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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A41D 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41D |
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管理番号 | 1122630 |
審判番号 | 不服2002-19514 |
総通号数 | 70 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-07 |
確定日 | 2005-09-06 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第332937号「伸びることにより着用者に適合できる使い捨て可能な保護衣類」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 9月24日出願公開、特開平 5-247708〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成4年12月14日(パリ条約による優先権主張1991年12月19日、米国)の出願であって、平成14年7月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成14年10月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年11月6日に手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1乃至21に係る発明は、平成14年11月6日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至21に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は以下のとおりのものである。 「伸びることにより着用者に適合できる使い捨て可能な保護衣類であって、前記衣類が、少なくとも1つの方向に伸長できる可逆性のネック状素材からなる少なくとも1の布辺を有し、この可逆性のネック状素材は、引っ張られることによりネック状となり、そのネック状の状態が記憶されるように処理され、少なくとも15%の伸長状態で静水頭が30cm以上の耐液性を備えていることを特徴とする使い捨て可能な保護衣類。」 3.引用例の記載事項 これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した、特表平3-501507号公報(以下「引用例」という)には、次の記載事項a〜記載事項dの事項が記載されている。 記載事項a:約75%伸長されたときに、少なくとも約75%伸長し、かつ、少なくとも約50%回復できる可逆的にしわ寄せした材料を製造する方法で、その方法が、材料をしわ寄せするのに、伸長力を掛けること;上記のしわ寄せした材料を加熱すること;上記のしわ寄せした材料を冷却すること;から成り、しかも上記の可逆的にしわ寄せした材料が、しわ寄せした状態で加熱する前の上記の材料より大きな溶融熱を有するもの。(特許請求の範囲の請求項1) 記載事項b:約75%伸長されたときに、少なくとも約75%伸長し、かつ、少なくとも約50%回復できる可逆的にしわ寄せした材料で、可逆的にしわ寄せする前より大きな溶融熱を有するもの。(特許請求の範囲の請求項10) 記載事項c:本発明は、伸縮性を付与した材料及びその製造方法に関するものである。・・・たとえば、メルトブロウイング法やスパンボンディング法などの、不織布エクストルージョン法で形成されるプラスチック不織布からは、大層安価に最終製品または製品部材を製造できるので、これらの製品は1回あるいは数回使用すれば捨てても良いものと見なされる。そのような製品の代表的なものには、衣服材料、おしめ、ティッシュ、拭き布、衣服、マットレスパッド、女性衛生用品などがある。(第2頁右下欄第4〜13行) 記載事項d:この可逆的にしわ寄せ可能な材料は、そのような記憶特性を持つように処理できるものなら、どのようなしわ寄せ可能な材料からでも作られる。・・・しわ寄せ可能な材料が伸長可能であれば、一般にはこれを所望のしわ寄せ方向と直角の方向に伸長することによって、しわ寄せできる。・・・その材料のしわ寄せした形態の記憶を持たせるには、しわ寄せした材料を加熱すること;その材料がしわ寄せされた形態にある間に冷却することによる。(第3頁右下欄第1〜24行、第1図、第7図) 4.対比 そこで、本願発明と、上記引用例に記載されたものとを対比する。 引用例に記載された発明における「可逆的にしわ寄せした材料」は、伸縮性を付与した材料であり、衣服等に用いられるものを意味しており(記載事項a〜c)、このことにより、着用者に適合できる衣類となるものであり、また、引っ張られた状態でその形態の記憶を持たせるように処理されたものである(記載事項d)。 本願発明でいう「保護衣類」は「「衣類」とは、保護衣類、および、あるいは覆い(シールド)を指し、例えば、これらに限定されるわけではないが、手術用ガウン、患者用ドレープ、顔マスク、靴カバー、おむつカバー、トレーニングパンツ、オーバーオール、仕事着、エプロン等を含む。」