• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
判定2007600007 審決 特許
無効200435069 審決 特許
審判199835415 審決 特許
無効200035545 審決 特許
無効200680144 審決 特許

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認めない。無効とする(申立て全部成立) A01N
管理番号 1122374
審判番号 審判1999-35072  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1985-08-23 
種別 無効の審決 
審判請求日 1999-02-15 
確定日 2005-09-15 
事件の表示 上記当事者間の特許第1861146号発明「吸液芯用殺虫液組成物及び加熱蒸散殺虫方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第1861146号の特許請求の範囲第1項ないし第2項に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第1861146号の発明は、昭和59年1月31日に出願され、平成6年8月8日にその発明について特許権の設定登録がなされた。
その後、当審においてなされた手続の経緯は以下のとおりである。

無効審判請求 平成11年 2月15日
答弁書(被請求人) 平成11年 8月 2日
訂正請求(被請求人) 平成11年 8月 2日
第2答弁書(被請求人) 平成11年 9月29日
弁駁書(請求人) 平成12年 6月13日
上申書(請求人) 平成13年 3月13日
訂正拒絶理由通知 平成13年 3月21日
意見書(被請求人) 平成13年 6月 1日
第3答弁書(被請求人) 平成13年 8月 6日
上申書(請求人) 平成14年 3月15日

II.訂正の適否
1.訂正事項
〔訂正事項a〕
特許請求の範囲第1項の、
「殺虫剤」の前に、
「殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法に使用される殺虫液組成物であって、」という記載を追加する。

〔訂正事項b〕
特許請求の範囲第1項及び第2項の、
「殺虫剤」との記載を、
「殺虫剤(但し、5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート、3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレートおよび3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマートを除く)」と訂正する。

〔訂正事項c〕
平成4年12月18日付け手続補正書及び平成5年12月17日付け手続補正書により訂正した、平成1年4月3日付け手続補正書に添付した訂正明細書(以下、単に「明細書」という。)第8頁第14行の、
「殺虫剤」との記載を、
「殺虫剤(但し、5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート、3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレートおよび3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマートを除く)」と訂正する。

〔訂正事項d〕
明細書第10頁第16行の、
「殺虫剤」との記載を、
「上記した殺虫剤」と訂正する。

〔訂正事項e〕
明細書第13頁第13行〜第16行の、
「○5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート(一般名レスメトリン:商品名クリスロンフオルテ:住友化学工業株式会社製、以下AFという)」との記載を削除ずる。

〔訂正事項f〕
明細書第14頁第2行〜第19行の、
「○3-フエノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレート(一般名ペルメトリン:商品名エクスミン:住友化学工業株式会社製、以下AHという)
○3-フエノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマート(一般名フエノトリン:商品名スミスリン:住友化学工業株式会社製、以下AIという)」との記載を削除する。

〔訂正事項g〕
明細書第27頁第9行、第16行及び第32頁第15行の、
「実施例1〜32」との記載を、
「実施例1〜28」と訂正する。

〔訂正事項h〕
明細書第27頁第10行の、
「殺虫剤No.AA〜AU」との記載を、
「殺虫剤No.AA,AB,AD,AG,AO〜AS,AU」と訂正する。

〔訂正事項i〕
明細書第27頁第12〜第13行行の、
「(実施例No.1〜64)」との記載を、
「(実施例No.1〜28)」と訂正する。

〔訂正事項j〕
明細書第27頁第14行及び第32頁第16行の、
「比較例1〜14」との記載を、
「比較例1〜11」と訂正する。

〔訂正事項k〕
明細書第27頁第16行の、
「(比較1〜14)」との記載を、
「(比較1〜11)」と訂正する。

〔訂正事項l〕
明細書第28頁〜第31頁記載の第1表(平成4年12月18日付け手続補正書で訂正した第1表)及び明細書第34頁〜第36記載の第2表(平成4年12月18日付け手続補正書で訂正した第2表)の、
「実施例19」、「実施例20」、「実施例23」及び「実施例24」の欄を削除し、「実施例21」、「実施例22」、「実施例25」、「実施例26」、「実施例27」、「実施例28」、「実施例29」、「実施例30」、「実施例31」及び「実施例32」の欄をそれぞれ繰り上げて、「実施例19」、「実施例20」、「実施例21」、「実施例22」、「実施例23」、「実施例24」、「実施例25」、「実施例26」、「実施例27」及び「実施例28」と訂正する。

〔訂正事項m〕
明細書第28頁〜第31頁記載の第1表(平成4年12月18日付け手続補正書で訂正した第1表)及び明細書第34頁〜第36記載の第2表(平成4年12月18日付け手続補正書で訂正した第2表)の、
「比較例7」、「比較例9」、及び「比較例10」の欄を削除し、「比較例8」、「比較例11」、「比較例12」、「比較例13」及び「比較例14」の欄をそれぞれ繰り上げて、「比較例7」、「比較例8」、「比較例9」、「比較例10」及び「比較例11」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項追加の有無、及び特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否
訂正事項aは、訂正前の特許請求の範囲第1項において「殺虫液組成物」を「殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法に使用される殺虫液組成物」に限定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。またこの訂正は、特許請求の範囲第2項の記載により支持されており、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項bは、訂正前の特許請求の範囲第1項及び第2項における「殺虫剤」から、訂正前の実施例19、23及び24において使用された殺虫剤「5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート、3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレートおよび3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマート」を除くもので、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。またこの訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
訂正事項c〜mは、特許請求の範囲の訂正によって生じた発明の詳細な説明中の記載における不整合部分を、特許請求の範囲の記載に合わせて訂正するもので、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。また、この訂正事項は、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であって、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

3.独立特許要件の検討
(1)訂正後の本件発明
訂正明細書の特許請求の範囲第1項及び第2項に記載された発明は、以下のとおりである。
「1.殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法に使用される殺虫液組成物であって、殺虫剤(但し、5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート、3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレートおよび3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマートを除く)の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合したことを特徴とする吸液芯用殺虫液組成物。
2.殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、上記殺虫液として、脂肪族炭化水素に殺虫剤(但し、5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート、3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレートおよび3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマートを除く)と共に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合してなる殺虫液を用いると共に、吸液芯として無機粉体を糊剤で粘結させた吸液芯を用い、かつ、該吸液芯の上部を約60〜約135℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」

(2)訂正拒絶理由の概要
当審で通知した平成13年3月16日付け訂正拒絶理由の趣旨は、訂正明細書の特許請求の範囲第1項及び第2項に記載された発明は、その出願前に頒布されたことが明らかな下記刊行物1〜14に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、よって該訂正は、特許法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないのでこれを認めることができないというものである。

