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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G11B
管理番号 1122342
審判番号 不服2004-3832  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-12-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-26 
確定日 2005-08-25 
事件の表示 平成 7年特許願第136444号「光ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-329477〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る特許出願(以下「本願」という)は、平成7年6月2日に出願されたものであって、平成16年1月22日付けで拒絶査定がなされたところ、平成16年2月26日付で特許法第121条第1項の審判請求がなされた。その後、平成16年10月15日付けで当審より最後の拒絶理由が通知されたものである。
そして、本願請求項1に係る発明は、平成15年8月1日付け手続き補正書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「【請求項1】情報が記録されるトラックを有した光ディスクの半径方向に移動可能なように送り軸と支軸に支えられた光学ヘッドと、
前記送り軸との間に設けられた歯車列及び前記歯車列に接続されたフィードモーターを有し前記フィードモーターの回転を前記歯車列を介して前記送り軸に伝えて前記光学ヘッドを移動させる粗移動手段と、
前記フィードモーターに設けられ前記フィードモーターの回転位置に対応する位置パルスを発生する位置パルス発生手段と、
この位置パルス発生手段からの位置パルスを計数する計数手段と、
この計数手段に基き、あらかじめ指定される目標位置と上記検出された計数値との差を検出する位置差検出手段と、
前記検出されたフィードモーターの回転位置における、回転速度を前記位置パルスの発生周期より検出するためのパルス周期検出手段と、
このパルス周期検出手段から得られる速度情報と、前記位置差検出手段で検出された上記目標位置との差とに応じて、前記フィードモーターを駆動し、前記光学ヘッドを前記指定される目標位置に移動される駆動手段と、
を具備したことを特徴とする光ディスク装置。」(以下、「本願発明」という。)


2.刊行物及びその記載
当審より通知した拒絶理由で引用した刊行物である、実願昭63-651号(実開平1-107063号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物1」という。)は、光ピックアップの位置検出装置に関するものであって、具体的には図面とともに以下の記載がある。(なお、下線は当審で付与。)
(1-1)「本考案にかかる光ピックアップの位置検出装置において、第1図に示すように、メインシャーシ15には2本のガイドシャフト16・16が横架されており、このガイドシャフト16・16にて光ピックアップ17がG-H方向に移動可能に設けられている。また、光ピックアップ17には送り螺子18が螺合されており、この送り螺子18の回転にてG-H方向に移動されるようになっている。送り螺子18はその一端側近傍および他端側が軸受19・19に支持されて回転自在に設けられるとともに、上記一端側には回転部材としてのプーリー20が嵌着されている。プーリー20は駆動ベルト21を介してプーリー22に連結されており、このプーリー22はモーター23の回転軸23aに嵌着されている。モーター23は前記メインシャーシ15上において固定状態に設けられている。これらモーター23、プーリー22・20、伝達ベルト21、送り螺子18などによって光ピックアップ送り機構30が構成されている。」(第7頁第6行〜第8頁第5行目)
