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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない A47G |
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管理番号 | 1121880 |
審判番号 | 無効2004-35085 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-02-22 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-02-10 |
確定日 | 2005-06-20 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2962712号発明「墓用の蝋燭・線香立て構造」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯 (ア)本件特許第2962712号の請求項1及び2に係る発明についての出願は、平成10年8月10日に出願され、平成11年8月6日にその発明について特許の設定登録がなされたものである。 (イ)これに対して、審判請求人は、平成16年2月10日に本件特許の請求項1及び2に係る発明について無効審判を請求した。 (ウ)被請求人は、平成16年4月23日に訂正請求書を提出して訂正を求めた。 (エ)平成16年12月1日に口頭審理が実施された。 2.訂正の可否に対する判断 (ア)訂正の内容 上記訂正の内容は、次のとおりである。 (訂正事項a) 本件の特許請求の範囲の「【請求項1】 前面側に開閉扉(5)を備えた収容箱(1)と、蝋燭又は線香を立てる支持具(3,4)を備える板体(12)付きの保持台(2)と、から構成し、前記収容箱(1)の内部に前記保持台(2)を出し入れ自在に載置し得るようにしたことを特徴とする墓用の蝋燭・線香立て構造。」を、 「【請求項1】 前面側に開閉扉(5)を備えた収容箱(1)と、収容箱(1)内の前面端に該収容箱の底板(7)上面から着脱自在に設けた仕切板(6)と、蝋燭又は線香を立てる支持具(3,4)を着脱可能に備える平板状板体(12)付きの保持台(2)と、から構成し、前記収容箱(1)と平板状板体(12)は、御影石で成形され、前記収容箱(1)の内部に前記保持台(2)を出し入れ自在に載置し得るようにしたことを特徴とする墓用の蝋燭・線香立て構造。」と訂正する。 (訂正事項b) 本件の特許請求の範囲の【請求項2】を削除する。 (訂正事項c) 発明の詳細な説明の段落【0005】を「前記課題を達成するために、本発明は、前面側に開閉扉を備えた収容箱と、収容箱内の前面端に該収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板と、蝋燭又は線香を立てる支持具を着脱可能に備える平板状板体付きの保持台と、から構成し、前記収容箱と平板状板体は、御影石で成形され、前記収容箱の内部に前記保持台を出し入れ自在に載置し得るようにしたことを特徴とする。ここで、保持台の平板状板体は前記収容箱の底板上面とほぼ一致する形状のフラットな下面を有しており、前記底板上面に載置された際に、安定した状態で蝋燭や線香を支持するものであればよい。また支持具の個数は特別に限定するものではない。」と訂正する。 (訂正事項d) 発明の詳細な説明の段落【0006】〜【0008】、【0010】、【0011】の「板体」を「平板状板体」と訂正する。 (訂正事項e) 発明の詳細な説明の段落【0007】の「請求項2記載の発明のように、」を削除する。 (訂正事項f) 発明の詳細な説明の段落【0012】を「本発明によれば、使用後において蝋燭や線香の燃屑や残骸が残っても、収容箱の内部から支持具を備えた保持台を取り出すことが可能であるから、収容箱の外で前記燃屑や残骸の拭き取りが行えるので、清掃作業を手間取ることなく、迅速且つ確実に行うことができる。また、着脱自在な仕切板の存在によって、保持台を収容箱の底板上面に載置した際に、保持台が思わぬはずみでずり落ちないようにすることができ、しかも保持台を収容箱の内部にスライド式に取り付けたり、あるいは取り外すことが可能になり、保持台の着脱が容易になる。」と訂正する。 (訂正事項g) 発明の詳細な説明の段落【0013】を「収容箱と平板状板体を御影石で成形しているので、一般的に墓は御影石で成形されているものであるから、墓との統一感が生れ、外観上の体裁も良好になる。」