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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01M
管理番号 1122574
審判番号 不服2002-18826  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-16 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-26 
確定日 2005-09-01 
事件の表示 平成 7年特許願第283331号「発電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 5月16日出願公開、特開平 9-129257〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成7年10月31日の出願であって、平成14年8月16日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年9月26日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると共に、平成14年10月28日付けで手続補正がなされたものである。

II.平成14年10月28日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年10月28日付け手続補正を却下する。

[理由]
1.上記手続補正(以下、「本件補正」という)の内容と本願補正発明1について
本件補正の内容は、特許請求の範囲をその限定的減縮を目的として補正するものであるところ、補正された請求項1の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】 複数の単位セルから構成される管状の内部改質型固体電解質燃料電池と、この燃料電池の内側に配置された、改質される前の燃料が供給されて燃料の改質が行われる燃料供給管と、この燃料供給管のガス入口部のみに充填された触媒層とを具備し、前記触媒層の温度が600℃〜800℃になるようにモジュール内部の熱バランスがとられていることを特徴とする発電装置。」(以下、「本願補正発明1」という)

2.当審の判断
本件補正の上記内容は、次の理由により、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。
(独立特許要件違反について)
(1)引用例の記載事項
原査定の拒絶理由で引用された引用例1、2には、それぞれ次の事項が記載されている。
(a)引用例1:特開昭63-207054号公報
(a1)「(1)未改質燃料を改質して得られる燃料を固体電解質燃料電池10に供給して発電を行う発電装置40において、前記発電装置40内に、前記改質反応促進用の触媒38の層を内側に有する燃料導入部32を組込み、未改質燃料を、前記燃料導入部32を通して燃料電池に供給することを特徴とする、固体電解質燃料電池発電装置。」(特許請求の範囲第1項)
(a2)「(2)燃料導入部32は、マニホールド34と燃料導入管36とからなり、それぞれの内側に触媒38の層を設けることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載の固体電解質燃料電池発電装置。」(特許請求の範囲第2項)
(a3)「通常、管状の固体電解質燃料電池は・・・内側から・・・燃料電極18、固体電解質20、空気電極22と、順に積層してある。また、第6図のものもある。これは燃料電極18と空気電極22とをインタコネクタ24により接続して、単電池を直列接続したものである。上記のように、管の内側に燃料26を、外側に酸化剤28を流す。」(第1頁右下欄第6行〜第2頁左上欄第5行)
(a4)第6図には、複数の単電池が直列接続した固体電解質燃料電池の発電部が図示されている。
(a5)「第1図・・・で、32は燃料導入部で、たとえばマニホールド34と燃料導入管36とからなる。・・・燃料電池10は片方が閉鎖端11、他方が開放端13になっており、燃料導入管36によって燃料26を閉鎖端11近くに送込み、開放端13に向って流す。上記燃料導入部32のマニホールド34および燃料導入管36の内側に触媒38の層を設ける。・・・この層は、蒸着などにより内張りする・・・ことにより、形成する。・・・燃料導入部32は、この発電装置40内に組込まれる。未改質燃料25および水蒸気は、導入部43を通して、燃料導入部32内に送り込む。・・・そして、燃料導入部32内において、触媒38の存在下で、水蒸気改質を行うようにする。」(第2頁右上欄第18行〜左下欄末行)
(a6)第1図には、燃料導入管36が、マニホールド34から管状の燃料電池10の内側に延びて配置され、触媒38の層が、マニホールド34の内側と、燃料導入管36のマニホールドと燃料電池の間の内側に設けられていることが図示されている。
(a7)「なおこの改質の反応は、発電の高温の排熱を利用して行うことができる。したがって、改質に際して、特に新たなエネルギー源を必要としない。」(第2頁右下欄第1〜3行)
(a8)「炭化水素など(・・・以下、未改質燃料という)をH2、COに改質し」(第2頁左上欄第14〜16行)
(b)引用例2:特開平6-13097号公報
(b1)「・・・内側に燃料極を、外側に空気極を配置した固体電解質燃料電池を複数直列に接続してなる円筒型のスタックと、前記スタックへ燃料を供給する燃料供給室と、・・・一端が前記燃料供給室に連通し、他端が前記スタックの先端まで延出する燃料供給管と、この燃料供給管に充填された水蒸気改質触媒と・・・を具備する・・・固体電解質燃料電池発電装置。」(特許請求の範囲)
(b2)「【作用】この発明の発電装置において、天然ガス,水蒸気等の燃料は燃料供給室で・・・加熱された後、燃料供給管を通って各高温固体電解質燃料電池スタックへ供給される。この際、燃料供給管内で水蒸気改質反応が起き、天然ガスの主成分であるメタンが水蒸気と反応し、水素と一酸化炭素に変化する。」(段落【0010】)
(b3)図1には、燃料供給管25が、燃料供給室23から円筒型の固体電解質燃料電池スタックの内側に延びて配置され、水蒸気改質触媒が、燃料供給管の全体に亘って充填されていることが図示されている。