(1-2)「前記回転部材としてのプーリー20の側面には、第2図にも示すように、センサープレート25が貼付されている。センサープレート25の表面にはその中心を頂点として所定の中心角Θを有する扇型の白色領域および黒色領域が交互に配列されており、上記白色領域では光を反射するように、黒色領域では光を吸収するようにそれぞれ形成されている。センサープレート25と対向する位置には反射型のフォトインタラプタ26が配設されており、このフォトインタラプタ26は上記白色領域にて反射された光を受けてこれをカウントするようになっている。これらフォトインタラプタ26とセンサープレート25とによってロータリーエンコーダ27が構成される。ロータリーエンコーダ27のフォトインタラプタ26には演算手段28が接続されており、この演算手段28はフォトインタラプタ26のパルスカウント出力に基づいて前記の光ピックアップ17がリードイン位置からどれ位移動したかを演算するようになっている。すなわち、この演算手段28には、送り螺子18のピッチ、および上記センサープレート25における白色領域と黒色領域の中心角Θの設定情報が予め入力されており、これらの情報と上記ロータリーエンコーダ27からのパルスカウント出力とに基づいて光ピックアップ17の移動量を導き出せるようになっている。」(第8頁第15行〜第9頁第20行目)
(1-3)「光ディスクプレーヤー上に光ディスクがセットされると、・・・(中略)・・・。そして、第3図に示すように、光ピックアップ17はイニシャライズエリアAに収録されている管理情報を読み取り、目的とする情報の開始位置(目標位置C)を確認してこの位置をパルスカウントの設定値とするとともに、光ピックアップ17自身の現在位置を確認してこの位置をパルスカウントの基準位置(例えば、基準値=0)とする(S11)。このように、光ピックアップ17の現在位置および目的位置Cが確認されると、この光ピックアップ17を目的位置まで送るために前記モーター23の回転が開始されるが、この回転力はプーリー22→駆動ベルト21→プーリー20を介して送り螺子18に伝達されてこの送り螺子18が回転し、この送り螺子18の回転によって光ピックアップ17が移動する。ここで、上記プーリー20の回転によってセンサープレート25も回転し、前記フォトインタラプタ26はセンサープレート25の白色領域を読み込む毎にカウントしてこのカウントパルスを演算手段28に出力する。演算手段28はカウントパルスを入力する毎にこれを加算(光ピックアップ17の移動方向がH方向であれば減算)していく。そして、加算値(もしくは減算値)が前記の設定値に達すると、モーター23の回転が停止されて光ピックアップ17の移動が停止される(S12)。 この場合、光ピックアップ17の移動量は、送り螺子18のピッチと、プーリ20の回転角度や回転数との関係に依存するから、このプーリー20の回転数や回転角に基づくロータリーエンコーダ27の出力は光ピックアップ17の移動量を間接的ではあるが、ほぼ正確に表すことになる。よって、このパルスカウント出力を演算手段28で上述のように処理することにより光りピックアップ17の位置がほぼ正確に検出される。すなわち、アドレス情報に頼ることなく光ピックアップ17を目標位置Cにほぼ正確に、且つ、素早く移動させることができることになる。」(第10頁第1行〜第12頁第6行目)
(1-4)「光ピックアップの送り機構30において、プーリー20の代わりにピニオンを使用し、送り螺子18の代わりにラックを使用する場合には、上記のピニオンにセンサープレート25を設ければよい。」(第13頁第20行〜第14頁第4行目)

以上の記載事項を、総合勘案して図面とともに整理すると、刊行物には以下の発明が記載されているものと認める。
「光ディスクプレーヤー上に光ディスクがセットされての光ピックアップの位置検出装置であって、
2本のガイドシャフト16・16がメインシャーシ15に横架されて光ピックアップ17をG-H方向に移動可能に設けられているもので、光ピックアップ17には送り螺子18が螺合、この送り螺子18の回転にてG-H方向に移動されるようになっていて、送り螺子18はその一端側近傍および他端側が軸受19・19に支持されて回転自在に設けられるとともに、上記一端側には回転部材としてのプーリー20が嵌着、プーリー20は駆動ベルト21を介してプーリー22に連結されて、プーリー22は、前記メインシャーシ15上において固定状態に設けられたモーター23の回転軸23aに嵌着されることで、プーリー22・20、伝達ベルト21、送り螺子18などによる光ピックアップ送り機構30を構成しているものであり、
