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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01J 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J |
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管理番号 | 1122059 |
審判番号 | 不服2002-19353 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-09-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-03 |
確定日 | 2005-08-18 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 54407号「画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月27日出願公開、特開平 8-250044〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本願は、平成7年3月14日の出願であって、平成14年8月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月5日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成14年11月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年11月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 ガラス製フェースプレートの平滑な外表面に所定の屈折率を有する2層以上の膜からなる反射防止膜を有し、前記反射防止膜最表層の膜の外表面が平滑であるとともに、前記フェースプレートおよび前記反射防止膜最表層以外の膜の外表面に微細凹凸を有しており、前記微細凹凸は前記反射防止膜最表層以外の膜の中にチタンブラック粒子を混合分散させることにより得たものであることを特徴とする画像表示装置。」 と補正された。 上記補正は、請求項1中の「微細凹凸はチタンブラック粒子を混合分散させることにより得たものである」点の記載を、「微細凹凸は前記反射防止膜最表層以外の膜の中にチタンブラック粒子を混合分散させることにより得たものである」と変更するものであるが、これは、発明を特定するために必要な事項である「微細凹凸」に関し、「反射防止膜最表層以外の膜の中にチタンブラック粒子を混合分散させることにより得たもの」との限定を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮に相当するものと認められる。 したがって、上記補正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるものとされた同法[第1条の規定]による改正前の特許法(以下、「平成6年改正前特許法」という。)特許法17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用刊行物 (2-1)刊行物1 原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平3-179649号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 1a.「2.特許請求の範囲(1)陰極線管のフェースプレート外表面に反射防止膜が形成された反射防止型陰極線管において、上記反射防止膜が平均1次粒径が500Å以下の超微粒子を主成分として含む平均膜厚1000Å以下の凹凸層と、この凹凸層を覆うように形成されたSiO2を主成分とする平滑膜とから構成されていることを特徴とする反射防止型陰極線管。」(1ページ左下欄4行〜12行) 1b.「(作用)上記のように、平均1次粒径が500Å以下の超微粒子を用いて平均膜厚1000Å以下の凹凸層を形成し、この凹凸層上に凹凸をならすように覆うSiO2を主成分とする平滑膜を形成すると、超微粒子からなる凹凸層により所要の反射防止効果が得られ、その上に凹凸をならすように形成された平滑膜により、凹凸による表示画像の透過光の拡散を抑えて解像度の劣化を軽減する反射防止膜とすることができる。」(3ページ左下欄7行〜16行) 1c.「この例のカラー受像管の上記フェースプレート(1)外表面の反射防止膜(4)は、第2図に示すように、平均1次粒径が500Å以下のAl2O3・TiO2の超微粒子からなる平均膜厚1000Å以下の凹凸層(11)と、この凹凸層(11)の凹凸をならすように覆うSiO2を主成分とする平滑膜(12)とからなる2層構造に形成されている。」(4ページ左上欄5行〜11行) (2-2)刊行物2 原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-119888号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 2a.「【0016】従って本発明の陰極線管用パネルは、例えば鏡面研磨された外表面の上にCVD法によってSnO2 薄膜が形成され、さらにその上にSiO2 薄膜が形成された陰極線管用パネルガラスに比べても、低い反射率を有することになる。 【0017】すなわち多数の微細な凹凸を有するパネル外表面の上にCVD法によってSnO2 薄膜を形成すると、薄膜が凹凸形状に沿って均一な厚みで形成されるが、さらにその上にSiO2 薄膜をスピンコート法やディップコート法によって形成すると、凸部に比べて凹部に若干多めにSiO2 が埋まるため、SiO2 薄膜は不均一な厚みとなり、その結果、部所によって反射率が異なることになり、広い波長域に亙って低い反射率曲線を得ることが可能となる。 【0018】しかしながら鏡面研磨されたパネル外表面の上にCVD法によってSnO2 薄膜を形成し、その上にスピンコート法やディップコート法によってSiO2 薄膜を形成した場合、パネル外表面の全面において薄膜の厚みが均一になるため、いずれの部所も同じ反射率を有し、狭い波長域だけで低い反射率曲線が得られることになる。」 (3)対比・判断 刊行物1には、上記(2-1)1a.乃至1c.の記載から、以下の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されているものと認められる。 「陰極線管のフェースプレート外表面に反射防止膜が形成された反射防止型陰極線管において、上記反射防止膜が平均1次粒径が500Å以下のAl2O3・TiO2の超微粒子を主成分として含む平均膜厚1000Å以下の凹凸層と、この凹凸層の凹凸をならすように覆うSiO2を主成分とする平滑膜とから構成されていることを特徴とする反射防止型陰極線管。」 本願補正発明(前者)と上記刊行物1記載の発明(後者)とを対比する。 後者の「陰極線管のフェースプレート」は、通常ガラス製であり、その表面は平滑であるから、前者の平滑な外表面を持つ「ガラス製フェースプレート」に相当し、後者の「反射防止型陰極線管」は、前者の「画像表示装置」に相当する。後者の「反射防止膜」は、「凹凸層」と、この凹凸層の凹凸をならすように覆う「平滑膜」とから構成されており、「凹凸層」と「平滑膜」は、それぞれ所定の屈折率を有するものと認めれるから、後者の「反射防止膜」は、前者の2層以上の膜からなる「反射防止膜」に相当し、後者の「平滑膜」、「凹凸層」は、前者の「反射防止膜最表層の膜」、「反射防止膜最表層の以外の膜」に相当するものである。後者の凹凸層に凹凸を形成するために含まれるAl2O3・TiO2の超微粒子と前者の反射防止膜最表層以外の膜の中に、その外表面に微細凹凸を得るために混合分散されたチタンブラック粒子は、前記相当関係も勘案すれば、ともに、反射防止膜最表層以外の膜の中に、その外表面に微細凹凸を得るために含有された超微粒子と言えるものである。 したがって、両者は、 「ガラス製フェースプレートの平滑な外表面に所定の屈折率を有する2層以上の膜からなる反射防止膜を有し、前記反射防止膜最表層の膜の外表面が平滑であるとともに、前記フェースプレートおよび前記反射防止膜最表層以外の膜の外表面に微細凹凸を有しており、前記微細凹凸は前記反射防止膜最表層以外の膜の中に超微粒子を含有させることにより得たものであることを特徴とする画像表示装置。」 の点の構成で一致し、以下の点で相違する。 [相違点] 前者が、反射防止膜最表層以外の膜の中にチタンブラック粒子を混合分散させて微細凹凸を得ているのに対し、後者は、Al2O3・TiO2の超微粒子を含ませて凹凸層を形成している点。 上記相違点について検討する。 (ア)前者がチタンブラックを用いた点に関しては、本願明細書の段落0023に「凹凸を形成するために混入する粒子として、チタンブラックを用いた場合は、黒色顔料としての特徴から高屈折率層の透過率がコントロールできるという効果を得ることができる。また、チタンブラックは、他の材料に比べて所望の粒径のものを比較的入手しやすいという特長がある。」と記載されているように、チタンブラックにより光透過率の調節を行うものである。 チタンブラックは、黒色顔料として種々の分野で用いられている酸化チタンの黒色粉末であり、チタンブラックを反射防止膜を形成する高屈折率膜層中に含有させ光透過率の調節を行うことは、例えば、特開平6-80903号公報にはチタンブラックを反射防止膜を形成する高屈折率膜層中に含有させて黒色系着色導電性微粉末として用いることが記載されており、特にその11ページ左欄段落0036に「黒色系着色導電性微粉末を多く入れ過ぎるとガラスの光透過率が著しく低下し、その結果、陰極線管の輝度が著しく低下するといった不具合が生じる。」と記載されていることからも示唆されるように従来周知の事項と認められる。 (イ)反射防止膜最表層以外の膜に設けた微細凹凸の点に関して、本願明細書の段落0021に「【図3より明らかなように、曲線aで示す本発明の実施例のCRTは、曲線bで示す従来例と比較して可視光の広い領域にわたってよりブロードな波長―反射率特性を得ることができることがわかる。これは、本発明の実施例における反射防止膜では、高屈折率層3の表面に形成された凹凸によって反射光の平均化作用をもたらすためと考えられる。すなわち、高屈折率層3を微視的に見れば、それぞれの位置で凹凸に応じて約100〜130nmの範囲で膜厚が異なっている。また、これに応じて低屈折率層4の膜厚も約70〜100nmの範囲で変化している。多層膜の干渉作用による各波長に対する反射率特性は、各層の膜を構成する材料による屈折率が同じ場合はその膜厚によって定まる。つまり、本発明の画像表示装置の反射防止膜は、2層が部分部分で微視的に異なる膜厚を持つので、その部分での反射率も微視的に異なっている。しかし、観視者である人間の目の解像力はこのような微視的な変化を認識することができないので、あたかもこのような微視的な反射率特性が平均化されて、反射防止膜全体としてみると、層数の少ない膜構成にもかかわらずブロードな波長-反射率特性を得ることができるのである。」と記載されている。 この前者の「反射防止膜は、2層が部分部分で微視的に異なる膜厚を持つので、その部分での反射率も微視的に異なっている。しかし、観視者である人間の目の解像力はこのような微視的な変化を認識することができないので、あたかもこのような微視的な反射率特性が平均化されて、反射防止膜全体としてみると、層数の少ない膜構成にもかかわらずブロードな波長-反射率特性を得ることができるのである。」の点に関しては、刊行物2に、「凸部に比べて凹部に若干多めにSiO2 が埋まるため、SiO2 薄膜は不均一な厚みとなり、その結果、部所によって反射率が異なることになり、広い波長域に亙って低い反射率曲線を得ることが可能となる。」(上記(2-2)2a.の段落0017の記載参照)との記載があり、この記載からみて、薄膜に設けた凹凸により微視的に反射率が異なるものの反射防止膜全体としてみるとこのような微視的な反射率特性が平均化されてブロードな波長-反射率特性を得ることができることが刊行物2にも示唆されているものと認められる。 (ウ)微細な凹凸をその膜の外表面に形成させるために膜中に微粒子を混合分散させる点については、後者も、凹凸層は平均膜厚1000Å(100nm)以下であり、平均1次粒径が500Å(50nm)以下のAl2O3・TiO2の超微粒子を主成分として含むものであるから、実質的にAl2O3・TiO2の超微粒子が凹凸層に混合分散されているものと認められる。 