、同図(c)は自走車10の発光素子84からの光信号を示し、同図(d)は制御装置本体の動作を示す。
【0031】
ある制御周期が開始すると、命令作成部85は、一方のコイル30fの受信器80fを受信状態にする命令を作成し、光送信ユニット58によりその受信命令の光信号を発する。この光信号は受光素子27により受光され、最終的に命令デコーダ64によりデコードされ、コイル30fが受信状態になる。続いて、X座標カウンタ40xがカウントを開始し、X座標の位置を検出するための電線34xが順番に発振するようなX方向のスキャンが行われる。コイル30fが位置している電線34xが発振すると、その発振信号をコイル30fが検出し、その検出信号を発光素子84から光信号として発する。光受信ユニット86がこの光信号を受信したタイミングに基づいてX座標カウンタ40xのカウント値を座標値メモリ44に格納し、コイル30fのX座標の位置が検出される。Y座標についても同様にしてコイル30fにおける発振信号の検出タイミングによりY座標が座標値メモリ44に格納される。
【0032】
続いて、コイル30rの受信器80rを受信状態にする命令を光信号として自走車10に発して、コイル30rの位置の検出を行う。コイル30rによる発振信号の検出タイミングにより、コイル30fの場合と同様にしてコイル30rの位置のX座標値、Y座標値が座標値メモリ44に格納される。
コイル30f、30rの位置が検出されると、先の実施形態と同様の演算が行われ、その演算結果に応じてモータ16l、16rが駆動され、自走車10が次の目標位置に達するように制御される。
【0033】
このように本実施形態によっても自動車模型を自由な走行ラインに従って自在に走行させることができ、臨場感に溢れ興味深い自動車レースゲームを楽しむことができる。
【0034】
【0035】
【0036】
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。上記実施形態では自走車は2つの駆動手段により駆動されたが、3つ以上の駆動手段により駆動されるようにすれば、さらに複雑な制御が可能である。また、一方の駆動手段を前進又は後退させる速度制御を行うものとし、他方の駆動手段を方向を変更する方向制御を行うものとしてもよい。例えば、4輪で駆動する自走車の場合、後輪で速度制御をし、前輪で方向制御をする。さらに、速度制御と方向制御を1つの駆動手段で行ってもよい。4輪自走車の例では、前輪で自走車を前進又は後退もさせるし、左右に曲がる方向制御もするものである。要は速度制御と方向制御が出来るものであれば駆動手段の数はいくつでもよい。
【0037】
また、自走車の位置を検出するのに2点の位置を検出したが、3点以上の位置を検出するようにしてもよい。また、位置検出方式は、上記実施形態の電磁誘導方式の他に、静電誘導方式や超音波方式などの他の方式でもよい。
【0038】
【発明の効果】
以上の通り、本発明によれば、走行体の位置と進行方向を正確に検出することができ、走行体を自在に走行させることができるので、臨場感に溢れ興味深い競争ゲームを楽しむことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの全体構成を示すブロック図である。
【図2】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの外観を示す斜視図である。
【図3】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの自走車近傍の構造を示す図である。
【図4】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの走行テーブルの具体例を示す図である。
【図5】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの、角度誤差と接線方向誤差の演算方法の説明図である。
【図6】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの、命令の具体例を示す図である。
【図7】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの進行状況を示すフローチャートである。
【図8】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの、動作を説明するための図である。
【図9】
本発明の一実施形態による自動車レースゲームの、動作を説明するための図である。
【図10】
本発明の他の実施形態による自動車レースゲームの全体構成を示すブロック図である。
【図11】
本発明の他の実施形態による自動車レースゲームの、動作を説明するための図である。
【符号の説明】
2…基台
4…コース
6…模型自動車
8…走行面
10…自走車
12…前輪
14l、14r…後輪
16l、16r…モータ
18…バネ
20…板部材
22、24…ローラ
26…磁石
28…位置検出板
30f、30r…コイル
34x、34y…電線
36x…X走査部
36y…Y走査部
38x…Xデコーダ
38y…Yデコーダ
40x…X座標カウンタ
40y…Y座標カウンタ
42x…X座標検出部
42y…Y座標検出部
44…座標値メモリ
46…走行テーブル
48…角度誤差演算部
50…接線方向誤差演算部
52…速度演算部
54l…右モータ速度演算部
54r…左モータ速度演算部
56…命令作成部
58…光送信ユニット
62…復調直並列変換部
64…命令デコーダ
66l、66r…ラッチ
70l、70r…D/A変換器
78…発振器
80f、80r…受信器
84…発光素子
86…光受信ユニット
88…タイミング調整部
【図面】











 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-06-16 
出願番号 特願平11-159218
審決分類 P 1 41・ 121- Y (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神 悦彦瀬津 太朗  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 渡戸 正義
國分 直樹
藤井 俊二
塩崎 進
登録日 2000-07-07 
登録番号 特許第3084412号(P3084412)
発明の名称 競争ゲーム装置及びその制御方法  
代理人 北野 好人  
代理人 北野 好人  

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