(段落【0018】)であり、特別な種類の衣類を意図しているわけではないから引用例で例示されているもの(記載事項c)と実質的に同一のものである。 そして、これらの点を考慮して、本願発明の用語を用いて対比すると、両者は次の点で一致する。 (一致点) 「伸びることにより着用者に適合できる保護衣類であって、前記衣類が、少なくとも1つの方向に伸長できる可逆性の素材からなる少なくとも1の布辺を有し、この可逆性の素材は、引っ張られたときの状態が記憶されるように処理された使い捨て可能な保護衣類。」 そして、両者は次の相違点1〜3で相違する。 (相違点1) 本願発明は、使い捨て可能なものであるのに対し、引用例に記載されたものは、使い捨て可能であるとは明記されていない点。 (相違点2) 本願発明における素材は、可逆性のネック状素材であるが、引用例に記載されたものは「ネック状」のものであるとは明記されていない点。 (相違点3) 本願発明は、少なくとも15%の伸長状態で静水頭が30cm以上の耐液性を備えているが、引用例に記載されたものは耐液性について記載がない点。 5.相違点の判断 上記相違点について検討する。 (相違点1について) 引用例には、引用例の材料で製造される衣類そのものが使い捨て可能であることは直接的には記載がないが、大量安価に最終製品または製品部材を製造できるものは1回あるいは数回使用すれば捨てても良い旨の記載があり(記載事項c)、引用例に記載の素材も同様に使い捨て可能な用途に用いられるものと認められる。 (相違点2について) 引用例に記載されている材料は、可逆的にしわ寄せされた伸縮性のあるものであるが、本願発明でいう「ネック状」であるか否かは明らかではない。 本願発明でいう「ネック状」とは、本願の明細書を参照すれば、「「ネック状素材」とは、少なくとも1方向に引っ張り等の工程によってくびれている全ての素材を言う。本明細書において、「ネック状となりうる素材」とは、ネック状にすることが可能な全ての素材を言う。本明細書において、「可逆性のネック状素材」とは、ネック状の素材であって、その素材がネック状となっている間にその素材に記憶するような処理がされているもの」(段落【0021】)というものであり、一方、引用例の材料も「しわ寄せ可能な材料が伸長可能であれば、一般にはこれを所望のしわ寄せ方向と直角の方向に伸長することによって、しわ寄せできる。・・・その材料のしわ寄せした形態の記憶を持たせる。」(記載事項d)ものである。 これらの記載を考慮すると、引用例に記載の材料は本願発明の素材と同一の処理がなされた素材であり、両者は「ネック状」という文言が使われているか否かの違いがあるにすぎず、材料としては実質的に同一物であるものと認められる。 (相違点3) 引用例には耐液性については記載がなされていないが、衣類用素材において耐液性、すなわち液体の漏れを防止できる性質は、救命衣や作業着等その用途に応じて必要とされる性質であることは周知の事項である(要すれば、実願昭58-163146号(実開昭60-71620号)のマイクロフィルム、特開昭61-122096号公報、特開昭63-190003号公報参照)。 本願発明では耐液性について、少なくとも15%の伸長状態で静水頭が30cm以上と限定しているが、耐液性の程度をどの程度とするかは、どのような使用条件でどの程度の耐液性が必要とされるかによって決まるものであり、使用条件等を考慮して当業者が適宜定め得ることである。 本願発明では、少なくとも15%の伸長状態という素材が伸長した状態での耐液性を限定しているが、本願発明の保護衣類は伸びることにより着用者に適合できる衣類であって通常の着用時には伸びているものであるからその状態における耐液性を限定することは当然のことである。しかも、静水頭が30cm以上という耐液性は耐液性が必要とされる衣服における耐液性(耐水度、防水性、撥水度)としては通常のものであって格別特異な範囲というわけではない(例えば、実願昭58-163146号(実開昭60-71620号)のマイクロフィルムにおいては耐水度40cm以上、特開昭63-190003号公報においては水頭20cm)。 よって、少なくとも15%の伸長状態で静水頭が30cm以上の耐液性を備えるよう耐液性を限定することは、当業者が容易になし得ることにすぎない。 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件審判の請求は成り立たない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-03-29 |
結審通知日 | 2005-04-04 |
審決日 | 2005-04-18 |
出願番号 | 特願平4-332937 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A41D)
P 1 8・ 121- Z (A41D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 水野 治彦 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
鈴木 公子 渡邊 豊英 |
発明の名称 | 伸びることにより着用者に適合できる使い捨て可能な保護衣類 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 小川 信夫 |
代理人 | 大塚 文昭 |
代理人 | 宍戸 嘉一 |
代理人 | 村社 厚夫 |
代理人 | 今城 俊夫 |
代理人 | 竹内 英人 |