(2)対比・判断
引用例1の(a1)には、「未改質燃料を改質して得られる燃料を固体電解質燃料電池10に供給して発電を行う発電装置40において、前記発電装置40内に、前記改質反応促進用の触媒38の層を内側に有する燃料導入部32を組込み、未改質燃料を、前記燃料導入部32を通して燃料電池に供給することを特徴とする、固体電解質燃料電池発電装置」が記載されており、上記燃料導入部32は、「マニホールド34と燃料導入管36とからなり、それぞれの内側に触媒38の層を設け」(a2)たものである。また、(a3)、(a4)によると、上記固体電解質燃料電池10は、複数の単電池を直列接続した管状の固体電解質燃料電池である。
そうすると、引用例1には、「未改質燃料を改質して得られる燃料を、複数の単電池を直列接続した管状の固体電解質燃料電池に供給して発電を行う発電装置において、前記発電装置内に、マニホールドと燃料導入管からなる燃料導入部を組込み、前記マニホールドと燃料導入管のそれぞれの内側に改質反応促進用の触媒の層を設け、未改質燃料を、前記燃料導入部を通して燃料電池に供給する固体電解質燃料電池発電装置」が記載されているといえる。
そして、上記「未改質燃料」は、発電装置内に組み込まれたマニホールドと燃料導入管からなる燃料導入部に導入され、そこで改質されて、管状の燃料電池の内側に延びて配置された上記燃料導入管から燃料電池に供給されるから(a5)、(a6)、上記「固体電解質燃料電池」は、「内部改質型」といえるものであり、また、上記「触媒の層」は、内張りすることにより形成されたものであって(a5)、第1図を参照すると、マニホールドの内側と、燃料導入管のマニホールドと燃料電池の間の内側に設けられている(a6)。そして、燃料導入管のマニホールドと燃料電池の間は、燃料導入管のガス入口部といえるものである。さらに、「改質の反応は、発電の高温の廃熱を利用して行うことができる。したがって、改質に際して、特に新たなエネルギー源を必要としない。」(a7)のであるから、上記「固体電解質燃料電池発電装置」は、改質反応を発電の廃熱を利用して行ない、特に新たなエネルギー源を必要としないようにモジュール内の熱バランスがとられているものであるといえる。
これらの事項を整理すると、引用例1には、「複数の単電池から構成される管状の内部改質型固体電解質燃料電池と、この燃料電池の内側に配置された、未改質燃料が供給されて燃料の改質が行われるマニホールド及び燃料導入管からなる燃料導入部と、このマニホールドと燃料導入管のガス入口部に内張りされた触媒層とを具備し、改質反応を発電の廃熱を利用して行ない、特に新たなエネルギー源を必要としないようにモジュール内部の熱バランスがとられている固体電解質燃料電池発電装置」の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されているといえる。
そこで、本願補正発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「単電池」、「未改質燃料」、「燃料導入管」、「固体電解質燃料電池発電装置」はそれぞれ、本願補正発明1の「単位セル」、「改質される前の燃料」、「燃料供給管」、「発電装置」に相当するから、両発明は、「複数の単位セルから構成される管状の内部改質型固体電解質燃料電池と、この燃料電池の内側に配置された、改質される前の燃料が供給されて燃料の改質が行われる燃料供給管と、この燃料供給管のガス入口部に触媒層とを具備し、モジュール内部の熱バランスがとられている発電装置」で一致し、以下の点で相違する。

相違点:
(イ)本願補正発明1は、触媒層が、「燃料供給管のガス入口部のみに充填され」ているのに対し、引用発明1は、マニホールドと燃料供給管のガス入口部に内張りされている点。
(ロ)本願補正発明1は、触媒層の温度が600℃〜800℃になるようにモジュール内部の熱バランスがとられているのに対し、引用発明1は、改質反応を発電の廃熱を利用して行ない、特に新たなエネルギー源を必要としないようにモジュール内部の熱バランスがとられている点。

