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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66F
管理番号 1122777
審判番号 不服2002-10226  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-06-06 
確定日 2005-09-08 
事件の表示 平成 8年特許願第228651号「パワーアシスト付き助力アーム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 3月10日出願公開、特開平10- 67500〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成8年8月29日の出願であって、平成14年4月26日付け(平成14年5月7日発送)で拒絶査定がなされ、平成14年6月6日に拒絶査定に対する審判請求がされるとともに、平成14年7月5日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成14年7月5日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年7月5日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正後の特許請求の範囲の記載
平成14年7月5日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、本願の明細書における特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 ワークを所望の位置に搬送するアームを備えるとともに、当該アームに前記ワークの重量を重力とバランスさせる重力バランス機構を備えた助力アームであって、作業者が前記ワークに加える力を検出する作用力検出センサと、前記アームを駆動する駆動手段と、前記作用力検出センサによって検出された力の大きさ,方向に基づいて前記作業者の作用力を補うように前記駆動手段を駆動する制御手段とを有することを特徴とするパワーアシスト付き助力アーム。」
と補正された。
これは、補正前の請求項1に記載した発明を特定する事項である「作業者が前記助力アームに作用する力を検出する作用力検出センサ」を「作業者が前記ワークに加える力を検出する作用力検出センサ」と限定するものであり、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。

2.引用文献記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平7-61800号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。

ア.「【産業上の利用分野】本発明は例えば小型のア-ムクレ-ン状をなすように形成された補力装置において、その負荷部により空中に支持した荷重を作業者の操作によって移動させるための操作方法、並びに、この方法を実施するための装置に関するものである。」(第2頁第2欄第35〜39行)

イ.「本発明は補力装置により空中に支持された荷重を移動させたいと作業者が考えたとき、荷重をその移動させたい方向と移動させたい速さの感覚により操作部を操作すれば、前記の空中に支持された荷重の昇降、或は、水平面内での移動や旋回のための駆動源を、前記の操作感触によって動作させることができる操作方法と、このための操作部を提供することをその課題としてなされたものである。 ・・・ モ-タ等の駆動力により垂直軸上で昇降自在にして空中に支持される荷重を、モ-タ等の駆動力により水平面内のX軸及びY軸方向に移動可能に支持するようにした補力装置における前記荷重を水平面内で移動させるため、前記昇降軸に平行な軸を固定基準軸とし、かつ、この基準軸を原点として前記水平面内にX軸及びY軸を当該基準軸の回りに設定すると共に、前記固定基準軸上のX軸及びY軸に直交する面に、前記基準軸に作用する水平方向の力を検出するためのセンサを設け、前記基準軸に任意の水平方向から人の力を加えると、この力の大きさと方向を前記各センサにより検出し、この検出出力を処理して、前記水平面内のX軸又はY軸、若しくは、X,Y両軸の移動駆動源を前記各センサの検出出力に比例した出力により制御することを特徴とするものであり、また、この方法を実施するための操作部の構成は、モ-タ等の駆動力により荷重を三次元空間内で移動,位置決め可能に支持するように形成した補力装置における前記荷重を支持する負荷部に、前記補力装置本体に連結された垂直向きの撓み可能な軸を固定基準軸として設けると共に、該基準軸に、その軸の回りに旋回可能にした操作部支持体を取付け、かつ、該支持体に、前記基準軸と略直交する向きで当該基準軸と回転可能に交叉させると共に一端を前記支持体から突出させてその突出部にグリップを設けた撓み可能な操作杆を、その杆の長さ方向において微小スライド又は撓み可能にして横架する一方、前記基準軸と操作杆とにそれらの撓みを検出するセンサを取付けたことを特徴とするものである。」(第3頁第3欄第30行から第4欄第17行。)