刊行物1 特開昭50-160426号公報
(審判請求人が提出した甲第5号証)
刊行物2 特開昭55-57502号公報
(審判請求人が提出した甲第11号証)
刊行物3 特公昭46-21239号公報
(審判請求人が提出した甲第21号証)
刊行物4 特公昭42-13470号公報
(審判請求人が提出した甲第12号証)
刊行物5 「AGRICULTURAL AND FOOD CHEMI
STRY」第4巻第4号、1956年4月発行、第341頁左
欄8〜13行、第342頁中央欄9〜14行、
(審判請求人が提出した甲第13号証)
刊行物6 「P.&E.O.R.」の「Stabilizing Myr
cene」に関する論文、1967年1月発行、第25頁左欄
下から12〜9行、第26頁
右欄下から14〜6行、1967年1月発行
(審判請求人が提出した甲第14号証)
刊行物7 「防虫科学第35巻-III」、昭和45年8月発行、第96
〜102頁
(審判請求人が提出した甲第19号証)
刊行物8 「Pyrethrum post」11巻1号、1971年4
月発行、第24頁左欄下から2行〜第25頁左欄2行
(審判請求人が提出した甲第20号証)
刊行物9 特公昭54-44726号公報
(審判請求人が提出した甲第22号証)
刊行物10 特開昭54-23122号公報
(審判請求人が提出した甲第23号証)
刊行物11 特公昭52-1970号公報
(審判請求人が提出した甲第24号証)
刊行物12 特公昭51-9371号公報
(審判請求人が提出した甲第25号証)
刊行物13 特開昭53-86023号公報
(審判請求人が提出した甲第26号証)
刊行物14 特開昭53-121927号公報
(審判請求人が提出した参考資料3)

(3)刊行物の記載
上記刊行物1には、以下の記載がある。
1-イ:「構造式で示される化合物(第一菊酸の5-プロパルギル-2-フリルメチルアルコールエステル)を有効成分とする燻蒸・蒸散用殺虫剤」(特許請求の範囲、及び公報第1頁右下欄18行〜20行)
1-ロ:殺虫剤を蒸散用として用いる場合について、「又上記エステルを加熱蒸散用殺虫剤として使用する場合は、このエステルを例えば白燈油に溶解し、この溶液を電気熱体の蒸発面に連続的に供給するようにするか、又は上記溶液をパルプ板又は石綿その他の不燃性材料からなる担持体に浸ませるか、タルク、カオリン、珪藻土に浸ませ錠剤化してこれを電気発熱体で加熱するようにしてもよい。」(公報第2頁左下欄末行〜右下欄7行)
1-ハ:実施例として、「実施例3.本発明の化合物・・・を縦2cm、横2.5cm、厚さ2mmのパルプ板に吸収させ、風乾してアセトンを除去し、加熱蒸散用のマットを得る。 実施例4.本発明の化合物・・・圧縮成型し、重量1gの板状錠剤を得る。 実施例5.本発明の化合物3g、オクタクロロジプロピルエーテル6g、ジブチルヒドロキシトルエン3gを白灯油に溶解して100mlとした溶液を電気発熱体に導き加熱、蒸散させる。」(公報第5頁左上欄14行〜右上欄11行)

上記刊行物2には、以下の記載がある。
2-イ:「沸点範囲180〜300℃の脂肪族炭化水素にdl-3-アリル-2-メチルシクロペンタ-2-エン-4-オン-1-イル dl-シス/トランス-クリサンテマート及び(又は)その異性体の1〜10重量%を含有させてなる殺虫剤液中に、吸油速度が30分以上40時間未満の多孔質吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫剤液を吸液すると共に、該芯の上側面部を130〜140℃の温度に間接加熱して吸液された殺虫剤液を蒸散させることを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」(特許請求の範囲)
2-ロ:殺虫剤溶液を吸上芯により吸上げつつこれを加熱蒸散させる方法について、「上記樹脂マット使用に見られる短時間内に殺虫効果が消失する欠点を解消し、長期に亘り殺虫効果を持続させるためには、殺虫剤溶液を吸上芯により吸上げつつこれを加熱蒸散させる方法が考えられ、事実このような吸上芯利用による殺虫剤蒸散装置が種々提案されている。しかしながら提案された装置は、実際これを用いた場合いずれも吸上芯の加熱によって殺虫剤液を構成する溶剤が速やかに揮散し該芯内部で殺虫剤液が次第に濃縮され、樹脂化して目づまりを起し、長期に亘る持続効果は発揮できず、しかも殺虫効果が経時的に低下し且つ有効揮散率が低く残存率が高いものであった。このような吸上芯利用による加熱蒸散方法に見られる各種の弊害の生ずる原因としては、芯の種類、及び溶剤の種類は勿論のこと殺虫剤の種類、濃度、加熱条件等の多数が考えられ、しかも溶剤のみについても現在知られている溶剤はすべて殺虫剤に比しはるかに低沸点を有し、それ故殺虫剤を充分な殺虫効果を奏し得る濃度で蒸散させるような温度に加熱すれば極めて速やかに且つ多量に揮散してしまう所から、上記弊害を解消することはできないと考えられた。」(公報第1頁右下欄13行〜第2頁右上欄4行)
2-ハ:多孔質液芯について、「該芯としては例えば磁器多孔質、グラスファイバー、石綿等の無機繊維を石膏やベントナイト等の結合剤で固めたもの、カオリン、タルク、ケイソウ土、パーライト、ベントナイト等の無機粉体をデンプン等の結合剤で固めたもの等を例示できる。」(公報第3頁右上欄10行〜15行)

上記刊行物3には、第一菊酸エステルに酸化防止剤または紫外線防止剤の一種以上を配合してなる安定な殺虫組成物が記載されており(特許請求の範囲参照)、酸化防止剤として「2・6-ジ第3級ブチル-4-メチルフェノール(BHT)」が例示され(公報第1頁第2欄15行〜18行参照)、その作用として、「本発明の殺虫組成物は光、熱等によって変質することが極めて少いために長期保存に耐え、且つ燻煙剤として使用する場合でも熱によって分解されずに強力に殺虫力を発揮する。」と記載されている(公報第1頁第1欄35行〜38行)。

上記刊行物4には、殺虫剤、除草剤、木材防腐剤等の用途に用いられる2-(1-シクロヘキセニル)シクロヘキサノンの安定化方法に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、
一般式