と訂正する。 (訂正事項h) 【符号の説明】に「6 仕切板」を付加するとともに、「12 板体」を「12 平板状板体」と訂正する。 (訂正事項i) 【図1】中の符号の「板体12」を「平板状板体12」と、「6」を「仕切板6」と訂正する。 (イ)訂正事項の検討 上記訂正事項a〜iについて検討する。 訂正事項aは、訂正前の発明特定事項である「収納箱」について、願書に添付された明細書の段落【0009】及び【 0011】中の「収納箱1」ないし「仕切り板6」の記載及び【図1】の図示内容に基いて、「収容箱(1)内の前面端に該収容箱の底板(7)上面から着脱自在に設けた仕切板(6)と」との構成を限定するものであり、 また、訂正前の「蝋燭又は線香を立てる支持具(3,4)を備える板体(12)付きの保持台(2)」を、願書に添付された明細書の段落【0010】及び【0011】の記載に基いて、蝋燭又は線香を立てる支持具(3,4)を「着脱可能に」備える「平板状」板体(12)付きの保持台(2)と限定するものであり、 さらに、訂正前の「収納箱(1)」ないし「板体(12)」の材料に関し、願書に添付された明細書の段落【0010】及び【0011】の記載に基いて、「前記収容箱(1)と平板状板体(12)は、御影石で成形され、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。 訂正事項bは、請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。 訂正事項c〜e、g〜iは、上記訂正事項a、bに対応して、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明、符号の説明ならびに図面の記載との整合を図るものであり、不明りょうな記載の釈明を目的とした明細書又は図面の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。 同様に、訂正事項fは、願書に添付された明細書の段落【0009】及び【0011】の記載に基いて、上記訂正事項aに対応して、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであり、不明りょうな記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当しない。 そして、上記いずれの訂正事項も、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。 したがって、平成16年4月23日付けの訂正請求書による訂正は、特許法134条の2の規定によって準用する特許法126条第3、4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.審判請求人の主張する無効理由 審判請求人が提出した審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書ならびに上申書によれば、審判請求人は、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証を提出し、無効理由としては、次のとおり主張する。 (理由) 本件請求項1および2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第3号証に示された発明であるから特許法29条第1項第3号に、若しくは甲第4号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法29条第2項の規定に違反してなされたものであり、その特許は特許法123条第1項第2号により無効とされるべきである。 (証拠) 甲第1号証の1:有限会社川本商店の商品案内パンフレット 平成7年9月 作成 甲第1号証の2:甲第1号証の1の製作者及び発行者の証明書 甲第2号証の1:昆家之墓の写真 甲第2号証の2:北向家墓の写真 甲第2号証の3:上記甲第2号証の1及び同号証の2の撮影者細越俊美氏の 撮影記録証明書 甲第2号証の4:杉田家之墓の写真 甲第2号証の5:若林家墓の写真 甲第2号証の6:甲第2号証の4及び同号証の5の撮影者川本恭央氏の撮影 記録証明書 甲第3号証の1:馬淵家墓の写真 甲第3号証の2:金山家墓の写真 甲第4号証:特開平10-88867号公報 甲第5号証:甲第1号証の1における「ステンレス製供養箱」の説明図 