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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1122773
審判番号 不服2003-432  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-01-08 
確定日 2005-09-08 
事件の表示 特願2000-139357「集積回路チップおよび平面化方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月26日出願公開、特開2000-357674〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成12年5月12日(パリ条約による優先権主張1999年5月14日、アメリカ合衆国)の特許出願であって、同14年5月22日付けで拒絶の理由が通知され、同14年8月22日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同14年10月10日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同15年1月8日に本件審判の請求がされるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は特許請求の範囲について補正するものであって、補正前後の特許請求の範囲の請求項1の記載は以下のとおりである。
(1)補正前の請求項1
「ダマシーン配線層の過剰な金属を化学的機械的研磨し、
前記研磨によって引き起こされた、少なくとも1つの、疵又はへこみからなる表面形状の不規則部を含むところのダマシーン配線層の表面を、研磨停止層によって、前記研磨停止層の表面が前記不規則部を含むようにして覆い、
前記研磨停止層の上に、前記表面形状の不規則部の深さよりも大きな厚さを有する充填材層を付着し、
前記充填材層を前記停止層まで下方に選択的に研磨することからなる、
ダマシーン配線層表面を平面化する方法。」
(2)補正後の請求項1
「ダマシーン配線層の過剰な金属を化学的機械的研磨し、
前記研磨によって引き起こされた、少なくとも1つの、疵又はへこみからなる表面形状の不規則部を含むところのダマシーン配線層の表面を、研磨停止層によって、前記研磨停止層の表面が前記不規則部を含むようにして覆い、
前記研磨停止層の上に、前記表面形状の不規則部の深さよりも大きな厚さを有する充填材層を付着し、
前記充填材層を前記停止層まで下方に選択的に研磨することからなり、
前記研磨後に前記充填材層が前記表面形状の不規則部の中にのみ残る、ダマシーン配線層表面を平面化する方法。」
2 補正の適否
請求項1における補正は、充填材層について、研磨後に表面形状の不規則部の中にのみ残る旨の限定事項を付加するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるので、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、前記1の(2)の補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
(2)周知技術及び引用例記載事項
ア 周知技術
ダマシーン配線層の過剰な金属の化学的機械的研磨によって引き起こされるダマシーン配線層の表面のへこみからなる表面形状の不規則部に対し、この不規則部が引き起こされるのを防止するダマシーン配線層表面を平面化する方法は、例えば、特開平9-148329号公報(研磨ストップ部8を設けること参照。)、特開平10-106983号公報(化学的なエッチングを阻止する被膜を形成する工程参照。)等に記載されているように、従来周知である(以下、この従来周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法を、「周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法」という。)。
イ 引用例記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され本件出願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-64036号公報(以下「引用例」という。)の第8欄第19行-第9欄第48行には、以下のとおり記載されている。
「【0025】次に、図4(1)〜(4)は、請求項5記載の半導体装置の製造方法の一例を示す図であり、以下にこれらの図面を用いて第3の実施形態を説明する。なお、上記図1及び図2で示した構成部品と同一の構成部品には同一の符号を付し、重複する工程の説明は省略する。ここで説明する第3の実施形態と、上記で説明した第1及び第2の実施形態との異なる点は、図4(1)に示す第1工程と図4(3)に示す第3工程との間の図4(2)に示す第2工程で、第1絶縁膜14上にストッパ層41を形成する工程を行い、その後図4(4)に示す第4工程でこのストッパ層41が露出するまで第2絶縁膜15を研磨する点にある。
【0026】すなわち、この第3の実施形態では、図4(1)に示す第1工程を上記第1の実施形態の第1工程と同様に行う。この際、基板11上に形成する第1絶縁膜14としては、上記第1及び第2の実施形態で示した酸化フッ化シリコンの他に、例えば、下記(a)に示す有機SOG,(b)に示すポリイミド,(c)に示すフッ素を含有するポリイミドやその他(d)〜(h)の各化学構造式に示す材料のうちから選択した材料を用いる。また、この他にも、酸化シリコンよりも誘電率の低い絶縁性材料であれば、上記各化合物材料に限定することなく第1絶縁膜1として用いることができる。
・・・
その後、図4(2)に示す第2工程では、第1絶縁膜14上に絶縁性材料からなるストッパ層41を形成する。このストッパ層41には、例えば酸化シリコンや窒化シリコンを用いる。
【0027】次に、図4(3)に示す第3工程では、ストッパ層41上に、当該ストッパ層41よりも研磨速度が早い第2絶縁膜15を、配線12の高さt2 よりも大きい膜厚t5 に形成する。この第2絶縁膜15には、例えば不純物を含有する酸化シリコンが用いられる。
【0028】次に、図4(3)に示す第4工程では、研磨法によって、配線12上のストッパ層41が露出するまで第2絶縁膜15を研磨する。上記研磨条件は、例えば上記図1(3)で説明したと同様に行い、ストッパ層41の下方に成膜された第1絶縁膜14に研磨の影響を及ぼすことなく平坦化絶縁膜42を形成する。」
また、上記記載事項及び図4より、第2絶縁膜15は、半導体装置の製造過程によって引き起こされた表面形状の不規則部であるへこみを充填するものであるので、充填材層であることが明らかである。