(ただしR1 はメチル基、tert-ブチル基、あるいは水素、R2 はメチル基、あるいは水素、R3 はメチル基、tert-ブチル基、ジメチルアミノメチル基、あるいは水素を示す。)で示されるフエノール誘導体が2-(1-シクロヘキセニル)シクロヘキサノンの安定化に極めて有効で、縮合、重合などによる品質の低下を長期間防止できることが記載されている(公報第1頁右欄1行〜12行)。

上記刊行物5には、ピレスリン及びアレスリンの安定化剤としてのハイドロキノン及びその誘導体に係る記述があり、ハイドロキノン、ブチルヒドロキシアニソール、t-ブチルハイドロキノン、4-メトキシ-2プロペニルフェノールが0.4%の濃度においてピレスリンに対して安定性を示したことが記載されている(第342頁中央欄10行〜15行参照)。

上記刊行物6には、ミルセンの安定化に係る記述があり、BHTとBHAのほぼ等量の混合物がミルセンに対して最適な酸化防止剤であることが見出されたことが記載されている(第26頁右欄下から8行〜下から6行)。

上記刊行物7には、キクスリンの安定性に係る記述があり、B.H.Tがキクスリンの安定化剤として効果のあることが記載されている(第99頁右欄1行〜下から5行、及びTable8.)。

上記刊行物8には、ピレトリン抽出物の安定剤としてのブチルヒドロキシトルエンに係る記述があり、BHTを含むピレトリン抽出物はその安定性が改善されていることが記載されている(第24頁右欄21行〜23行参照)。

上記刊行物9には、殺虫組成物を基材に含浸又は塗布してなる電気蚊取り用マットに係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、殺虫組成物にピレスロイド等の殺虫有効成分の安定剤である3・5-ジターシャリーブチル-4-ハイドロキシトルエン(B.H.T)等の抗酸化剤を配合できることが記載され(公報第2頁第3欄下から2行〜第4欄6行参照)、実験例においては80mgのアレスリンに対して10mgのB.H.Tを配合したことが記載されている(公報第3頁第1表及び第3表参照)。

上記刊行物10には、アレスリンおよび第一菊酸の5-プロパルギル-2-フリルメチルエステルの一方又は双方を有効成分とし、ピレスロイド安定剤と1.4-ジイソプロピルアミノアントラキノンを有効成分検知剤として含有する電気蚊取用マットが記載されており(特許請求の範囲参照)、ピレスロイド安定剤としてジブチルハイドロキシトルエン(BHT)、ブチルハイドロキシアニソール(BHA)、ジブチルハイドロキノン(DBH)等の安定剤が挙げられている(公報第1頁左下欄下から4行〜末行)。

上記刊行物11には、ピレスロイド系殺虫剤の効力持続方法に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、BHTを配合した場合の効果について、「BHTの効能については、殺虫成分の揮散の調節よりむしろ、加熱による熱分解を抑制していることが明らかである。」と記載されている(公報第5頁第9欄8行〜10行 )。

上記刊行物12には、ピレスロイド系殺虫剤の殺虫効力持続法に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、BHTを添加した場合の効果について、「BHTを添加することによって、その残存率を高めることができるが、加えないことによる差は大きくはない。この際、BHTは揮散抑制よりもむしろ加熱によるフラメスリンの酸化的熱分解の防止に働いているものと思われる。」と記載されている(公報第3頁第5欄26行〜30行 )。

上記刊行物13には、ピレスロイド系殺虫組成物に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、ピレスロイド系殺虫成分は不安定で分解を受けやすいため、例えば2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール等の分解防止剤を含有せしめる試みがなされていることが記載されている(公報第2頁左上欄4行〜10行参照)。

上記刊行物14には、特定の化合物群から選ばれる酸化防止剤をアレスリン類に配合したものを有効成分として含有する電気蚊取器用殺虫組成物が記載されており(特許請求の範囲参照)、酸化防止剤の配合に関して、「有効成分の分解を抑制する(以下安定化と称する)方法としては、言うまでもなく酸化防止剤の配合である。本発明者らの調査によれば、この分野における主な市販品のいずれにも3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(以下BHTと称する)が配合されており、その量は1個の電気蚊取器用マット当り20mg前後であった。すなわち、BHTは電気蚊取器用殺虫剤の安定剤として必要かつ不可欠とされているものと理解される。本発明者らはアレスリン系殺虫剤を含む電気蚊取器用殺虫剤の安定化について研究する中でBHTはアレスリン系殺虫剤を原体または、電気蚊取器用マットとして保持する場合には効果があるが、電熱器で加熱した場合には意外なことにほとんど安定化効果を発揮しないことを見出した。この点についてさらに検討を加えた結果、BHTはアレスリン系殺虫剤より揮散しやすい性質を持っているため、電熱器で加熱するとBHTの方がより早く揮散消失してしまい、BHTの安定化効果が発揮されないことを明らかにした。」と記載されている(公報第2頁左下欄14行〜右下欄14行)。