ウ.「【実施例】 ・・・ 本発明方法を適用する補力装置の一例は、図1に示すように地上に垂直に立設した支柱Pと、この支柱Pの上に、後端を前記支柱Pの垂直軸(Z軸)回りに旋回のみ自在に架装した水平ア-ムA1,このア-ムA1の先端側において進退自在のア-ムA2,該ア-ムA2の先端に垂直軸方向に昇降のみに自在に取付けた垂直ア-ムAzの各ア-ムから成るア-ム機構Aと、前記垂直ア-ムAzの下端に垂直軸回りに旋回可能に設けた負荷部Bにより形成されているものとする。
【0011】上記図1の補力装置においては、負荷部Bの昇降,ア-ムA1の旋回,ア-ムA2の進退,ア-ムAzの昇降の各動作のためには、図示しないが、モ-タ等の駆動力が用いられているものとする。このような駆動力利用タイプの補力装置において、その負荷部Bは、垂直ア-ムAzの昇降、第2ア-ムA2の進退、第1ア-ムA1の旋回の各動作を個々に、又は、各動作を組合せて行うことにより、当該負荷部Bを、その負荷部Bが支柱Pの回りに描く最大可動範囲を示す円筒座標において自由に移動,位置決めさせることができる。
【0012】本発明は、上記負荷部Bの上記可動範囲における各方向への移動、並びに、その移動のための速さを指示する操作のため、次のような構成をとった。まず、本発明では、図1に示した補力装置の状態において、上記Z軸と平行な垂直ア-ムAzの下方の負荷部Bに、該ア-ムAzと一体の固定基準軸Z1を設け、この基準軸Z1に、前記X軸と平行なX1軸と、Y軸に平行なY1軸を設定する。
【0013】上記基準軸Z1を基準にしたX1軸,Y1軸による座標は、ア-ムA1,A2が支柱Pの上で旋回することにより、この旋回と一体に回転するZ軸とともにX軸とY軸による平面座標も旋回するので、この旋回するX,Y軸平面座標と同位相において旋回する。つまり、ア-ムA1,A2がどのような旋回角位置にあっても、X,Y軸平面座標と、X1,Y1軸平面座標とは、同位相の平行関係を保持する。
【0014】次に、本発明では、上記Z1軸を固定基準軸とし、これをを中心に設定したX1軸、又は、Y1軸の方向に負荷部Bを移動させたい意思があるとき、その移動方向に向けて負荷部Bを、例えば、少し手で押すことによる指示を出せば、X1軸の方向は、ア-ムA2のスライド方向を、また、Y1軸の方向はア-ムA1,A2の旋回を、直接示すことになる。従って、本発明では、上記の各軸、つまり、Z1軸、X1軸、Y1軸の交点、つまり、原点に関し各軸の前,後、即ち、各軸に直交する面に、それぞれ各軸に直交させた圧力検出センサを設け、前記いずれかの軸の前,後に関して、負荷部Bに手で加えられる力を、その方向と大きさが前記センサにより検出されるようにし、この検出信号を処理して前記X,Y,Z各軸の駆動源の作動を制御するようにしたのである。」(第3頁第4欄第19行から第4頁第5欄第25行。)

エ.「各モ-タ15,17,19は、夫々を正転、又は、逆転することにより、ア-ム機構Aの姿勢変形、つまり、負荷部Bの仮想線Lを含む垂直面内での移動,位置決めと、この動作を、支柱13における回転軸12aの回りにおいて行うための駆動源として作用する。従って、リンク部材2,6の先端側に設けた負荷部BにフックF等による支持部材に荷重(図示せず)を支持させ、前記各モ-タ15,17,19を選択的又は同時に駆動させることによって、前記荷重を、ア-ム機構Aが姿勢変形可能な3次元空間内(図1の円筒座標と同じ座標で示される可動範囲内)において、自由に持運びできる補力装置として機能するのである。」(第4頁第6欄第48行から第5頁第7欄第9行。)

オ.「本発明は、X,Y,Zの各軸方向の移動に関する駆動源を設けた補力装置に対し、移動させたい方向と移動させたい速さの程度を、操作者がグリップの握り方やその変位のさせ方などにおいて表現してやることにより、対応する移動軸の駆動源が、あたかも人の意思を汲んで動作するような状態において制御される」(第7頁第12欄第17〜23行。)

(2)ここで、上記記載事項2.(1)ア.ないしオ.及び、第1〜5図から、つぎのことがわかる。

ア.小型のア-ムクレ-ン状をなすように形成された補力装置であって、その負荷部により空中に支持した荷重を作業者の操作によって移動させるものであり、地上に垂直に立設した支柱Pと、この支柱Pの上に、後端を前記支柱Pの垂直軸(Z軸)回りに旋回のみ自在に架装した水平ア-ムA1,このア-ムA1の先端側において進退自在のア-ムA2,該ア-ムA2の先端に垂直軸方向に昇降のみに自在に取付けた垂直ア-ムAzの各ア-ムから成るア-ム機構Aと、前記垂直ア-ムAzの下端に垂直軸回りに旋回可能に設けた負荷部Bにより形成されている。そして、負荷部Bは補力装置を構成する一部である。

イ.負荷部Bに垂直なZ1軸を固定基準軸とし、これをを中心に設定したX1軸、又は、Y1軸の方向に負荷部Bを移動させたい意思があるとき、その移動方向に向けて負荷部Bを、例えば、少し手で押すことによる指示を出せば、前記いずれかの軸の前,後に関して、負荷部Bに手で加えられる力を、その方向と大きさが前記センサにより検出されるようにし、この検出信号を処理して前記X,Y,Z各軸の駆動源の作動を制御するようにした。