以上のとおりであるので、引用例には、次の事項が記載されていると認める。
「半導体装置の製造過程によって引き起こされたへこみからなる表面形状の不規則部を含む第1絶縁膜14の表面を、ストッパ層41によって、ストッパ層41の表面が不規則部を含むようにして覆い、前記ストッパ層41の上に、前記表面形状の不規則部の深さよりも大きな厚さを有する第2絶縁膜15である充填材層を付着し、前記充填材層を前記ストッパ層41まで下方に選択的に研磨することからなり、前記研磨後に前記充填材層が前記表面形状の不規則部の中にのみ残る半導体装置の表面を平面化する方法」(以下、「引用例記載の技術的事項」という。)。
(3)対比
補正発明と周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法とを対比すると、前者では、研磨によって引き起こされたダマシーン配線層の表面形状の不規則部を平面化しているのに対し、後者では、そのような不規則部が研磨によって引き起こされないようにしているものであり、平面化の手段が相違しているが、ダマシーン配線層の過剰な金属の化学的機械的研磨によって引き起こされるダマシーン配線層の表面のへこみからなる表面形状の不規則部に対処する手段を講じていることに限り、両者は一致している。
したがって、両者は、ダマシーン配線層の過剰な金属の化学的機械的研磨によって引き起こされるダマシーン配線層の表面のへこみからなる表面形状の不規則部に対処する手段を講じたダマシーン配線層表面を平面化する方法で一致している。
そして、ダマシーン配線層の過剰な金属の化学的機械的研磨によって引き起こされるダマシーン配線層の表面のへこみからなる表面形状の不規則部に対処する手段が、補正発明では、「ダマシーン配線層の過剰な金属を化学的機械的研磨し、前記研磨によって引き起こされた、へこみからなる表面形状の不規則部を含むところのダマシーン配線層の表面を、研磨停止層によって、前記研磨停止層の表面が前記不規則部を含むようにして覆い、前記研磨停止層の上に、前記表面形状の不規則部の深さよりも大きな厚さを有する充填材層を付着し、前記充填材層を前記停止層まで下方に選択的に研磨することからなり、前記研磨後に前記充填材層が前記表面形状の不規則部の中にのみ残る」ようにするものであるのに対し、周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法では、上記研磨によって引き起こされた不規則部を平面化するのではなく、この不規則部が引き起こされるのを防止するものである点(以下、「相違点」という。)で、両者は相違している。
(4)相違点の検討
前記引用例には、前記(2)のイのとおりの引用例記載の技術的事項が記載されており、この引用例記載の技術的事項と周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法とは、ともに半導体装置の表面を平面化する技術に関するものである。
また、引用例記載の技術的事項は、絶縁膜の表面形状の不規則部を平面化するものであるが、この平面化の技術を配線層の表面形状の不規則部に採用することを阻害する要因も見当たらない。
したがって、周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法において、ダマシーン配線層の過剰な金属の化学的機械的研磨によって引き起こされるダマシーン配線層の表面のへこみからなる表面形状の不規則部に対処する手段として、この不規則部が引き起こされるのを防止することに代えて引き起こされた不規則部を平面化する引用例記載の技術的事項を採用し、相違点における補正発明のように発明事項を特定することは、当業者が容易に想到することができたことである。
また、補正発明が奏する作用効果は、周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法及び引用例記載の技術的事項から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。
以上のとおりであるので、補正発明は、周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
本件補正は、前記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1乃至7に係る発明は、平成14年8月22日付け手続補正書により補正がされた明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、前記第2の1の(1)の補正前の請求項1に示したとおりである。
2 周知技術及び引用例記載事項
周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法及び原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記第2の2の(2)に示したとおりである。
3 対比・判断
本件発明は、前記第2の2に示したとおり、補正発明の発明特定事項から前記限定事項を省いたものである。
そうすると、本件発明の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項である前記限定事項を付加したものに相当する補正発明が、前記第2の2の(4)で検討したとおり、周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
以上のとおりであるので、本件発明は、周知のダマシーン配線層表面を平面化する方法及び引用例記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本件出願の請求項2乃至7に係る発明について判断するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-07 
結審通知日 2005-04-12 
審決日 2005-04-25 
出願番号 特願2000-139357(P2000-139357)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丸山 英行渡邊 豊英神崎 孝之  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 鈴木 孝幸
岡野 卓也
発明の名称 集積回路チップおよび平面化方法  
代理人 坂口 博  
復代理人 松井 光夫  
復代理人 五十嵐 裕子  
代理人 市位 嘉宏  

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