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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  H04M
管理番号 1122725
審判番号 無効2004-80197  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1986-09-18 
種別 無効の審決 
審判請求日 2004-10-22 
確定日 2005-09-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第2672085号発明「電話の通話制御システム」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2672085号に係る発明についての出願は、昭和61年1月13日(パリ条約による優先権主張1985年1月13日、1985年11月10日、イスラエル国)にされたものであって、平成7年4月5日付け及び平成9年5月7日付けで手続補正がなされ、平成9年7月11日にその発明についての特許の設定登録がなされ、平成16年10月22日に本件無効審判の請求がなされた。

2.本件発明
本件発明は、特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのもの(以下、「本件発明」という。)である。なお、説明の都合上、A〜Hと分節してある。
「【請求項1】
A:特殊な交換部(A)を有する電話の通話制御システムであって、
B:特殊な交換部(A)は、メモリー手段(86)とコード確認手段(83)と預託金額確認手段(84)と制御手段(88)とを有し、
C:メモリー手段(86)は、特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され、通信費用を差し引いた預託金額の残高が記録され、その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり、
D:コード確認手段(83)は、発呼者の入力する特殊コードを確認し、
E:預託金額確認手段(84)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高を確認し、
F:制御手段(88)は、接続・遮断手段(92)と比較手段(93)とを有し、
G:比較手段(93)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高と、通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し、
H:接続・遮断手段(92)は、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段(86)に記憶されたものと一致したときにおいて、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、通話を開始するための最小費用より多い場合には、被呼者との通話を接続し、その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する電話の通話制御システム。」

3.請求人の主張
請求人は、「特許第2672085号の請求項1に係る発明についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として以下の甲第1号証乃至甲第11号証を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び甲第3号証の1〜甲第11号証に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、特許法第123条第1項第1号の規定により無効とすべきである、旨主張している。

甲第1号証 :特開昭56-20371号公報
甲第2号証 :特開昭58-3367号公報
甲第3号証の1 :日本経済新聞 昭和57年(1982年)12月23日付夕刊
甲第3号証の2 :日本経済新聞 昭和59年(1984年)9月8日付朝刊
甲第4号証 :電気通信施設、昭和58年(1983年)1月号、社団法人 電気通信協会、昭和58年1月15日発行
甲第5号証 :Direct Dialing of Credit Card Calls
甲第6号証 :特開昭55-125738号公報
甲第7号証 :特開昭56-72568号公報
甲第8号証 :特開昭57-23358号公報
甲第9号証 :特開昭57-140062号公報
甲第10号証 :特開昭58-165473号公報
甲第11号証 :特開昭58-223952号公報

