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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08G
管理番号 1122609
審判番号 不服2001-341  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1992-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-01-11 
確定日 2005-09-05 
事件の表示 平成 3年特許願第141036号「一液性エポキシ樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成 4年11月26日出願公開、特開平 4-339817〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成3年5月16日の出願であって、平成12年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成13年1月11日付けで審判請求がなされたものである。
本願発明は、特許明細書および図面の記載からみて、特許請求の範囲請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。
「ポリサルファイド骨格を有するグリシジルエーテル系エポキシ樹脂に対し、その硬化剤として、(i)多官能エポキシ化合物と、三級アミノ基を有する活性水素化合物との付加反応生成物及び/又は(ii)多官能エポキシ化合物と、三級アミノ基を有する活性水素化合物と、分子中に2個以上の活性水素を有する有機化合物との付加反応生成物を配合したことを特徴とする一液性エポキシ樹脂組成物」
2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である昭和59年7月25日に頒布された特開昭59-129221号公報(以下「引用例1」という。)、本願の出願日前である昭和60年1月11日に頒布された特開昭60-4524号公報(以下「引用例2」という。)には、次のことが記載されている。
(1)「サルフアイド変性エポキシ樹脂、アミン系潜在性硬化剤および一般式(1)(略)で表される尿素化合物を含有することを特徴とする一液性のエポキシ樹脂組成物」(引用例1特許請求の範囲請求項1)
(2)「本発明は一液性のエポキシ樹脂組成物に関し、さらに詳しくは貯蔵安定性、硬化性および(略)接着性が良好で、長期間にわたって優れた可撓性を保持するエポキシ樹脂組成物に関する」(引用例1第1頁右下欄第7行〜11行)
(3)「アミン系潜在性硬化剤としては、(略)具体的には、例えば、1-シアノグアニジン(ジシアンジアミド)、(略)が挙げられる。」(引用例1第3頁右上欄第19行〜左下欄第12行)
(4)「(a)多官能性エポキシ化合物と、(b)分子中にOH基、SH基、COOH基及びCONHNH2基のうちの少なくとも1個の官能基と三級アミノ基を兼有する化合物とを反応させて得られる付加化合物からなるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤」(引用例2特許請求の範囲請求項1)
(5)「(a)多官能性エポキシ化合物と、(b)分子中にOH基、SH基、COOH基及びCONHNH2基のうちの少なくとも1個の官能基と三級アミノ基を兼有する化合物(c)分子中に2つ以上の活性水素を有する有機化合物(但し、分子中にエポキシ基又は三級アミノ基を有する化合物を除く)とを反応させて得られる付加化合物からなるエポキシ樹脂用潜在性硬化剤」(引用例2特許請求の範囲請求項2。なお、「有細化合物」は「有機化合物」の誤記と認められる。)
(6)「本発明は、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤に関する。さらに詳しくは低温速硬化性を有し、且つ室温での貯蔵安定性に優れたエポキシ樹脂用潜在性硬化剤に関する。(略)分子中に三級アミノ基を有していれば、アミノ基以外の活性水素を有する化合物でもその活性水素とエポキシ化合物のエポキシ基を反応させることにより得られる付加物が、先に述べたアミン系硬化剤とエポキシ化合物の付加物と同等あるいはそれ以上に優れた潜在性硬化剤となることを見出した。」(引用例2第1頁左下欄第19行〜第2頁右上欄第2行)
(7)「エポキシ基が活性水素1当量に対し、2.5当量を超える場合には、付加化合物が一部三次元化し、不融の固体となり、このものを潜在性硬化剤としてエポキシ樹脂に配合したものは、速硬化性が発揮されず且つ硬化物が不均一になる欠点がある。」(引用例2第3頁右下欄第19行〜第4頁左上欄第4行)
3.対比
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、一液性のエポキシ樹脂組成物である点で一致しており、この組成物に配合されるエポキシ樹脂が、ポリサルファイド骨格を有するグリシジルエーテル系エポキシ樹脂である点でも一致している。
しかしながら、本願発明の組成物に配合される硬化剤が、(i)多官能エポキシ化合物と、三級アミノ基を有する活性水素化合物との付加反応生成物及び/又は(ii)多官能エポキシ化合物と、三級アミノ基を有する活性水素化合物と、分子中に2個以上の活性水素を有する有機化合物との付加反応生成物であるが、引用例1に記載された発明の硬化剤がアミン系潜在性硬化剤である点で相違する。
4.当審の判断
上記相違点について検討すると、引用例2に記載された発明では、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤として、(a)多官能性エポキシ化合物と、(b)分子中にOH基、SH基、COOH基及びCONHNH2基のうちの少なくとも1個の官能基と三級アミノ基を兼有する化合物とを反応させて得られる付加化合物が記載されており、これは、本願発明の硬化剤(i)に相当するものと認められる。
また、引用例2に記載された発明では、エポキシ樹脂用潜在性硬化剤として、(a)多官能性エポキシ化合物と、(b)分子中にOH基、SH基、COOH基及びCONHNH2基のうちの少なくとも1個の官能基と三級アミノ基を兼有する化合物(c)分子中に2つ以上の活性水素を有する有機化合物(但し、分子中にエポキシ基又は三級アミノ基を有する化合物を除く)とを反応させて得られる付加化合物とが記載されており、これは、本願発明で用いられる硬化剤(ii)に相当するものと認められる。
そこで、引用例1に記載されたサルファイド変性エポキシ樹脂に、引用例2に記載されたエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を配合する点を検討する。
引用例1に記載されたサルファイド変性エポキシ樹脂自体は、この出願前周知の樹脂であり、可撓性のあるエポキシ樹脂硬化物が得られることも、この出願前周知の技術である(例えば、特開平1-152166号公報を参照されたい。)から、引用例1に記載されたサルファイド変性エポキシ樹脂に引用例2に記載されたエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を配合し、本願発明を構成することに困難性は認められない。
また、引用例2に記載されたエポキシ樹脂用潜在性硬化剤は、貯蔵安定性に優れることおよび硬化物が不均一とならないように原料の配合割合が考慮されていることから、引用例1に記載されたサルファイド変性エポキシ樹脂に引用例2に記載されたエポキシ樹脂用潜在性硬化剤を配合する場合にも、その硬化反応において、均一に硬化反応が進行するように同様の考慮をすることは当然のことといえる。
そして、本願明細書の実施例の記載を見ても、本願発明の硬化剤(ii)にあたるMY-24を用いた場合とそれ以外の硬化剤を用いた場合における「硬化性」および「硬化物の光沢」の試験結果が○と×とに分かれているのみであるが、どの程度の差異があるのか、その試験結果を客観的に評価することができず、この点により本願発明が格別の作用効果を生じるものとすることはできない。
さらに、本願発明において、貯蔵安定性および可撓性の点で予測し得ない効果を奏するとは認められない。
5.むすび
従って、本願発明は、引用刊行物1及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-17 
結審通知日 2005-06-07 
審決日 2005-06-29 
出願番号 特願平3-141036
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小林 均福井 美穂  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 佐藤 邦彦
佐野 整博
発明の名称 一液性エポキシ樹脂組成物  
代理人 池浦 敏明  

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