なお、この点に関連し、審判請求人は、請求の理由において、「引用文献1(当審注;本審決中でいう「刊行物1」)に記載のものにおいて、Al2O3・TiO2の超微粒子はそれ自体が凹凸を形成し、それ自体が1つの層を形成しています。すなわち、Al2O3・TiO2の超微粒子そのものが1つの層として捉えられるべきものです。したがって、引用文献1に記載のものは、SiO2層の中に微粒子を混合分散してその微粒子によってSiO2層の外表面に凹凸を形成する、すなわちSiO2層という1つの層の中に別の微粒子をさらに含むという本願発明とは、膜の構造が異なっています。また、引用文献1に記載のものは、上記の膜構造を有することにより、本願発明と作用・効果も異なります。引用文献1に記載のものは、超微粒子からなる凹凸層の拡散により所要の反射防止効果が得られ、その上に凹凸をならすように形成された平滑膜により、凹凸による表示画像の透過光の拡散を抑えて解像度の劣化を軽減する反射防止膜を得ようとするものです。あくまでも、凹凸による拡散効果と、平滑膜による透過光の拡散抑制を意図したものです。第2図に示されるように、フェースパネル1上には、凹凸膜11が存在せず、平滑膜12が直接形成されている部分が存在しています。この部分では、膜が1層構造であるため、2層の屈折率の違いによる光の干渉作用を利用して反射防止効果を得ることができません。引用文献1に記載のものが、凹凸膜11と平滑膜12の2層構造の光干渉膜を意図したものでないことは、第2図の記載からも明らかです。」と主張しているが、刊行物1の図2は、発明の実施例として示されたものであり(上記(2-1)の1c.の記載参照)、図2に示されるものが、請求人の主張するように、超微粒子それ自体が凹凸を形成し、1つの層を形成しているかのようにみてとれるとしても、上記刊行物1記載の発明の凹凸層は、平均1次粒径が500Å(50nm)以下のAl2O3・TiO2の超微粒子を主成分として含むものとして構成されており、これを請求人の主張するような構成に限定して解釈すべき理由もないから、上記請求人の主張は採用しない。 したがって、上記(ア)に示されるような膜層中にチタンブラック含有させて、このチタンブラックにより光透過率の調節を行うという周知の技術事項を勘案すれば、混合分散されて凹凸層の表面に凹凸を形成し、この凹凸により上記(イ)に記載されたものと同様の作用効果を奏するものと認められる後者の超微粒子に代えて、チタンブラックを用い本願補正発明のように構成することは当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。 そして、本願補正発明による効果も、刊行物1及び2の記載並びに周知事項から当業者が予測しうる範囲のものにすぎない。 したがって、本願補正発明は、刊行物1及び2に記載された発明並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法126条第3項の規定に違反するものであり、特許法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成14年11月5日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成13年11月26日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 ガラス製フェースプレートの平滑な外表面に所定の屈折率を有する2層以上の膜からなる反射防止膜を有し、前記反射防止膜最表層の膜の外表面が平滑であるとともに、前記フェースプレートおよび前記反射防止膜最表層以外の膜の外表面に微細凹凸を有しており、前記微細凹凸はチタンブラック粒子を混合分散させることにより得たものであることを特徴とする画像表示装置。」 4.引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1及び2並びにその記載事項は、前記「2.(2)」の(2-1)及び(2-2)に記載したとおりのものである。 5.対比・判断 請求項1に係る発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「微細凹凸」の限定事項である「反射防止膜最表層以外の膜の中にチタンブラック粒子を混合分散させることにより得たもの」の構成から「反射防止膜最表層以外の膜の中に」の点を省き、「チタンブラック粒子を混合分散させることにより得たもの」としたものである。 そうすると、請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、更に他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり引用刊行物記載の発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る発明も、同様の理由により、刊行物1及び2記載の発明並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、請求項1に係る発明は、刊行物1及び2記載の発明並びに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-14 |
結審通知日 | 2005-06-21 |
審決日 | 2005-07-05 |
出願番号 | 特願平7-54407 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01J)
P 1 8・ 121- Z (H01J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 3L案件管理書架D、村井 友和、堀部 修平、小島 寛史 |
特許庁審判長 |
上田 忠 |
特許庁審判官 |
杉野 裕幸 山川 雅也 |
発明の名称 | 画像表示装置 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 内藤 浩樹 |
代理人 | 坂口 智康 |