プーリー20の側面には、センサープレート25が貼付されて、対向する位置には反射型のフォトインタラプタ26が配置されており、このフォトインタラプタ26は上記センサープレート25からの反射された光を受けてこれをカウントするもので、フォトインタラプタ26とセンサープレート25とによってロータリーエンコーダ27を構成、前記ロータリーエンコーダ27のフォトインタラプタ26には演算手段28が接続されており、この演算手段28はフォトインタラプタ26のパルスカウント出力に基づいて前記の光ピックアップ17がリードイン位置からどれ位移動したかを演算し、
移動は、目的とする情報の開始位置(第4図:目標位置C)を確認してこの位置をパルスカウントの設定値とするとともに、光ピックアップ17自身の現在位置を確認してこの位置をパルスカウントの基準位置(例えば、基準値=0)として、光ピックアップ17の現在位置および目的位置Cが確認されると、この光ピックアップ17を目的位置まで送るために前記モーター23の回転を開始し、回転力をプーリー22→駆動ベルト21→プーリー20を介して送り螺子18に伝達して送り螺子18が回転し、この送り螺子18の回転によって光ピックアップ17が移動、上記プーリー20の回転によってセンサープレート25も回転し、前記フォトインタラプタ26はセンサープレート25の白色領域を読み込む毎にカウントしてこのカウントパルスを演算手段28に出力し、演算手段28はカウントパルスを入力される毎にこれを加算(光ピックアップ17の移動方向がH方向であれば減算)して、加算値(もしくは減算値)が前記の設定値に達すると、モーター23の回転が停止されて光ピックアップ17の移動が停止される光ピックアップの位置検出のための光ディスク装置。」(以下、「刊行物1発明」という。)

また、同じく、当審より通知した拒絶理由で引用した刊行物である特開平5-256865号公報(以下、「刊行物2」という。)は、モータの駆動力によって回転する回転部材の逆転判別装置であって、図面とともに以下の記載がある。
(2-1)【0002】【従来の技術】モータは、正転・逆転するように制御される場合に、正転しているモータに対して逆転制御信号を与えても、慣性等の影響により実際に逆転が開始するまでには若干の時間がかかる。そして、モータにより回転される回転部材の位置制御を精密に行う場合には、そのモータが実際に逆転した時期を迅速に認識することが要求される。
(2-2)【0007】【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明による逆転判別装置は、モータの駆動力によって回転する回転部材の逆転判別装置であって、前記モータへ逆転指令信号が発せられた後に、前記回転部材の回転をパルス信号で検出する検出手段と、前記パルス信号の時間間隔の反転を検出することによって、前記回転部材が逆転したことを判定する逆転判別手段とから構成されている。この場合に、前記逆転判別手段は、前記モータへ逆転指令信号が発せられてからN番目の回転検出信号の時間間隔をTNとした場合に、TN-T(N-1)<0およびT(N+1)-TN≧0となったときに、N番目の回転検出信号の時点で前記回転部材の逆転があったものと判断することを特徴とすることができる。また、前記逆転判別手段は、前記モータへ逆転指令信号が発せられてからN番目の回転検出信号の時間間隔をTNとした場合に、TN-T(N-1)<0およびT(N+1)-TN<0となったときに、(N-1)番目の回転検出信号の時点で前記回転部材の逆転があったものと判断することを特徴とすることができる。
(2-3)【0012】図2は、鏡筒モータ2の軸またはその軸からギヤを介して連結された他の軸に装着した円盤状の回転部材E1および光半導体素子P1の位置関係を示す図である。回転部材E1は、軸Cを中心として回転し、この回転部材E1には、円周方向に溝部E2が等間隔で開けられている。この回転部材E1がX方向に回転すると、鏡筒が繰り出す方向に駆動され、Y方向に回転すると、鏡筒が繰り込む方向に駆動される。
