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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1122173
審判番号 不服2001-4997  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-06-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-04-02 
確定日 2005-08-22 
事件の表示 平成 5年特許願第306927号「雀球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月20日出願公開、特開平 7-155426〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成5年12月8日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年5月2日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「遊技盤の表面に設けた遊技部内に、複数種類の麻雀牌にそれぞれ対応した入球口を設け、打球が入球した入球口の組み合わせが予め定めた和了役を構成すると、遊技者に賞としてのメダルを払い出す雀球遊技機において、
現在の手牌の組み合わせが、予め定めた複数の和了役のうちのどれか一つが完成するための聴牌状態となったことを判断する聴牌判断手段と、
該聴牌判断手段の判断結果に基づき、次にどの麻雀牌に対応する入球口に打球を入球させると当該和了役が完成するかを判断する自摸牌判断手段と、
該自摸牌判断手段の判断結果に基づき、入球させるべき入球口を表示する入球口表示手段とからなり、
前記入球口表示手段は、遊技盤の内部に設けられた入球口指示ランプ及び遊技盤の表面に配置された液晶表示装置と、
遊技中であっても当該遊技を終了させて次の遊技に移行するための貯留メダル投入スイッチとを備え、
前記液晶表示装置は、入球させるべき入球口の表示に加え、遊技のデモンストレーション表示や遊技の説明表示を行わせるようにしたことを特徴とする雀球遊技機。」