次に、上記相違点について検討する。
相違点(イ)について
引用例2には、上記摘示のように、天然ガス、水蒸気等の燃料、すなわち、「改質される前の燃料」が、燃料供給室から燃料供給管を通って固体電解質燃料電池スタックへ供給されるに際し、燃料供給管の全体に亘って充填された触媒、すなわち、燃料供給管にのみ充填された触媒によって改質される固体電解質燃料電池発電装置が記載されている。そして、この発電装置における固体電解質燃料電池は、内部改質型固体電解質燃料電池といえるものであるから、引用例2には、内部改質型固体電解質燃料電池において、改質される前の燃料を、燃料供給管にのみ充填された触媒によって改質することが記載されているといえる。
そうすると、引用発明1の「触媒層」を、マニホールドと燃料供給管のガス入口部に内張りされたものに代えて、引用例2に記載されるような燃料供給管にのみ充填されたものとすることは、当業者が容易に想到することである。そして、その際に、触媒を燃料供給管内にどの程度充填するかは、触媒の量による改質の程度との兼ね合いで適宜決定し得る事項であり、改質の程度が充分であるならば触媒の使用量は低減し得るものであるし、さらに、燃料供給管の径の大きさによっても、充填し得る触媒量は異なるのであるから、必要な触媒量と燃料供給管の径との兼ね合いをも考慮して、触媒層を配置する場所を、燃料供給管の「ガス入口部のみ」とすることは、当業者が適宜なし得ることである。
してみると、本願補正発明1の相違点(イ)に係る発明特定事項は、引用例2に記載された事項に基づいて当業者が適宜なし得ることである。
相違点(ロ)について
引用例1の「未改質燃料25および水蒸気は、導入部43を通して、燃料導入部32内に送り込む。・・・そして、燃料導入部32内において、触媒38の存在下で、水蒸気改質を行うようにする。」(a5)という記載、及び、「炭化水素など(・・・以下、未改質燃料という)をH2、COに改質し」(a8)という記載によると、引用発明1の「改質反応」は、改質される前の燃料(未改質燃料)である炭化水素及び水蒸気を、触媒の存在下で、H2、COに改質する反応であるといえるが、このような改質反応は、特開平4-274168号公報(第2頁右欄第4〜6行等)、特開昭50-12542号公報(第6頁左下欄第12、13行等)にも記載されるように、700℃〜750℃で行われることは周知である。
そうすると、引用発明1の「改質反応を発電の廃熱を利用して行ない、特に新たなエネルギー源を必要としないようにモジュール内部の熱バランスがとられている」という要件は、「触媒層の温度が700℃〜750℃になるようにモジュール内部の熱バランスがとられている」ことであるといえるから、引用発明1は、本願補正発明1の相違点(ロ)に係る発明特定事項を備えているといえる。
してみると、相違点(ロ)は、実質的な相違点ではないといえる。
仮に、相違点(ロ)が実質的な相違点であったとしても、改質反応を発電の廃熱を利用して行ない、特に新たなエネルギー源を必要としないようにするために、引用発明1の「モジュール内の熱バランス」を、触媒層の温度が700℃〜750℃になるようにとられているものとすることは、周知の事項に基づいて当業者が適宜なし得ることであるから、本願補正発明1の相違点(ロ)に係る発明特定事項は、周知の事項に基づいて当業者が適宜なし得ることであるというべきである。
以上のように、本願補正発明1は、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
したがって、本件手続補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成14年10月28日付けの手続補正は、上記のとおり却下すべきものであるから、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成13年7月5日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1の記載は以下のとおりである。
「【請求項1】 複数の単位セルから構成される管状の内部改質型固体電解質燃料電池と、この燃料電池の内側に配置された、改質される前の燃料が供給されて燃料の改質が行われる燃料供給管と、この燃料供給管のガス入口部に充填された触媒層とを具備し、前記触媒層の温度が600℃〜800℃になるようにモジュール内部の熱バランスがとられていることを特徴とする発電装置。」(以下、「本願発明1」という)

2.引用例と引用発明
原査定の拒絶理由で引用された引用例1、2の記載事項は、上記「II.2(1)」に記載したとおりであり、引用発明1も、前示のとおりである。

3.対比・判断
(1)本願発明1について
本願発明1と本願補正発明1を対比すると、本願発明1は、本願補正発明1の「燃料供給管のガス入口部のみに充填された触媒層を具備し」という発明特定事項から「のみ」という事項を除いた「燃料供給管のガス入口部に充填された触媒層を具備し」というものである。そして、触媒層を、「燃料供給管のガス入口部のみに充填」することが容易であれば、触媒層を、「燃料供給管のガス入口部に充填」することも容易であるというべきである。
したがって、本願発明1は、本願補正発明1について上記「II.2(2)」に記載したと同様の理由により、引用例1、2に記載された発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV.むすび
以上のとおり、本願発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、その他の発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-06-29 
結審通知日 2005-07-05 
審決日 2005-07-20 
出願番号 特願平7-283331
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01M)
P 1 8・ 575- Z (H01M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原 賢一  
特許庁審判長 中村 朝幸
特許庁審判官 酒井 美知子
吉水 純子
発明の名称 発電装置  
代理人 村松 貞男  
代理人 橋本 良郎  
代理人 橋本 良郎  
代理人 風間 鉄也  
代理人 村松 貞男  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 風間 鉄也  
代理人 河野 哲  
代理人 坪井 淳  
代理人 河野 哲  

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