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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1122841
異議申立番号 異議2003-73338  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-12-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-22 
確定日 2005-06-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3455801号「熱膨張性防火用組成物」の請求項1ないし4に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3455801号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 I.手続の経緯
本件特許第3455801号の請求項1〜4に係る発明は、平成12年6月6日に特許出願され、平成15年8月1日に、その発明について特許権の設定登録がなされ、その後、福田雅彰より、請求項1〜4に係る特許に対し特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年12月27日付けで、特許異議意見書とともに訂正請求がなされたものである。
II.訂正請求について
1.訂正の内容
訂正事項a
請求項1に記載の「樹脂成分及び無機系膨張剤を含み、無機系形崩れ防止剤としてホウ酸を含む」を
「(1)ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン(軟質ウレタンフォームを除く)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリブテンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂成分、
(2)無機系膨張剤、並びに
(3)無機系形崩れ防止剤としてのホウ酸からなり、
(4)前記ホウ酸と無機系膨張剤との割合は、重量比でホウ酸:無機系膨張剤=2:1〜5:1である」と訂正する。
訂正事項b
請求項4を削除する。
2.訂正の適否について
訂正事項aは、訂正前の請求項1に記載の樹脂成分を、明細書段落【0012】の記載に基いて、特定の樹脂成分に限定するものであり、また、ホウ酸と無機系膨張剤との割合(重量比)を、段落【0019】の記載に基いて限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
訂正事項bは、訂正前の請求項4を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
そして、いずれの訂正事項も、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。
3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
III.本件発明
訂正後の請求項1〜3に係る発明は、訂正明細書の請求項1〜3に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】防火区画体に設けられた貫通口の一部又は全部を閉塞するために用いられる熱膨張性防火用組成物であって、
(1)ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン(軟質ウレタンフォームを除く)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリブテンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂成分、
(2)無機系膨張剤、並びに
(3)無機系形崩れ防止剤としてのホウ酸からなり、
(4)前記ホウ酸と無機系膨張剤との割合は、重量比でホウ酸:無機系膨張剤=2:1〜5:1であることを特徴とする熱膨張性防火用組成物。
【請求項2】無機系膨張剤が、膨張性黒鉛である請求項1記載の熱膨張性防火用組成物。
【請求項3】ホウ酸が20〜80重量%含有する請求項1又は2に記載の熱膨張性防火用組成物。」
IV.特許異議申立について
1.特許異議申立の概要
特許異議申立人 福田雅彰は、甲第1号証(特開平9-176498号公報)、甲第2号証(特開平5-194881号公報)、甲第3号証(特表2002-529571号公報)、甲第4号証(特開平9-59439号公報)を提出して、訂正前の請求項1〜4に係る発明は、前記甲第1〜4号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消されるべき旨主張している。
