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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1122424 |
審判番号 | 不服2002-9900 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-08-11 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-03 |
確定日 | 2005-08-16 |
事件の表示 | 平成4年特許願第504475号「改良された伝達部品および切除消息子を組み込んでいる超音波血管形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成4年7月23日国際公開、WO92/11815、平成6年8月11日国内公表、特表平6-507081号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続の経緯・本願発明 本願は、1992年1月9日(パリ条約による優先権主張1991年1月11日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年7月3日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。 「細長い超音波伝達部品が超音波変換器と連結する基部端部および閉鎖性病変に超音波エネルギーを適用するための末端端部を有している型の超音波血管形成装置において、 超音波伝達部品が、充分な超音波エネルギー伝達能力を保ちつつ末端端部において超音波伝達部品の柔軟性を促進するように該末端端部において拡大する末端頭部を有するとともに該末端頭部近傍において該末端頭部に向けて先細るようにされていることを特徴とする装置。」(以下、「本願発明」という) 【2】引用例及びその記載事項の概要 原査定の拒絶の理由において引用された、特開昭62-224342号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次のイ)-チ)の事項が記載されている。 イ)「超音波振動子を内蔵した把持部と超音波振動を組織に伝えるための挿入部からなる生体組織超音波破砕装置において、挿入部の先端を鈍的な形状にしたことを特徴とする生体組織超音波破砕装置。」(第1頁、特許請求の範囲) ロ)「この挿入部の先端部がまっすぐか又は先端に行くにしたがい先細りで発振振幅を大きくとるようになっていた。」(第1頁右欄第2〜第4行) ハ)「超音波破砕装置の挿入部の先端部端面を組織への接触面を大きくすることにより破砕能力を向上させ、組織に対する穿孔、および血管への損傷等を防止することを目的とする。」(第1頁右欄第12〜16行) ニ)「この装置ではシース内に超音波振動を組織に伝える挿入部3を挿通した状態で生体組織に挿入し、挿入部3の先端部にある鈍的な形状31の部分を組織に押し当てることにより把持部2の超音波振動子4からの振動で組織を破砕吸引させる。」(第2頁左上欄第5〜10行) ホ)「第1図ないし第2図は本発明の第1実施例を示すものである。第1図は生体組織超音波破砕装置の構造を示す一部断面にした図で、生体組織超音波破砕装置1は操作者が手で把持する把持部2と生体内に挿入される挿入部3とからなる。上記把持部2は超音波振動子4を内蔵するための円筒状の外装ケース5と超音波振動子4の前端に配置された円錐形状のホーン6を収納するための円錐筒状をした前側カバー7とからなる。・・・(中略)・・・又ホーン6の中心部には接続孔25が設けられ、この接続孔25に挿入部3を有する金属製のパイプ26の基部が嵌合されるようになっており、・・・(中略)・・・上記のパイプ26の先端は第2図で示すように生体組織に接触して接触面積を大きくするように先端端面が直角ではなくR径上の面取りがされた鈍的な形状31を形成している。」(第2頁左上欄第12行〜右下欄第14行) ヘ)「ランジュバン型振動子4には超音波振動が発生し、この振動が前側カバー7内のホーン6で増幅されるとともに挿入部3のパイプ26に伝わる。」(第3頁左上欄第12〜15行) ト)第8,10,11図にはパイプ26の先端の形状例が記載され、特に第11図の先端形状は、パイプ26に比べてその外径が大きい、ディスク形状の破砕子48が記載されている。 チ)「又第7実施例ないし第9実施例では挿入部の先端面が平面になっているが特に平面にする必要なく角部に丸みをもたせて鈍的な形状としてもよい。このように丸みをもたせることで正常組織に対する損傷を防ぐこともできる。」(第4頁左欄第17行〜右欄第2行) 上記の摘記事項を纏めると、引用例には以下の発明が記載されているものと認める(以下、「引用発明」という。)。 (引用発明) 「超音波振動を組織に伝える挿入部3が、超音波振動を増幅するホーン6と嵌合されるパイプ26の基部および、生体組織に押し当てられて超音波振動子4からの振動で組織を破砕する鈍的な形状31の部分を有している生体組織超音波破砕装置であって、 挿入部3が、鈍的な形状31の部分においてパイプ26に比べてその外径が大きい、ディスク形状の破砕子48を有している生体組織超音波破砕装置。」 