4.各甲号証記載の事項
請求人が提出した各甲号証には、以下の事項が記載されている。
甲第1号証:
a.「電話交換記録を自動的に記録するダイヤル信号記録回路と通話度数記録回路をかかる特定多数の発信者が共用する共通機器として自動電話交換網内の発信側交換局に設け・・・自動式クレジット通話方式」(特許請求の範囲(1)の第3〜9行)
b.「ある加入電話以外の電話から発する通話の料金をその加入電話に課金するサービスを契約している該加入電話の加入者(以下契約加入者という)の、該サービス呼の接続可否を判断するのに必要な諸データを蓄積するデータファイルを備えるデータセンタ」(特許請求の範囲(2)の第3〜8行)
c.「通信処理装置は発信者が会話形式により入力するダイヤル信号を受けてデータセンタとの協同動作によって通話接続の可否を制御」(特許請求の範囲(2 )の第12〜14行)
d.「課金に必要な電話交換記録は特殊課金トランクに付帯するダイヤル信号記録回路と通話度数記録回路に収集記録し、」(特許請求の範囲(2)の第14〜17行)
e.「通信処理装置はこの記録をデータセンタに転送し、その通話の料金を該契約加入者に課金する」(特許請求の範囲(2)の第17、18行)
f.「契約加入者が予じめ登録する短縮番号を集中記憶する短縮番号集中記憶装置をデータセンタとオンラインリアルタイムで結び、クレジット通話を行なうに際しての通話先の番号に加入者番号の代りに、その短縮番号を用いることにより、ダイヤル操作の簡便化と第三者の悪用防止の強化をはかり、併せて通話先を契約加入者が指定する特定通話先に限定する」(特許請求の範囲(3)の第17〜24行)
g.「マル3(なお、甲第1号証原文においては、マル3は丸数字の3で記載されている。以下同様である。)登録番号 ・・・・・・ 利用契約に基づいて契約加入者に交付される契約カードの番号」(第3頁左上欄第4、5行)
h.「マル7通信センタ・・・・・・ 特殊課金トランクと通信処理装置及びそれらの関連機器等のクレジット通話の交換に固有且つ直接関与する設備を設置している発信側交換局」(第3頁右上欄第3〜7行)
i.「マル8データセンタ・・・・・・管轄区域内にある契約加入者の登録番号、暗証番号、登録番号の有効無効表示データ等、クレジット通話サービス呼の接続可否判定に必要なすべてのデータを登録する照合ファイルと、該契約加入者へのクレジット通話課金情報を蓄積する課金ファイルを備え、通信処理装置とデータ通信網により結ばれて通話接続可否の判定と課金情報収集を司どる事務センタ」(第3頁右上欄第11行〜左下欄第2行)
j.「契約発信者がクレジット通話をしようとする場合は、押ボタンダイヤル式の発信電話機1から先ず特番例えば“#XYZW”をダイヤルする」(第3頁左下欄第3〜5行)
k.「契約発信者に登録番号の入力を促がす。契約発信者が発信電話機1から登録番号を入力する」(第3頁右下欄第7〜9行)
l.「データセンタ8はその照合ファイルを検索して通信処理装置7から転送されてきた登録番号を検証し、それが正当且つ有効なものであれば通信処理装置7に登録番号整合信号と照合ファイルから読出した該登録番号対応の暗証番号を送り返して復旧する。」(第3頁右下欄第18行〜第4頁左上欄第3行)
m.「通信処理装置7は、・・・契約発信者に暗証番号の入力を促がし、その入力を受信して先にデータセンタ8から受信している暗証番号とのつき合せを行なう。」(第4頁左上欄第4〜8行)
n.「通信処理装置7は再びそのアナウンス機能によって契約発信者に被呼者番号(全国番号)の入力を促がし、それを受信一時記憶し以下の3つの動作を行って・・・発信電話機1と着信加入者11との間の通話路を完成させる。」(第4頁左上欄第9行〜第18行)
o.「最も経済的に通話を接続し課金情報を記録し」(第5頁左上欄第3〜4行)
p.図1及び図2(押ボタンダイヤル式の発信電話機とこれに接続される市外発信交換機、この市外発信交換機に接続される市外中継交換機、市外中継交換機に接続される特殊課金トランク、特殊課金トランクに接続される通信処理装置、通信処理装置に接続されるデータバンク等のブロック図が記載されている。)
q.「我が国における加入者ダイヤル発信通話に関する従来の課金方式は、所謂K方式により単位課金時間ごとに発信加入者の加入者度数計を歩進積算せしめ、通話料金はすべて発信加入者に課する発信者課金の方法を採用している。したがって電話利用者が自宅の加入電話以外から電話を掛けようとすると、多量の硬貨を用意して公衆電話を利用するか、或いは他人の電話を借りて料金をその場で貸主に支払うかの何れによるしかなく、何れにしても現金の持合せが不可欠である。・・・電気通信サービスの料金に対してもクレジット払いが可能な全自動式のクレジット通話方式という新しい電話利用形態・課金方法を実現させることは、将に時代の要請というべきであろう。」(第2頁右上欄第3行〜左下欄第12行)

甲第2号証:
イ.「主制御部3はキーコードが与えられ、また記憶演算部7から残額が0でない旨の信号が与えられてインターフェース4に通話回路オンの信号を与え電話機1の通話回線を接続する。」(第4頁左上欄第6〜9行)
ロ.「カードの記録内容一杯まで通話が行われた場合は、記憶演算部7からの残額=0の信号に基き主制御部3がインターフェース4を介して電話機1に対し通話回線オフの信号を与え、通話を停止させる。」(第4頁右下欄第19行〜第5頁左上欄第3行)
ハ.「公衆電話機においては従来、コインを使用して通話料金を徴収するようにしている。しかし、コインは現在のところ10円、50円、100円の3種のものが使用可能であるが、遠距離通話を低額コインで行うには多量のコインを必要とし使用者にとって不便である。また、このコインは集金しなければならないから、集金要員を必要とする等の不具合もある。本発明は上述の点に鑑みてなされたもので、磁気カードにより与えられる金額情報と電話機から与えられる通話料金情報とを比較し、この比較結果に応じて電話機の通話制御を行うと共に金額的演算を行って磁気カードの記録内容を書き換えて返却するような磁気カード式公衆電話機を提供するものである。」(第1頁右欄第15行〜第2頁左上欄第10行)