(4)対比・判断
(訂正明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明について)
訂正明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下「本件訂正発明1」という。)と、上記刊行物1の実施例5に記載された発明とを対比すると、上記刊行物1記載の殺虫剤は、その組成からみて、殺虫剤の有機溶液中に約0.2重量%以上のジブチルヒドロキシトルエンが配合されているものであることは明らかであり、かつ、刊行物1記載の殺虫剤における有効成分の化合物が本件訂正発明1において除かれている殺虫剤に該当するものでもないことから、両者は、「殺虫剤(但し、5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート、3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2’,2’-ジクロロ)ビニルシクロプロパン カルボキシレートおよび3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマートを除く)の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合した殺虫液」である点で一致しもしくは重複するものである。
また、刊行物2には、吸液芯用の殺虫液を吸液芯に吸上げさせて殺虫する方式の吸上式加熱蒸散型殺虫装置が記載されていることが認められる(上記記載2-イ参照)。
一方、刊行物3には、「本発明は一般式・・・で表わされる第一菊酸エステルに酸化防止剤または紫外線防止剤の一種以上を配合してなる著しく安定化された殺虫組成物に関する。」(公報第1頁第1欄18行〜29行)、「本発明の殺虫組成物は光、熱等によって変質することが極めて少いために長期保存に耐え、且つ燻煙剤として使用する場合でも熱によって分解されずに強力に殺虫力を発揮する。」(公報第1頁第1欄35行〜38行)、「本発明の酸化防止剤としては・・・フェノール系では2・6-ジ第3級ブチル-4-メチルフェノール(BHT)」(公報第1頁第2欄15行〜18行)との記載があることが認められ、上記記載によれば、殺虫剤にBHTを添加した場合には、熱による変質が極めて少なくなり、熱によって分解もされないことが開示されているものと認められる。
ところで、吸液芯用の殺虫剤は、調製後商品として流通ルートを経て消費者の手に渡った後に使用されるため、通常は、調製直後ではなく、ある程度の期間を経過した後に吸液芯を利用した吸上式加熱蒸散型殺虫装置に適用されるものであることは明らかであるから、当業者において、上記装置に適用するまでの間に殺虫液が変質することを防止しようとすることは当然である。
そうすると、刊行物3をみた場合に、BHTを添加した殺虫液である刊行物1の実施例5記載の殺虫組成物を、吸液芯用殺虫組成物として吸液芯利用の吸上式加熱蒸散型殺虫装置に適用して加熱蒸散させることは、同実施例記載の「電気発熱体に導き加熱、蒸散させる」ことが上記装置そのもののことを指すと否とにかかわらず、当業者が当然に行う手段にすぎず、何ら発明力を要するものではない。
また、本件訂正発明1の効果について検討するに、上記のとおり、殺虫液にBHTを添加することにより熱による変質が極めて少なくなり、熱により分解されなくなることは、本件特許出願前に公知であるが、この「熱により分解されなくなる」点について更に検討すると、先の摘示のとおり、刊行物11には、「BHTの効能については、殺虫成分の揮散の調節よりむしろ、加熱による熱分解を抑制していることが明らかである。」(公報第5頁第9欄8行〜10行)と記載され、刊行物12には、「BHTは揮散抑制よりもむしろ加熱によるフラメスリンの酸化的熱分解の防止に働いているものと思われる。」(公報第3頁第5欄28行〜30行)と記載されていることが認められる。
そうすると、これらの記載は、殺虫剤にBHTを添加すると、殺虫成分は、その保存中に熱により変質・分解されないだけでなく、揮散時の加熱による熱分解についても抑制ないし防止されることを当業者に教示するものであることは明らかであるから、BHTを殺虫液に添加することにより、これを吸液芯の上部を加熱して殺虫剤成分を揮散する殺虫装置(ないし方法)に使用した際に、吸液芯の上部加熱部における殺虫成分の分解が防止ないし軽減され、殺虫剤成分が良好に揮散されることが見出されたとしても、このことが、当業者の予測できない格別顕著な効果であるということはできない。
したがって、本件訂正発明1は上記刊行物1ないし3、11、12に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、本件訂正発明1は、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものではない。

(訂正請求に関する被請求人の主張)
被請求人は、訂正拒絶理由に対する平成13年6月1日付け意見書において、参考資料1として提出した特開平3-7207号公報における「しかしながら、この当時のものは・・・・・市場に受け入れられずに終わっていた。」との記載(公報第2頁左下欄1〜5行)をとらえて、これが刊行物1の出願(昭和49年)から15年経過後の当業者の認識であるとし、吸液芯を利用した加熱蒸散方式は実用上致命的な欠陥を有し、その実施が困難であったと当業者に認識されていたと主張している。しかし、上記公報には、上記記載に続いて「最近、この種の吸液芯を用いた加熱蒸散方式の開発が活発に行われ、薬剤処方や吸液芯の材質、組成の改良について種々の提案がなされている。例えば、特公昭61-23163号公報・・・・また特開昭63-48201号公報・・・・・試みが記載されている。」と記載されており(公報第2頁左下欄6〜16行)、このような記載は、吸液芯を利用した加熱蒸散方式の実用化に際しての検討がこれらの特許出願時である昭和53年、昭和61年当時にすでに盛んに行われていたことを示すものであるから、被請求人の上記の主張は採用できない。また、本件発明の効果が、当業者の予測できない格別顕著なものであるということができないことは、前述したとおりである。
また被請求人は、同じく訂正拒絶理由に対する意見書において、上記刊行物14における「BHTは電気蚊取器用殺虫剤の安定剤として必要かつ不可欠とされているものと理解される。本発明者らはアレスリン系殺虫剤を含む電気蚊取器用殺虫剤の安定化について研究する中でBHTはアレスリン系殺虫剤を原体または、電気蚊取器用マットとして保持する場合には効果があるが、電熱器で加熱した場合には意外なことにほとんど安定化効果を発揮しないことを見出した。」との記載をとらえて、BHTは殺虫剤の安定剤として広く使用されているが、その安定効果は殺虫剤を原体または電気蚊取器用マットとして保持する場合、すなわち保存時のみであって加熱下では安定化効果が発揮されないことを示していると主張している。しかし、上記刊行物14には、上記記載に続いて「この点についてさらに検討を加えた結果、BHTはアレスリン系殺虫剤より揮散しやすい性質を持っているため、電熱器で加熱するとBHTの方がより早く揮散消失してしまい、BHTの安定化効果が発揮されない」と記載されており、この記載はすなわち、アレスリン系殺虫剤とBHTという特定の組合せにおいては、アレスリン系殺虫剤より揮散しやすいBHTの方がより早く揮散消失してしまうため安定化効果が発揮されない、という事実を単に述べているだけであって、BHTがすべての殺虫剤との組合せにおいて加熱下では安定化効果が発揮されないことを述べているものではない。したがって、被請求人の上記の主張は採用できない。

4.訂正請求に対する結論
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第134条第5項において準用する、平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第3項の規定に適合しないので、当該訂正は認められない。

III.当事者の主張の概要
1.請求人の請求の趣旨及び理由
請求人は、本件特許第1861146号の特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として下記の書証を提示し、以下に示す無効理由1及び2により、本件特許は無効とすべきものであると主張している。


甲第1号証 特公平2-25885号公報(本件公告公報)
甲第2号証 特開昭56-36958号公報
甲第3号証 実公昭43-25081号公報
甲第4号証 特開昭49-42837号公報
甲第5号証 特開昭50-160426号公報(上記刊行物1に相当)
甲第6号証 平成8年(行ケ)第187号審決取消請求事件判決
甲第7号証の1 大日本除虫菊株式会社試験研究員 浅井洋による平成8
年10月18日付け試験報告書
甲第7号証の2 大日本除虫菊株式会社試験研究員 浅井洋の印鑑証明書
甲第8号証の1 大日本除虫菊株式会社試験研究員 浅井洋による平成1
0年9月30日付け試験結果報告書(3)
甲第8号証の2 大日本除虫菊株式会社試験研究員 浅井洋の印鑑証明書
甲第9号証の1 大日本除虫菊株式会社試験研究員 浅井洋による平成1
0年12月4日付け試験結果報告書(4)
甲第9号証の2 大日本除虫菊株式会社試験研究員 浅井洋の印鑑証明
甲第10号証 特開平7-316002号公報
甲第11号証 特開昭55-57502号公報(上記刊行物2に相当)
甲第12号証 特公昭42-13470号公報(上記刊行物4に相当)
甲第13号証 「AGRICULTURAL AND FOOD CHE
MISTRY」第4巻第4号、1956年4月発行、第3
41頁左欄8〜13行、第342頁中央欄9〜14行
(上記刊行物5に相当)
甲第14号証 「P.&E.O.R.」の「Stabilizing M
yrcene」に関する論文、1967年1月発行、第2
5頁左欄下から12〜9行、第26頁右欄下から14〜6

