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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H03G
管理番号 1122416
審判番号 不服2002-16356  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-02-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-27 
確定日 2005-08-04 
事件の表示 平成 9年特許願第102886号「ダイナミック電力増幅器およびこれを有する電子システムおよび電力増幅器をダイナミックに制御する方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 2月13日出願公開、特開平10- 41768〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年4月21日(パリ条約による優先権主張1996年4月25日、アメリカ合衆国)の出願であって、平成14年5月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年8月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月26日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成14年9月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年9月26日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に係る発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ダイナミック電力増幅器を有する電子システムであって、
所与の電力信号レベルを有する入力信号を受け取るよう適合され、かつ所与の電力出力信号レベルを有する増幅器出力信号を提供するよう適合された入力増幅器と、
該電力出力信号を受け取り、および該電力出力信号に対応する電力表示信号を生成するように構成された電力センサと、
該電力表示信号に対応するバイアス信号を生成するために、該電力表示信号を受け取るように適合されたコンバータであって、該電力増幅器の動作バイアス点が該電力表示信号の関数として連続的に変化するように、および該電力増幅器の電力付加効率が実質的に一定のままに保たれるように、該バイアス信号が該入力増幅器に与えられるようになっているコンバータと、を含むことを特徴とする電子システム。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「コンバータ」が、「該電力増幅器の動作バイアス点が該電力表示信号の関数として連続的に変化するように、・・・該バイアス信号が該入力増幅器に与えられるようになっている」ものであることを限定するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-61750号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
A.「【産業上の利用分野】この発明は、高周波高出力トランジスタにより高周波信号をA級増幅する高周波増幅装置に関するものである。」(第2頁左欄第29〜31行)
B.「【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の高周波増幅装置は以上のように構成されているので、高周波高出力トランジスタ4の出力レベルに応じて、低歪で高率のよいA級増幅器とするためには、その都度ベースバイアス電圧を調整し、設定しなければならず、また、上記A級増幅では使用するトランジスタの最大使用レベルで動作させるときには効率はよいが、そのレベルより減力して使用する時は、減力すればするほど非効率の電力増幅器となってしまうなどの問題点があった。
【0005】請求項1の発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、高周波高出力トランジスタの出力レベルに応じて適正なベースバイアス電圧を与えることにより、出力レベルに対して常に効率がよく、しかも低歪のA級増幅を実現することができる高周波増幅装置を得ることを目的とする。」(第2頁左欄第48行〜右欄第13行)
C.「【0014】
【実施例】実施例1.以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1において、12は高周波出力トランジスタ4の出力レベルを出力整合回路6およびカップリングコンデンサ7を介して検出する検波回路、13はこの検波回路12の出力電圧に応じてベースバイアスを制御する制御回路である。なお、このほかの図8に示したものと同一の構成部分には同一符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0015】図2は上記制御回路13の詳細を示す回路図であり、同図において、14は検波回路12の検波出力電圧、15はDCアンプ、16はDCアンプ15の利得を調整する可変抵抗器であり、この可変抵抗器16の電圧をバイアス抵抗9a,9bを介して、高周波高出力トランジスタ4へベースバイアス17として供給している。
【0016】また、図3は制御回路13の入出力電圧特性を示し、この入出力電圧特性では、利得調整用の可変抵抗器16の調整により直線特性の傾きをかえることができる。これによれば1つの増幅回路にて、可変出力(例えば、0.1〜3.0Wまで)の回路を構成できることが分かる。
【0017】次に動作について説明する。まず、入力信号の高周波増幅および出力までの動作については、従来技術と同様につき省略する。次に、出力端子8に得られる出力信号の出力レベルを、検波回路12にて電圧に変換し、さらに、この検波出力電圧を制御回路13内のDCアンプ15で増幅する。このDCアンプ15では出力レベルの変化に対応するベースバイアスの動作点となるよう、利得調整用の可変抵抗16の大きさを設定する。
【0018】例えば、いま、出力端子8の出力レベルが下がると、検波回路12で検波した検波出力電圧14も下がる。つまり、図3に示すように、検波出力電圧14の電圧が下がった分の△V1に対して、ベースバイアス17の電圧が△V2分下がるわけであるから、ベースバイアス点も下がってくる。
【0019】従って、高周波高出力トランジスタ4の使用可能な最大レベルより下のレベルで使用する時は、ベースバイアス電圧を自動的に下げ、そのレベルに応じた効率のよい、A級増幅動作とすることができる。」(第3頁左欄第13行〜右欄第2行、及び図1〜3参照)

上記Bに記載されているように、引用例に記載のものは、従来の高周波増幅装置が「非効率の電力増幅器となってしまう」問題点を回避するために、「高周波高出力トランジスタの出力レベルに応じて適正なベースバイアス電圧を与える」ように制御しているもの、すなわち、ダイナミックな制御を行う電力増幅器を有するものであるということができ、全体として、「ダイナミック電力増幅器を有する電子システム」を構成しているということができる。
よって、上記A〜Cの記載、及び図1〜3を参照すると、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例記載の発明」という。)
「ダイナミック電力増幅器を有する電子システムであって、
入力側に入力整合回路3を配置され、出力側に出力整合回路6を配置された高周波高出力トランジスタ4と、
上記出力整合回路6よりの出力信号を受け取り、および該出力信号に対応する検波出力電圧14を生成するように構成された検波回路12と、
該検波出力電圧14に対応するベースバイアス17を生成するために、該検波出力電圧14を受け取るように適合された制御回路13であって、該高周波高出力トランジスタ4の動作バイアス点が該検波出力電圧14の関数として連続的に変化するように、該ベースバイアス17が該高周波高出力トランジスタ4に与えられるようになっている制御回路13と、を含む電子システム。」