2.引用例および周知例
本件出願前には、「遊技盤の表面に設けた遊技部内に、複数種類の麻雀牌にそれぞれ対応した入球口を設け、打球が入球した入球口の組み合わせが予め定めた和了役を構成すると、遊技者に賞としてのメダルを払い出す雀球遊技機において、遊技盤の表面に配置され、手牌や捨牌等を画像表示部に表示する液晶表示装置を備えた雀球遊技機」が周知(例えば、特開平4-212391号公報、特開平5-57047号公報参照、以下「周知例1」という。)である。
また、原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開昭54-79746号公報(以下「引用例1」という。)には、図と共に、
「所定個数の球を盤面に打ち込み、さらに何個かの球を打直したときの麻雀における各牌に相当する球受入孔に入っている球配列によって得点を計上する麻雀式パチンコ遊技機で、上記球受入孔に対応して設けられ受入球の配列信号を出すスイッチ群と、マイクロプロセッサを中心に構成された処理装置を設け、上記スイッチ群からの上記配列信号を上記処理装置に取込み、その球配列パターンが”上り役”のパターンであるか否かの判定演算を行なうものであって、さらに、上記処理装置によって・・・聴牌となる状態を検出し、かつその聴牌状態に加えて”上り役”を構成する必要牌を検出するとともに、・・・切牌表示器と、上記必要牌を表示する待牌表示器とを設けた・・・麻雀式パチンコ遊技機。」(特許請求の範囲、第1項)、
「本発明は麻雀に熟達していない人にも気軽にゲームを楽しめるようにすべくなされたもので、・・・どの牌を”つもる”と上り役が完成するかを表示するようにした麻雀式パチンコ遊技機を提供・・・。」(第1頁右欄下段第11行〜15行)、
「第1図は・・・装置の外観を示し、表示部等を除いて、その操作は従来の麻雀式パチンコ遊技機と大差はない。すなわち、遊技者は・・・球を・・・盤面3内部に打込む。打込まれた球はいずれかの球受入孔に入り、各球は球表示器4のいずれかを反転させ、これにより球が入った箇所での麻雀牌が表示される。そして14個の球全部が打込まれた状態は、麻雀ゲームにおける配牌に相当するから、これを配牌または配牌終了と呼ぶ。その後遊技者は、10回の打直しをして所望の配列パターンに修正していく。そして修正が成功すると、それは”上り”となり、コインの払出しを受け得る。このような操作あるいは動作は、・・・詳説を省略する。」(第1頁右欄下段第18行〜第2頁左欄上段第13行)、
「盤面3の上方に設けられた主表示器9には、”上り役”が完成した場合に、・・・通常18種の役のどれに相当するかを表示する役表示部・・・等が配置されている。また、球表示器4の上部近傍には・・・切牌表示器10および待牌表示器11が設けられている。・・・待牌表示器11も球表示器4の26種の牌に対応する26個の表示灯を配列してなるものである。・・・”上り役”が完成する状態になったことが検出された場合、切牌表示器10においてその不要な牌に対応する位置の表示灯が点灯されて、不要牌が指示されると同時に、切牌表示器10において新たに必要となる牌に対応する位置の表示灯が点灯されて、必要牌が指示される。なお、球表示器4に13牌が表示されている場合で、これにある牌を追加することで、”上り役”を完成する状態になった場合には、切牌表示器10には何も表示されないが、待牌表示器11によって”上り役”を完成するに必要な牌が表示される。」(第2頁左欄上段第17行〜同頁左欄下段第9行)、
「第2図は・・・電気的構成を示すブロック図である。・・・20は・・・マイクロプロセッサ・・・で、21は・・・プログラムが格納されるメモリである。・・・。外部機器としては、・・・球表示器4の各々の牌に対応する球配列検出用のスイッチ群(以下牌接点と呼ぶ)・・・等が入力装置として設けられ、他方出力装置としては、第1図の主表示器9・・・、待牌表示器11等を駆動する表示機構27、・・・等が設けられる。・・・全体的な自動制御および上り判定制御の詳細については、・・・詳説しない。」(第2頁左欄下段第10行〜同頁右欄下段第15行)、
「ステップ(1)は上記牌接点・・・を走査して・・・球受入孔から球を落下させることによって、球配列パターンが変ったときに・・・制御が実行されるものとする。・・・。この上り演算ルーチン(3)では、球配列パターンが各種の”上り役”に相当するかどうかの演算が行なわれる。・・・上りである場合には、ステップ(5)にて”上り役”・・・を上記主表示器9に表示する制御がなされる。・・・ステップ(8)では上記26種のうちの1種を仮想牌として1枚登録するのであるが・・・ステップ(9)では、ステップ(1)で読み込まれた14牌(または13牌)とステップ(8)での仮想牌の合計15牌(または14牌)が登録される。次のステップ(10)はステップ(3)と同様な上り演算ルーチンであって、・・・15牌のうちの任意の14牌で何らかの”上り役”が構成されるかどうかの演算が行われる。その演算結果に基づき、ステップ(11)で上りが検出されたか否かが判断される。・・・。ここで上りでないと判定されると、ステップ(12)にて仮想牌を更新して登録する。次の上記次のステップ(13)では、仮想牌の更新が26回行われたか否かが判断される。・・・仮想牌を・・・更新して上り演算が行われる。・・・ステップ(16)では、ステップ(9)で登録された15牌のうち上記の”上り役”を構成するに不必要な1牌、すなわち切牌を上記切牌表示器10に表示する。・・・ステップ(17)では、上記の”上り役”を構成するのに必要な牌を探索するルーチンであって、この必要な牌には当然このとき登録されている仮想牌が該当するがこれ以外の牌でも同一の”上り役”が構成される場合が多くあり、・・・待牌をすべて見い出すのである。そして次のステップ(18)にて、上記検出された待牌を上記待牌表示器11に表示する。・・・戻って仮想牌を更新して・・・制御を繰返す。・・・ステップ(9)で登録された牌が14の場合は、ステップ(16)での切牌表示はなされない。」(第2頁右欄下段第19行〜第3頁右欄下段第6行)、
「本発明に係る麻雀式パチンコ遊技機にあっては、得られた球配列パターンのうち不必要な1牌を除けば、ある1牌を加えることによって”上り役”が完成可能な状態(これは麻雀の聴牌に相当する・・・)が自動的に検出され、その不必要な牌が切牌表示器に表示されるとともに、上記聴牌状態に加えて”上り役”を構成する必要牌が自動的に検出され、その必要牌が待牌表示器に表される。」(第3頁右欄下段第7行〜16行)、
「なお、上記切牌表示器および待牌表示器は・・・、多数の種類の牌の中から任意のものを特定できる表示器であれば良い。・・・ステップ(14)において・・・”上り役”に必要な待牌の数等も比較してより有利な”上り役”を判定するようにしても良い。・・・ステップ(4)で実際に”上り役”が検出されても、それで精算が行なわれない場合は・・・、その”上り役”以上に有利な”上り役”が可能かどうかを演算、表示させることもできる。・・・切牌および待牌をどのような基準で表示するかは様々な方式が考えられる。」(第3頁右欄下段第20行〜第4頁左欄上段第13行)、
との記載が認められ、また、上記摘記事項および図1より球受入孔は盤面3の下方に設けられていると認められる。これらの記載によれば、引用例1には、

