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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63B |
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管理番号 | 1122566 |
審判番号 | 不服2002-8073 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-01-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-05-09 |
確定日 | 2005-09-01 |
事件の表示 | 平成10年特許願第155842号「ゴルフクラブシャフト及びゴルフクラブシャフトの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月18日出願公開、特開2000- 14843〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年6月4日の出願(優先権主張平成10年4月27日)であって、請求項1ないし8に係る発明のうち、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年4月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「繊維素材と合成樹脂の複合材からなるゴルフクラブシャフトにおいて、 複数の三軸織物層を、シャフトの軸線方向に間隔を置いて、前記シャフトのバット側からチップ側の全長に渡って配置させ、前記複数の三軸織物層とは別に、前記ゴルフクラブシャフトの全長に渡る少なくとも一層の三軸織物層を設け、 前記複数の三軸織物層及び前記一層の三軸織物層は、巻き回された後に一体として硬化されることを特徴とするゴルフクラブシャフト。」 2.刊行物の記載内容 これに対して、当審の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張前に頒布された特公平7-93959号公報(以下、「刊行物」という。)には、次のことが記載されている。 「〔産業上の利用分野〕本発明はシャフトに屈撓性を持たせたゴルフクラブに関する。」(2欄14ないし15行)、 「本発明は、上記の点に鑑み、シャフトの撓み作用を効率的に利用し、ボールのヒット時にヘッドに最高度の加速度を与えることができるゴルフクラブを提供しようとするものである。」(3欄27ないし30行)、 「第1図ないし第4図は本発明の第1実施例を示し、・・・第1図及び第2図に示すように、シャフト3の内部にはその全長にわたって、・・・各種繊維強化樹脂(FRP)・・・等からなる多数の骨状体4が、球面接合部5により相互に連結されて配置され、シャフト3の主体部を構成している。これらの接合連結された骨状体4の外周を・・・チューブ状の外層材6により被覆してシャフト3の外周部を構成する。・・・なおこの骨状体4は中空構造とすることによりシャフト3の軽量化が図られる。・・・なお、この外層材6は前記の材料の他に、・・・FRP材料を用いることもできる。」(4欄11ないし34行)、 「第5図は本発明の第2実施例を示す。本実施例は、炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のシャフトにおいて、曲げ剛性が低下し再び上昇する箇所をシャフトの長手方向に沿って多数形成したものである。シャフト3の外層は炭素繊維強化樹脂の中空体7となしその内部に多数の管状体8をシャフト3の長手方向に相互に間隔9をおいて配置している。管状体8の材料としては前記第1実施例と同様な材料を用いることができる。管状体と管状体の間の部分は外層7の厚みだけであるためここに曲げ剛性が低下し再び上昇する箇所10が形成される。本実施例においては、管状体8の外層7に対する長手方向の位置を変えることにより、グリップとヘッド間の屈曲点の伝達移行時間を調整することができ、プレーヤのスイング時間に適応したゴルフクラブが得られる。」(5欄27ないし40行)。 上記記載及び図面等並びに技術常識から、刊行物には、 「炭素繊維強化樹脂(CFRP)製のゴルフクラブのシャフトにおいて、複数の各種繊維強化樹脂(FRP)からなる管状体8を、シャフトの長手方向に間隔を置いて、該シャフトのグリップからヘッドの全長に渡って配置させ、前記各種繊維強化樹脂(FRP)からなる管状体8とは別に、前記シャフトのグリップからヘッドの全長に渡る炭素繊維強化樹脂からなる中空体7を設けたゴルフクラブのシャフト。」の発明が記載されていると認められる。 3.対比・判断 本願発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「炭素繊維強化樹脂」、「グリップ」、「ヘッド」、「長手方向」は、それぞれ、本願発明の「繊維素材と合成樹脂の複合材」、「バット」、「チップ」、「軸線方向」に相当し、刊行物記載の発明の「各種繊維強化樹脂(FRP)からなる管状体8」及び「炭素繊維強化樹脂からなる中空体7」は、本願発明の「三軸織物層」と、「繊維強化層」である点で共通するから、両者は、 「繊維素材と合成樹脂の複合材からなるゴルフクラブシャフトにおいて、複数の繊維強化層を、シャフトの軸線方向に間隔を置いて、該シャフトのバット側からチップ側の全長に渡って配置させ、前記複数の繊維強化層とは別に、前記ゴルフシャフトの全長に渡る少なくとも一層の繊維強化層を設けたゴルフクラブシャフト。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点) 本願発明は、繊維強化層として「三軸織物層」を採用し、前記複数の三軸織物層及び前記一層の三軸織物層は、巻き回された後に一体として硬化されるのに対し、刊行物にはこの点が記載されていない点。 上記相違点を検討すると、本願発明と同一技術分野の属するゴルフシャフトにおいて、繊維強化層として一部の層ではあるが三軸織物層を採用し、該層を含む繊維強化層を巻き回された後に一体として硬化することは周知慣用である(実用新案登録第2553612号公報(原審の引用文献1)の段落【0019】、特開平7-241359号公報(同引用文献2)の段落【0014】ないし【0018】、及び、実願平1-140042号(実開平3-78577号公報)のマイクロフィルムの明細書5頁15行ないし6頁1行等参照)。 上記周知技術を勘案すれば、上記刊行物記載の発明において、シャフトの軸線方向に間隔を置いた複数の繊維強化層、及び、前記複数の繊維強化層とは別の一層の繊維強化層を、三軸織物層とし、上記相違点の本願発明に係る構成とすることは、当業者であれば必要に応じて容易になし得ることであり、このようにしたことによる格別の作用効果も認められない。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-07-04 |
結審通知日 | 2005-07-05 |
審決日 | 2005-07-19 |
出願番号 | 特願平10-155842 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A63B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬津 太朗、小林 英司 |
特許庁審判長 |
木原 裕 |
特許庁審判官 |
山田 忠夫 新井 夕起子 |
発明の名称 | ゴルフクラブシャフト及びゴルフクラブシャフトの製造方法 |
代理人 | 三浦 邦夫 |