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審決分類 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1122071
審判番号 不服2002-17456  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-08-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-10 
確定日 2005-08-18 
事件の表示 特願2000-181019「光学近接効果の偏差低減方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月24日出願公開、特開2001-230200〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成12年6月16日(パリ条約による優先権主張2000年2月15日、台湾)の出願であって、平成14年6月6日付けで拒絶査定がなされ、平成14年9月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年10月9日付で手続補正がなされ(後日補正却下)、その後、最後の拒絶理由通知がなされ、平成16年12月9日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年12月9日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月9日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「半導体のフォトリソグラフィ工程における光学近接効果の偏差低減方法であって、半導体基板におけるそれぞれの露光エリアを、前記光学近接効果の偏差に影響を及ぼす、レジストの厚さの前記半導体基板上における分布、前記レジストの種類、前記半導体基板の種類と厚さ及び反射率の前記半導体基板上における分布に基づいて、露光エリア群にグループ分けし、前記露光エリア群毎に露光パラメータの設定を調整することによって、各前記露光エリア間の光学近接効果の偏差を補償することを特徴とする光学近接効果の偏差低減方法。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「半導体基板におけるそれぞれの露光エリアの光学近接効果の偏差に応じて、毎度の露光プロセスの露光パラメータ設定を調整する」を、「半導体基板におけるそれぞれの露光エリアを、前記光学近接効果の偏差に影響を及ぼす、レジストの厚さの前記半導体基板上における分布、前記レジストの種類、前記半導体基板の種類と厚さ及び反射率の前記半導体基板上における分布に基づいて、露光エリア群にグループ分けし、前記露光エリア毎に露光パラメータの設定を調整する」と限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)当審の拒絶の理由に引用された引用例
引用例1 特開平10-135099号公報

(2).1 引用例1の記載内容
引用例1の【0002】段落には、「【従来の技術】半導体装置の製造において、フォトリソグラフィによりパターニングする際、フォトレジスト膜上に露光して形成したパターン線幅は、半導体装置の動作特性を左右する極めて重要な因子である。」と記載されている。
引用例1の【0007】段落には、
「【0007】…本発明に係る露光装置は、ウエハ上のフォトレジスト膜にパターンを露光する露光装置において、ウエハ面内での設定線幅と形成線幅との差、即ち線幅偏差がウエハ中心からの距離に対して正規分布曲線に従って分布するという関係と、及び、所定の露光、及び現像条件で露光し、現像した試料ウエハの一の直径方向及びその直径方向に直交する方向に沿って設定した複数の測定位置で測定したパターンの線幅測定値とに基づき、試料ウエハの任意に選定した位置での予測線幅を算出する第1の算出手段と、第1の算出手段で算出した予測線幅に基づいて線幅と露光量との相関関係に従って、選定位置で設定線幅を得るような、選定位置での所要露光量を算出する第2の算出手段とを備えていることを特徴としている。」と記載されている。
引用例1の【0015】〜【0016】段落には、
「【0015】露光方法の実施例
上述の露光装置10を使用して、MOSトランジスタのゲート電極パターンを形成するためにポジ型フォトレジスト・パターンを形成する場合を例にして、本露光方法の実施を説明する。
1)先ず、フォトレジスト膜を塗布した同じロットに属する複数枚のウエハから一枚のウエハを選定して試料ウエハとし、試料ウエハ上に所定の露光、及び現像条件でパターンを露光し、現像する。
2)次いで、図2及び図3に示すように、試料ウエハの一の直径方向及びその直径方向に直交する方向に沿ってほぼ等間隔に設定した複数の測定位置P1からP5及びP1´からP5´でパターンの形成線幅を測定する。
【0016】3)ウエハ面内での設定線幅と形成線幅との差、即ち線幅偏差がウエハ中心からの距離に対して正規分布曲線に従って分布するという関係に従って、線幅測定値に基づき試料ウエハの任意に選定した位置、例えば星印位置での予測線幅偏差を算出し、設定線幅と予測線幅偏差から予測線幅を求める。
4)次いで、図4に示すような線幅と露光量と相関関係に従って、予測線幅に基づき、選定位置で設定線幅を得るような、選定位置での所要露光量、例えば所要露光時間を前述のように算出する。続いて、例えば、図5に示すように、各選定位置に対して所要露光時間をそれぞれ算出する。本実施例の場合、ウエハの中心部は、ポジ型フォトレジスト膜が周辺に比べて比較的薄くしかも均一に形成されるので、例えば線幅長0.32μmの場合、最適露光時間は400msecとなる。一方、ウエハ周辺部では、フォトレジスト膜の膜厚が比較的厚くなるために、線幅を同じ0.32μmにするには、露光位置に応じて420msecから450msecの露光時間が必要となる。図5中、20はパターニングを施すウエハ、22はウエハ20上の各チップを意味する。尚、図5中、各選定位置に示した数値は、露光時間であって、単位のmsecを省略している。」と記載されている。
引用例1の図5には、チップ22を記載したウエハが示されており、当該ウエハ20には、400の数値を記した複数のチップ22及び420の数値を記した複数のチップ22が図示されている。