甲第6号証:甲第1号証の1中にある脱着自在に構成された墓前用花立 甲第7号証:甲第3号証の2(金山家墓)の所有者の意見書 甲第8号証:甲第3号証の1(馬淵家墓)の収容箱の底板の状態を証明する 写真(a)〜(h) 甲第9号証:第3号証の1及び同号証の2に示された墓の製作者の陳述書 甲第10号証:審判請求人丸田清春の陳述書 甲第11号証:馬淵あや子の陳述書 甲第12号証:馬淵家の過去帳からの抜粋(写) 甲第13号証:審判請求人(株)スナダ石材の営業担当者の陳述書 甲第14号証:馬淵家墓建立時に契約された内容を示す説明図等(写) 甲第15号証:馬淵家墓建立時のおあたましの様子を撮影した写真(写)(a),(b) 甲第16号証:最近撮影した馬淵家墓の写真(a)〜(f) 甲第17号証の1:馬淵家墓とスナダ石材本社との位置関係を示す 住宅地図(写) 甲第17号証の2:スナダ石材本社の位置を示す住宅地図(写) 甲第17号証の3:馬淵家とその墓及びスナダ石材の旧展示場との位置関係 を示す住宅地図(写) 甲第17号証の4:甲第3号証の1の馬淵家墓の位置を特定する墓地見取図 甲第18号証:審判請求人丸田清春の陳述書 甲第19号証:被請求人から株式会社イイダ宛警告書(写) 甲第20号証:被請求人から丸田石材工業宛警告書(写) 甲第21号証:念書(写) 4.被請求人の主張 一方、被請求人が提出した答弁書、口頭審理陳述要領書ならびに上申書によれば、被請求人は、証拠として乙第1号証ないし乙第5号証を提出し、審判請求人の主張は相当でなく、本件発明は特許法123条第1項第2号によって無効とされるべきものではない旨反論している。 (証拠) 乙第1号証:金山家の墓の写真(a)乃至(i) 乙第2号証:馬淵家の墓前に設置してある収容箱の内部を示す写真 乙第3号証:本件特許発明の一実施形態例を示す写真(a)乃至(d) 乙第4号証の1及び2:石工業界同業者の陳述書 乙第5号証:馬淵家墓と(株)スナダ石材との距離を示す住宅地図 5.本件特許発明 上記訂正が認められるから、本件の請求項1に係る発明は、平成16年4月23日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されたとおりのもの(以下、「本件特許発明」という。)である(訂正事項a参照。)。 6.本件特許発明に対する判断 (ア)甲第1〜6号証、甲第8号証、甲第14号証、甲第15,16号証の内容 (1)甲第1号証の1 その第24頁には次の点が示されている。 前面側に開閉扉を備えた「ステンレス製供養箱」と、蝋燭又は線香を立てる「供養箱中ケース」と、前記「ステンレス製供養箱」の内部に「供養箱中ケース」が出し入れ自在に載置されている点及び「ステンレス製供養箱」の開口部左右下端部に「仕切片」が設けられている点。 (2)甲第2号証の1〜6、甲第3号証の2 平成7〜9年に青森県内において建てられた墓で、いずれも、正面には前面側開閉扉を備えた金属製収容箱が有り、その収容箱には、ローソク又は線香を立てる支持具を備えた板体付きの金属製保持台が、上記収容箱の内部に出し入れ自在に収容し載置できる点。 (3)甲第3号証の1、甲第8号証、甲第15,16号証、 甲第3号証の1、甲第8号証、甲第15,16号証はいずれも同一の馬淵家墓の写真であり、以下の内容が示されている。 (3-1)前面側に開閉扉を備えた収容箱があり、蝋燭又は線香を立てる支持具を備えた平板状板体付きの保持台が、上記収容箱の内部に出し入れ自在に載置し得るように構成された墓用の蝋燭・線香立て構造。 (3-2)開閉扉の下枠は、開閉扉を閉じる際に、収納箱底板の前側端部に刻設された長溝に納まる点。 (4)甲第4号証 「少なくとも線香立てとロウソク立てが内部に収納されるとともに、線香とロウソクを収納するための開口が正面板に形成された箱状の本体と、この正面板の開口を開閉する透明ガラスが嵌め込まれた扉とからなり、・・・墓前箱。」(【請求項1】) 「この墓前箱1は、図1に示すように、箱状の本体2と扉12とから構成されている・・・・まず、箱状の本体2は、金属製のもので、天板3と底板4と左右側面板5a,5bと正面板6と背面板(図示せず)から構成されている。・・・上記前面側6は、その中央部分が大きく開放された開口6aが形成されており、この開口6aに対して上記扉12が開閉するように構成されている。・・・ここで、本体2に内部に、図2に示すように、別部材である収納皿9を収納するようにすることが好ましい。・・・このような断面凹状の収納皿9に線香立て7等を形成することにより、線香7aの灰が本体1の内部に貯ったり、ロウソク8aのロウが流れることを防止することができ、本体2の内部の掃除がし易くなる。」