【0013】図3は、図2に示した回転部材E1がX方向またはY方向に回転したときの光半導体素子P1の出力を示すタイミングチャートである。図3から明らかなように、回転部材E1が一方向に回転した場合に、光半導体素子P1の出力は、H→L→H→L→H…の順に変化する。なお、Lは回転部材E1の溝部E2を、Hは溝部E2以外の部分に対応している。
【0014】図4および図5は、図2に示した回転部材E1がY方向に回転中に、CPU1がY方向とは逆であるX方向に回転させる制御信号を出力(Pの時点)した後、回転部材E1がX方向に逆回転したときのタイミングチャートである。図4は、回転部材E1がY方向からX方向に逆回転した時点のパルス幅(B5)が直前のパルス幅(B4)より狭く、図5は、回転部材E1がY方向からX方向に逆回転した時点のパルス幅(C4)が直前のパルス幅(C3)より広い場合である。 【0015】ここで、図4は回転部材E1の溝部E2において逆回転した場合を、また、図5は回転部材E1の溝部E2以外の部分で逆回転した場合を示しており、溝部E2において逆転したときにパルス幅が広い場合もあり、溝部E2以外の部分において逆転したときにパルス幅が狭い場合もある。
【0016】 図4において、パルス幅B2の期間にPが出力されたために、鏡筒モータ2はその後減速し、パルス幅B2よりもパルス幅B3が、またパルス幅B3よりもパルス幅B4のほうが広くなる。その後に、鏡筒モータ2は、時間間隔に相当するパルス幅B5の期間に逆転し、今度は逆にパルス幅B6、B7、B8は次第に狭くなる。ここで、鏡筒モータ2が実際に逆転したときのパルス幅B5は、その直前のパルス幅B4より狭いので、B5-B4は負となる。また、鏡筒モータ2が逆転した後の最初のパルス幅B6はパルス幅B5と等しいかまたは広いから、B6-B5は0以上となる。この実施例では、パルス幅を検知し、以上のような条件に合致した場合に、鏡筒モータ2が逆転したものと判別する。
【0017】図5の場合も基本的には図4と同様であり、モータの逆転制御信号Pの出力後のパルス幅を検知し、C5-C4<0、C6-C5<0の条件を満足した場合に鏡筒モータ2が実際に逆転したものと判別する。


3.対比・判断
本願発明と刊行物1発明とを対比すると、
1)両発明は,「光ディスク装置」の点で一致する。
2)刊行物1発明の「光ディスク」及び「光ピックアップ17」は、本願発明の各々「情報が記録されるトラックを有した光ディスク」及び「光学ヘッド」に相当する。
3)刊行物1発明の「G-H方向に移動可能」「送り螺子18」及び「2本のガイドシャフト16・16」は、本願発明の各々「光ディスクの半径方向に移動可能」「送り軸」及び「支軸」に相当する。
4)刊行物1発明の「モーター23」は、本願発明の「フィードモーター」に相当する。
5)刊行物1発明の「回転部材としてのプーリー20が嵌着、プーリー20は駆動ベルト21を介してプーリー22に連結されて、プーリー22は、前記メインシャーシ15上において固定状態に設けられたモーター23の回転軸23aに嵌着されることで、プーリー22・20、伝達ベルト21、送り螺子18などによる光ピックアップ送り機構30を構成している」であるが、光ピックアップの送り機構30として、「光ピックアップの送り機構30において、プーリー20の代わりにピニオンを使用し」(上記、(1-4)を参照。)との記載があって、ピニオンである小型歯車機構による伝達形態を可能とするものであるから、プーリー22・20、伝達ベルト21に置換することで、本願発明の「送り軸との間に設けられた歯車列」「フィードモーターの回転を前記歯車列を介して前記送り軸に伝えて」に相当する。また、上記事項に加え、刊行物1発明の「 移動は、目的とする情報の開始位置(第4図:目標位置C)を確認してこの位置をパルスカウントの設定値とするとともに、光ピックアップ17自身の現在位置を確認してこの位置をパルスカウントの基準位置(例えば、基準値=0)として、光ピックアップ17の現在位置および目的位置Cが確認されると、この光ピックアップ17を目的位置まで送るために前記モーター23の回転を開始し、回転力をプーリー22→駆動ベルト21→プーリー20を介して送り螺子18に伝達して送り螺子18が回転し、この送り螺子18の回転によって光ピックアップ17が移動」は、本願発明の「粗移動手段」に相当する。
