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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A22C |
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管理番号 | 1122421 |
審判番号 | 不服2003-2916 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-07-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-02-24 |
確定日 | 2005-08-10 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第517117号「可食性包装ホイル」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 6月29日国際公開、WO95/17100、平成 8年 7月30日国内公表、特表平 8-506971〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年10月14日(パリ条約による優先権主張1993年12月21日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年2月24日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「食品包装用の食用コラーゲン包装ホイルであって、該包装ホイルは内側に向いている食品接触面および反対の外側に向いている面を有し、該ホイルはコラーゲンゲルとこのコラーゲンゲルに埋設されかつ少なくとも一部そこに封入された粒子状の微粉砕スパイスからなり、該スパイス粒子のフレーバは内側に向いている面を通じてホイルに包まれている食品に移行可能であり、かつまたコラーゲンホイルの外側に向いた面は、外側に向いた外側への面を介してスパイスのフレーバ出口と高水分のロスを防止するのに十分な本質的に閉ざされたコラーゲン皮膜を有し、上記ホイルの厚さは約10から40μmであることからなる、上記食用コラーゲン包装ホイル。」 2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成16年8月27日付けで通知した拒絶理由の概要は、本願発明は、本願出願前に頒布された、特開昭52-70039号公報(以下「引用文献1」という。)及び実願昭61-154804号(実開昭63-61290号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用文献1及び2の記載事項 引用文献1の記載事項 記載事項a:「被包装物が食品であって、包装材が香辛料、調味料を含有する可食性フィルム・シート・チューブ類であることを特徴とする可食性包装体。」(特許請求の範囲) 記載事項b:「ベースとなる可食性フィルム・シート・チューブ類とはコラーゲン、カゼイン・・・より得られるフィルム・シート・チューブ類・・・」(第1頁右下欄第16〜20行) 記載事項c:「香辛料としては胡椒、ガーリック・・・等が使用可能である。更にこれらの組合せ使用も味、香りの点で有効な方法である。・・・香辛料、調味料の形態は液状であっても粉末状であっても使用可能であり、フィルム中に分散もしくは溶解すればすべて使用可能である。またその添加量は味、香りの面を考慮して適宜添加することが出来る。具体的な例としてはハム・ソーセージ等において・・・これらは調理に際して胡椒類を用いるのが通例でありこのような場合はフィルムへの胡椒類の添加が好ましい。」(第2頁左上欄下から1行〜右上欄13行) 記載事項d:「厚さ50μのフィルムを得た。」(第3頁右上欄第4〜5行) 記載事項e:「成形材料組成物を・・・押出機内に導入し・・・ダイスリップ間隔0.1mmの条件で押出し、引取装置で延伸して60ミクロンのフィルムを得た。このフィルムはヒートシール性良好で、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等各種加工食品を包装して、内容物に風味を与える効果があった。」(第3頁左下欄第11〜19行) 引用文献2の記載事項 記載事項f:「第1図は、本考案の調理用包装材料の一実施例を示す断面図で、(1)はプルラン等の可食性フィルムで、該可食性フィルム(1)の表面にこげの香料およびこげの着色料からなる調理層(4)を設けた電子レンジ用調理用包装材料である。・・・さらに可食性フィルム(1)は、前記説明では、単体フィルムであるが、例えば第3図に示すようにポリエチレンテレフタレートフィルムのように耐熱性フィルム(5)上に 可食性フィルム(1)を設け、該可食性フィルム(1)上に着色料層(2)および香料層(3)からなる調理層(4)を設けた積層構成のものでもよい。