(公報第2欄第29行〜第3欄第2行) 「本体の底板3上に収納された収納皿9に形成された線香立て7とロウソク立て8に線香7aとロウソク8aを各々立てる。この場合、扉12を解放して、上記収納皿9を本体12の内部に収納し、先に線香立て7とロウソク立て8に線香7aとロウソク8aを各々立て、その後に火をつけるようにすると良い。」(公報第4欄第30〜35行) (5)甲第5号証 甲第1号証の1に記載されている「ステンレス製供養箱」の開口部左右下端部に「仕切片」が設けられている点。 (6)甲第6号証 甲第1号証の1に記載されている脱着自在に構成された「墓前用花立」。 (イ)引用発明 上記6.(ア).(3)に記載した、甲第3号証の1、甲第8号証、甲第15,16号証の内容(3-1)、(3-2)からみて、馬淵家墓は以下の構成を備えているものと認める。 「前面側に開閉扉を備えた収容箱と、蝋燭又は線香を立てる支持具を備える平板状板体付きの保持台と、開閉扉を閉じる際に、収納箱底板の前側端部に刻設された長溝に納まる開閉扉の下枠とから構成され、収容箱の内部に上記保持台を出し入れ自在に載置し得るようにした墓用の蝋燭・線香立て構造。」(以下、「引用発明」という。) (ウ)本件特許発明と引用発明との対比 本件特許発明と引用発明とを比較すると、両者は「前面側に開閉扉を備えた収容箱と、蝋燭又は線香を立てる支持具を平板状板体付きの保持台と、から構成し、前記収容箱の内部に前記保持台を出し入れ自在に載置し得るようにしたことを特徴とする墓用の蝋燭・線香立て構造。」という点で一致し、以下の点で相違する。 【相違点1】 前者は「収容箱内の前面端に該収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板」を備えているのに対し、後者はそのような構成を備えているか明らかでない点。 【相違点2】 前者は「蝋燭又は線香を立てる支持具を平板状板付きの保持台に着脱自在に備え」ているのに対し、後者は支持具が着脱自在であるか不明である点。 【相違点3】 前者は「収容箱及び平板状板体は、御影石で成形され」たものであるのに対し、後者は収容箱及び平板状板体の材質が不明な点。 (エ)当審の判断 まず、相違点2について検討すると、蝋燭又は線香を立てる支持具を平板状板体付きの保持台に備える際に着脱自在とすることは、清掃や交換のしやすさ等を考慮して、当業者が適宜なしうる事項にすぎない。 相違点3については、御影石を墓の材料とすることは周知であることからみて、墓用の蝋燭・線香立てを構成する収納箱及び平板状板体を、御影石で成形されたものとすることは、単なる周知材料の選択にすぎない。 次に、相違点1について検討する。 この点に関し、審判請求人は、引用発明は、開閉扉を閉じる際に、収納箱底板の前側端部に刻設された長溝に納まる開閉扉の下枠を備えており、当該開閉扉の下枠は本件特許発明の仕切板と同じ機能を有する旨主張する(以下、「主張1」という。)ので、この主張について検討する。 引用発明の開閉扉の下枠は開閉扉と一体のものであり、開閉扉を閉じる際に、収納箱の底板の前側端部に刻設された長溝に納まるよう構成されており、開閉扉が開いた際には開閉扉とともに上方に移動してしまい収納箱の底板上面に留まることがないことは明らかである。 一方、本件特許発明の仕切板は、収容箱の底板上面から着脱自在に設けられたものであり、開閉扉が開いた際にも、底板上面に留まることができるものということができる。 そして、本件特許発明の仕切板の機能についてみると、本件特許明細書の段落【0009】「また、収容箱1内の前面端は開閉扉5,5の下端と接する仕切板6が設けてある。そして仕切板6の存在によって収容箱1の底板7が一段低くなるように形成されている。このように底板7上面を一段低くなるようにしたのは、前記保持台2を収容箱1の底板7上面に載置した際、保持台2が収容箱1の底板7上面から、思わぬはずみでずれ落ちないようにすると共に、外観上の体裁を考慮して保持台2下面側と底板7上面側との接地面を収容箱1の外部から見えなくするためである。」との記載、同段落【0011】「仕切板6を底板7上面から着脱自在に形成すれば、該底板7上面が収容箱1の外部まで段差がなくなってフラットな状態となるので、保持台2を収容箱1の内部にスライド式に取り付けたり、あるいは取り出すことが可能となり、保持台2の着脱がさらに容易に行える。」