6)刊行物1発明の「プーリー20の側面には、センサープレート25が貼付されて、対向する位置には反射型のフォトインタラプタ26が配置されており、このフォトインタラプタ26は上記センサープレート25からの反射された光を受けてこれをカウントするもので、フォトインタラプタ26とセンサープレート25とによってロータリーエンコーダ27を構成」であるが、このロータリーエンコーダ27はモーター23の回転に応じて位置パルスを発生していくものであるから、これは本願発明の「フィードモーターの回転位置に対応する位置パルスを発生する位置パルス発生手段」に相当する。
7)刊行物1発明の「ロータリーエンコーダ27のフォトインタラプタ26には演算手段28が接続されており、この演算手段28はフォトインタラプタ26のパルスカウント出力に基づいて前記の光ピックアップ17がリードイン位置からどれ位移動したかを演算」「移動は、目的とする情報の開始位置(第4図:目標位置C)を確認してこの位置をパルスカウントの設定値とするとともに、光ピックアップ17自身の現在位置を確認してこの位置をパルスカウントの基準位置(例えば、基準値=0)として、光ピックアップ17の現在位置および目的位置Cが確認されると、この光ピックアップ17を目的位置まで送るために前記モーター23の回転を開始」及び「演算手段28はカウントパルスを入力される毎にこれを加算(光ピックアップ17の移動方向がH方向であれば減算)して、加算値(もしくは減算値)が前記の設定値に達すると、モーター23の回転が停止」等であるが、ロータリーエンコーダは位置パルスを発生して演算手段に入力、演算手段は計数手段をもち、目標値と検出値とに基づいて目標位置までの差を演算していくものであるから、ロータリーエンコーダ及び演算手段は本願発明の「この位置パルス発生手段からの位置パルスを計数する計数手段と、この計数手段に基き、あらかじめ指定される目標位置と上記検出された計数値との差を検出する位置差検出手段」に相当する。

結局のところ、本願発明と刊行物1発明との〔一致点〕及び〔相違点〕は以下のとおりである。
〔一致点〕
「情報が記録されるトラックを有した光ディスクの半径方向に移動可能なように送り軸と支軸に支えられた光学ヘッドと、
前記送り軸との間に設けられた歯車列及び前記歯車列に接続されたフィードモーターを有し前記フィードモーターの回転を前記歯車列を介して前記送り軸に伝えて前記光学ヘッドを移動させる粗移動手段と、
前記フィードモーターの回転位置に対応する位置パルスを発生する位置パルス発生手段と、
この位置パルス発生手段からの位置パルスを計数する計数手段と、
この計数手段に基き、あらかじめ指定される目標位置と上記検出された計数値との差を検出する位置差検出手段と、
前記位置差検出手段で検出された上記目標位置の差に応じて、前記フィードモーターを駆動し、前記光学ヘッドを前記指定される目標位置に移動される駆動手段と、
を具備したことを特徴とする光ディスク装置。」の点。

〔相違点〕
イ.位置パルス発生手段であるが、本願発明は「フィードモーターに設けられ」というものであるが、刊行物1発明のものはモーターに設けられたものでなく、送り螺子側に設けられている点。
ロ.目標位置に移動する駆動手段であるが、本願発明は「検出されたフィードモーターの回転位置における、回転速度を前記位置パルスの発生周期より検出するためのパルス周期検出手段と、このパルス周期検出手段から得られる速度情報と、前記位置差検出手段で検出された上記目標位置との差とに応じて」というもので、刊行物1発明のものには、特に、回転位置における回転速度を位置パルスの発生周期より検出するためのパルス周期検出手段、及び、このパルス周期検出手段から得られる速度情報と目標位置との差とに応じて移動する駆動手段である構成について言及していない点。

〔判断〕
相違点イ.に関して、
1)刊行物1発明のものは、位置パルス発生手段がフィードモータにより回動していくプーリー(回転部材)に設けられているもので、検出される信号そのものを比較してみるに特段の相異があるものでない。そして、位置パルス発生手段をモータ側に設けていく構成は周知であるから(例:特開平3-293989号公報,特開昭59-41186号公報,特開平1-238483号公報等参照)、刊行物1発明のものに上記相違点イ.の構成の採用は適宜になし得るものである。