(2).2 引用例1記載の発明
引用例1には、半導体装置の製造において、フォトリソグラフィによりパターニングする際、ウエハの中心部は、ポジ型フォトレジスト膜が周辺に比べて比較的薄くしかも均一に形成され、ウエハ周辺部では、フォトレジスト膜の膜厚が比較的厚くなるため、ウエハ面内での設定線幅と形成線幅との差、即ち線幅偏差を算出し、設定線幅と予測線幅偏差から予測線幅を求め、次いで、線幅と露光量と相関関係に従って、予測線幅に基づき、選定位置で設定線幅を得るような、選定位置での所要露光量、例えば所要露光時間を算出し、図5に示すように、各選定位置に対して所要露光時間をそれぞれ算出し、露光時間で露光し、すべてのチップの線幅が同じになるようにする発明が記載されている。

(3)本願補正発明と引用例1に記載された発明の対比・判断

引用例1に記載された発明の、「半導体装置の製造において、フォトリソグラフィによりパターニング」、「ウエハ」、「チップ」及び「選定位置での所要露光量例えば所要露光時間を算出」は、それぞれ、本願補正発明の「半導体のフォトリソグラフィ工程」、「半導体基板」、「露光エリア」及び「露光パラメータの設定を調整する」に相当する。
また、本願補正発明の偏差は、マスクのパターンと露光後の形成パターンの差を意味するから、引用例1に記載された発明の、「形成線幅を一定にする」ことは、本願補正発明の、「偏差を補償する偏差低減方法」に実質的に相当する。
さらに、引用例1の図5を参照すると、同一の数字(当該数字は露光時間を表す)を付したチップ22の群が複数記載されているから、引用例1記載の発明においても、本願補正発明の、「露光エリア群にグループ分けし、前記露光エリア群毎に露光パラメータの設定を調整する」構成を有している。
そうすると、引用例1に記載された発明と本願補正発明は、
「半導体のフォトリソグラフィ工程における偏差低減方法であって、半導体基板におけるそれぞれの露光エリアを、前記偏差に影響を及ぼす、レジストの厚さの前記半導体基板上における分布、に基づいて、露光エリア群にグループ分けし、前記露光エリア群毎に露光パラメータの設定を調整することによって、各前記露光エリア間の偏差を補償することを特徴とする偏差低減方法。」
において一致し、以下の点で両者は相違する。
相違点1
本願補正発明が、「光学近接効果の偏差低減方法」であるのに対し、引用例1に記載された発明は、偏差が光学近接効果に基づくとの記載がない点で相違する。
相違点2
本願補正発明が、露光エリア群のグループ分けについて、「レジストの厚さの前記半導体基板上における分布」の他に、「レジストの種類、前記半導体基板の種類と厚さ及び反射率の前記半導体基板上における分布」にも基づいているのに対し引用例1記載の発明では、文言上当該記載がない点で相違する。

上記相違点1について検討する。
半導体装置の製造方法において、光学近接効果に基づく偏差を、本願補正発明と同様に、露光パラメータの設定を調整することにより低減することは周知手段(例えば、特開平11-72924号公報、特開平6-120102号公報及び特開平7-94378号公報等参照)である。
上記相違点1については、引用例1記載の発明を光学近接効果に基づく偏差の場合にも適用することは、当業者が容易に想到できたものである。

上記相違点2について検討する。
レジストの種類、前記半導体基板の種類と厚さ及び反射率の前記半導体基板上における分布は、露光パラメータとして半導体ウエハの露光において当業者が当然考慮する事項であり、当該事項を考慮することに何ら阻害要因はなく、また、引用例1においても、試料ウエハを用い、線幅測定が行われており、ウエハに対しては通常、種類の異なるレジストが目的に応じて適宜用いられ、かつ、ウエは自体も目的に応じて適宜用いられるから、引用例1における上記線幅測定においては、当然、レジストの種類、前記半導体基板の種類と厚さ及び反射率の前記半導体基板上における分布を考慮していることになる。
従って、相違点2については、当業者が当然考慮する設計事項にすぎない。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用例1記載の発明及び周知の事項から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1記載の発明、周知の事項及び設計事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

[むすび]
以上のとおりであるから、上記補正は、上記理由により、却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年12月9日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、本願出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「半導体写真製版工程に応用される光学近接効果の偏差減少方法であって、半導体基板におけるそれぞれの露光エリアの光学近接効果の偏差に応じて、毎度の露光プロセスの露光パラメータ設定を調整することによって、露光エリアの光学近接効果の偏差を補償し、固定で均一な光学近接効果の結果を得られることを特徴とした光学近接効果の偏差減少方法。」

(1)引用例
当審の拒絶の理由に引用された引用例1及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、露光パラメータの設定のための限定事項である、「レジストの厚さの前記半導体基板上における分布、前記レジストの種類、前記半導体基板の種類と厚さ及び反射率の前記半導体基板上における分布に基づいて、露光エリア群にグループ分け」との構成を省くものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例1記載の発明、周知の事項及び設計事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1記載の発明、周知の事項及び設計事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1記載の発明、周知の事項及び設計事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-22 
結審通知日 2005-03-23 
審決日 2005-04-06 
出願番号 特願2000-181019(P2000-181019)
審決分類 P 1 8・ 574- WZ (H01L)
P 1 8・ 121- WZ (H01L)
P 1 8・ 561- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 新井 重雄  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 柏崎 正男
辻 徹二
発明の名称 光学近接効果の偏差低減方法  
代理人 小原 健志  
代理人 中川 博司  
代理人 舘 泰光  
代理人 三枝 英二  
代理人 斎藤 健治  
代理人 掛樋 悠路  

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