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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F02D |
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管理番号 | 1122460 |
審判番号 | 不服2004-18632 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-12-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-09 |
確定日 | 2005-09-01 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第158758号「車両用安全運転支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月10日出願公開、特開平 8-326573〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 (1)特許出願:平成7年6月2日 (2)拒絶理由通知:平成15年8月8日(発送日:平成15年8月19日 ) (3)意見書、手続補正書の提出:平成15年10月9日 (4)拒絶査定:平成16年8月4日(発送日:平成16年8月10日) (5)審判請求:平成16年9月9日(方式補正:平成16年11月18日 ) (6)手続補正書(明細書)の提出:平成16年10月8日 (7)拒絶理由通知:平成16年12月28日(発送日:平成17年1月6 日) (8)意見書、手続補正書の提出:平成17年3月7日 2.本願発明 本願の請求項1,2に係る発明は、平成17年3月7日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1,2に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】 住宅密集地域、団地区域、スクールゾーンからなる安全運転地域、及び該安全運転地域内の各道路における制限速度を有する安全運転地域データを記憶する記憶手段と、 車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、 前記検出した車両の現在位置が前記記憶手段に記憶された安全運転地域データ内であるか否かを判断する判断手段と、 車両の現在車速を検出する車速検出手段と、 前記判断手段が車両の現在位置を安全運転地域データ内であると判断した場合、前記車速検出手段で検出された現在車速が前記記憶された制限速度を上回ったときに、エンジンのスロットルバルブの作動角度を減少させ、車速の増大を防止するように制限する制限手段と、 を有してなることを特徴とする車両用安全運転支援装置。」 3.引用文献 (1)引用文献1 これに対し、当審において通知した拒絶の理由に引用された特開平6-324138号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (a)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 車両の絶対位置から定まる走行環境を検出する走行環境検出手段と、該検出された走行環境に基づいて、車両の運転走行状態の制御量を算出する制御量算出手段と、該算出された制御量に基づいて、車両の運転走行状態を制御する運転走行状態制御手段とを備えることを特徴とする車両制御装置。 【請求項2】 請求項1記載の車両制御装置において、前記走行環境検出手段は、予め、絶対位置に関係付けて走行環境に関する情報を記憶している情報記憶手段と、車両の絶対位置を算出する絶対位置算出手段と、該算出された絶対位置と前記情報記憶手段の記憶内容とから、車両の走行環境を特定する走行環境特定手段とからなることを特徴とする車両制御装置。 【請求項3】 請求項2記載の車両制御装置において、前記絶対位置算出手段は、GPS衛星から受信する情報に基づいて、車両の絶対位置を算出する手段であることを特徴とする車両制御装置。」 (b)「【0027】【実施例】以下本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。第1実施例は、図1に示す様に、GPS衛星からの信号を受信するGPS受信機1と、そのアンテナ3と、GPS受信機1が受信した信号に基づいて車両の絶対位置を演算する車両位置演算装置5と、光磁気ディスクを記録媒体とした情報読み取り装置15と、この情報読み取り装置15を駆動して光磁気ディスクへの情報の記録・再生を行う記録・再生装置17と、これら車両位置演算装置5及び記録・再生装置17と接続される情報処理装置20とを備えている。 【0028】車両位置演算装置5は、GPS衛星航法などに基づく演算処理機能を備えたコンピュータである。情報読み取り装置15及び記録・再生装置17は、絶対位置に対応して地図上の各道路の情報を記録し、読み書き可能な光磁気ディスク記録・再生システムからなる。