甲第3号証の1:
日本電信電話公社による「カード公衆電話」の第一号が昭和57年(1982年)12月23日午前、東京銀座の数寄屋橋公園に登場したことを伝える記事である。

甲第3号証の2:
日本電信電話公社が設置した「カード公衆電話」に使用する「テレホンカード」の販売枚数が300万枚を突破したことを伝える記事である。

甲第4号証:
昭和57年(1982年)12月23日から日本電信電話公社により実用化が開始された磁気カード式公衆電話機の概要に関する事項が記載されている。

甲第5〜11号証:
任意の電話機から電話をかけ第三者の加入電話機に課金する自動クレジット通話方式が記載されている。

5.対比
甲第1号証についての記載事項nにおける「被呼者」は「着信加入者」であり、同記載事項eにおいて課金される「契約加入者」は「発信者」であるから、甲第1号証についての上記摘記事項によれば、同号証には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「市外中継交換機、
この市外中継交換機に接続された通信処理装置とデータセンタとを有し、
データセンタは照合ファイルを有し、
通信処理装置は、
発信者の入力する暗証番号を確認し、
発信者の入力した暗証番号と照合ファイルに記憶されたものとつき合わせを行って、被呼者との通話路を完成させ、
課金に必要な通話度数記録をデータセンタに転送し、その通話の料金を発信者に課金する
電話の自動式クレジット通話方式のシステム。」
ところで、引用発明中の「照合ファイル」はメモリー手段であり、「暗証番号」は特殊コードであり、「発信者」は発呼者であり、「発信者の入力した暗証番号と照合ファイルに記憶されたものとつき合わせを行」うことは、発信者の入力した暗証番号と照合ファイルに記憶されたものが一致するかどうかを判定することであり、「通話路を完成させ」ることは接続することであり、そのための接続手段の存在は自明であり、「自動式クレジット通話方式」は通話制御をしており、「市外中継交換機」及び「市外中継交換機に接続された通信処理装置とデータセンタ」は、その通話制御方式によって、通常の交換に比べて特殊な交換を行っているから、特殊な交換部を有する電話の通話制御システムということができ、「暗証番号を確認」をするためには、そのコードの確認手段が自明の構成であるから、
本件発明と引用発明とは、
「特殊な交換部を有する電話の通話制御システムであって、
特殊な交換部は、メモリー手段とコード確認手段と制御手段とを有し、
コード確認手段は、発呼者の入力する特殊コードを確認し、
制御手段は、接続手段を有し、
接続手段は、発呼者の入力した特殊コードがメモリー手段に記憶されたものと一致したときにおいて、被呼者との通話を接続する電話の通話制御システム。」である点で一致し、以下の点で相違する。
[相違点]
・相違点1
本件発明では、「預託金額確認手段(84)」(B)を備えて、「特殊コードが所定の預託金額と一連で記憶され、通信費用を差し引いた預託金額の残高が記録され、その特殊コードは預託金額に対応する支払いがあった時から、通話を行うのに必要な預託金額の残高がある間使用可能とされるものであり」(C)としているのに対し、引用発明では、特殊コードとの組合せで通話費用の記憶はされているが、通話費用の課金方式が後払い方式であるために、預託金額が記憶されておらず、特殊コードの使用が預託金額の支払いを条件とされていない点において相違する。
・相違点2
本件発明が、「制御手段(88)は、接続・遮断手段(92)と比較手段(93)とを有し」(F)、「比較手段(93)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高と、通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し」(G)としているのに対して、引用発明では、通話費用の課金方式が後払い方式であるために、被呼者の電話に接続するために残額と必要な最小費用との比較を行わない点において相違する。
・相違点3
本件発明が、「接続・遮断手段(92)は、・・・メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、・・・その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する」(H)としているのに対し、引用発明においては、通話費用の課金方式が後払い方式であるために、この条件によって通話の遮断をするものでない点において相違する。