2.当審の取消理由通知の概要
当審の取消理由通知の概要は、訂正前の請求項1〜4に係る発明は、刊行物1(特開平9-176498号公報:特許異議申立人 福田雅彰が提出した甲第1号証)、刊行物2(特開平5-194881号公報:特許異議申立人 福田雅彰が提出した甲第2号証)、刊行物3(国際公開第00/27934号パンフレット(2000):特許異議申立人 福田雅彰が提出した甲第3号証(特表2002-529571号公報))、刊行物4(特開平9-59439号公報:特許異議申立人 福田雅彰が提出した甲第4号証)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1〜4に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから取り消すべきものである。
3.訂正された請求項1〜3に係る発明の特許が、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるか否かについて検討する。
(1)刊行物に記載された事項
刊行物1(特開平9-176498号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 ベース樹脂に、無機系膨張剤および/または有機系膨張剤と、形崩れ防止用樹脂とが同時に配合されて成ることを特徴とする防火用膨張性樹脂組成物。
【請求項4】 前記ベース樹脂としてブチルゴム,エチレンプロピレンゴム,ブタジエンゴム,ポリブデン,ポリブタジエンの群から選ばれる少なくとも1種を用い、前記膨張剤として膨張性黒鉛を用い、前記形崩れ防止用樹脂としてポリカーボネート樹脂,ポリフェニレンサルファイド樹脂,ポリフェニレンエーテル樹脂の群から選ばれる少なくとも1種を用いて成る請求項1の膨張性樹脂組成物。」
「【0011】
【発明の実施の形態】本発明の樹脂組成物におけるベース樹脂としては格別限定されるものではないが、この樹脂組成物の実使用に際しては、防火区画体の貫通孔とそこに挿通されている各種パイプやケーブルなどとの隙間にパテとして充填されたり、またシート状にして各種パイプやケーブルなどの外周を被覆するという使用形態が採用されることを考慮すると、当該ベース樹脂としては、柔軟性を備えたものを用いることが好ましい。
【0012】その場合、ベース樹脂としては、固形状ポリマーと液状ポリマーのいずれをも使用することができ、また両者を混合して使用することができる。また、ウレタンゴムのように、液状で供給された原料を反応させることにより固形状に変化させたものを用いることもできる。固形状ポリマーとしては、柔軟性を備えたゴムや熱可塑性エラストマーを好適なものとしてあげることができる。
【0013】ゴムや熱可塑性エラストマーをベース樹脂として用いることにより、施工時の作業性が向上する。またゴムは加熱されても溶融して液状になることはなく、これを用いた樹脂組成物は火災発生時にその施工個所から流失しないので貫通孔の完全閉塞を確実に実現することができる。具体的には、天然ゴム,イソプレンゴム,ブタジエンゴム,1,2-ポリブタジエン,スチレン-ブタジエンゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム,ブチルゴム,エチレン-プロピレンゴム,クロロスルホン化ポリエチレンゴム,アクリルゴム,エピクロルヒドリンゴム,シリコーンゴム,フッ素ゴムのような固形ゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー,オレフィン系熱可塑性エラストマー,塩ビ系熱可塑性エラストマーのような熱可塑性エラストマーをあげることができる。」
「【0023】無機系膨張剤としては、膨張性黒鉛,ホウ砂,ひる石,パーライトなどを好適例としてあげることができる。これらは、それぞれ、単独で用いてもよいし、また2種以上を適宜に混合して用いてもよい。上記した無機系膨張剤において、ホウ砂,膨張性黒鉛,ひる石,パーライトの分解温度は、それぞれ、100〜150℃,約300℃,約500℃,約500℃である。」
「【0031】本発明の樹脂組成物は、上記した各成分の外に、形崩れ防止用樹脂が同時に配合され、分散されていることを特徴とする。ここで、本発明でいう形崩れ防止用樹脂とは、樹脂組成物が炎熱を受けたときに膨張して形成される膨張層の経時的な崩落現象を防止する樹脂、すなわち、膨張層の形状保持性を高める働きをする樹脂のことをいう。
【0032】この形崩れ防止用樹脂は次のような働きをする。すなわち、樹脂組成物がそこに分散している形崩れ防止用樹脂のガラス転移温度以上に加熱されると、形崩れ防止用樹脂は軟化または部分的に融解したのち、最終的には炭化する。そして、その過程で、樹脂組成物は膨張層に転化していくが、軟化または部分融解した形崩れ防止用樹脂は形成された膨張層の骨格部分を被覆するようにして炭化するので、結果的には膨張層の骨格部分の強度を補強し、もって膨張層全体の機械的強度を高めその形崩れを防止する作用効果を発揮する。このような機能は、形崩れ防止用樹脂が樹脂組成物中に均一分散しているほど有効に発揮される。」