(3)対比
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、まず、引用例記載の発明における「入力側に入力整合回路3を配置され、出力側に出力整合回路6を配置された高周波高出力トランジスタ4」は、本願補正発明における「所与の電力信号レベルを有する入力信号を受け取るよう適合され、かつ所与の電力出力信号レベルを有する増幅器出力信号を提供するよう適合された入力増幅器」に対応する構成であるということができ、引用例記載の発明における「出力整合回路6よりの出力信号」は、本願補正発明における「電力出力信号」に対応する信号である。
また、引用例記載の発明における「検波出力電圧14」、「検波回路12」、「ベースバイアス17」、「制御回路13」は、それぞれ、本願補正発明における「電力表示信号」、「電力センサ」、「バイアス信号」、「コンバータ」に対応する。
なお、本願補正発明における「電力増幅器の動作バイアス点」は、実質的に「入力増幅器の動作バイアス点」であると解され、引用例記載の発明における「高周波高出力トランジスタ4の動作バイアス点」に対応するものと解される。
よって、本願補正発明と引用例記載の発明とは、ともに、
「ダイナミック電力増幅器を有する電子システムであって、
所与の電力信号レベルを有する入力信号を受け取るよう適合され、かつ所与の電力出力信号レベルを有する増幅器出力信号を提供するよう適合された入力増幅器と、
該電力出力信号を受け取り、および該電力出力信号に対応する電力表示信号を生成するように構成された電力センサと、
該電力表示信号に対応するバイアス信号を生成するために、該電力表示信号を受け取るように適合されたコンバータであって、該電力増幅器の動作バイアス点が該電力表示信号の関数として連続的に変化するように、該バイアス信号が該入力増幅器に与えられるようになっているコンバータと、を含む電子システム。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点:本願補正発明においては、「コンバータ」が「入力増幅器」に対して、「電力増幅器の電力付加効率が実質的に一定のままに保たれるように」バイアス信号を与えているのに対し、引用例記載の発明における「制御回路13」は、高周波高出力トランジスタ4を低レベルで使用する時に、ベースバイアス電圧を自動的に下げて効率がよくなるように制御しているものの、「電力増幅器の電力付加効率が実質的に一定のままに保たれるように」ベースバイアス電圧を制御しているとは記載されていない点。

(4)判断
そこで、上記相違点について検討する。
一般に、例えば、移動通信機に使用される電力増幅器において、基地局近辺での低出力電力での使用の際の効率の低下を回避すべく、出力電力のレベルによらずに電力付加効率を実質的に一定に保つように制御するという技術思想は周知(必要であれば、例えば、特開昭63-219215号公報等を参照されたい。)であるから、この技術思想を引用例記載の発明に対して適用し、高周波高出力トランジスタ4のベースバイアス電圧を、「電力増幅器の電力付加効率が実質的に一定のままに保たれるように」制御するように構成することは、当業者が適宜に設計できる事項にすぎないものと認められる。
そして、本願補正発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記周知の技術から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。
したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
よって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.補正却下の決定を踏まえた検討
(1)本願発明
平成14年9月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年5月2日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「ダイナミック電力増幅器を有する電子システムであって、
所与の電力信号レベルを有する入力信号を受け取るよう適合され、かつ所与の電力出力信号レベルを有する増幅器出力信号を提供するよう適合された入力増幅器と、
該電力出力信号を受け取り、および該電力出力信号に対応する電力表示信号を生成するように構成された電力センサと、
該電力表示信号に対応するバイアス信号を生成するために、該電力表示信号を受け取るように適合されたコンバータであって、該電力増幅器の動作バイアス点が該電力表示信号の関数として変化するように、および該電力増幅器の電力付加効率が実質的に一定のままに保たれるように、該バイアス信号が該入力増幅器に与えられるようになっているコンバータと、を含むことを特徴とする電子システム。」

(2)引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記2.(2)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、上記2.で検討した本願補正発明における「コンバータ」について、「該電力増幅器の動作バイアス点が該電力表示信号の関数として連続的に変化するように、・・・該バイアス信号が該入力増幅器に与えられるようになっている」ものであるとの限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、特定の要件に限定を施したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)に記載したとおり、引用例記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明及び上記周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-03-09 
結審通知日 2005-03-14 
審決日 2005-03-25 
出願番号 特願平9-102886
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H03G)
P 1 8・ 121- Z (H03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 博幸  
特許庁審判長 武井 袈裟彦
特許庁審判官 望月 章俊
長島 孝志
発明の名称 ダイナミック電力増幅器およびこれを有する電子システムおよび電力増幅器をダイナミックに制御する方法。  
代理人 高梨 憲通  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 臼井 伸一  
代理人 越智 隆夫  
代理人 本宮 照久  
代理人 岡部 正夫  
代理人 藤野 育男  
代理人 産形 和央  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 朝日 伸光  
代理人 高橋 誠一郎  

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