「盤面3の下方に設けた遊技部内に、26種の麻雀牌にそれぞれ対応した球受入孔を設け、遊技者によって打込まれた球はいずれかの球受入孔に入り、配牌終了後、18種の上り役の配列パターンに修正していき、そして修正が成功すると、それは”上り”となり、コインの払出しを受け得る麻雀式パチンコ遊技機において、
球が入った箇所での麻雀牌が表示される球表示器4に表示された配牌に、1枚の仮想牌を加えて18種の上り役に相当するか否か判断し、上り役に相当しない場合には仮想牌を更新して同様の判断を繰返し行い、上り役に相当する場合には、切牌を球表示器4に対応させてその上方に設けた切牌表示器10に点灯表示させると共に、上り役に必要な待牌を、同様に球表示器4に対応させてその上方に設けた待牌表示器11に点灯表示させる麻雀式パチンコ遊技機。」
との技術的事項(以下「引用例1技術」という。)が開示されていると認めることができる。
そこで、上記引用例1技術を麻雀用語を用いて整理すると、
引用例1技術において、「1枚の仮想牌を加えて18種の上り役に相当するか否か判断し、上り役に相当しない場合には仮想牌を更新して同様の判断を繰返し行」うことは、聴牌状態であるか否かの「聴牌判断手段」に相当し、
同様に、引用例1技術における、「上り役に必要な待牌」は、「上り役が完成する自摸牌」に相当するから、以下のように整理することができる。すなわち、
「盤面3の下方に設けた遊技部内に、26種の麻雀牌にそれぞれ対応した球受入孔を設け、遊技者によって打込まれた球はいずれかの球受入孔に入り、配牌終了後、18種の上り役の配列パターンに修正していき、そして修正が成功すると、それは”上り”となり、コインの払出しを受け得る麻雀式パチンコ遊技機において、
球が入った箇所での麻雀牌が表示される球表示器4に表示された配牌に、聴牌状態か否かを判断し、聴牌状態のとき上り役を完成させるために、自摸るべき牌を、球が入った箇所での麻雀牌が表示される球表示器4に対応させて設けた待牌表示器11に表示させる、待牌報知手段を備えた麻雀式パチンコ遊技機。」

3.対比
そこで、本願発明と周知例1とを比較すると、周知例1と本願発明は、
「複数種類の麻雀牌にそれぞれ対応した入球口を設け、打球が入球した入球口の組み合わせが予め定めた和了役を構成すると、遊技者に賞としてのメダルを払い出す雀球遊技機において、遊技盤の表面に配置された液晶表示装置を備えた雀球遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:本願発明では、「現在の手牌の組み合わせが、予め定めた複数の和了役のうちのどれか一つが完成するための聴牌状態となったことを判断する聴牌判断手段と、該聴牌判断手段の判断結果に基づき、次にどの麻雀牌に対応する入球口に打球を入球させると当該和了役が完成するかを判断する自摸牌判断手段と、該自摸牌判断手段の判断結果に基づき、入球させるべき入球口を表示する入球口表示手段とからなり、前記入球口表示手段は、遊技盤の内部に設けられた入球口指示ランプ及び遊技盤の表面に配置された液晶表示装置」であるのに対し、周知例1では、そのような構成を備えていない点。
相違点2:遊技を行うにあたり、本願発明では、「遊技中であっても当該遊技を終了させて次の遊技に移行するための貯留メダル投入スイッチを備え」ているのに対し、周知例1では、そのような構成を備えていない点。
相違点3:液晶表示装置の表示内容において、本願発明では、「遊技のデモンストレーション表示や遊技の説明表示」も行わせるようにしたのに対し、周知例1では、そのような表示内容になっていない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
相違点1について、遊技者に聴牌状態を気付かせたり、どの入球口に入球させればよいかを分からせるために、引用例1技術における前記待牌報知手段を、前記周知例1の麻雀遊技機の入球口に対応させて付加することは当業者が容易に想到できることであり、当該報知手段の付加に際し、液晶表示装置にも引用例1技術と同様に入球口に対応させた待牌表示させることは、報知手段として、映像と光、等複数の表示手段から構成される報知手段が、例えば、特開平2-124191号公報(大当たり時における、大当たりのディスプレイ、LED51の点滅)に示されるように周知の報知手段であることを勘案すれば単なる設計的事項であるから、引用例1技術に基づいて、相違点1に係る本願発明の構成とすることに格別の困難性が見当たらず当業者が容易に推考できるものである。

