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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A01H
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01H
管理番号 1122681
審判番号 不服2000-17339  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-10-31 
確定日 2005-09-07 
事件の表示 平成 9年特許願第180194号「種子を用いた酵素産物および飼料原料の生産」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月22日出願公開、特開平10-248421〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年7月4日(パリ条約による優先権主張1997年1月20日、韓国)の出願であって、その請求項1ないし5に係る発明は、平成11年11月19日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1及び2に係る発明(以下、「本願発明1及び2」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】 稲、麦、小麦、ライ麦、とうもろこしからなる群から選ばれる穀類種子、あるいは大豆、カノラからなる群から選ばれる豆科種子を発芽させることにより得られるフィターゼ。
【請求項2】 稲、麦、小麦、ライ麦、とうもろこしからなる群から選ばれる穀類種子、あるいは大豆、カノラからなる群から選ばれる豆科種子を発芽させたものから、フィターゼを抽出し、その後0.5〜1.0MのMgCl2を添加することを特徴とするフィターゼの製造方法。」
(なお、本願明細書について、平成12年6月21日付けで手続補正がなされたが、この補正は前審で平成12年7月7日付けで却下された。これに対して、本件拒絶査定不服審判において、審判請求人は上記補正却下の決定に対して不服を申し立てておらず、また、前審の上記補正却下の決定は適法なものであるので、本願発明1及び2を上記のとおり認定した。)

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された「Gibson D.M.et al.,Archives of Biochemistry and Biophysics,vol.260(2),p.503‐513(1988)」(以下、「引用例1」という。)には、「ダイズフィターゼ(myo-イノシトール-ヘキサキスホスフェート-ホスホヒドロラーゼ;EC3.1.3.8)が、発芽後10日の子葉から、4段階精製法を用いて精製された。」(503頁1行〜2行)と記載され、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された「Houde R.L.et al.,J.Food Biochem.,vol.14,p.331‐351(1990)」(以下、「引用例2」という。)には、「発芽したカノーラ栽培品種Altex、Wester、Candle、及びTobinが、フィターゼ活性について選抜された。この予備選抜に基づいて、発芽後7日のAltex苗がフィターゼの単離及び性質決定の原料として選ばれた。」(331頁、ABSTRACT 1行〜4行)と記載され、同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前に頒布された「Laboure A.et al.,Biochem.J.,vol.295,p.413‐419(1993)」(以下、「引用例3」という。)には、「フィターゼ(myo-イノシトール-ヘキサキスホスフェート-ホスホヒドロラーゼ;EC3.1.3.8)が、発芽後5〜7日のトウモロコシ(Zea mays)苗から、4段階精製法を用いて精製された。」(413頁左欄1行〜3行)と記載されている。

3.対比
(請求項1に係る発明について)
本願発明1と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、大豆からなる豆科種子を発芽させることにより得られるフィターゼの点で一致し、また、本願発明1と引用例2に記載された発明とを対比すると、両者は、カノラからなる豆科種子を発芽させることにより得られるフィターゼの点で一致し、更に、本願発明1と引用例3に記載された発明とを対比すると、両者は、とうもろこしからなる穀類種子を発芽させることにより得られるフィターゼの点で一致し、本願発明1と引用例1ないし3に記載された発明との間に実質的な相違点は見出せない。
してみると、本願発明1は、引用例1ないし3に記載された発明である。

(請求項2に係る発明について)
本願発明2と引用例1に記載された発明とを対比すると、両者は、大豆からなる豆科種子を発芽させたものからフィターゼを抽出することを特徴とするフィターゼの製造方法の点で一致し、また、本願発明2と引用例2に記載された発明とを対比すると、両者は、カノラからなる豆科種子を発芽させたものからフィターゼを抽出することを特徴とするフィターゼの製造方法の点で一致し、更に、本願発明2と引用例3に記載された発明とを対比すると、両者は、とうもろこしからなる穀類種子を発芽させたものからフィターゼを抽出することを特徴とするフィターゼの製造方法の点で一致する。
しかし、本願発明2は、フィターゼの抽出後0.5〜1.0MのMgCl2 を添加するのに対して、引用例1ないし3には、0.5〜1.0MのMgCl2 を添加することについて記載されていない点で、両者は相違する。
上記相違点について検討する。
本願明細書の記載によれば、本願発明2においては、抽出された高活性フィターゼ溶液の安定性を維持するために0.5〜1.0MのMgCl2 を添加するものと認められるが、一般に酵素抽出液にMgCl2 を添加して酵素を安定化させることは種々の酵素について広く行われていることである(必要なら、例えば特開平6-284886号公報、特開平4-23987号公報、及び特開昭52-143285号公報を参照。)から、フィターゼの安定化のためにMgCl2 を添加することは当業者において容易に想到し得ることであり、また、MgCl2 の濃度を0.5〜1.0Mに設定することも当業者が適宜なし得ることである。
そして、本願発明2は、0.5〜1.0MのMgCl2 を添加することにより、当業者の予測を超える格別の効果を奏するものではない。
してみると、本願発明2は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1ないし3に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本願発明2は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、それぞれ特許を受けることができないものである。
したがって、本出願に係る他の請求項3ないし5について検討するまでもなく、本出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-06 
結審通知日 2005-04-12 
審決日 2005-04-25 
出願番号 特願平9-180194
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A01H)
P 1 8・ 121- Z (A01H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長井 啓子  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 鵜飼 健
河野 直樹
発明の名称 種子を用いた酵素産物および飼料原料の生産  
代理人 石井 貞次  
代理人 野村 健一  
代理人 平木 祐輔  

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