「【0035】また、フェノール樹脂も本発明の形崩れ防止樹脂として用いることができる。・・・・・。」
「【0058】なお、本発明の樹脂組成物では、上記した成分の外に、老化防止剤や繊維チップなどを適量配合してもよく、また水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムのような水和金属化合物を配合して難燃性を付与することもできる。また、クレー,タルク,炭酸カルシウムなどの充填材を転化して施工性、形状保持性を改善することもできる。」
刊行物2(特開平5-194881号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 燃焼の場合にフォーム層を形成する物質及び炭素を形成する物質、結合剤、充填剤及び溶剤及び/又は水を基礎とする遮断層形成性防火剤において、フォーム形成物質として、リン酸及び/又はポリリン酸のアンモニウム塩を20〜48重量%、メラミン及び/又はメラミンエステル及び/又はメラミン-ホルムアルデヒド樹脂を10〜17重量%、炭素形成物質を3〜20重量%、1種以上の有機-化学結合剤を7〜20重量%並びに残り 溶剤もしくは溶剤混合物及び/又は水、助剤、例えば濃化剤、疎水化剤、液化剤、湿潤剤、乳化剤及び保存剤を含有し、その際、メラミン及び/又はメラミンエステル及び/又はメラミン-ホルムアルデヒド樹脂対リン酸及び/又はポリリン酸のアンモニウム塩の比は、1:2〜1:2.8又は1:2.81〜1:6.0であることを特徴とする、燃焼の場合にフォーム層を形成する物質及び炭素を形成する物質、結合剤、充填剤及び溶剤及び/又は水を基礎とする遮断層形成性防火剤。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、燃焼の場合にフォーム層を形成する物質及び炭素を形成する物質、塗膜形成結合剤、充填剤及び有機-化学溶剤及び/又は水を基礎とする遮断層形成性防火剤に関する。」
「【0010】本発明の範囲において、遮断層形成性防火剤が付加的に、ガラス-又は鉱物繊維、鉱物粉末、アルカリ-又はアルカリ土類ケイ酸塩、カオリン、雲母、トラス粉末、タルク、粉状板岩(Schiefermehl)、鉱物綿(石綿)、鉱滓綿、精錬綿(Huettenwolle)、硫酸バリウム、酸化鉄、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ホウ酸又はアンモニア又はアミノ化合物により中和されたホウ酸を0.5〜15重量%、特に3〜10重量%含有する場合、殊に有利であると判明した。
【0011】この充填剤の添加により、燃焼の際にフォーム層が長時間、例えば30分間にわたり、基材上に固着され、かつ温度>800℃での改良されたフォームの温度安定性が得られることが達成される。」
刊行物3(国際公開第00/27934号パンフレット)には、以下の事項が記載されている(特表2002-529571号公報参照)。
「1.樹脂形態の結合剤と発泡系を含有する防火被膜用組成物であって、前記発泡系が、重量部で表して、次のものを含有することを特徴とする組成物。
多原子アルコールを16.4-21.6、
ポリ燐酸アンモニウムを39.0-45.4、
尿素を22.2-23.6、
塩化アンモニウムを6.0-8.0、
ホウ酸を6.0-8.0、
充填材を3.6-4.6、」(10頁3〜11行、公報の請求項1)
「1つの公知形態の防火組成物は、高温(250-300℃)で発泡して元々の被膜の厚みの20-25倍の厚みを有する断熱コーク層を形成する発泡系を基とする組成物を含んで成る。火災中に形成されるコーク層は高い断熱特性を示し、その結果として、これが保護している構造物全体に渡って熱が広がらないようにしている。防火発泡被膜は非常に有効ではあるが、今までに知られていた組成物は数多くの欠点を有する。」(1頁14行〜22行、公報段落【0002】)
「この提案する防火被膜用発泡組成物を用いて前記目的を満足させるが、この防火被膜用発泡組成物は、
発泡系として、
多原子アルコール
ポリ燐酸アンモニウム、
尿素、
塩化アンモニウム、
ホウ酸、
充填材、
を含有し、そして
結合剤として
樹脂
を含有する。」(4頁6〜15行、公報段落【0015】)
「この提案したコンパウンドは、毒性のない種々の気体発生剤およびそれらの組み合わせを実験で試験することを基にして開発したものであった。最も有効な組成物は、ポリ燐酸アンモニウムと組み合わせてペンタエリスリトール(多原子アルコールとして)を含有させた組成物およびそれと組み合わせてソルビトール(多原子アルコールとして)を含有させた組成物であった。また、ホウ酸を用いると気体発生の効率が上昇するばかりでなくまた保護すべき表面との接着強度も高くなることで高温および火災影響の条件下で起こる保護層の亀裂が防止されることも見い出した。」(4頁28行〜5頁3行、公報段落【0018】)
