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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01J |
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管理番号 | 1122072 |
審判番号 | 不服2002-17091 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-04-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-09-05 |
確定日 | 2005-08-18 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 52815号「蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月10日出願公開、特開平10- 92321〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯及び本願発明 本願は、平成9年3月7日(優先権主張平成8年3月8日、平成8年7月22日)の出願であって、その請求項1ないし9に係る発明は、平成14年5月28日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 (本願発明) 【請求項1】 ガラス管内に水銀を含有する合金を封入し、前記ガラス管の端部と前記合金との接触部分および前記接触部分の近傍に放射ビームエネルギーを加えて前記ガラス管内壁面に前記合金を固着する蛍光ランプの製造方法であって、放射ビームエネルギー源には紫外線放射体、可視光放射体および赤外線放射体の中から選ばれるランプを用いたことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-338286号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 a.「本発明は、水銀を定量封入した蛍光ランプなどの低圧水銀蒸気放電ランプに関する。」(段落0001) b.「図1は、本発明の第一の実施例の蛍光ランプの一部断面図である。図において11は鉛成分を含まないソーダライムガラスからなる環状のメインチューブであり、内部には水銀およびアルゴン等の希ガスを含む可電離性媒体が封入されている。12はメインチューブ内面に形成した蛍光発光層である。13は電極であって、電極13は鉛ガラスからなるステム14に設置されている。ステム14には排気管15が設けられている。メインチューブ11とステム14の境界部16には節部17がモールド整形されている。・・・節部17は本来直状のガラス管を環状に整形するときにこの節部17をチャックで掴むためのものである。しかしながら、本実施例では節部17を環状に整形するためだけでなく、水銀放出金属基体18を固定するためにも用いる。すなわち、この節部17のより端部側の蛍光発光層13の形成されていない部分に水銀放出金属基体18を固定している。この水銀放出金属基体18は水銀を放出した後の金属であり、亜鉛Znを主成分としたものである。このものの水銀放出前は水銀との合金(水銀濃度50ないし60重量%の過剰溶融したもので、この合金自体は知られている)を形成している」(段落0018、0019) c.「封入量は、水銀放出前は水銀との合金の状態で直径約1.5mmの大きさの粒1個であるが、これよりも小さいものを数個封入してもよい。・・・このようなランプは以下のようにして製造される。蛍光体焼成行程等を経て内面に蛍光発光層12を形成したソーダライムガラスバルブからなる直状のメインチューブ11の両端に、電極13と排気管15を具備した鉛ガラスからなるステム14を封止する。このとき、2つのうちの一方の排気管は閉塞されていて、他方は閉塞されていない。また、ステム14を封止するとき、ガラスが柔らかいうちに、メインチューブ11とステム14の境界部16に節部17が形成されるようモールド整形される。メインチューブ11の両端の封止、モールド工程を終了後、排気管が閉塞されている端部を下にしてガラスバルブ全体を加熱し、メインチューブ11を軟化させる。その後下側の節部17を掴んで曲げ、円形ドラムに巻き付けて環状に整形する。このとき、ガラスバルブ内のガス圧を高めて、メインチューブ11が潰れないようにする。その後、ランプ全体を加熱しながら閉塞されていない排気管15から排気を行い、希ガスを封入した後、水銀放出前の、すなわち水銀を含有した水銀放出金属基体18を排気管15からランプ内に入れる。その後排気管をチップオフする。水銀を含有した水銀放出金属基体18を入れる際、メインチューブ11、ステム14を含めてかなり高温になっており、水銀放出金属基体18は重力下側に落下して節部17近傍の境界部16に移動する。水銀放出金属基体18は、そこで高温のメインチューブ11とステム14の境界部16に接触し、・・・若干の加熱(ガラスバルブの軟化温度未満)を加えることで水銀を放出するとともに溶融し、境界部16に溶融固着する。以上のようにしてランプは完成する。」(段落0020、0021) d.「以上のランプにおいて、水銀放出金属基体18は、固形であるから定量封入と減量化が容易であり、また比較的低い温度で水銀放出するので、放出のための特別な手段は必要としない。」(段落0022) e.「固着にあたり、上記実施例のように、節部17は図1の断面方向に見られる湾曲しているので、この節部17に水銀放出金属基体18を固着すると、固着接触面積が大きく脱落しにくい。・・・・・特にこの実施例では水銀放出金属基体18はメインチューブ11と鉛ガラスステム14の境界部分固着するので、ガラスバルブ11の鉛成分が水銀放出金属基体18と馴染む効果を持ち、また、境界部分はガラスバルブ11内の表面があれているので、特に水銀放出金属基体18は脱落しにくい。」(段落0025、0026) f.