相違点ロ.に関して、
1)位置パルスモータ-の回転に応じての波形であるが、パルス波形のカウント数をみればそれが位置情報であり、パルス周期をみればパルスがモーターの速度に比例してのものであるから速度に係る情報であることは当業者においての技術常識である。
また、光ディスク装置のシーク移動は、位置情報による大ざっぱな移動と、目標値近傍(手前)でブレーキ制御に入り、速度調整して目標位置に到達していくことは、その旨の記載がなくとも当該分野の技術常識である。
そして、相違点ロ.の構成要件である、位置パルス発生手段からのパルス情報により、位置差情報及び速度に関する情報を得ながら目標位置へ駆動していく手段を、要するに『回転速度』及び『速度情報』なるものと、文言どおりの解釈をすれば、このところからそもそも特徴的な技術事項の把握はできないものである。
刊行物1のものにおいても、位置パルス発生手段からのパルス情報により目標位置への駆動をしているのものであり、パルス情報はその周期をみれば回転速度であり速度情報であるのだから、上記相違点ロ.の構成は当業者が適宜容易に想到できるものである。
2)ところで、仮に、上記相違点ロ.の構成要件に関してであるが、本願発明の詳細な説明を参酌すると、
『【0013】【発明が解決しようとする課題】このような従来の構成の光ディスク装置では、シーク移動においてフィードモーターへブレーキをかける際、光学ヘッドを含む、送り機構を介してフィードモーターへかかる反発力や、ブレーキのかかり過ぎのため、モーターが移動しようとする方向とは反対の方向へ回転しても、パルス発生手段からは送り方向と同様なパルス列が出力されるため、計数手段による計数に誤差を含むことになり、正確な計数が行なえないという欠点があった。
【0019】この時、位置差検出手段13は、位置パルスの周期を周期検出手段15を用い監視する。
【0020】今、周期検出手段によって得られた位置パルスの周期をT1とし、次に得られる位置パルスの周期をT2、さらに次の位置パルスの周期をT3とするとフィードモーター9が送り方向に減速している間は、図3のようにT1<T2の関係が成り立つ。
【0021】ところが、ブレーキ動作を行ない続ける事で、フィードモーター9が移動しようとする方向とは反対の方向へ回転した場合は、上記位置パルスの周期がT2>T3という関係となるため、位置差検出手段13はフィードモーター9の回転方向を判別することができ、目的とする位置まで、より正確に光学ヘッド1を移動すること可能となる。』 等の記載があり、ここでの内容を参酌して本願発明を解釈すると『パルス周期検出手段から得られる速度情報』とは、位置パルスの周期からモーターの回転方向の判別をすることの技術的意味が理解できる。(なお、下線は当審で付与。)
3)続いて、【図2】であるが、これは本願発明の光ディスク装置のシーク移動を示すフロー図であるから、さらに上記相違点ロ.の『パルス周期検出手段から得られる速度情報と、前記位置差検出手段で検出された上記目標位置との差とに応じて』なる技術的意味について検討してみるに、このフロー図からは、光学ヘッドが目標位置の手前でブレーキの効きすぎによるモーターが逆転した場合、ないしは目標位置をオーバーランしてモーターが逆転した場合、何れであっても、逆転以降のパルス周期のカウント数はダブルで誤ってカウントとされるものの、これらの誤カウント移動量を補償して目標位置に到達可能にしていく記載がないもので、速度情報に基づく目的位置への到達は容易に理解できない。
要するに、モータの逆転がなく目標位置とのカウントが合致するのが理想的で、目標位置の手前であれば反転したカウント数分目標値からより離れていくものとなるし、オーバランしての反転であればカウント数分よりは目標値に近い位置にある。反転は目標位置手前でのものか、オーバーランしてでのものか、を判断しなくてはならないものである。
さらに、当該フロー図では、必ずモーターの逆転の確認を以て、モーターをオフして、計数カウンター=COUTの判断をしているが、これでは誤カウント数は残った状態にあり、カウント数が目標位置を正確に表すものであるのかの疑問がある。