6.当審の判断
・相違点1について
請求人は、審判請求書第12頁第17行〜第13頁第3行において、「前払い方式の最もポピュラーな例であるテレホンカードを用いた通話システムが1982年頃から日本電信電話公社により実用化され(甲第3号証および甲第4号証参照)、周知の前払い課金方式が存在していたから少なくとも、本件発明の優先日である1985年当時には、キャッシュレス通話の課金方式として前払い方式のアイデアは当業者に周知であった。従って、キャッシュレス通話の課金方式として前払い方式が周知である以上、同じくキャッシュレス通話の技術を記載した引用発明における後払い方式を前払い方式にすることは当業者が容易に発想できたことである。
後払い方式は電話加入権者等、電話会社にとって通話料金の後払いが担保されている者との契約において適用可能であるのに対し、前払い方式はそのような担保がない場合の課金方式であるが、前述のとおり本件優先日当時前払い方式が実用化されていたのであるから、引用発明に前払い方式を適用することは当業者が容易に発想し得たことである。そして、以下に述べるように、本件発明と引用発明の「相違点1」は、前払い方式を適用するというアイデア自体から導かれる内容であって、前払い方式を適用するに当っての技術的課題を解決するような技術事項を含むものではない。
本件発明と引用発明の前記「相違点1」は、後払い方式を採用する引用発明において特殊コードに対応して記憶するのが通話料金であるのに対し、本件発明は預託金額であり、特殊コードは預託金額の支払いを条件として使用可能となることである。しかし、課金の方式を後払いとした場合と前払いとした場合のシステム上の処理の違いについて考えてみると、後払い方式では、通話料金を順次加算する処理を行うのに対し、前払い方式では預託金額が支払われた後、預託金額から通話料金を差し引く処理となることは明らかである。従って、「相違点1」は、前払い方式のアイデアが周知である以上、これを引用発明に適用する場合に、当業者にとって容易に想到される事項である。」との主張しているから、引用発明で採用されている、いわゆる後払い方式を、テレホンカードを用いた前払い方式の知見によって、前払い方式に変更することが容易になし得るかについて、まず検討する。
上記摘記した記載事項q等で明らかなように、甲第1号証刊行物には、引用発明をなすにいった前提となる従来技術及びその問題点が記載されている。それによれば、一般加入者電話への課金は、通話に使用した料金が、加入者電話ごとに、電話運営企業体で集中管理され、一定期間後、使用料金を積算して、その加入者電話(の所有者)に請求・徴収するようになっているため、加入者電話の所有者以外の者が、前記加入者電話から電話した場合には、電話をした者自身に課金できず、加入者電話(の所有者)に課金されて、不便であるから、それを解消するために、引用発明をなすにいたった、というものである。そのため、引用発明では、「加入者電話の所有者以外の者が、その加入者電話から電話した場合」でも、電話をした者自身の加入者電話に課金できるように、上記「5.対比」冒頭で認定したように、工夫されており、あくまで、「通話に使用した料金が、加入者電話ごとに、電話運営企業体で集中管理され、一定期間後、使用料金を積算して、その加入者電話(の所有者)に請求・徴収する」課金システムを前提としての改良発明であって、そのような基本的な課金システム構成の上に、成り立っている。
一方、甲第3号証の1、甲第3号証の2、甲第4号証に示されるテレホンカードは、これら各甲号証で例示するまでもない周知技術といえるものであり、甲第2号証刊行物にも同様のものが開示されている。通常、この様なテレホンカードは、予め使用者が一定額で購入しておき、通話に使用するものであり、購入額にみあった金額まで通話に使用できるようになっている。その意味では、一種の前払い方式の課金システムということはできる。
しかし、テレホンカードにおける前払い方式は、あくまで、公衆電話機における、コイン・現金の使用の不便さを解消することにその目的があり、前払いの前提となる課金システムは、テレホンカードと公衆電話機の範囲に止まっており、通話に使用した料金を電話運営企業体で集中管理する課金システムにまで及んでいない。このことは、甲第2号証刊行物に関して摘記した記載事項ハにも記載されているように、当業者における一般的認識ということができる。
してみると、引用発明の前提となる課金システムと周知のテレホンカードの前提となる課金システムは、明らかに異質な課金システムであって、引用発明とこの周知技術の立脚する課金システム自体が根本的に異なっているのであるから、周知技術の利用といっても、そこには大きな阻害事由が存在するといわざるを得ず、「前払い」「後払い」という単なる表現上の関連性のみによって、あるいは、通話に対しての課金システムであるという漠然とした共通性にのみよって、引用発明に、テレホンカード課金システムでの前払い方式を適用することを容易に発想できたとすることはできない。したがって、この点について実質的に言及していない請求人の上記主張を認めることはできない。
なお、請求人は、この点に関し、審判請求書第11頁第21〜23行で、本件発明は、「「預託金額確認手段(84)」(B)を備えて、「所定の預託金額に対し」特殊コードを予め割り当て、「これら預託金額及び」特殊コードの複数組合せを記憶し」ているとの認定をしているが、本件の特許請求の範囲の請求項1はそのような記載ぶりになっておらず、また、実質においても、そのような意味に解する必然性はないから、この様な認定は採用できない。
したがって、「相違点1」に係る本件発明の構成を容易に想到しうる事項とすることはできない。