(上記刊行物6に相当)
甲第15号証 特開昭51-5365号公報
甲第16号証 特開昭50-13316号公報
甲第17号証 「防虫科学第39巻-I」、昭和49年2月発行、第1頁
〜第10頁
甲第18号証 「Agr.Biol.Chem.」第36巻第1号、第5
6頁〜第61頁、1972年
甲第19号証 「防虫科学第35巻-III」、昭和45年8月発行、第
96〜第102頁
(上記刊行物7に相当)
甲第20号証 「Pyrethrum post」第11巻第1号、19
71年4月、第24頁〜第28
(上記刊行物8に相当)
甲第21号証 特公昭46-21239号公報(上記刊行物3に相当)
甲第22号証 特公昭54-44726号公報(上記刊行物9に相当)
甲第23号証 特開昭54-23122号公報(上記刊行物10に相当)
甲第24号証 特公昭52-1970号公報(上記刊行物11に相当)
甲第25号証 特公昭51-9371号公報(上記刊行物12に相当)
甲第26号証 特開昭53-86023号公報(上記刊行物13に相当)

(1)無効理由1
本件第1発明及び第2発明は、甲第2号証ないし甲第5号証、及び甲第11号証ないし甲第26号証に基づいて当業者が容易に想到し得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件第1発明及び第2発明に係る特許は、特許法第123条の規定により無効とすべきものである。

(2)無効理由2
本件第1発明及び第2発明は、甲第7号証ないし甲第10号証を勘案すると甲第3号証、甲第5号証、甲第11号証及び甲第21号証に基づいて当業者が容易に想到し得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件第1発明及び第2発明に係る特許は、特許法第123条の規定により無効とすべきものである。

2.被請求人の答弁の趣旨及び理由主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、証拠方法として下記の書証を提示し、請求人の主張する理由及び証拠によっては本件特許を無効とすることはできないと主張している。


乙第1号証 特公昭52-12106号公報
乙第2号証 特開昭56-58047号公報
乙第3号証 実公昭45-14913号公報
乙第4号証 実公昭45-29244号公報
乙第5号証 特許第2731789号公報
乙第6号証 アース製薬株式会社研究員 長岡義明による平成11年7
月28日付け実験報告書

IV.当審の判断
1.本件発明
上記II.の項において述べたように、本件の平成11年8月2日付け訂正請求は認められないから、本件明細書の特許請求の範囲第1項及び第2項に記載された発明は、設定登録時の明細書に記載された以下のとおりである。
「1.殺虫剤の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合したことを特徴とする吸液芯用殺虫液組成物。
2.殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、上記殺虫液として、脂肪族炭化水素に殺虫剤と共に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合してなる殺虫液を用いると共に、吸液芯として無機粉体を糊剤で粘結させた吸液芯を用い、かつ、該吸液芯の上部を約60〜約135℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」

2.証拠の記載等
甲第1号証は、本件特許の公告公報である。

甲第2号証には、「液体状の蒸散用薬剤を加熱ヒーター上に設けられた浸透拡散材に毛細管により連続的に供給し、該薬剤の供給された浸透拡散材を加熱し該薬剤を蒸散させる蒸散方法」が図面と共に記載されており(特許請求の範囲第1項、及び第1図参照)、多孔質芯で殺虫液を吸い上げて該多孔質芯を加熱するものについて、「長時間使用すると芯の加熱蒸散部に薬剤の熱分解、重合物がたまり、目詰まりを起し殺虫液の吸い上げ量が減じ蒸散量が減じるなど欠点が多く未だ実用化されていない。」と記載されている(公報第1頁右下欄11行〜第2頁左上欄4行参照)。

甲第3号証には、薬液容器に突出させた薬液吸上用の芯を設け、これを電気発熱体に接触させた電熱式殺虫器具に係る考案が記載されており(実用新案登録請求の範囲参照)、その効果について、「薬液の熱変質による樹脂状物等に起因する、薬液吸上用芯の吸上力の低下を防ぎ得る。」と記載されている(公報第1頁右欄下から2行〜第2頁左欄1行)。

甲第4号証には、密閉した室内の悪臭を除去する方法に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、酸化防止剤の使用によって脱臭剤成分および(または)芳香物質成分を酸化または重合に対し安定化する必要があることが記載され(公報第5頁右下欄13行〜16行)、酸化防止剤として「ブチルヒドロキシトルエン」が例示されている(公報第6頁左上欄3行)。
また、実施例には、容器と芯とからなる芯式蒸発器において酸化防止剤としてp-ヒドロキシ安息香酸メチルを配合した成分を用いた場合に、該芯式蒸発器は2〜3個月間継続的に作用したことが記載されている(公報第7頁左下欄15行〜右下欄14行参照)。

甲第5号証は、上記II.3.(2)項の刊行物1と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第6号証は、本件特許に係る審決取消請求事件(平成8年(行ケ)第187号)判決である。

甲第7号証の1には、本件特許明細書に記載されている実施例19、23、24を追試した結果が示されている。

甲第8号証の1には、吸液芯用殺虫液において、安定剤として3、5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)の配合の有無と吸液芯の目詰まり防止効果との関連性を試験した結果が示されている。

甲第9号証の1には、商品名「キンチョウリキッド60WN」の薬剤ボトル中の殺虫液と同一の構成を採用した場合において、BHTが吸液芯の目詰まり防止及び揮散持続効果に寄与しているか否かを試験した結果が示されている。
甲第10号証は、本件出願後に出願・公開された被請求人の出願に係る公開公報であり、その実施例において溶剤の種類及び組成と、有効成分揮散量との関係が示されている(明細書段落【0039】〜【0065】、【表1】〜【表14】参照)。

