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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61M
管理番号 1122334
審判番号 不服2002-20679  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-24 
確定日 2005-08-25 
事件の表示 平成4年特許願第234897号「肺胞到達液粒子発生方法」拒絶査定不服審判事件〔平成6年3月22日出願公開、特開平6-78997号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成4年9月2日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年11月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「気体の薬剤と水とを混合溶解させる溶解器と、この溶解液から微細液粒子を発生させる略気密状態の微細液粒子製造機と、該微細液粒子製造機により微細液粒子を発生させると同時に機内に風速0.5〜50m/secで空気を導入して微細液粒子混合空気とする送風機と、前記微細液粒子混合空気中の粒径0.3μmより大きな微細液粒子を略分離して超微細液粒子混合空気とする分離器を備えてなる肺胞到達液粒子発生方法。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用した、本願出願前に頒布された特開昭63-77815号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に
(1)「本発明は粒径0.5ミクロン以下で、薬を含有する超微細水滴に関するものである。
更に詳細には、本発明は、肺の細気管支や肺胞までも容易に到達することのできる粒径0.5ミクロン以下で、薬を含有する超微細水滴に関するものである。
また、本発明は粒径0.5ミクロン以下で、薬を含有する超微細水滴を製造する方法に関するものである」(1頁左下欄19行〜右上欄7行)
(2)「先ず第1図を参照されたい。この装置は、本発明を実施するための最も基礎的なものであって、薬含有噴射装置1の壁近くに噴射管2を設け、これには多数の噴射ノズル3を設ける。これらのノズル3は、対向する側面に設けたノズルの位置とは少しずらして交互に配置し、相対するノズルを直線上に配置しないようにするのがよい。ノズルは30ケ〜1500ケ設けられ、直径は0.05〜8mm、好ましくは0.5〜3mmで、薬含有液はゲ-ジ圧0.3〜5.5kg/cm2、好ましくは0.5〜2.5kg/cm2で5〜40cmはなれた向うの壁に噴射される。
噴射された薬含有液は対向する側面に衝突して超微細水滴となり、薬含有液噴射装置1内はこの超微細水滴で充満される。薬含有液噴射装置1内には送入口4から空気を風速15〜50m/sec程度、風量0.1〜3m3/min程度で送り込み、粒径0.5ミクロン以下の超微細水滴を1立方フィート当り50万個以上、好ましくは500万個以上、より好ましくは1000万個以上含有する空気とし、これを送出口5から取出す。送出口5を出た超微細水滴を含む空気は大きな水滴を含むことがあるので、サイクロン6の接線方向入口7からサイクロン6に送入し、大きな水滴を除去して送気管8から取り出すものである。取り出された超微細水滴を含む空気はそれぞれの室又は患者に送って、薬含有液噴射装置に帰し、循環させるものである。」(2頁左下欄14行〜右下欄19行)と記載されている。
薬含有液噴射装置1内に送入口4から空気を送り込むために送風機を用いることは明らかであるから、上記記載から引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「薬含有液を噴射ノズル(3)から噴射して、この薬含有液から超微細水滴を発生する薬含有液噴射装置(1)と、該薬含有液噴射装置(1)により超微細水滴を発生させると同時に薬含有液噴射装置(1)内の送入口(4)から風速15〜50m/secで空気を送り込み、超微細水滴を含む空気とする送風機と、前記超微細水滴を含む空気中の粒径0.5ミクロンより大きな超微細水滴を分離して粒径0.5ミクロン以下の超微細水滴を含む空気とするサイクロン(6)とを備えてなる、肺胞に到達することのできる超微細水滴を製造する方法。」

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「薬含有液」、「超微細水滴」、「薬含有液噴射装置(1)」、「粒径0.5ミクロン以下の超微細水滴」、「サイクロン(6)」、「肺胞に到達することのできる超微細水滴」はその機能ないし構造からみて、それぞれ前者の「溶解液」、「微細液粒子」、「微細液粒子製造機」、「超微細液粒子」、「分離器」、「肺胞到達液粒子」に相当する。
そして、薬含有液を作るのに薬剤と水を混合溶解させる溶解器を用いることは普通のことであるから、両者は、
「薬剤と水とを混合溶解させる溶解器と、この溶解液から微細液粒子を発生させる微細液粒子製造機と、該微細液粒子製造機により微細液粒子を発生させると同時に機内に空気を導入して微細液粒子混合空気とする送風機と、前記微細液粒子混合空気中の粒径の大きな微細液粒子を略分離して超微細液粒子混合空気とする分離器を備えてなる肺胞到達液粒子発生方法。」である点で一致しており、次の点で相違する。
相違点1:前者が、薬剤として気体を用いているのに対し、後者においては薬剤が限定されていない点。
相違点2:送風機の風速に関し、前者は「0.5〜50m/sec」としているのに対し、後者は「15〜50m/sec」としている点。
相違点3:略分離すべき粒径を、前者は「粒径0.3μm」より大きなものとしているのに対し、後者は「粒径0.5ミクロン」より大きなものとしている点。
相違点4:微細液粒子製造機に関し、前者は「略気密状態」であるとしているのに対し後者は特に限定されていない点。

相違点1について検討すると、水に混合溶解させる薬剤として固体、液体、気体のいずれの薬剤を用いるかは適宜選択できる事項と解されるところ、微細水滴に溶解させる薬剤として気体のものを用いることは、例えば特開昭61-135666号公報に示されているように周知技術であるから、相違点1に係る構成とするのは当業者が容易に想到し得ることである。
相違点2について検討すると、本願発明における送風機の風速は引用発明の風速を含むものであり、また、本願発明の下限値の0.5m/secにおいて臨界的効果を奏するものとは解されないから、この点は設計上適宜選択できる事項にすぎない。
相違点3について検討すると、両発明で規定する粒径はいずれも肺胞到達可能な粒径であり、粒径の0.3μm(ミクロン)より大きな微細液粒子を略分離したからといって臨界的効果が奏されるものとも解されないから、この点も設計上適宜選択できる事項といえる。
相違点4について検討すると、引用発明においても薬含有液の超微細水滴の外部への漏洩を防止することは、薬剤の損失防止、外部の環境汚染等の観点から当然要求される課題であるから、引用発明における「薬含有液噴射装置(1)」すなわち微細液粒子製造機を略気密状態とするのは当業者が容易に想到し得ることである。
そして、本願発明は、全体構成でみても、その作用効果は引用発明から予測できる程度のものにすぎない。

4.むすび
したがって、本願発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-21 
結審通知日 2005-06-28 
審決日 2005-07-12 
出願番号 特願平4-234897
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 稲村 正義  
特許庁審判長 石原 正博
特許庁審判官 一色 貞好
内藤 真徳
発明の名称 肺胞到達液粒子発生方法  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  

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