ウ.操作部の構成は、モ-タ15,17,19等の駆動力により荷重を三次元空間内で移動,位置決め可能に支持するように形成した補力装置における前記荷重を支持する負荷部Bに、前記補力装置本体に連結された垂直向きの撓み可能な軸を固定基準軸Z1として設けると共に、該基準軸Z1に、その軸の回りに旋回可能にした操作部支持体を取付け、かつ、該支持体に、前記基準軸Z1と略直交する向きで当該基準軸Z1と回転可能に交叉させると共に一端を前記支持体から突出させてその突出部にグリップ23cを設けた撓み可能な操作杆を、その杆の長さ方向において微小スライド又は撓み可能にして横架する一方、前記基準軸Z1と操作杆とにそれらの撓みを検出するセンサを取付けた。

エ.リンク部材2,6の先端側に設けた負荷部BにフックF等による支持部材に荷重を支持させ、各モ-タ15,17,19を選択的又は同時に駆動させることによって、前記荷重を、ア-ム機構Aが姿勢変形可能な3次元空間内(図1の円筒座標と同じ座標で示される可動範囲内)において、自由に持運びできる補力装置として機能する。補力装置に対し、移動させたい方向と移動させたい速さの程度を、作業者である操作者がグリップの握り方やその変位のさせ方などにおいて表現してやることにより、対応する移動軸の駆動源が、あたかも人の意思を汲んで動作するような状態において制御される。

オ.以上のことから、作業者が手でグリップに加える力の方向と大きさを、負荷部Bに加えられる力の方向と大きさとしてセンサが検出し、センサによって検出された力の大きさ、方向に基づいて作業者の作用力を補うように駆動源であるモータを駆動する制御手段を有していることがわかる。

(3)引用文献1記載の発明
上記記載事項(2)より、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。
「荷重を作業者の操作によって移動させるアーム機構Aを備えた補力装置であって、作業者が補力装置の一部である負荷部Bに設けられたグリップ23cに加える力を検出するセンサと、アーム機構Aを駆動するモータ15,17,19と、前記センサによって検出された力の大きさ、方向に基づいて、負荷Bに設けられたグリップ23cに加えられる力を補うように前記モータ15,17,19を駆動する、補力装置。」(以下、「引用文献1記載の発明」という。)

3.対比
本願補正発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「荷重を作業者の操作によって移動させるアーム機構A」、「モータ15,17,19」が、本願補正発明における「ワークを所望の位置に搬送するアーム」、「駆動手段」にそれぞれ相当するものである。
そして、引用文献1記載の発明における「補力装置」は、アームにワークの重量を重力とバランスさせる重力バランス機構を備える点を除く限りにおいて、本願補正発明の「助力アーム」又は「パワーアシスト付き助力アーム」に相当する。また、引用文献1記載の発明における「センサ」は、作業者が荷重を移動させたい方向に加える力の大きさ、方向を検出するセンサである限りにおいて、本願補正発明の「作用力検出センサ」に相当する。

したがって、両発明は、
「ワークを所望の位置に搬送するアームを備える助力アームであって、作業者が荷重を移動させたい方向に加える力を検出する作用力検出センサと、前記アームを駆動する駆動手段と、前記作用力検出センサによって検出された力の大きさ,方向に基づいて前記作業者の作用力を補うように前記駆動手段を駆動する制御手段とを有することを特徴とするパワーアシスト付き助力アーム。」
である点で一致し、次の点において相違している。

相違点
<相違点1>
本願補正発明の「助力アーム」、「パワーアシスト付き助力アーム」は、アームに「ワークの重量を重力とバランスさせる重力バランス機構」を備えたものであるのに対し、引用文献1記載の発明の「助力アーム」、「パワーアシスト付き助力アーム」は、この構成を有していない点。

<相違点2>
本願補正発明の「作用力検出センサ」は、「作業者が前記ワークに加える力を検出する作用力検出センサ」であるのに対し、引用文献1記載の発明の作用力検出センサは、作業者が助力アームの一部である負荷部Bに設けられたグリップ23cに加える力を検出する作用力検出センサである点。

4.判断
上記相違点1,2について検討する。
(1)相違点1について。
重量物を搬送する場合の負担を軽減する助力アームにおいて、シリンダやバランスウェイトによって構成される、重量物の重量を重力とバランスさせる重力バランス機構を備えることは、本願出願前に周知の技術的事項である(例、特公昭55-40520号公報、特開平6-91565号公報、特開平8-143300号公報(平成8年6月4日公開))。したがって、引用文献1記載の発明に上記周知の技術的事項を適用し、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