との記載、ならびに被請求人が提出した平成16年12月15日付け上申書の「寒冷地では、冬に墓全体が凍り、前記収容箱内の保持台も凍って収容箱の底板とくっつくが、時間の経過とともに氷が溶けて収容箱の底板と保持台との間に溜まっている水が作用して保持台が滑り動き、扉の内側で止まっている。このとき、知らずに扉を開ければ、収容箱から保持台が滑り落ちる危険がある。また、扉を開けた状態で、蝋燭・線香に火をつけてお参りしているとき、火の熱により氷が溶けて滑り落ちる危険もある。殊に、御影石からなる重い保持台は、収容箱から落下した場合には思わぬ怪我や保持台の破損を招く危険性が高い。このような場合を予め想定して、前記の仕切板を備えておれば、扉を開いた状態にしておいても保持台の移動を収容箱内で食い止めて落下防止ができ、前記危険性を未然に防ぎ、安心してお参りができるようになる。」との記載からみて、本件特許発明の仕切板は「開閉扉を開けた状態で収容箱内の平板状保持板がずれ落ちることを防ぐ機能」(以下、「ストッパ機能」という。)、「外観上の体裁を考慮して保持台下面側と底板上面側との接地面を収容箱の外部から見えなくする機能」(以下、「目隠し機能」という。)ならびに「底板上面が収容箱の外部まで段差がなくなって、御影石からなる重い保持台の着脱が容易に行える機能」(以下、「保持台着脱機能」という。)を兼ね備えているものと認められる。 してみると、審判請求人が本件特許発明の仕切板と同じ機能を有すると主張する引用発明の開閉扉の下枠は、上述のように収容箱内の前面端に該収容箱の底板上面から着脱自在に設けられたものでない点で構成上相違しており、さらに開閉扉が開いた際には開閉扉とともに上方に移動してしまい収納箱の底板上面に留まることがないものであるから、少なくとも上記ストッパ機能を有していないことは明らかであって、主張1は採用することができない。 したがって、本件特許発明は引用発明と、その発明特定事項である収容箱内の前面端に該収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板を備えている点で構成上相違しており、この点により本件特許発明は上記3つの機能を奏するものであるから、本件特許発明は引用発明と同一の発明であるということができない。 さらに、審判請求人は、本件特許発明の仕切板に相当するものが甲第1号証の1、甲第5号証に示されたステンレス製供養箱の仕切片として存在し、着脱自在とすることは設計事項である旨を主張(以下、「主張2」という。)するので、主張2について検討する。 上記仕切片は、「ステンレス製供養箱」の開口部左右下端部に設けられているものであるが、本件特許発明の発明特定事項である収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板を備えた点は、甲第1号証の1、甲第5号証に記載されておらず、その旨の示唆もない。 また、甲第1号証の1の「供養箱中ケース」と本件特許発明の保持板とが対応するものと考えられるが、本件特許発明の保持板は御影石で成形された重いものであるのに対し、「供養箱中ケース」の材質は明記されていないものの「ステンレス製供養箱」と一体として用いられることやその外観からみて「ステンレス製供養箱」と同様の薄い金属板から形成されたものと考えられ、御影石と比較すれば軽量のものであることが推認される。してみると、ストッパ機能および保持板着脱機能は保持板が重いことを前提とした機能であって、比較的軽量の「供養箱中ケース」を備えた「ステンレス製供養箱」において仕切片を着脱可能として、両機能を備えるという技術的課題もないというべきである。 したがって、収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板を備えるという構成上の相違により、上記「ステンレス製供養箱」は本件特許発明の機能を有していないことは明らかであるから、主張2も採用することができない。 そして、本件特許発明は甲第1号証の1、甲第5号証に示されたステンレス製供養箱と、その発明特定事項である収容箱内の前面端に該収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板を備えている点で構成上相違しており、この点により本件特許発明は上記3つの機能を奏するものであるから、本件特許発明は当該ステンレス製供養箱と同一の発明であるということができない。 さらに、審判請求人は本件特許発明は甲第4号証に記載されている墓前箱から、容易に発明をすることができたものであると主張(以下、「主張3」という。)