「加熱時間や加熱温度については、使用する水銀ペレット(水銀放出前の水銀放出金属基体18)の種類、水銀放出金属基体18の位置、加熱開始時点でのガラスバルブの温度によって適切な条件は変わってくる。上記実施例のように、Zn-Hg水銀ペレット(Zn:50%、Hg:50%)を節部に固定する場合、種々加熱温度、加熱時間を変えて実験した結果を表2に示す。加熱開始時点でのガラスバルブの温度は約25度であり、加熱はバルブの節部に熱風機により熱風を吹き付けることでおこなっている。」(段落0029) そして、上記各摘記事項の記載から次のことが明らかである。 ・上記摘記事項b中の記載「この水銀放出金属基体18は水銀を放出した後の金属であり、亜鉛Znを主成分としたものである。このものの水銀放出前は水銀との合金(水銀濃度50ないし60重量%の過剰溶融したもので、この合金自体は知られている)を形成している」から、水銀放出金属基体18は、水銀放出前は「水銀との合金」であること。 ・上記摘記事項c中の記載「ランプ全体を加熱しながら閉塞されていない排気管15から排気を行い、希ガスを封入した後、水銀放出前の、すなわち水銀を含有した水銀放出金属基体18を排気管15からランプ内に入れる。その後排気管をチップオフする。」から、ランプ(メインチューブ)内に水銀放出金属基体18(水銀との合金)が封入されること。 ・上記摘記事項c中の記載「メインチューブ11とステム14の境界部16に節部17が形成されるようモールド整形される。」及び上記摘記事項e中の記載「節部17は図1の断面方向に見られる湾曲している」から、節部17はメインチューブ11の端部といい得るものであること。 ・上記摘記事項b中の記載「この節部17のより端部側の蛍光発光層13の形成されていない部分に水銀放出金属基体18を固定している。」及び図1から、メインチューブ11内壁面に水銀放出金属基体(水銀との合金)を固定していること。 ・上記摘記事項f中の記載「実施例のように、Zn-Hg水銀ペレット(Zn:50%、Hg:50%)を節部に固定する場合、・・・・・加熱はバルブの節部に熱風機により熱風を吹き付けることでおこなっている。」及び図1、並びに、「節部17と水銀ペレット(水銀合金)との接触部分に熱風を吹き付けた際には、吹き付け箇所は、接触部分のみだけではなく当該接触部分近傍をも包含することは自明である」ことから、節部17と水銀ペレット(水銀合金)との接触部分および前記接触部分の近傍に熱風を吹き付けていること。 したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 「メインチューブ11内に水銀との合金を封入し、前記メインチューブ11の端部と前記水銀との合金との接触部分および前記接触部分の近傍に熱風を吹き付けて前記メインチューブ内壁面に前記合金を固定する蛍光ランプの製造方法であって、熱風の吹き付けには熱風機を用いた蛍光ランプの製造方法。」 3.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明を対比すると、引用発明における「メインチューブ11」、「水銀との合金」及び「固定」は、それぞれ本願発明における「ガラス管」、「水銀を含有する合金」及び「固着」に相当する。また、引用発明における「熱風を吹き付ける」と本願発明における「放射ビームエネルギーを加える」とは、「エネルギーを加える」ことであり、引用発明における「熱風機」と本願発明における「放射ビームエネルギー源」とは、ともに、「エネルギー源」であると見なしうるものである。したがって、両者は、次の一致点及び相違点を有する。 3-1.一致点 「ガラス管内に水銀を含有する合金を封入し、前記ガラス管の端部と前記合金との接触部分および前記接触部分の近傍にエネルギーを加えて前記ガラス管内壁面に前記合金を固着する蛍光ランプの製造方法であって、エネルギーを加えるためのエネルギー源を設けた蛍光ランプの製造方法。」 3-2.相違点 本願発明は、エネルギーを加えるエネルギー源として紫外線放射体、可視光放射体および赤外線放射体の中から選ばれるランプを用いて放射ビームエネルギーを加えているいるのに対し、引用発明ではエネルギー源として熱風機を用いて熱風を吹き付けている点 4.当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 当該エネルギー源は、対象物を加熱溶融するためのものであるが、加熱溶融させるエネルギー源として可視光放射体又は赤外線放射体となるランプを用いて放射ビームエネルギーを加えることは、種々の技術分野において用いられている周知手段(例えば、特開昭54-67665号公報、特開昭59-4966号公報、特開昭63-149813号公報、特開昭63-309371号公報、特開平4-367543号公報参照)であるから、引用発明の熱風機に代えて該周知手段を適用して本願発明のごとく構成する点に格別の困難性は認められない。 そして、本願発明の奏する効果は、上記引用発明及び周知技術に基づいて当業者が予測し得る範囲内のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、上記引用発明及び周知手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 上記のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものであるから、本願のその余の請求項に係る発明について審究するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-14 |
結審通知日 | 2005-06-21 |
審決日 | 2005-07-05 |
出願番号 | 特願平9-52815 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 向後 晋一 |
特許庁審判長 |
上田 忠 |
特許庁審判官 |
杉野 裕幸 山川 雅也 |
発明の名称 | 蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 内藤 浩樹 |