したがって、当該フロー図からは、上記2)で記載されている『速度情報』以上の技術の解釈は得られない。
4)以上、上記1)のような文言どおりの解釈をしないものとした場合には、上記2)3)から認定できる事項は、本願発明の上記相違点ロ.の構成においては、モーターの逆転を確認するまでの技術的思想が内包されていることが伺えるものであるから、上記本願発明での『パルス周期検出手段から得られる速度情報』の技術的意味には、『モータの逆転をパルスの周期から判断していくもの』と解釈して、以下検討する。
5)刊行物1発明のものにおいては、目標位置を設定、パルスカウント出力に基づいて移動して目標位置近傍においてモーターにブレーキをかけるにしても、『慣性等の影響で、所定方向または反対の逆方向に相当数だけオーバランまたは所定位置以前に戻るような状態になってしまう』ことは、当審より通知した拒絶理由で引用した刊行物である、特開昭60-50771号公報(以下、「刊行物3」という。)で指摘されているところである(刊行物3:第1頁の特許請求の範囲,第1頁右下欄第9行〜第2頁左上欄第9行目,第2頁左下欄第6行〜第17行目,3頁左下欄第1行〜右下欄第6行目等参照)。
そして、刊行物発明1のものが、光ディスク装置のロータリエンコーダーから出力される位置パルスにおいて、本願発明の【図3】のようなパルスの波形となり、少なくともパルスの数が位置情報、パルス周期が速度情報になっていることは上記技術常識から明らかで、その際に、パルス周期により、モーターへのブレーキによる回転方向が判別できることは、刊行物2の上記(2-1)〜(2-3)に記載されている。したがって、刊行物1発明のものにおいても、上記相違点ロ.の構成要件を上記4)のように解釈したとしても、当業者が適宜容易に想到できるものである。
6)請求人は、上記相違点ロ.に関して、意見書で『しかしながら、引用文献2はあくまでもカメラなどに用いられる鏡筒の駆動装置に関するもので、本願発明のように光ディスク装置に関するものではありません。当業者においても、このカメラに用いるモータの制御を光ディスク装置の光学ヘッドの移動用のモータに適応することは製品分野やそれら製品が達成しようとする目的が全く異なっている以上非常に困難なものと思量致します。』と主張する。しかしながら、引用している技術は、カメラ用のモータでなく、モーターの回転位置における回転速度を位置パルスの発生周期により検出するためのパルス発生検出手段とパルス周期発生手段より得られる速度情報とであって、このようなモータを制御する点においては技術分野に垣根なく適用できること明らかである。

結局のところ、刊行物1発明のものに、刊行物2,刊行物3及び周知技術を適宜採用して、パルスの周期からモーターの回転方向を確実に検出して駆動することは容易に想到できるものである。そして、回転方向の確認がシーク移動をきめ細かく制御することに有効であるとしていくことは、予想できる範囲内の効果に過ぎない。

なお、本願発明は、上記2)3)で指摘したように、モーターの回転方向を判別する以上の具体的なシーク移動動作を、きめ細かく制御する構成に関しての、特段有利な効果ないしは根拠の記載は開示されていない。


4.むすび
以上のとおりであって、本願発明は、上記刊行物1発明,刊行物2,刊行物3及び周知技術に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2005-06-13 
結審通知日 2005-06-14 
審決日 2005-07-08 
出願番号 特願平7-136444
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田良島 潔  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 小林 秀美
川上 美秀
発明の名称 光ディスク装置  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  
代理人 内藤 浩樹  

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