するので、主張3について検討する。 甲第4号証をみても、「収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板」に相当する構成は見あたらない。そして、本件特許発明は上記「収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板」を備えたことにより、上記ストッパ機能、目隠し機能、保持台着脱機能を有するという顕著な効果を奏するものであるから、甲第4号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということもできないから、主張3も採用できない。 さらに、審判請求人の提出した甲第1号証〜甲第21号証のうち、すでに検討した甲第1号証の1、甲第3号証の1、甲第4号証、甲第5号証、甲第8号証、甲第16号証以外のものについて検討する。 甲第2号証の1,2,4,5に示されている墓の収容箱および保持台は薄い金属板から形成されたものであり、仕切板を備えるか否か明らかでない。したがって、甲2号証の1,2,4,5に示されたものは、本件特許発明の発明特定事項である「収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板」を備えた点、「収容箱と平板状板体は、御影石で成型され」た点を備えていない。 甲第3号証の2に示されている金山家之墓は、上記馬淵家墓と同じ構造であり、すでに検討したとおりである。 甲第6号証は墓前用花立を示したものであり、本件特許発明の発明特定事項が記載されているものではない。 甲第1号証の2、甲第2号証の3および6、甲第7号証、甲第9〜14号証、甲第17号証の1〜4、甲第18〜21号証は、それぞれ意見書、契約書、陳述書、警告書、地図、念書等であり、本件特許発明の発明特定事項が記載されているものではない。 以上のように甲第1〜21号証のいずれをみても、本件特許発明の発明特定事項である「収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板」を備えた点をみいだすことができないから、本件特許発明は、それらの公知日を検討するまでもなく、甲第1〜21号証に記載されたものと同一の発明であるということはできない。 さらに、本件特許発明は上記「収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板」を備えたことにより、上記ストッパ機能、目隠し機能、保持台着脱機能を有するという顕著な効果を奏するものであるから、同様に、甲第1〜21号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたということもできない。 なお、審判請求人は平成16年12月1日付けの口頭審理陳述要領書において、本件特許発明の「収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板」という発明特定事項に関し、「本件特許では『脱着可能な仕切板』と謳っているが、その脱着構造は、詳細な説明にも図面中にも具体的に示されていない。即ち、構成自体が不明瞭であり、このことは、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしておらず、特許の無効理由を有するものと解される。」と主張するので、この点について検討する。 まず、平成16年4月23日付けの訂正請求書に添付された訂正明細書および図面をみると、仕切板を収容箱の底板上面から着脱自在に設けるための具体的構造については記載されていない。しかしながら、被請求人が平成16年12月15日付けの上申書で主張するように、本件特許発明の収納箱は御影石で成形されており、当該収納箱の底板に対して着脱自在に仕切板を設ける手段は、例えば、脆さや堅さなど石の持つ特性により限定されるものであるから、その具体的構造を明細書に明示的に記載しなくとも、当業者が容易に実施することができるものといえる。 したがって、審判請求人の上記主張は採用することができない。 また、本件特許発明と審判請求人が提出した証拠に係る墓等との関係について付言すると、本件特許発明は、上記訂正請求が認められたため、平成11年10月12日発行の特許第2962712号公報の特許請求の範囲に記載されたものではなく、上記訂正明細書の特許請求の範囲に記載されたものとなった。