・相違点2について
請求人は、審判請求書第13頁第16〜27行において、「「相違点2」については、これらは当初明細書に記載のない事項であり、従って本件発明の進歩性の判断において、考慮されるべきではない。しかし、前払い方式を採用した甲第2号証にはこれらの相違点に相当する記載があるので、以下これを指摘する。
すなわち、「相違点2」については、甲第2号証に、記載事項イの記載がある。したがって、この記載によれば、本件発明の「制御手段(88)は、接続・遮断手段(92)と比較手段(93)とを有し」(F)、「比較手段(93)は、メモリー手段(86)に記憶された預託金額または残高と、通話を開始するための最小費用またはその後の通話費用とを比較し」(G)に当業者であれば容易に想到し得る。」との主張している。
そこで、まず、「これらは当初明細書に記載のない事項であり、従って本件発明の進歩性の判断において考慮されるべきではない」との主張点について検討する。
そもそも発明の進歩性とは、当業者が、特許出願時における技術水準に基づいて容易に考えだすことができないような程度をいうのであるから、その判断の基準になるものは、特許出願時の技術水準であって、その発明に係る当初明細書ではない。また、明細書それ自体は特許請求の範囲に係る発明を開示するためのもであって、技術水準の開示を目的として記載されたものではない。したがって、本件当初明細書に直接的な記載がないということをもって、直ちに当該構成による進歩性は否定できないから、この「考慮されるべきではない」との主張は採用できない。
次に、甲第2号証には、請求人が主張するように、「・相違点2」に類似した構成である記載事項イが開示されているが、甲第2号証はテレホンカード課金システムに係るもので、引用発明の前提となる課金システムとは、明らかに異質な課金システムであるから、上記「・相違点1について」と同様の趣旨で、引用発明に、甲第2号証にある記載事項イを、容易に適用できたとすることはできない。

・相違点3について
請求人は、審判請求書第13頁第28行〜第14頁第8行において、「記載事項ロは、通話中の残額を逐次モニターし、残額が通話を継続するのに必要な費用よりも少なくなったときに、通話回線オフの信号を与えて、通話回線を遮断することを示している。
したがって、この記載は、「接続・遮断手段(92)は、・・・・メモリー手段(86)に記憶された預託金額またはその残高が、・・・その後の通話費用を負担し得なくなった場合には、被呼者との通話接続を遮断する」(H)に対応する。」との主張している。
しかし、甲第2号証には、請求人が主張するように、「・相違点3」に類似した構成である記載事項ロが開示されているものの、甲第2号証はテレホンカード課金システムに係るもので、引用発明の前提となる課金システムとは、明らかに異質な課金システムであるから、上記「・相違点1について」と同様の趣旨で、引用発明に、甲第2号証にある記載事項ロを、容易に適用できたとすることはできない。

また、弁駁書と同時に提出された甲第5〜11号証に記載された周知技術は、本質的に、引用発明と大同小異のものであるから、これらの甲各号証をもってしても、本件発明を容易になしえたものということはできない。
したがって、本件発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び甲第3号証の1〜甲第11号証に示された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることはできない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件請求項1に係る発明の特許を無効とすることができない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-08 
結審通知日 2005-07-13 
審決日 2005-07-29 
出願番号 特願昭61-6163
審決分類 P 1 113・ 121- Y (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉見 信明松野 高尚  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 望月 章俊
長島 孝志
登録日 1997-07-11 
登録番号 特許第2672085号(P2672085)
発明の名称 電話の通話制御システム  
代理人 加藤 清志  
代理人 尾崎 英男  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 青山 正和  
代理人 高橋 詔男  
代理人 根本 浩  
代理人 森▲崎▼ 博之  
代理人 大貫 敏史  
代理人 飯塚 暁夫  
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