そして、食品の少なくとも一部を覆い、電子レンジで加熱する時、または、電子レンジ加熱後、耐熱性フィルム(4)を剥離すればよい。」(第3頁第5行〜第4頁第4行、第1〜3図) 4.対比 引用文献1の「包装材」はコラーゲンより得られるものであり、フィルムあるいはシート状であって(記載事項b)、含有する香辛料は粉末状であり(記載事項c)、食品を包装して、内容物すなわち食品に風味を与えるものであり(記載事項e)、風味は包装材の被包装物である食品の側、すなわち内側に向いている面を通じて移行するものであると認められる。 これらの点を考慮して、本願発明と引用文献1に記載されたものとを対比すると、 両者は、「食品包装用の食用コラーゲン包装ホイルであって、該包装ホイルは内側に向いている食品接触面および反対の外側に向いている面を有し、該ホイルはコラーゲンゲルとこのコラーゲンゲルに埋設されかつ少なくとも一部そこに封入された粒子状の微粉砕スパイスからなり、該スパイス粒子のフレーバは内側に向いている面を通じてホイルに包まれている食品に移行可能である食用コラーゲン包装ホイル。」で一致し、以下の2つの点で相違する。 相違点1:本願発明では、コラーゲンホイルの外側に向いた面は、外側に向いた外側への面を介してスパイスのフレーバ出口と高水分のロスを防止するのに十分な本質的に閉ざされたコラーゲン皮膜を有しているのに対し、引用文献1には、これらについて記載がない点。 相違点2:本願発明では、ホイルの厚さは約10から40μmであるのに対し、引用文献1の包装材の厚さは、実施例1及び2によれば、50あるいは60ミクロンである点。 5.当審の判断 相違点1について 引用文献1の包装材では、コラーゲンフィルム(ホイル)の外側に、閉ざされたコラーゲン皮膜を設けることについては記載がないが、引用文献2の包装材料では可食性フィルムの一方の側に着色料層と香料層を含む調理層を設けることが記載されており(記載事項f)、調理層のある面が食品側すなわち本願発明でいう内側として用いられることは、記載事項fの第3図の場合の使用方法の説明を見れば明らかである。 よって、引用文献2には、食品包装用可食性フィルムにおいて食品に接する内側にフレーバを与える層を設け、外側には閉ざされた可食性フィルム層を設けることが記載されているものと認められる。 引用文献2には、スパイスのフレーバと水分の損失防止に関する点については記載がなされていないが、スパイスのフレーバや食品の水分が外部に漏出するという損失を防止する必要があることは包装材としては当然考慮すべき事項である。そして、引用文献2に記載されている包装材は本願発明と同様に、外側には閉ざされた可食性フィルム層を設けているのであるから、本願発明と同様の効果、すなわちスパイスのフレーバと水分の損失防止の効果があることは明らかである。 したがって、引用文献1に記載の可食性包装材においても、外側に向いた面に本質的に閉ざされたコラーゲン皮膜を設けることは当業者が容易になし得ることであるし、本願発明で得られるとされているスパイスのフレーバと水分の損失を防止するという効果についても引用文献2の発明を適用することにより当然得られる効果であるにすぎない。 相違点2について 本願発明では、ホイルの厚さは約10から40μmであると限定しているが、この限定の技術的理由について本願発明の詳細な説明を参照すれば、ホイル層の厚みは目的とした用途によって変り、通常は約8〜80、特に10〜25μmの間で変化する(本願明細書第3頁第19〜21行)、というものであり、 約10から40μmという数値範囲自体に格別の技術的意義があるものとは認められない。しかも、引用文献1に記載された包装材の厚さも約50または60ミクロンと同程度の厚さであることから通常の可食性フィルムの厚さと何ら異なるものでもない。 したがって、本願発明のように ホイルの厚さを約10から40μmであると数値を用いて限定することは当業者が容易になし得ることにすぎない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、残余の請求項について検討を行うまでもなく、本願は当審で通知した上記拒絶理由によって拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-17 |
結審通知日 | 2005-03-18 |
審決日 | 2005-03-29 |
出願番号 | 特願平7-517117 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A22C)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水野 治彦 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
西村 綾子 山崎 豊 |
発明の名称 | 可食性包装ホイル |
代理人 | 歌門 章二 |
代理人 | 浅村 肇 |
代理人 | 浅村 皓 |
代理人 | 長沼 暉夫 |