甲第11号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物2と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第12号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物4と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第13号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物5と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第14号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物6と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第15号証には、メタリルクロライドの保存方法に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、4-メチル-2・6-ジターシャリブチルフェノールがメタリルクロライドの二量化および重合防止、または着色防止にきわだって優れていることが記載されている(公報第1頁第2欄4行〜7行参照)。

甲第16号証には、アルキルフェノールによるアクリル酸の安定化法に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、好ましい安定剤としてブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソールが例示されている(公報第2頁右上欄8行〜13行参照)。

甲第17号証には、フラメスリンの熱挙動に係る記述があり、その熱分解について記載されている(第7頁右欄12行〜19行、及びfig.4参照)

甲第18号証には、大気中150℃におけるアレスリンの熱挙動に係る記述があり、アレスリンが重合して樹脂状物質となることが記載されている(第60頁左欄15行〜18行参照)。

甲第19号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物7と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第20号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物8と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第21号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物3と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第22号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物9と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第23号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物10と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第24号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物11と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第25号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物12と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

甲第26号証は、上記II.3.(2)項において示した刊行物13と同じものであり、同じく(3)項において摘示した事項が記載されている。

乙第1号証には、薬剤加熱揮散装置に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、加熱形式による揮散手段の例として、ピレスロイドを適当な溶剤に溶解した溶液を灯芯体の毛細管現象を利用して発熱体に供給し、ピレスロイドを揮散させるものが記載されている(公報第1頁第2欄末行〜第2頁第3欄3行参照)。

乙第2号証には、吸液芯に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、該吸液芯は、容器に入れた薬剤の溶剤溶液を吸液芯により吸い上げつつ吸液芯上部より加熱蒸散させる吸上式加熱蒸散装置に用いられるものであることが記載されている(公報第1頁右下欄9行〜12行参照)

乙第3号証には、殺虫器に係る考案が記載されており(実用新案登録請求の範囲参照)、該殺虫器は、電気発熱体に空間をおいて対設した蒸発芯を発熱体の直接伝導熱によるか輻射熱によって加熱して、蒸発芯に含浸される薬剤を蒸散させるものであることが記載されている(公報第1頁左欄18行〜21行参照)。

乙第4号証には、殺虫器に係る考案が記載されており(実用新案登録請求の範囲参照)、該殺虫器は、電気発熱体に直接に接触し、もしくは空間をおいて対設した蒸発芯を発熱体の直接伝導熱によるか輻射熱によって加熱して、蒸発芯に含浸される薬剤を蒸散させるものであることが記載されている(公報第1頁左欄18行〜21行参照)。

乙第5号証には、無機質粉体、有機物質および無機質粘結剤からなる混合物を600ないし2000℃で焼成してなる吸液芯、およびその製造方法、並びに薬剤蒸散方法に係る発明が記載されており(特許請求の範囲参照)、加熱蒸散殺虫装置として、薬液を入れた容器を収納する収納容器の上部開放部に固着された環状発熱体により吸液芯の表面温度を70〜140℃に加熱して薬液を蒸散させるものが記載されており(公報第3頁第6欄7行〜30行、及び図参照)、殺虫剤については、工業的入手性、経済性、効力、安全性の諸点で好ましいものとして、「5-ベンジル-3-フリルメチル d-シス/トランス-クリサンテマート(一般名レスメトリン,商品名クリスロンフォルテ,住友化学工業株式会社製,以下殺虫剤Cと略称する)」、「3-フェノキシベンジル 2,2-ジメチル-3-(2,2-ジクロロビニル)シクロプロパンカルボキシレート(一般名ペルメトリン,商品名エクスミン,住友化学工業株式会社製,以下殺虫剤Eと略称する)」「3-フェノキシベンジル d-シス/トランス-クリサンテマート(一般名フェノトリン,商品名スミスリン,住友化学工業株式会社製,以下殺虫剤Fと略称する)」が例示されている(公報第4頁第7欄35行〜第8欄2行、及び46行〜47行参照)。

乙第6号証には、有効成分としてdl・d-T80-アレスリン及びd-T80-フラメトリンを用い、溶剤としてブチルジグリコール(BDG)を用いた製剤において、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン(BHT)を添加した場合の、有効成分の揮散量に与える効果について確認した結果が示されている。

なお、被請求人の提出した上記乙第1号証ないし乙第4号証は、本件特許に係る審決取消請求事件(平成8年(行ケ)第187号)判決において引用された刊行物であって、上記甲第3号証及び甲第11号証と同様、吸液芯用の殺虫液を吸液芯に吸上げさせて殺虫する方式の吸上式加熱蒸散型殺虫装置が記載されているものである。また、同じく乙第6号証は、当審の判断においては採用しなかった甲第8号証の1及び甲第9号証の1に対する反証として提出されたものである。

3.対比・判断
(1)無効理由1について
(本件明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明について)
本件明細書の特許請求の範囲第1項に記載された発明(以下「本件発明1」という。)の吸液芯用殺虫液組成物と、上記甲第5号証の実施例5に記載された殺虫剤とを対比すると、上記甲第5号証記載の殺虫剤は、その組成からみて、殺虫剤の有機溶液中に約0.2重量%以上のジブチルヒドロキシトルエンが配合されていることは明らかであることから、両者は、「殺虫剤の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエンを約0.2重量%以上配合したことを特徴とする殺虫液組成物」である点で一致しており、一方、本件発明1が「吸液芯用殺虫液組成物」であるのに対して、上記甲第5号証記載の殺虫剤は「燻蒸・蒸散用殺虫剤」である点で相違している。