刊行物4(特開平9-59439号公報)には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】 ポリオレフィン系樹脂100重量部に対し、(A)5〜30重量部のフェノール樹脂、(B)5〜50重量部の窒素含有化合物、ホウ素含有化合物、低融点ガラス化合物の中から選ばれた1種以上の難燃性化合物、(C)5〜30重量部の膨張性黒鉛、の混合物又は溶融混練物を配合してなることを特徴とする難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物。」
「【0007】本発明で用いられるポリオレフィン系樹脂は、例えばポリエチレン、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸メチル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エチル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、無水マレイン酸変性ポリエチレン、カルボン酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体等が挙げられる。これらの樹脂は、単独あるいは二種以上組み合わせて用いられる。これらの中でもポリエチレン系樹脂がノンハロゲン系難燃性化合物との分散性の点で好ましい。」
「【0009】本発明の(B)成分である窒素含有化合物は炭化促進機能、ホウ素含有化合物はガラス状皮膜を形成する機能を有する重要な成分である。本発明の(B)成分として用いられる窒素含有化合物及びホウ素含有化合物は特に限定するものではなく、例えばチッソ系化合物としてはメラミン、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、リン酸アンモニウム等が挙げられる。ホウ素含有化合物としてはほう酸、ほう酸亜鉛等が挙げられる。これらの中でもフェノール樹脂と相乗効果を有する点で窒素含有化合物としてはメラミンシアヌレート、ホウ素含有化合物としてはほう酸が好適に用いられる。
【0010】本発明の(C)成分である膨張性黒鉛は、(A)成分のフェノール樹脂及び(B)成分の難燃性化合物と併用すると顕著な相乗効果を示し、燃焼時に膨張して熱を遮断し、難燃性を向上させる効果を有する大変重要な成分である。本発明の(C)成分として用いられる膨張性黒鉛は特に限定されるものでなく、例えば、分級により任意の粒径にした膨張性黒鉛、リン含有膨張性黒鉛などが挙げられる。」
「【0013】このように本発明の難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物は、ポリオレフィン系樹脂の特性の低下をほとんど招くこと無く難燃性が向上している。その理由として、(A)成分のフェノール樹脂が燃焼時の殻形成、溶融液滴の防止機能、他の難燃剤とのバインダー機能、(B)成分の難燃性化合物は窒素含有化合物がフェノール樹脂との相乗効果で炭化の促進、又、ホウ素含有化合物及び低融点ガラス化合物はガラス状被膜を形成、(C)成分の膨張性黒鉛が燃焼時に膨張して断熱作用といったそれぞれ異なるメカニズムを有するため、燃焼時にそれらが相乗的に作用し難燃性を飛躍的に向上させると考えられる。」
(2)対比・判断
【1】訂正後の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)について
本件発明1と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載の防火用膨張樹脂組成物については、防火区画体の貫通孔とそこに挿通されている各種パイプやケーブルなどとの隙間にパテとして充填されたり、またシート状にして各種パイプやケーブルなどの外周を被覆するという使用形態が採用されると記載されている。また、ゴムや熱可塑性エラストマーをベース樹脂として用いること、具体的には、天然ゴム,イソプレンゴム,ブタジエンゴム,1,2-ポリブタジエン,スチレン-ブタジエンゴム,クロロプレンゴム,ニトリルゴム,ブチルゴム,エチレン-プロピレンゴム,クロロスルホン化ポリエチレンゴム,アクリルゴム,エピクロルヒドリンゴム,シリコーンゴム,フッ素ゴムのような固形ゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー,オレフィン系熱可塑性エラストマー,塩ビ系熱可塑性エラストマーのような熱可塑性エラストマーをあげることができると記載されている。
そうすると、両者は、「防火区画体に設けられた貫通口の一部又は全部を閉塞するために用いられる熱膨張性防火用組成物であって、