(2)相違点2について。
重量物を搬送する場合の負担を軽減する助力アームにおいて、作業者が当該重量物を直接手で動かすことができるようにすること、そして、作業者が重量物に加えた力を検出するセンサを用いることは、本願出願前に周知の技術的事項である(例えば、特開平5-178599号公報、特開平2-23200号公報、特開昭64-69500号公報、特開平1-113808号公報)。そして、この周知の技術的事項を引用文献1記載の発明に適用すれば、作業者が助力アームの一部である負荷部Bに設けられたグリップ23cに加えた力を検出するセンサに代えて、作業者がワークに加える力を検出する作用力検出センサを採用することは、当業者が容易に想到し得るものである。
よって、引用文献1記載の発明に上記周知の技術的事項を適用し、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

また、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、上記周知の技術的事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

以上から、本願補正発明は、引用文献1記載の発明及び上記本願出願前に周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

また、本件補正前の「作業者が前記助力アームに作用する力を検出する作用力検出センサ」なる事項を、本件補正後の請求項1に記載された「作業者が前記ワークに加える力を検出する作用力検出センサ」とした点が減縮を目的とするものに該当しないと解釈した場合でも、本件補正は特許法第17条の2第4項の何れの目的にも該当しなくなることは明らかである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.以上のとおり、平成14年7月5日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成14年4月8日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、次のとおりである。

「【請求項1】 ワークを所望の位置に搬送するアームを備えるとともに、当該アームに前記ワークの重量を重力とバランスさせる重力バランス機構を備えた助力アームであって、作業者が前記助力アームに作用する力を検出する作用力検出センサと、前記アームを駆動する駆動手段と、前記作用力検出センサによって検出された力の大きさ,方向に基づいて前記作業者の作用力を補うように前記駆動手段を駆動する制御手段とを有することを特徴とするパワーアシスト付き助力アーム。」

2.引用文献記載の発明
引用文献1には、上記第2.2.のとおりのものが記載されている。

3.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「荷重を作業者の操作によって移動させるアーム機構A」、「モータ15,17,19」が、本願発明における「ワークを所望の位置に搬送するアーム」、「駆動手段」にそれぞれ相当するものである。
そして、引用文献1記載の発明における「補力装置」は、アームにワークの重量を重力とバランスさせる重力バランス機構を備える点を除く限りにおいて、本願発明の「助力アーム」又は「パワーアシスト付き助力アーム」に相当する。
また、引用文献1記載の発明において、負荷部Bは助力アームの一部を構成するものであるので、作業者が負荷部Bに設けられたグリップ23cに加える力とは、作業者が助力アームに作用する力にほかならない。したがって、引用文献1記載の発明の「作業者が負荷部Bに設けられたグリップ23cに加える力を検出するセンサ」は、本願発明の「作業者が前記助力アームに作用する力を検出する作用力センサ」に相当する。

したがって、両発明は、
「ワークを所望の位置に搬送するアームを備える助力アームであって、作業者が前記助力アームに作用する力を検出する作用力検出センサと、前記アームを駆動する駆動手段と、前記作用力検出センサによって検出された力の大きさ,方向に基づいて前記作業者の作用力を補うように前記駆動手段を駆動する制御手段とを有することを特徴とするパワーアシスト付き助力アーム。」
である点で一致し、次の点において相違している。

<相違点>
本願発明においては、アームに「ワークの重量を重力とバランスさせる重力バランス機構」を備えたものであるのに対し、引用文献1記載の発明においては、この構成を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
重量物を搬送する場合の負担を軽減する助力アームにおいて、シリンダやバランスウェイトによって構成される、重量物の重量を重力とバランスさせる重力バランス機構を備えることは、本願出願前に周知の技術的事項である(例、特公昭55-40520号公報、特開平6-91565号公報、特開平8-143300号公報(平成8年6月4日公開))。したがって、引用文献1記載の発明に上記周知の技術的事項を適用し、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得るものである。

また、本願発明を全体として検討しても、引用文献1記載の発明、上記周知の技術的事項から予測される以上の格別の効果を奏するとも認めることができない。

よって、本願発明は、引用文献1記載の発明及び上記周知の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-07 
結審通知日 2005-07-12 
審決日 2005-07-25 
出願番号 特願平8-228651
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B66F)
P 1 8・ 575- Z (B66F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 飯塚 直樹
関 義彦
発明の名称 パワーアシスト付き助力アーム  
代理人 八田 幹雄  

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