そこで検討するに、甲第5号証記載の殺虫剤は燻蒸・蒸散用とされており(上記記載1-イ参照)、加熱蒸散用として用いる場合にはマット、錠剤、溶液の形態のものを電気発熱体で加熱する方法を用いることが記載され(上記記載1-ロ参照)、実施例においてもそれぞれの方法に対応する例が示されている(上記記載1-ハ参照)。しかし、この殺虫剤を蒸散用として用いる場合の使用形態が特に上記のものに限定されているわけではないから、上記甲第5号証に記載された方法以外の加熱蒸散方法が存在した場合において、その方法が加熱蒸散による方法である以上、上記甲第5号証に記載された燻蒸・蒸散用殺虫剤をその方法に適用することを妨げる理由はない。一方、殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法は、本件特許公報において被請求人も認めているように従来より公知の加熱蒸散殺虫方法であって、その一例が上記甲第11号証に示されている。したがって、上記甲5号証に記載された燻蒸・蒸散用殺虫剤をこのような加熱蒸散殺虫方法に用いることは、当業者であれば容易に想到し得ることであり、その際に殺虫剤の組成についてさまざまな検討を加えることも、甲第2号証、甲第3号証、甲第11号証に上記のような吸液芯を用いた加熱蒸散殺虫方法における問題点等が明らかにされている(上記記載2-ロ等参照)ことからみて当然になされるものと認められる。
またこの場合、甲第5号証の実施例5に記載の殺虫剤に含まれるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)は、上記甲第12号証ないし甲第26号証にも記載されるように、殺虫剤成分の酸化防止剤、安定化剤としてこの出願前広く知られている化合物であり、特に甲第21号証、甲第24号証及び甲第25号証には、殺虫剤にBHTを添加した場合には熱による変質が極めて少なくなり、熱によって分解もされにくいことが開示されていることから、吸液芯を用いた加熱蒸散殺虫方法にジブチルヒドロキシトルエンを含む殺虫剤を使用した場合において、殺虫剤の熱分解を抑制し安定した揮散状態を維持する等の特定の効果を見出すことは、格別困難なことではない。
以上のことから、上記甲第5号証に記載された殺虫剤をこの出願前公知の吸液芯を用いた加熱蒸散殺虫方法に適用すること、すなわち上記相違点に挙げられた構成を導き出すことは、当業者であれば上記甲第2号証ないし甲第4号証、甲第11号証ないし甲第26号証の記載に基づいて容易になし得ることであり、その効果についても予測可能な範囲内にあるものである。
したがって、本件発明1は上記甲第2号証ないし甲第5号証、甲第11号証ないし甲第26号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(本件明細書の特許請求の範囲第2項に記載された発明について)
本件明細書の特許請求の範囲第2項に記載された発明(以下「本件発明2」という。)の加熱蒸散殺虫方法と、上記甲第11号証に記載された加熱蒸散殺虫方法とを対比すると、上記甲第11号証記載の加熱蒸散殺虫方法は、多孔質吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫剤液を吸液すると共に、該芯の上側面部を130〜140℃の温度に間接加熱して吸液された殺虫剤液を蒸散させるものであり(上記記載2-イ参照)、かつ、該多孔質吸液芯がカオリン、タルク、ケイソウ土、パーライト、ベントナイト等の無機粉体をデンプン等の結合剤で固めたものであること(上記記載2-ハ参照)から、両者は、「殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法において、上記殺虫液として、脂肪族炭化水素に殺虫剤を配合してなる殺虫液を用いると共に、吸液芯として無機粉体を糊剤で粘結させた吸液芯を用い、かつ、該吸液芯の上部を130〜約135℃の温度に間接加熱することを特徴とする加熱蒸散殺虫方法。」である点で一致しており、一方、本件発明2においては殺虫剤と共に、「3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合」しているのに対して、上記甲第11号証記載の加熱蒸散殺虫方法においては、殺虫剤液に添加する化合物については特に記載がない点で相違している。

そこで検討するに、上記甲第5号証には第一菊酸の5-プロパルギル-2-フリルメチルアルコールエステルを有効成分とする燻蒸・蒸散用殺虫剤が記載されており(上記記載1-イ参照)、加熱蒸散用として用いる場合にはマット、錠剤、溶液の形態のものを電気発熱体で加熱する方法を用いることが記載され(上記記載1-ロ参照)、実施例5には、ジブチルヒドロキシトルエンを配合した殺虫剤溶液が記載されている(上記記載1-ハ参照)。そして、この殺虫剤を蒸散用として用いる場合の使用形態が特に上記のものに限定されているわけではないから、上記甲第5号証に記載された方法以外の加熱蒸散方法を用いる場合であっても、その方法が加熱蒸散による方法である以上、上記甲第5号証に記載された燻蒸・蒸散用殺虫剤をその方法に適用することを妨げる理由はない。したがって上記甲第11号証に記載された加熱蒸散殺虫方法に用いる殺虫剤を選択する場合に、上記甲第5号証に記載されるような「燻蒸・蒸散用殺虫剤」について吟味してみることは、当業者であれば当然に行うことであり、その際に殺虫剤の組成やその量比についてさまざまな検討を加えることも、甲第11号証、さらに甲第2号証、甲第3号証に上記のような吸液芯を用いた加熱蒸散殺虫方法における問題点等が明らかにされている(上記記載2-ロ等参照)ことからみて当然になされるものと認められる。
またこの場合、甲第5号証の実施例5に記載の殺虫剤に含まれるジブチルヒドロキシトルエン(BHT)は、上記甲第12号証ないし甲第26号証にも記載されるように、殺虫剤成分の酸化防止剤、安定化剤としてブチルヒドロキシアニソール(BHA)とともにこの出願前広く知られている化合物であり、特に甲第21号証、甲第24号証及び甲第25号証には、殺虫剤にBHTを添加した場合には熱による変質が極めて少なくなり、熱によって分解もされにくいことが開示されていることから、吸液芯を用いた加熱蒸散殺虫方法にジブチルヒドロキシトルエンを含む殺虫剤を使用した場合において、殺虫剤の熱分解を抑制し安定した揮散状態を維持する等の特定の効果を見出すことは格別困難なことではない。
以上のことから、上記甲第11号証に記載された加熱蒸散殺虫方法において、殺虫液に3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を配合し、かつその配合量の適当な範囲を特定すること、すなわち上記相違点に挙げられた構成を導き出すことは、当業者であれば上記甲第2号証ないし甲第5号証、甲第12号証ないし甲第26号証の記載に基づいて容易になし得ることであり、その効果についても予測可能な範囲内にあるものである。
したがって、本件発明2は上記甲第2号証ないし甲第5号証、甲第11号証ないし甲第26号証に記載された発明及び技術的事項に基づいて当業者が容易になし得た発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