(1)天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリブテンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、エピクロルヒドリンゴム、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂成分、
(2)無機系膨張剤、並びに
(3)形崩れ防止剤
からなる熱膨張性防火用組成物」の点で一致し、
次の点で相違している。
(i)形崩れ防止剤について、本件発明1が「無機系形崩れ防止剤としてのホウ酸」としているのに対し、刊行物1に記載された発明では、「形崩れ防止用樹脂」である点
(ii)本件発明1が「前記ホウ酸と無機系膨張剤との割合は、重量比でホウ酸:無機系膨張剤=2:1〜5:1である」としているのに対し、刊行物1に記載された発明ではそのような記載をしていない点
上記相違点について、以下検討する。
相違点(i)について
刊行物1には、形崩れ防止用樹脂について、「形崩れ防止用樹脂とは、樹脂組成物が炎熱を受けたときに膨張して形成される膨張層の経時的な崩落現象を防止する樹脂、すなわち、膨張層の形状保持性を高める働きをする樹脂のことをいう」と記載され、「軟化または部分融解した形崩れ防止用樹脂は形成された膨張層の骨格部分を被覆するようにして炭化するので、結果的には膨張層の骨格部分の強度を補強し、もって膨張層全体の機械的強度を高めその形崩れを防止する作用効果を発揮する」と記載されている。
刊行物2には、遮断層形成性防火剤について記載され、遮断層形成性防火剤に付加的に充填材としてホウ酸を添加することが記載され、この充填剤の添加により、燃焼の際にフォーム層が長時間、基材上に固着され、かつ温度>800℃での改良されたフォームの温度安定性が得られることが達成されることが記載されている。
また、刊行物3には、防火皮膜用組成物において、ホウ酸を用いると気体発生の効率が上昇するばかりでなくまた保護すべき表面との接着強度も高くなることで高温および火災影響の条件下で起こる保護層の亀裂が防止されることも見い出したことが記載されている。
さらに、刊行物4には、燃焼時に膨張して熱を遮断し、難燃性を向上させる効果を有する、難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物において、ポリオレフィン系樹脂に、フェノール樹脂、ホウ素含有化合物、膨張性黒鉛を配合した難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物について記載され、ホウ素含有化合物はガラス状被膜を形成することが記載され、ホウ素含有化合物としてはホウ酸が好適に用いられることも記載され、具体的(実施例)にはホウ酸が使用されている。
そして、前記刊行物2〜4の記載を参酌すると、熱膨張性防火用組成物に配合されたホウ酸は、燃焼時にホウ酸が溶融しガラス状となり、その結果、熱膨張性防火用組成物を基材に固着し、ガラス状被膜を形成することにより、熱膨張性防火用組成物の保護層の亀裂が防止され、熱膨張性防火用組成物を安定に保持できる作用機能を有するものであることが容易に理解できる。
そうすると、刊行物1に記載された形崩れ防止用樹脂が奏する作用機能についての事項を勘案すれば、刊行物1に記載の形崩れ防止用樹脂に代えて同様の作用機能を有するホウ酸を採用してみることは、当業者であれば容易に想到し得たものといえ、格別の創意工夫を要したものとはいえない。
相違点(ii)について
刊行物4には、燃焼時に膨張して熱を遮断し、断熱作用により難燃性を向上させる難燃性ポリオレフィン系樹脂組成物において、5〜30重量部のフェノール樹脂が配合されてはいるが、ホウ素含有化合物を5〜50重量部、膨張性黒鉛を5〜30重量部をポリオレフィン系樹脂100重量部に配合することが記載されており、ホウ素化合物としてはホウ酸が用いられているのであるから、ホウ酸と無機系膨張剤との割合は、重量比でホウ酸:無機系膨張剤=5〜50:5〜30となる。
ところで、刊行物4に記載された、熱膨張性防火用組成物には、フェノール樹脂が配合されているが、本件発明1においても、フェノール樹脂が配合されることが本件明細書段落【0020】に記載されているのであるから、フェノール樹脂の存在が格別の構成上の差異となるともいえない。
そして、本件明細書段落【0015】の無機系膨張剤に関する記載、明細書段落【0019】の「ホウ酸と無機系膨張剤との割合は、用いる無機系膨張剤の種類等に応じて適宜設定すれば良く」との記載を勘案すると、本件発明1が、ホウ酸:無機系膨張剤=2:1〜5:1としたことが格別予想外の数値を規定したものということはできないし、また、本件明細書の記載をみても、本件発明1が、ホウ酸:無機系膨張剤=2:1〜5:1としたことにより、格別予想外の効果を奏したものということもできないから、前記相違点は、当業者が容易になし得たものというべきである。
