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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1122535 |
審判番号 | 不服2001-22977 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1995-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-21 |
確定日 | 2005-09-20 |
事件の表示 | 平成5年特許願第520211号「肝臓が損われた患者での抗ヒスタミン剤としてのターフェナジン誘導体の用途」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年11月25日国際公開、WO93/23047、平成7年7月27日国内公表、特表平7-506828]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.本件発明 本件は、1993年4月6日を国際出願日(パリ条約による優先権主張 1992年5月12日及び1992年7月31日、米国)とする出願であって、その請求項に係る発明は平成13年6月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1〜6に記載されたとおりのものであるところ、それらのうち請求項1に係る発明は下記のとおりである。 「1.式 [式中、φはフェニル基を表す。]の化合物、又は製薬上受入れられるその塩類、又はその光学異性体類の抗ヒスタミン有効量を含有する、ターフェナジンのすすめられる投与量でQT延長及び/又は心室頻拍の心臓の異常を起こすヒトの患者用の抗ヒスタミン剤」(以下、本件発明という。) 2.引用例 原審において平成12年11月30日付け拒絶理由通知に引用された、本願優先日前に頒布された刊行物である特公平1-32823号公報(以下、引用例という。)には以下の事項が記載されている。 2.1「本発明の化合物の有用性を示すと、4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸は、1×10-7Mの濃度で、ヒスタミンで誘発された単離されたモルモットの回腸筋肉収縮において著るしい減少をもたらした。」(4頁右上欄4〜9行) 2.2「α-(p-第三ブチルフェニル)-4-(α-ヒドロキシ-α-フェニルベンジル)-1-ピペリジンブタノール(対照化合物I:先行技術の化合物)と本発明の化合物4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸(実施例2の化合物)の作用の速さを比較した。 上記2つの化合物をモルモットのヒスタミン二燐酸で誘発された皮膚膨疹(0.1μg/膨疹)に対する抗ヒスタミン効果について試験した。2つの化合物を各々0.8mg/kgで静脈内投与した。この方法で試験したとき対照化合物Iの抗ヒスタミン効果は徐々に現われ、薬物投与240分後に効果のピークに達した(85%の阻止)。一方実施例3の化合物はヒスタミンで誘発された膨疹に対する効果を現わし始めるのが早く、薬物投与30分後に阻止効果はピークに達した(90%阻止)。このように上記の条件下で実施例2の化合物は作用の速い抗ヒスタミン物質であって、速い作用が望まれるときに有利な効果を有すると考えられる。」 (8頁左欄15〜35行 上記「実施例3の化合物」は「実施例2の化合物」の誤記であることは明らかである。) 2.3「新規化合物の投与量は、希望する効果を得るためには、1日当たり約0.01〜20mg/kgの患者体重の単位適量形の有効量を与えるように広い範囲で変化できる。」(3頁右欄24〜27行) 3.対比判断 引用例の実施例2の化合物(4-[4-[4-(ヒドロキシジフェニルメチル)-1-ピペリジニル]-1-ヒドロキシブチル]-α,α-ジメチルベンゼン酢酸)は、本件請求項1の式で示される化合物と同一の化合物であるから、引用例には、本件請求項1の式で示される化合物の抗ヒスタミン有効量を含有する抗ヒスタミン剤が記載されているといえる。(以下、本件請求項1の式で示される化合物をターフェナジンカルボキシレートという。) 本件発明と引用例記載の発明とを対比すると、両者は、ターフェナジンカルボキシレートの抗ヒスタミン有効量を含有する抗ヒスタミン剤である点において一致し、一方、本件発明が「ターフェナジンのすすめられる投与量でQT延長及び/又は心室頻拍の心臓の異常を起こすヒトの患者用」のものであるのに対し、引用例のものはかかる限定事項が記載されていない点で一応の相異があると認められる。 しかし、引用例の発明は「ターフェナジンのすすめられる投与量でQT延長及び/又は心室頻拍の心臓の異常を起こすヒト患者に使用すること」を特に除外するものではないから、「ターフェナジンのすすめられる投与量でQT延長及び/又は心室頻拍の心臓の異常を起こすヒト患者用」であるとの限定を付加することによって、ターフェナジンカルボキシレートの有効量を含む抗ヒスタミン剤として実質的に相違がもたらされるものではない。 また、先行技術の化合物であるターフェナジンは一部の患者においてQT延長及び/又は心室頻拍の心臓の異常を起こすという副作用があるが、本件発明において、ターフェナジンカルボキシレートにはそのような副作用がないことを新たに発見したとしても、その結果、ターフェナジンカルボキシレートの有効量を含む抗ヒスタミン剤の新たな用途が拓かれたわけではない。 したがって、本件発明は引用例に記載された発明であるといわざるを得ない。 なお、請求人は、上記拒絶理由通知に対する意見書において、引用例には動物実験の結果が記載されているにすぎず、ヒトの患者に対する具体的な使用を開示していないから、ヒトの患者に対する抗ヒスタミン剤を開示又は示唆しない旨主張している。 しかし、一般に医薬品の開発は、まず動物実験によって有効性、安全性等を確認した後にヒトを対象とした臨床試験を行うという手順で進められるものであって、ヒト用の医薬に係る発明が開示されるために、必ずしもヒトに投与した臨床試験の結果を記載することが要求されるものではない。 そして、引用例には、動物実験によってターフェナジンカルボキシレートが抗ヒスタミン剤として先行技術の化合物(ターフェナジン)に比べて有利な効果があることを確認したことが記載されており、この試験方法がヒトに用いる抗ヒスタミン剤の試験方法として不適当なものであるとも、引用例が専ら動物用医薬の開発を目的としているとも認められない。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明はその出願前に頒布された刊行物である引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-26 |
結審通知日 | 2003-11-27 |
審決日 | 2003-12-10 |
出願番号 | 特願平5-520211 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 種村 慈樹、胡田 尚則、小川 慶子 |
特許庁審判長 |
眞壽田 順啓 |
特許庁審判官 |
小柳 正之 横尾 俊一 |
発明の名称 | 肝臓が損われた患者での抗ヒスタミン剤としてのターフェナジン誘導体の用途 |
代理人 | 佐々井 克郎 |