(2)無効理由2について
(本件発明1について)
本件発明1と、上記甲第5号証の実施例5に記載された発明とを対比すると、上記甲第5号証記載の殺虫剤は、その組成からみて、殺虫剤の有機溶液中に約0.2重量%以上のジブチルヒドロキシトルエンが配合されているものであることは明らかであることから、両者は、「殺虫剤の有機溶剤溶液中に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合した殺虫液」である点で一致しもしくは重複するものである。
また、甲第3号証、甲第11号証には、吸液芯用の殺虫液を吸液芯に吸上げさせて殺虫する方式の吸上式加熱蒸散型殺虫装置が記載されていることが認められる(上記記載2-イ等参照)。
一方、甲第21号証には、「本発明は一般式・・・で表わされる第一菊酸エステルに酸化防止剤または紫外線防止剤の一種以上を配合してなる著しく安定化された殺虫組成物に関する。」(公報第1頁第1欄18行〜29行)、「本発明の殺虫組成物は光、熱等によって変質することが極めて少いために長期保存に耐え、且つ燻煙剤として使用する場合でも熱によって分解されずに強力に殺虫力を発揮する。」(公報第1頁第1欄35行〜38行)、「本発明の酸化防止剤としては・・・フェノール系では2・6-ジ第3級ブチル-4-メチルフェノール(BHT)」(公報第1頁第2欄15行〜18行)との記載があることが認められ、上記記載によれば、殺虫剤にBHTを添加した場合には、熱による変質が極めて少なくなり、熱によって分解もされないことが開示されているものと認められる。
ところで、吸液芯用の殺虫剤は、調製後商品として流通ルートを経て消費者の手に渡った後に使用されるため、通常は、調製直後ではなく、ある程度の期間を経過した後に吸液芯を利用した吸上式加熱蒸散型殺虫装置に適用されるものであることは明らかであるから、当業者において、上記装置に適用するまでの間に殺虫液が変質することを防止しようとすることは当然である。
そうすると、甲第21号証をみた場合に、BHTを添加した殺虫液である甲第5号証の実施例5記載の殺虫組成物を、吸液芯用殺虫組成物として吸液芯利用の吸上式加熱蒸散型殺虫装置に適用して加熱蒸散させることは、同実施例記載の「電気発熱体に導き加熱、蒸散させる」ことが上記装置そのもののことを指すと否とにかかわらず、当業者が当然に行う手段にすぎず、何ら発明力を要するものではない。
また、本件発明1の効果について検討するに、本件明細書の実施例19、23、24には、10時間経過後の1時間当たりの揮散量がそれぞれ3.48、3.42、3.38(mg/Hr)であり、100時間経過後の1時間当たりの揮散量がそれぞれ3.72、3.53、3.62(mg/Hr)であることが示されているが、甲第7号証の1によれば、本件明細書の実施例19、23、24に示された吸液芯用殺虫組成物と同様の殺虫組成物を作成し、同様の条件で試験を行ったところ、実施例19、23、24に相当する組成物の9ないし10時間経過後の1時間当たりの揮散量がそれぞれ0.3544、0.1284、0.3326(mg/Hr)であり、99ないし100時間経過後の1時間当たりの揮散量がそれぞれ0.6574、0.1717、0.4228(mg/Hr)であったことが示されており、この結果からすれば、本件発明1は、吸液芯の目づまりを確実に回避して充分な殺虫効果を奏し得る殺虫剤濃度をもって殺虫剤を長時間持続して揮散させ得るもののみならず、そのような効果を奏さない場合も包含しているものと認められる。
したがって、上記のとおり本件発明1の構成を採用することが当業者が当然行う手段であると認められる以上、本件発明1において上記のように充分な効果を奏さない場合については、甲第5号証、甲第3号証、甲第11号証、及び甲第21号証の記載から当業者が容易に想到し得たものであると認められる。そして本件発明1は、上記の各刊行物の記載から容易に発明し得たものを含む以上、全体として上記各刊行物から当業者が容易に発明し得たものである。

(本件発明2について)
本件発明2の加熱蒸散殺虫方法は、「殺虫液中に吸液芯の一部を浸漬して該芯に殺虫液を吸液すると共に、該芯の上部を間接加熱することにより吸液された殺虫液を蒸散させる加熱蒸散殺虫方法であって、吸液芯として無機粉体を糊剤で粘結させた吸液芯を用い、かつ、該吸液芯の上部を約60〜約135℃の温度に間接加熱する加熱蒸散殺虫方法」において、殺虫液として「脂肪族炭化水素に殺虫剤と共に、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシトルエン及び3-t-ブチル-4-ヒドロキシアニソールから選ばれた少なくとも1種の化合物を約0.2重量%以上配合してなる殺虫液」を用いるものであるが、上記加熱蒸散殺虫方法は、甲第11号証や乙第2号証に記載されるように、吸液芯を用いた加熱蒸散殺虫方法として一般的なものであり、上記殺虫剤は本件発明1の殺虫剤液組成物と同じものである。
したがって、本件発明2は、本件発明1の「吸液芯用殺虫液組成物」を、吸液芯を用いた普通の加熱蒸散殺虫方法に使用する方法、すなわち本件発明1の「吸液芯用殺虫液組成物」の使用方法の発明であると認められ、発明のカテゴリーは異なるものの、実質的には本件発明1とその構成を同じくするものであるから、上記(本件発明1について)の項で判断したのと同じ理由により、上記各刊行物から当業者が容易に発明し得たものであると認める。

(3)被請求人の主張について
被請求人は、甲第7号証の1に記載されている試験結果に承服できない理由として、甲第7号証の1に係る試験報告書の作成者である浅井洋氏が発明者の一人となっている請求人の出願に係る乙第5号証を提示し、乙第5号証には、甲第7号証の1でその効果を奏さないとされた本件発明の実施例19、23、24において使用された有効成分である商品名クリスロンフォルテ、同エクスミン、及び同スミスリンが吸液芯で加熱蒸散させるのに好ましいものであると記載されており、このような記載は甲第7号証の1の試験結果と矛盾していると主張している(平成11年8月2日付け答弁書第8頁参照)。
しかしながら、乙第5号証に記載されている薬剤蒸散方法は特殊な吸液芯を用いたものであり、乙第5号証にも従来例として記載されている本件発明の吸液芯を用いたものとはその前提条件において異なるものである。したがって、本件発明と同じ条件で行われた甲第7号証の1の試験の結果と、乙第5号証の記載が矛盾していても何ら問題となるものではない。

V.むすび
以上のとおり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、特許法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
また、審判費用については、特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-27 
結審通知日 2003-05-30 
審決日 2003-06-10 
出願番号 特願昭59-16760
審決分類 P 1 112・ 121- ZB (A01N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柿沢 恵子平山 孝二  
特許庁審判長 鐘尾 みや子
特許庁審判官 西川 和子
後藤 圭次
登録日 1994-08-08 
登録番号 特許第1861146号(P1861146)
発明の名称 吸液芯用殺虫液組成物及び加熱蒸散殺虫方法  
代理人 松本 司  
代理人 中村 壽夫  
代理人 加藤 勉  
代理人 村林 隆一  
代理人 深井 敏和  
代理人 赤尾 直人  
代理人 萼 経夫  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