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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1122646
審判番号 不服2002-11487  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-08-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-24 
確定日 2005-09-07 
事件の表示 平成 6年特許願第286981号「補強されたマテリアルハンドリング用コンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 8月15日出願公開、特開平 7-215337〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、平成6年11月22日(優先権主張1993年11月29日、米国)の出願であって、平成14年2月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月24日に手続補正がなされたものである。

2 平成14年7月24日にした手続補正(以下、「本件手続補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲の請求項1は、
「品物を包装、輸送および在庫調査するためのもので、使用しないときはひとつずつ積み重ねられるタイプのマテリアルハンドリング用コンテナ(10)であって、
成形された熱可塑性コンテナ(10)が、少なくともひとつの平面状広がり(84)を規定しており、かつ該コンテナ(10)の該プラスチック製平面状広がり部(84)上の所定の位置で該コンテナ(10)と一体に成形された複数のプラスチック製補強用部材(86)を有しており、
該複数の補強用部材(86)が前記平面状広がり部(84)に隣接して配置された複数個の中空チャネル(88)を規定してかつ該部材(86)によって規定される前記チャネル(88)から上方に向かって伸延した少なくともひとつのリブ(90)を含んで該コンテナ(10)の前記平面状広がり部(84)に強度を付加しており、
補強用部材(86)が、チャネル(88)から上方に向かって伸延し互いに間隔を保った平行関係で配置されている一対の直立リブ(90)を含んでおり、補強用部材(86)によって規定される中空チャネル(88)が、平面状広がり部(84)によって形成される底壁(92)と、互いに間隔をもって配置された一対の直立フランジ(94)と、フランジ(94)間でチャネル(88)の底壁(92)から間隔を保って伸延しているトラス部材(96)とを含んでいる、前記コンテナ(10)。」
と補正された。
上記補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である補強用部材について、
「補強用部材(86)が、チャネル(88)から上方に向かって伸延し互いに間隔を保った平行関係で配置されている一対の直立リブ(90)を含んでおり、補強用部材(86)によって規定される中空チャネル(88)が、平面状広がり部(84)によって形成される底壁(92)と、互いに間隔をもって配置された一対の直立フランジ(94)と、フランジ(94)間でチャネル(88)の底壁(92)から間隔を保って伸延しているトラス部材(96)とを含んでいる」と、補正前の請求項2及び3に記載されていた事項により限定を付加するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、発明の利用分野及び解決しようとする課題が異なるものではないので、上記補正は、特許法第17条の2第3項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件手続補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第3項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日(以下、「優先日」という。)前に国内において頒布された、実願昭61-38642号(実開昭62-150323号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
a「各種部品等の収納搬送用とし、かつ使用後は折たたみ可能とされる折たたみコンテナーが用いられている。」(1頁18ないし末行)
b「このコンテナーは底板10の周囲にそれぞれ一対の互に対向する長側壁12と短側壁14とが立設倒伏可能に取り付けられている。これらの底板10、長側壁12、短側壁14はそれぞれ合成樹脂により形成されており、軽量化が可能となっている。」(4頁5ないし10行)
c「立設状態では長側壁12の対向面は平滑な平面であるが外側面には複数のリブ30が縦横に交差されており、補強用となっている。」(5頁19行ないし6頁1行)
d「折たたみ状態で複数個のコンテナーが積み重ねられる」(7頁2ないし3行)
以上の記載によれば、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「各種部品等を収納搬送するためのもので、使用後は折りたたんで積み重ねることができ、且つ、合成樹脂で形成された長側壁の外側面に複数の補強用リブを有しているコンテナー。」

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に国内において頒布された、特開平3-207617号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の記載がある。
e「補強用リブと成形体本体との交差部に、補強用リブより幅広で中空の台部が一体に形成されていることを特徴とする補強用リブ付射出成形体。」(特許請求の範囲)
f「第1図(a)〜(d)を用いて、本発明の補強用リブ付射出成形体を説明する。本発明の補強用リブ付射出成形体は、成形体本体4に補強用リブ1が成形されており、当該補強用リブ1と成形体本体4の交差部に中空部3を有する台部2が設けられている一体構造の射出成形体である。補強用リブ1の抜き勾配は1度以上が好ましく、……また、その数は第1図(a),(b)に示すように、単数であっても良いし、第1図(c),(d)に示すように、複数であっても良い。台部2は、半円形あるいは台形の中空部3を有している部分であり、その形状は半円あるいは台形である。」(2頁左下欄4行ないし右下欄1行)
以上の記載及び第1図(d)によれば、引用例2には、次の発明が記載されていると認められる。
「台形の中空部を成す台部を成型体本体と一体成形し、台部の上面両端に2本の補強用リブを立設させた、補強用リブ付射出成形体。」