すなわち、上述のように本件特許発明は、甲第1〜21号証と同一の発明ということはできない、いいかえれば、甲第1号証の1に係るステンレス製供養箱、甲第2号証の1に係る昆家之墓、甲第2号証の2に係る北向家墓、甲第2号証の4に係る杉田家之墓、甲第2号証の5に係る若林家墓、甲第3号証の1に係る馬淵家墓並びに甲第3号証の2に係る金山家墓の構造は本件特許発明と同一の発明を実施したものということはできない。 7.むすび 以上のとおりであるから、審判請求人の主張及び証拠方法によっては、本件特許発明についての特許を無効とすることができない。 審判に関する費用については、特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、審判請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 墓用の蝋燭・線香立て構造 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】前面側に開閉扉(5)を備えた収容箱(1)と、収容箱(1)内の前面端に該収容箱の底板(7)上面から着脱自在に設けた仕切板(6)と、蝋燭又は線香を立てる支持具(3,4)を着脱可能に備える平板状板体(12)付きの保持台(2)と、から構成し、前記収容箱(1)と平板状板体(12)は、御影石で成形され、前記収容箱(1)の内部に前記保持台(2)を出し入れ自在に載置し得るようにしたことを特徴とする墓用の蝋燭・線香立て構造。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、墓に備えられる蝋燭、線香立て構造に関する。 【0002】 【従来の技術】 墓の骨堂29の蓋石28前面側上面に備える蝋燭立てや線香立ては、図4、図5に示すように、風や雨を避けるため収容箱21内に入れられている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、前記のような蝋燭や線香立ては、収容箱21の底板27上面に蝋燭や線香を立てるホルダー23を直接打ち込んで固定されたものであったため、該ホルダー23を前記底板27から取り外すことができなかった。このことから、ホルダー23及びその近傍には蝋燭や線香の燃屑や残骸が残り、これを清掃する際は、扉25の箇所から収容箱21内部に手を差し入れて拭き取りを行わなければならず、この清掃作業が甚だ厄介であり、内部を常時きれいな状態にしておくことが困難であった。 【0004】 本発明は、蝋燭や線香を立てるホルダーや収容箱の底板の清掃が簡単且つ確実に行うことができる墓用の蝋燭、線香立て構造を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 前記課題を達成するために、本発明は、前面側に開閉扉を備えた収容箱と、収容箱内の前面端に該収容箱の底板上面から着脱自在に設けた仕切板と、蝋燭又は線香を立てる支持具を着脱可能に備える平板状板体付きの保持台と、から構成し、前記収容箱と平板状板体は、御影石で成形され、前記収容箱の内部に前記保持台を出し入れ自在に載置し得るようにしたことを特徴とする。ここで、保持台の平板状板体は前記収容箱の底板上面とほぼ一致する形状のフラットな下面を有しており、前記底板上面に載置された際に、安定した状態で蝋燭や線香を支持するものであればよい。また支持具の個数は特別に限定するものではない。 【0006】 このように形成すると、収容箱の内部から蝋燭や線香を立てる支持具が備えられた保持台を取り出すことが可能となり、支持具及び平板状板体上に残った蝋燭や線香の燃屑や残骸が、収容箱の外で拭き取りが行えるので、迅速且つ簡便に清掃作業を行える。 【0007】 また、収容箱と平板状板体を御影石で成形すれば、墓との材質が統一され、一体感が生まれるので外観上の体裁がよい。 【0008】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。 本墓用の蝋燭・線香立て構造は、前面側に開閉扉5,5を備えた収容箱1と、該収容箱1の底板7上面に載置され且つ平板状板体12の上面に蝋燭や線香を立てる支持具3,4を備えた保持台2と、から成っている。 【0009】 前記収容箱1は御影石で成形されており、該収容箱1の上方と下方には、それぞれ装飾を施した屋根8と台座9が設けてある。さらに収容箱1の前面側には観音開きの開閉扉5,5が取り付けてある。また、収容箱1内の前面端は開閉扉5,5の下端と接する仕切板6が設けてある。そして仕切板6の存在によって収容箱1の底板7が一段低くなるように形成されている。