光磁気ディスクに記録されるのは、絶対位置に対応して地図上の各道路を、高速道路,ワインディング路,市街地,郊外,悪路,その他といったいくつかのパターンに分けた情報、各道路の登坂率及び走行方向と上り坂,下り坂の別、及び高度に関する情報である。 【0029】情報処理装置20もコンピュータであり、車両位置演算装置5の演算した現在の車両の絶対位置XYから、上記光磁気ディスク記録・再生システムを介して車両走行中の道路情報を検索し、道路状況を特定し、その結果に応じて各種車両制御用ECUに道路状況を情報として与える。 【0030】この結果、第1実施例は、ブロック図で示すと、図2に示す様なシステム構成となり、道路状況に応じた4WS制御,4WD制御,サスペンション制御,パワーステアリング制御,エンジン制御,変速機制御,…等を実施することができる。」 (c)「【0096】以上本発明のいくつかの実施例を説明したが、本発明はこれら実施例に限らず、その要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。例えば、GPS衛星から受信した情報により絶対位置を算出し、現在走行しているのが市街地であるのか工場地帯であるのか国立公園内であるのか等といった情報を地図データベースから特定し、こうした地域に対応して定められている規制情報、例えば騒音規制だとか、排気ガス規制などに応じてエンジン出力を抑制したり、高出力モードの運転を禁止するなどといったエンジン制御を行うこともできる。 【0097】また、高速道路なのか一般道路なのかとか、市街地なのか郊外なのかといったことを特定し、一般道路や市街地では車間距離制御や定速走行制御を解除又は禁止するといった走行制御を行うようにしてもよい。さらに、第2実施例の様な推定システムではなく、ABSシステムなどによりその都度検出される路面μなどのセンサ信号をも加味してエンジン制御やサスペンション制御を実行する様にしてもよい。 【0098】加えて、トランスミッション制御や、ABS制御などにおいて、これから走行する先の道路の環境を求め、制御の切り換わりをスムーズに行うシステムとして構成することもできる。また、レーダ等による障害物検知システムを備えた車両において、地図データベースにガードレールなど道路周辺の固定構造物をも情報として持たせておき、障害物検知システムによって検知している障害物が前方車両なのかガードレールなどであるのかを判定してこれを車両制御に反映させたり、あるいは横断歩道の存在や徐行しなければならない交差点の存在などの情報を持たせておき、これらを走行制御に反映させ、徐行運転を行わせるなどすることも可能である。」 上記記載(a)には、絶対位置と情報記憶手段の記憶内容から車両の走行環境を特定する走行環境特定手段が記載されており、上記記載(b)には、光磁気ディスクに、絶対位置に対応して地図上の各道路を、高速道路,ワインディング路,市街地,郊外,悪路等といったいくつかのパターンに分けた情報を記録すること、そして、車両位置演算装置5の演算した現在の車両の絶対位置XYから、上記光磁気ディスク記録・再生システムを介して車両走行中の道路情報を検索し、道路状況を特定していることが記載されている。 また、上記記載(c)には、高速道路なのか一般道路なのかとか、市街地なのか郊外なのかといったことを特定すること、横断歩道の存在や徐行しなければならない交差点の存在などの情報を持たせておき、これらを走行制御に反映させることが記載されているから、 道路状況を特定する走行環境特定手段は、その絶対位置が市街地、横断歩道、交差点といった地域内であるか否かを判断しているといえる。 ここで、市街地は、ある広さをもった地域であるのは明らかである。横断歩道や交差点に関しても、通常、ある特定の地点のみを意味するものではなく、人や車が通過するだけの広さを有するものであり、また、徐行という走行制御の特性を考慮しても、特定の地点のみ速度を下げるのではなく、ある範囲を持たせる必要があるから、地域であるといえる。 さらに、上記記載(c)には、市街地、工場地帯、国立公園内といった地域に対応して定められている規制情報に応じてエンジン出力を抑制すること、横断歩道、交差点において、徐行運転を行わせることが記載されており、規制情報には最高速度制限等が含まれることは明かであるから、エンジン出力の抑制や徐行運転を行わせるために、車速の増大を防止するように制限する制限手段を有しているといえる。 したがって、上記各記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献1には、次のような発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「市街地、横断歩道、交差点等からなる地域、及びこうした地域に対応して定められた規制情報を有する地域データを記憶する情報記憶手段と、 車両の絶対位置を検出する絶対位置検出手段と、 前記検出した車両の絶対位置が前記記憶手段に記憶された地域データ内であるか否かを判断する走行環境特定手段と、 前記走行環境特定手段が車両の現在位置を地域データ内であると判断した場合に、前記記憶された規制情報に基づいて車速の増大を防止するように制限する制限手段と、 を有してなる車両用制御装置。」 (2)引用文献2 同様に引用された特開平5-69848号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (d)「【特許請求の範囲】【請求項1】 車両の運動を制御し、その制御特性の変化によって車両運動特性を変化させる車両運動制御装置において、 前記車両の地上における現在位置を検出する車両位置検出手段と、 道路に関する情報を地上の位置に関連付けて記憶する道路情報記憶手段と、 その道路情報記憶手段から前記車両の現在位置に対応する道路情報を読み出し、それに応じて前記制御特性を決定する制御特性決定手段とを設けたことを特徴とする車両運動制御装置。」 (e)「【0002】【従来の技術】車両の運動を制御し、その制御特性の変化によって車両運動特性を変化させる車両運動制御装置が既に知られている。そして、この車両運動制御装置として例えば、次のようなものが既に知られている。すなわち、(a) 車両の後輪舵角を前輪舵角等との関係において適正に制御し、制御特性として後輪操舵角ゲインを変化させる4輪操舵制御装置や、(b) 駆動力の前・後車輪間の配分を路面状態等との関係において適正に制御し、制御特性として駆動力配分比率ゲインを変化させる駆動力伝達制御装置や、(c) 路面の傾斜および車両の加減速,旋回等とは無関係に車体の姿勢を水平に維持し、制御特性として車体ロール角抑制ゲインを変化させるサスペンション制御装置や、(d) ドライバにより車両のステアリングホイールに加えられる操舵力をアシストし、制御特性としてアシスト量ゲインを変化させるパワーステアリング装置や、(e) 車両制動時に車輪がロック状態に陥らないように車輪のブレーキ圧を制御し、制御特性としてブレーキ圧ゲインを変化させるアンチロック制御装置や、(d) 車両発進時および加速時に駆動車輪に過大なスリップが発生しないように駆動車輪の駆動力を減殺し、制御特性として駆動力減殺量ゲインを変化させるトラクション制御装置などである。」 (f)「【0004】【発明が解決しようとする課題】しかし、この公報に記載のナビゲーションシステムは、急なカーブ路の存在、すなわち、道路に関する情報の一種を単にドライバに教えるだけで、それに応じて車両運動特性を自動的に制御するようには設計されていない。そのため、自動的に取得した道路に関する情報が確実に車両の運動特性に反映されないという問題があった。 【0005】この問題を解決するために本出願人は次のような車両運動制御装置を提案した。すなわち、車両に搭載された車両運動状態センサから道路に関する状態や車両の走行に関する状態を推定し、それに応じて車両の運動特性を制御する車両運動制御装置である。」 (g)「【0010】また、道路に関する情報は少なくとも道路地図を含むものとされるのが一般的であるが、さらに、(a) 一般路,山岳路,高速道路,サーキット路等の道路の種類(例えば、道路の種類から一般的に想定される車両の走行状態(市街地走行,屈曲走行,高速直線走行,スポーツ走行等)の種類ということもできる)に関する情報を含むものとしたり、(b) アスファルト路,砂利路,ベルジアン路等の路面状態に関する情報を含むものとしたり、(c)水平路,登坂路,降坂路等の路面の傾斜に関する情報を含むものとしたり、(d) 道路がトンネル内にあるか否かに関する情報を含むものとしたり、(e) 路面が乾いているか濡れているか雪または氷で覆われているかに関する情報を含むものとしたり、(f) 道路標識(制限速度,一方通行,信号,スクールゾーン等)に関する情報を含むものとすることができる。」 したがって、上記各記載事項及び図面の記載を総合すると、引用文献2には、次のような発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「車両の地上における現在位置を検出する車両位置検出手段と、 制限速度,一方通行,信号,スクールゾーン等の道路標識に関する情報を地上の位置に関連付けて記憶する道路情報記憶手段と、 その道路情報記憶手段から前記車両の現在位置に対応する道路情報を読み出し、それに応じて車両運転制御装置の制御特性を決定する制御特性決定手段とを設けてなる車両運動制御装置。」 4.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「情報記憶手段」は、本願発明の「記憶手段」に相当し、以下同様に、「規制情報」は「各道路における制限速度」に、「絶対位置」は「現在位置」に、「絶対位置検出手段」は「現在位置検出手段」に、「走行環境特定手段」は「判断手段」に、「車両用制御装置」は「安全運転支援装置」に、それぞれ、相当する。また、引用発明1の「市街地、横断歩道、交差点等からなる地域」は、特定の地域という限りにおいて、「住宅密集地域、団地区域、スクールゾーンからなる安全運転地域」に相当する。 したがって、両者の一致点及び相違点は次のとおりである。 