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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1122771
審判番号 不服2003-1040  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-06-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-16 
確定日 2005-09-08 
事件の表示 平成 8年特許願第336057号「通信端末装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 6月30日出願公開、特開平10-178494〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成8年12月16日の出願であって、平成13年8月17日付けの拒絶理由が通知され、その指定された期間内である平成13年10月29日付けの手続補正がなされ、平成14年12月13日付けで拒絶の査定がなされたところ、平成15年1月16日付けで拒絶査定に対する不服の審判請求がなされるとともに、平成15年2月17日付けで本願明細書について手続補正がなされたものである。

第2.手続補正について
平成15年2月17日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)について、以下のとおり決定する。

[結論]
平成15年2月17日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.本件手続補正の内容
本件手続補正により、明細書の特許請求の範囲については以下のとおり補正するものである。
「【請求項1】 他の通信端末装置との連続通信時間が所定の制限時間以下に制限された通信端末装置であって、
データの転送速度と送信すべきデータ量とに基づいて算出された送信データの送信時間と、前記制限時間とを比較し、前記送信時間が前記制限時間を超えている場合には、前記送信時間が前記制限時間内に収まるように前記送信データに対してデータ変換を行う設定手段と、
前記設定手段でデータ変換されたデータを送信するよう制御する制御手段と、
を有する通信端末装置。」
(アンダーラインは補正箇所を示す。)

なお、補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】 他の通信端末装置との連続通信時間が所定の制限時間以下に制限された通信端末装置であって、
前記制限時間と転送速度とに基づいて、制限時間内に送信可能な最大のデータ量を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定されたデータ量のデータを送信するよう制御する制御手段と、
を有する通信端末装置。
【請求項2】 (省略)
【請求項3】 前記設定手段は、送信すべき全てのデータが前記制限時間内に送信可能な最大のデータ量以下となるように、前記送信すべきデータに対しデータ変換を行うことを特徴とする請求項1記載の通信端末装置。
【請求項4】ないし【請求項16】 (省略)」

2.本件手続補正の適否の検討
平成15年2月17日付けの手続補正により補正された審判請求書3頁14行ないし18行の[補正の根拠の明示]の記載によれば、本件手続補正における特許請求の範囲の補正は、補正前の請求項3を補正したものと解されるので、本件手続補正による請求項1に係る補正が、補正前の請求項3に対して、特許法第17条の2第4項各号の目的に適合しているか否かを検討する。
まず、特許法第17条の2第4項2号で規定する特許請求の範囲の減縮の目的に該当するか否かを検討すると、本件手続補正による請求項1に係る補正は、設定手段に関し、「データの転送速度と送信すべきデータ量とに基づいて算出された送信データの送信時間と、前記制限時間とを比較し、前記送信時間が前記制限時間を超えている場合には、前記送信時間が前記制限時間内に収まるように前記送信データに対してデータ変換を行う」ものであるところ、補正前の請求項3に係る発明の設定手段は、「前記制限時間と転送速度とに基づいて、制限時間内に送信可能な最大のデータ量を設定する設定手段」(請求項1)において、「送信すべき全てのデータが前記制限時間内に送信可能な最大のデータ量以下となるように、前記送信すべきデータに対しデータ変換を行う」ものとなっており、補正前の請求項3に係る発明の設定手段と、本件手続補正による請求項1における設定手段は、その構成において全く異なっており、補正前の請求項3に係る発明における設定手段は、本件手続補正による請求項1における設定手段の限定の根拠となる事項を備えていない。
このように、本件手続補正による請求項1に係る補正は、設定手段に関し、補正前の請求項3に記載された設定手段の構成を限定するものではないから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。
また、請求項3以外の他の請求項をみても、それらの請求項には、前記設定手段に係る構成が全く記載されていないので、本件手続補正による請求項1に係る補正は、補正前の請求項3以外の他の請求項を補正したものと解することもできない。
次に、特許法第17条の2第4項1号、3号、4号に規定する目的に適合するか否かについて検討すると、本件手続補正による請求項1に係る補正は、前記したとおりであり、この補正内容によれば、請求項の削除、誤記の訂正に該当しないものであることは明らかであり、更には、補正前の請求項3の記載が不備である旨の拒絶理由はなされていないのであるから、前記補正が、拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。
以上によれば、本件手続補正による請求項1に係る補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものとは認められない。