このように底板7上面を一段低くなるようにしたのは、前記保持台2を収容箱1の底板7上面に載置した際、保持台2が収容箱1の底板7上面から、思わぬはずみでずれ落ちないようにすると共に、外観上の体裁を考慮して保持台2下面側と底板7上面側との接地面を収容箱1の外部から見えなくするためである。 【0010】 前記保持台2を構成する平板状板体12は前記収容箱1と同様に御影石で成形されており、上下面ともにフラットに形成してある。該平板状板体12上面には、図2に示すように、ステンレスなどの金属で成形され且つ蝋燭の差込部11を備えるカップ状の数個の支持具3が、該平板状板体12の左右方向に沿って一列に打ち込み固定されており、また平板状板体12上面の中央位置のやや前側寄りには線香を立てる底の深い有底筒状の細長い一個の支持具4が打ち込み固定されている。これらの支持具3,4を支持する平板状板体12の大きさは、開閉扉5,5から前記収容箱1内にスムーズに出し入れできる大きさに形成してあるが、具体的には、平板状板体12の左右両端部が、共に開閉扉5,5に引っ掛からない幅で形成することが望ましい。 【0011】 また、平板状板体12の厚みと前記仕切板6の底板7上面からの形成高さを一致させれば、平板状板体12上面と仕切板6上面とが一致し、あたかも保持台2と底板7上面とが一体的に成形されているかのように見えるから、外観上の体裁も良好になる。さらに、仕切板6を底板7上面から着脱自在に形成すれば、該底板7上面が収容箱1の外部まで段差がなくなってフラットな状態となるので、保持台2を収容箱1の内部にスライド式に取り付けたり、あるいは取り出すことが可能となり、保持台2の着脱がさらに容易に行える。また、図3に示すように、蝋燭と線香の各支持具3,4を平板状板体12に固定する際、上記の打ち込み固定したもの以外にも、前記各支持具3,4の下端からそれぞれネジ状部材13を突設し、一方、平板状板体12に螺合孔14を設け、平板状板体12から各支持具3,4を着脱可能に形成したものでもよい。 【0012】 【発明の効果】 本発明によれば、使用後において蝋燭や線香の燃屑や残骸が残っても、収容箱の内部から支持具を備えた保持台を取り出すことが可能であるから、収容箱の外で前記燃屑や残骸の拭き取りが行えるので、清掃作業を手間取ることなく、迅速且つ確実に行なうことができる。また、着脱自在な仕切板の存在によって、保持台を収容箱の底板上面に載置した際に、保持台が思わぬはずみでずり落ちないようにすることができ、しかも保持台を収容箱の内部にスライド式に取り付けたり、あるいは取り出すことが可能になり、保持台の着脱が容易になる。 【0013】 収容箱と平板状板体を御影石で成形しているので、一般的に墓は御影石で成形されているものであるから、墓との統一感が生れ、外観上の体裁も良好になる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明の墓用の蝋燭・線香立て構造を示す説明図である。 【図2】 図1のB-B断面図である。 【図3】 保持台の他の類例を示す縦断面図である。 【図4】 従来の蝋燭・線香立て構造が備えてある墓の全体図である。 【図5】 図4のAを示す一部を切欠した要部拡大図である。 【符号の説明】 1 収容箱 2 保持台 3,4 支持具 5 開閉扉 6 仕切板 7 底板 12 平板状板体 【図面】 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2005-04-22 |
結審通知日 | 2005-04-26 |
審決日 | 2005-05-10 |
出願番号 | 特願平10-225937 |
審決分類 |
P
1
112・
121-
YA
(A47G)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松縄 正登 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
内藤 真徳 大元 修二 |
登録日 | 1999-08-06 |
登録番号 | 特許第2962712号(P2962712) |
発明の名称 | 墓用の蝋燭・線香立て構造 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 宮田 信道 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 恒田 勇 |
代理人 | 宮田 信道 |