〈一致点〉 「特定の地域、及びこうした地域に対応して定められた規制情報を有する地域データを記憶する記憶手段と、 車両の現在位置を検出する現在位置検出手段と、 前記検出した車両の現在位置が前記記憶手段に記憶された地域データ内であるか否かを判断する判断手段と、 前記判断手段が車両の現在位置を地域データ内と判断した場合に、車速の増大を防止するように制限する制限手段と、 を有してなることを特徴とする安全運転支援装置。」 〈相違点1〉 地域データに関して、本願発明は、住宅密集地域、団地区域、スクールゾーンからなる安全運転地域、及び該安全運転地域内の各道路における制限速度を有する安全運転地域データであるのに対して、引用発明1は、市街地、横断歩道、交差点等からなる地域、こうした地域に対応して定められた規制情報を有する地域データである点 〈相違点2〉 本願発明は、車両の現在車速を検出する車速検出手段を有し、前記車速検出手段で検出された現在車速が前記記憶された制限速度を上回ったときに、エンジンのスロットルバルブの作動角度を減少させ、車速の増大を防止するように制限する制限手段を有しているのに対し、引用発明1は、車速の増大を防止するように制限する制限手段に関する具体的手段は明示されていない点。 5.相違点についての検討及び判断 そこで、上記相違点1、2について検討する。 ・相違点1について 本願発明の記憶手段に記憶する安全運転地域については、本願の段落【0011】において、「ここに安全運転地域とは、前述のように、住宅密集地、団地区域、スクールゾーン等歩行者が多く、歩行者優先の安全運転が要求される地域を意味する。」(平成15年10月9日付け手続補正書参照。)と記載されている。一方、引用発明1の市街地、横断歩道、交差点といった地域も歩行者が多く、安全運転地域に含まれている。また、スクールゾーンの道路標識を記憶することは引用発明2に記載されており、安全運転地域としてどの地域を選択するかは、当業者が必要に応じて適宜設定することであるといえる。 そして、引用発明1の規制情報には、前述のように、最高速度制限等が含まれることは明かであるから、地域データとして、住宅密集地域、団地区域、スクールゾーンからなる安全運転地域、及び該安全運転地域内の各道路における制限速度を持たせることは、当業者が格別困難なく想到し得ることである。 ・相違点2について そして、引用発明1において、徐行などにより車速の増大を防止する場合には、増大を防止する基準となる速度(制限速度)を記憶しておくとともに、現在の速度を検出するといった構成は、車両の速度制御をするために必要なものであり、当然、そのような構成を備えているものと解されるところ、道路における制限速度を記憶する記憶手段と、車両の現在車速を検出する車速検出手段とを備え、車速検出手段で検出された現在車速が記憶された制限速度を上回ったときに、車速の増大を防止するように制限する制限手段を設けることは周知の技術である。[例えば、特開平4-225500号公報(特に、段落【0011】〜【0013】、段落【0024】、段落【0032】〜【0033】を参照のこと。)、特開平6-87354号公報(特に、段落【0024】〜【0025】、段落【0049】〜【0054】を参照のこと。)参照。] また、車速の増大を防止するように制限する制限手段として、エンジンのスロットルバルブの作動角度を減少させることは、例示するまでもなく、周知の技術である。 よって、上記周知の技術を勘案すれば、引用発明1において車両の現在車速を検出する車速検出手段を備え、車速検出手段で検出された現在車速が記憶された制限速度を上回ったときに、スロットルバルブの作動角度を減少させ、車速の増大を防止するように制限する制限手段を設けることは、当業者が容易になし得るものである。 したがって、本願発明のような構成とすることは、引用発明1,2及び前述した周知の技術に基づいて、当業者が格別困難を伴うことなく容易に想到し発明をすることができたものであり、しかも、本願発明は全体構成でみても、引用発明1,2及び前述した周知の技術から予測できる作用効果以上の格別顕著な作用効果を奏するものとは解されない。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者がその出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-30 |
結審通知日 | 2005-07-05 |
審決日 | 2005-07-19 |
出願番号 | 特願平7-158758 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(F02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 関 義彦 |
特許庁審判長 |
石原 正博 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 平城 俊雅 |
発明の名称 | 車両用安全運転支援装置 |
代理人 | 仲野 均 |
代理人 | 川井 隆 |
代理人 | 川井 隆 |
代理人 | 仲野 均 |