3.むすび
以上のとおり、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において準用する特許法第53条第1項の規定に基き却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明
平成15年2月17日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年10月29日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 他の通信端末装置との連続通信時間が所定の制限時間以下に制限された通信端末装置であって、
前記制限時間と転送速度とに基づいて、制限時間内に送信可能な最大のデータ量を設定する設定手段と、
前記設定手段で設定されたデータ量のデータを送信するよう制御する制御手段と、
を有する通信端末装置。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶理由において提示され、本願の出願の日前である平成1年11月17日に頒布された特開平1-286565号公報(以下、「刊行物」という。)には、「ファクシミリ装置」の発明に関し、図面とともに次の事項が記載されている。
a)「【技術分野】本発明は、ファクシミリ装置に関する。」(1頁右下欄5行ないし6行)、
b)「[従来技術]近年、自動車と事業所間あるいは自動車相互間などの無線通信のために、MCA(Multi channel Access)システムがよく利用されており、このMCAシステムによるデータ伝送も行われている。このMCAシステムは、1システム当たり最大16チャネル有しており、利用者は、空いているチャネルを占有して使用することができる。ところが、この場合、チャネルを連続して占有できる時間は、通話の場合には3分間、データ伝送の場合には1分間というように制限されている。ところで、通常のG3規格等のファクシミリ装置は、原稿画像を1ページ単位に送信している。従って、上記MCAシステムを使用して原稿送信する場合、ある程度情報量の多い原稿画像であると、1ページの送信に1分以上かかって上記制限時間を守ることができなくなるため、全く送信できなくなる場合が生じるという問題があった。」(1頁右下欄7行ないし2頁左上欄4行)、
c)「本実施例では、送信側は、送信原稿の1ページの画像を所定のライン数で読み取って、その画情報を画像メモリ13に一時蓄積し、その1ページの画情報は、奇数ラインと偶数ラインというように、1ラインおきに読み出す動作を2回実行することにより、1ページの画情報を2つの画情報に分割している。そして、受信側に対して2回発呼して、回線接続ごとに、上記画情報を1つづつ送信している。・・・ところで、前記したように,MCAシステムでデータ伝送を行なう場合には、1回の通信時間は、1分というように制限されているが、上記のように、送信側は、1回の回線接続で、1ページの1/2の画情報を送信するので、画情報のデータ量が少なくなって通信時間が短縮される。これにより、特に情報量の多い特殊な原稿でない限り、ほと(ん)どの場合、1分以内で上記画情報を送信することができるので、原稿画像が送信不能になることが非常に少なくなる。また、送信する画情報は、1ページの前半と後半という分割ではなく、奇数ラインと偶数ラインとに分割して2回に分けて送信するようにしている。ここで、仮に2回の送信の内の一方の画情報が完全に伝送エラーとなった場合を考えると、前半と後半に分けて送信した場合には、受信側のオペレータは、1ページの前半または後半が白紙であると誤認する虞がある。これに対して、本実施例では、受信側では、他方の正常な画情報により、1ラインおきに画像を記録できるので、オペレータは、受信画像をおおまかに把握することができ(る)と共に、その画像により伝送エラーがあったことが判別できる。」(4頁右上欄5行ないし左下欄20行)。

上記刊行物の記載c)における比較例によれば、1ページの画情報は、制限時間内に送信可能となるように、1ページの前半と後半というように分割されて送信されるものであるところ、分割された送信データを制御手段により送信制御することは技術常識であるから、上記刊行物の記載、及びこの分野の技術常識によれば、刊行物には、「他の通信端末装置との連続通信時間が所定の制限時間以下に制限された通信端末装置であって、制限時間内に送信可能となるように、1ページの画情報を前半と後半というような画情報のデータ量に分割する手段と、この分割したデータを送信するよう制御する制御手段と、を有する通信端末装置」(以下、「引用発明」という。)の発明が開示されているものと認められる。
3.対比・検討
そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明と引用発明は、「他の通信端末装置との連続通信時間が所定の制限時間以下に制限された通信端末装置」である点、及び制御手段に関し、「制限時間内に送信可能なデータ量のデータを送信するよう制御する」という点で共通するから、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

(一致点)
他の通信端末装置との連続通信時間が所定の制限時間以下に制限された通信端末装置であって、制限時間内に送信可能なデータ量のデータを送信するよう制御する制御手段を有する通信端末装置。

(相違点)
本願発明は、制限時間内に送信可能なデータ量のデータが、「制限時間と転送速度とに基づいて、制限時間内に送信可能な最大のデータ量を設定する設定手段」により設定されるのに対して、引用発明における前記データは、制限時間内に送信可能となるように、1ページの画情報を前半と後半というような画情報に分割したデータ量のデータであり、本願発明におけるような設定手段により設定される、制限時間と転送速度とに基づいて、制限時間内に送信可能な最大のデータ量ではない点。

そこで、検討すると、
本願発明は、他の通信端末装置との連続通信時間が所定の制限時間以下に制限された通信端末装置であり、連続通信時間の制限により、一度に送信できるデータ量が制限されるものであるところ、一度に送信できるデータ量が制限された通信端末装置においては、送信要求のあったデータを最大通信データ長単位に設定手段により分割して設定し、この設定されたデータを送信手段により送信することが周知(特開平4-170658号公報、特開平6-62026号公報)である。また、制限時間内に送信可能な最大のデータ量は、制限時間と転送速度により定まることが当業者における技術常識である。そして、前記周知技術、及び技術常識を引用発明に適用することを阻害する格別の要因は認められないから、引用発明において、制限時間に送信可能なデータ量のデータを、「制限時間と転送速度とに基づいて、制限時間内に送信可能な最大のデータ量を設定する設定手段」により設定するものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

4.むすび
したがって、本願発明は、刊行物に記載された発明、及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項に規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-06 
結審通知日 2005-07-12 
審決日 2005-07-25 
出願番号 特願平8-336057
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
P 1 8・ 575- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山田 洋一岩井 健二  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 野元 久道
衣鳩 文彦
発明の名称 通信端末装置、通信システム及び通信制御方法  
代理人 福田 浩志  
代理人 中島 淳  
代理人 西元 勝一  
代理人 加藤 和詳  

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