【3】対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、その機能・構造から見て、引用発明の「超音波振動を組織に伝える挿入部3」は本願発明の「細長い超音波伝達部品」に相当し、以下同様に、「超音波振動を増幅するホーン6」は「超音波変換器」に、「嵌合」は「連結」に、「パイプ26の基部」は「基部端部」に、「生体組織」は「閉鎖性病変」に、「超音波振動子4からの振動で組織を破砕する鈍的な形状31の部分」は「超音波エネルギーを適用するための末端端部」にそれぞれ相当する。 また、引用発明の「パイプ26に比べてその外径が大きい、ディスク形状」である状態は、本願発明の「末端端部において拡大する」形状を満足するものと認められるので、引用発明の「挿入部3が、鈍的な形状31の部分においてパイプ26に比べてその外径が大きい、ディスク形状の破砕子48を有している」は、本願発明の「超音波伝達部品」が「末端端部において拡大する末端頭部を有する」に相当すると言える。 更に、引用発明の「生体組織超音波破砕装置」は、生体組織内で超音波を使用して対象物を破砕する機能を備えた装置を意味するものであり、およそ装置が使用できる体腔であれば使用可能なものと言え、比較的大径の血管内も含み得ると言えるので、本願発明の「超音波血管形成装置」に相当すると言える。 よって両者は、 「細長い超音波伝達部品が超音波変換器と連結する基部端部および閉鎖性病変に超音波エネルギーを適用するための末端端部を有している型の超音波血管形成装置において、 超音波伝達部品が、該末端端部において拡大する末端頭部を有する装置。」 の点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 <相違点1> 「超音波伝達部品」の形状に関して、本願発明では、「該末端頭部近傍において該末端頭部に向けて先細るように」されているのに対し、引用発明では、鈍的な形状部分31部分まで太さが一律のパイプを使用し、先細るものではない点。 <相違点2> 本願発明では、「超音波伝達部品の柔軟性を促進する」との条件が付されているのに対して、引用発明にはかかる条件が明らかでない点。 上記の相違点について検討する。 <相違点1について> ところで、本願発明で「該末端頭部近傍において該末端頭部に向けて先細るように」されていることの技術的な意味を見てみると、明細書の第15頁「vi.超音波伝達部品の一部の先細りすなわち狭窄」の欄に、「そのような先細りしたすなわち狭くされた領域40は超音波伝達部品20の柔軟性をそれの末端端部において促進させて、超音波伝達部品20の全体的な直径をそれの長さの残りに沿って実質的に狭くせずに超音波伝達部品20の末端部分が血管中の種々の曲げを横切ることができて」と記載されているところから見て、先端付近に一部細くなった部分を設けることで先端部の柔軟性を増強させる効果を狙ったものと理解できる。 しかしながら、血管中にて機器の先端部の操作性を向上させる工夫として、先端手前に先細りの部分を設けることは、原審の拒絶査定で周知技術の例として引用された、特開平2-185263号公報第8図および公報第4頁左上欄第18〜20行の「このテーパ形状により、ガイドワイヤのこの部分に沿って可撓性が漸次大きくなっている。」にて示されるように、本願出願前にこの分野の当業者に周知の技術であると認めざるを得ない。とすれば、当該相違点1に係る本願発明の構成については、引用発明に対してかかる周知技術を単に付加したのみで達成できることであって、当業者が容易になし得た事項に過ぎない。 <相違点2について> 先の相違点1の判断で示したように、柔軟性の促進という効果は、先の周知例に明記されているように、先細り部分の変形によってもたらされる効果である。さすれば、先細りに関する周知技術の適用によって、引用発明にも結果的に発現する効果と言えるので、相違点2についての条件も、引用発明に対して周知技術を適用したものに付随する条件と言える。 以上の通りであるから、上記相違点はいずれも引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものということができるので、本願発明については、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 【4】むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-04 |
結審通知日 | 2005-03-15 |
審決日 | 2005-03-28 |
出願番号 | 特願平4-504475 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阿部 寛、水谷 万司、石川 太郎 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
西村 泰英 北川 清伸 |
発明の名称 | 改良された伝達部品および切除消息子を組み込んでいる超音波血管形成装置 |
代理人 | 村木 清司 |
代理人 | 松原 伸之 |
代理人 | 村木 清司 |
代理人 | 村木 清司 |
代理人 | 松原 伸之 |
代理人 | 松原 伸之 |