相違点2について、ゲーム途中で終了表示処理をしてゲームスタート処理をするコイン入力スイッチ(例えば、下記(A)参照。)が周知であり、これら周知のコイン入力スイッチを前記周知例1の付属機器として付加し、本願発明の「遊技中であっても当該遊技を終了させて次の遊技に移行するための貯留メダル投入スイッチを備える」ように構成することは、当業者が格別の発明力を要することなく必要に応じて適宜なし得る程度の設計的事項である。
相違点3について、遊技のデモンストレーション表示や遊技の説明表示について、一般に、遊技機の遊技盤面の中央部に配置されている可変表示装置にデモ用画面や遊技説明等を表示することが普通に行われていることである(例えば、下記(B)参照。)。してみると、ゲーム関連の任意の情報を可変表示装置に表示させるのに、本願発明のように、「液晶表示装置に入球させるべき入球口の表示に加え、遊技のデモンストレーション表示や遊技の説明表示を行わせるようにした」ことは、前記周知例1および前記普通に行われていることを考慮すると、当業者が必要に応じて容易に想到できたことであり、格別の創意工夫を要したとはいえない。

(A)ゲーム途中で終了表示処理をして、ゲームスタート処理をするコイン入力スイッチに関する周知例
(a)特開昭59-101175号公報には、「ゲーム途中でコイン投入口(59)にコインを投入すると、コイン入力スイッチがオンし、ステップ(3)(4)(5)(24)(25)のループで判断および処理がなされる。その結果、・・・球(4)の打ち上げが可能になる」(第9頁左欄上段第3〜9行)と記載されている。
(b)特開平2-309984号公報には、「遊技を強制的に終了させるスイッチを設け、これを操作することによりゲームの途中であっても次のゲームに進めるようにしても良い。」(第13頁右欄下段第14〜17行)と記載されている。

(B)遊技機の遊技盤面の中央部に配置されている可変表示装置にデモ用画面や遊技説明等を表示するようにした周知例
(a)特開昭56-31772号公報には、「遊技盤6のほぼ中央位置には映像表示装置としてCRT(陰極線管)7が配設され、・・・。CRT7は・・・挨拶文やその他の遊技勧誘のための情報等を提示する。・・・次に行うべき映像ゲームの内容、ゲームの方法を表示している。・・・、遊技者が映像ゲームを行っている状態を示す・・・画像が表示される。」(第2頁3欄第20〜同頁6欄第3行)や、「映像表示装置として・・・半導体表示パネル・・・を用いても良い。」(第5頁15欄第3〜6行)と記載されている。
(b)特開平5-317498号公報には、「LCDカラーパネル2の表示面・・・には主に識別情報および一般情報が・・・表示される。・・・一般情報はデモ画面と、各種のメッセージ画面とで構成されている。」(段落【0023】、【0024】)や、「LCDカラーパネル2には・・・デモ用画面素材として、・・・商標、遊技説明およびメッセージなどの一般表示が・・・表示される。」(段落【0011】)と記載されている。
そして、本願発明が上記相違点に係る構成を採ることによりもたらされる効果は、周知例1、引用例1技術および周知のものから当業者が予測できる範囲のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、周知例1、引用例1技術および周知のものに基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-31 
結審通知日 2005-06-02 
審決日 2005-07-07 
出願番号 特願平5-306927
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 渡戸 正義
林 晴男
発明の名称 雀球遊技機  
代理人 北村 仁  
代理人 米山 淑幸  

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