(3)対比・判断
本願補正発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「各種部品等を収納搬送」、「長側壁の外側面」、「補強用リブ」、「コンテナー」、は、それぞれ本願補正発明の「品物を包装、輸送および在庫調査」、「平面状広がり」、「補強用部材」、「マテリアルハンドリング用コンテナ」に相当する。また、引用例1記載の発明のコンテナーは、合成樹脂で形成されており、コンテナーには、通常、熱可塑性の合成樹脂が使用されるから、両者は、
「品物を包装、輸送および在庫調査するためのもので、使用しないときはひとつずつ積み重ねられるタイプのマテリアルハンドリング用コンテナであって、成形された熱可塑性コンテナが、少なくともひとつの平面状広がりを規定しており、かつ該コンテナの該プラスチック製平面状広がり部上の所定の位置で該コンテナと一体に成形された複数のプラスチック製補強用部材を有しているコンテナ。」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点
本願補正発明では、複数の補強用部材が平面状広がり部に隣接して配置された複数個の中空チャネルを規定してかつ該部材によって規定されるチャネルから上方に向かって伸延した少なくともひとつのリブを含んで該コンテナの平面状広がり部に強度を付加しており、補強用部材が、チャネルから上方に向かって伸延し互いに間隔を保った平行関係で配置されている一対の直立リブを含んでおり、補強用部材によって規定される中空チャネルが、平面状広がり部によって形成される底壁と、互いに間隔をもって配置された一対の直立フランジと、フランジ間でチャネルの底壁から間隔を保って伸延しているトラス部材とを含んでいるのに対して、引用例1記載の発明では、補強用部材は具体的構造が不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。
引用例2には、「台形の中空部を成す台部を成型本体と一体成形し、台部の上面両端に2本の補強用リブを立設させた、補強用リブ付射出成形体」の発明が記載されており、引用例2記載の発明の「中空部」は本願補正発明の「中空チャネル」に相当し、同様に、「補強用リブ」は「リブ」に、「成型体本体」は「平面状広がり部」に、「補強用リブ」と「台部」を合わせたものは「補強用部材」に、それぞれ相当する。
さらに、引用例2記載の発明における台部を構成する下壁、側壁、上壁が、それぞれ本願補正発明の中空チャネルの「底壁」、「フランジ」、「トラス部材」に相当することは、引用例2の第1図(d)から明らかであるので、引用例2記載の発明の補強用部材は、リブやフランジに相当する部材が直立していない点を除けば、本願補正発明と同様の構造、すなわち、「補強用部材が平面状広がり部に配置された中空チャネルを規定してかつ該部材によって規定されるチャネルから上方に向かって伸延した少なくともひとつのリブを含んで平面状広がり部に強度を付加しており、補強用部材が、チャネルから上方に向かって伸延し互いに間隔を保った関係で配置されている一対のリブを含んでおり、補強用部材によって規定される中空チャネルが、平面状広がり部によって形成される底壁と、互いに間隔をもって配置された一対のフランジと、フランジ間でチャネルの底壁から間隔を保って伸延しているトラス部材とを含んでいる」との構造を備えている。
引用例2に、本願補正発明のリブやフランジに相当する部材が直立ではなく傾斜していることに関して、射出成形時の抜き勾配をつけるためであると記載されている(引用例2の1頁右下欄12ないし17行)点を考慮すれば、リブやフランジに相当する部材に抜き勾配をつけずに直立状態とすることは、設計者が任意に選択しうる単なる設計上の事項にすぎない。
そして、引用例1記載の発明と引用例2記載の発明は、補強用リブを有する樹脂の射出成形体という同じ技術分野に属しており、また、引用例2記載の発明を引用例1記載の発明に適用することを妨げる特段の要因も見あたらないから、引用例2記載の発明に上記設計事項を加えて引用例1記載の発明に適用し本願補正発明のようにすることは、当業者が容易に想到し得たことといえる。
そして、本願補正発明の奏する作用効果も、引用例1及び2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)まとめ
以上のとおり、本件手続補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3 本願発明について
(1)本願発明
上記のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成13年2月13日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりの次のものと認める。
「【請求項1】品物を包装、輸送および在庫調査するためのもので、使用しないときはひとつずつ積み重ねられるタイプのマテリアルハンドリング用コンテナ(10)であって、成形された熱可塑性コンテナ(10)が、少なくともひとつの平面状広がり(84)を規定しており、かつ該コンテナ(10)の該プラスチック製平面状広がり部(84)上の所定の位置で該コンテナ(10)と一体に成形された複数のプラスチック製補強用部材(86)を有しており、該複数の補強用部材(86)が前記平面状広がり部(84)に隣接して配置された複数個の中空チャネル(88)を規定してかつ該部材(86)によって規定される前記チャネル(88)から上方に向かって伸延した少なくともひとつのリブ(90)を含んで該コンテナ(10)の前記平面状広がり部(84)に強度を付加している、前記コンテナ(10)。
【請求項2】ないし【請求項5】(記載を省略)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

(2)引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「2(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2(1)で検討した本願補正発明から、補強用部材について付加した限定事項である「補強用部材(86)が、チャネル(88)から上方に向かって伸延し互いに間隔を保った平行関係で配置されている一対の直立リブ(90)を含んでおり、補強用部材(86)によって規定される中空チャネル(88)が、平面状広がり部(84)によって形成される底壁(92)と、互いに間隔をもって配置された一対の直立フランジ(94)と、フランジ(94)間でチャネル(88)の底壁(92)から間隔を保って伸延しているトラス部材(96)とを含んでいる」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2(3)」に記載したとおり、引用例1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-05 
結審通知日 2005-04-12 
審決日 2005-04-25 
出願番号 特願平6-286981
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B65D)
P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一ノ瀬 覚  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 渡邊 豊英
山崎 豊
発明の名称 補強されたマテリアルハンドリング用コンテナ  
代理人 松本 研一  
代理人 小倉 博  
代理人 伊藤 信和  

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