(3)むすび
したがって、本件発明1は刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
【2】訂正後の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)について
本件発明2は、本件発明1の無機系膨張剤を膨張性黒鉛とするものであるが、刊行物1、4には、熱膨張性防火用組成物において、無機系膨張剤として膨張性黒鉛を用いているから、無機系膨張剤として膨張性黒鉛を採用することは格別の創意工夫を要するものとはいえず、本件発明2は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
【3】訂正後の請求項3に係る発明(以下、「本件発明3」という。)について
本件発明3は、本件発明1又は本件発明2の熱膨張性防火用組成物において、ホウ酸の含有量を20〜80重量%とするものであるが、刊行物4には、熱膨張性防火用組成物において、ホウ酸を5〜50重量部使用することが記載(例えばポリオレフィン系樹脂100重量部に、フェノール樹脂5重量部、ホウ酸50重量部、膨張性黒鉛10重量部(ホウ酸:無機系膨張剤=5:1)とすると、ホウ酸の含有量は約30重量%となる。)されており、本件発明3で規定する範囲と重複するものであるから、熱膨張性防火用組成物において、ホウ酸を20〜80重量%とすることは、格別の創意工夫を要するものとはいえず、本件発明3は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。
V.むすび
以上のとおり、本件発明1〜3は、刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたもので、本件発明1〜3の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1〜3の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認められ、本件発明1〜3の特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する 。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
熱膨張性防火用組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】防火区画体に設けられた貫通口の一部又は全部を閉塞するために用いられる熱膨張性防火用組成物であって、
(1)ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン(軟質ウレタンフォームを除く)、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリブテンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー及びスチレン系熱可塑性エラストマーからなる群から選択された少なくとも1種の樹脂成分、
(2)無機系膨張剤、並びに
(3)無機系形崩れ防止剤としてのホウ酸
からなり、
(4)前記ホウ酸と無機系膨張剤との割合は、重量比でホウ酸:無機系膨張剤=2:1〜5:1である
ことを特徴とする熱膨張性防火用組成物。
【請求項2】無機系膨張剤が、膨張性黒鉛である請求項1記載の熱膨張性防火用組成物。
【請求項3】ホウ酸が20〜80重量%含有する請求項1又は2に記載の熱膨張性防火用組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な熱膨張性防火用組成物及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
防火用膨張性材料又は防火用発泡性材料(以下「防火用膨張性材料」という)は、例えば電力ケーブル、通信ケーブル等のようなケーブル類、空調設備等の配管類の周囲に被覆等により施工される。これらケーブル類、配管類等は、防火区画体の貫通口を通じて複数の防火区画体にまたがって配置される。
【0003】
防火用膨張性材料が施工された部位は、火災時等において加熱により膨張又は発泡して膨張層を形成し、これにより貫通口を閉塞して火災の延焼防止を図る。このため、防火用膨張性材料では、特に膨張層の形成後、膨張層が炎熱によって容易に形崩れを起こさず、所定の形状をできるだけ長時間保持できることが条件となる。
【0004】
これに関し、例えばベース樹脂に無機系膨張剤及び/又は有機系膨張剤と、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等の形崩れ防止用樹脂とが同時に配合されてなることを特徴とする防火用膨張性樹脂組成物(特開平9-176498号)等が知られている。この防火用膨張性組成物によれば、特に形崩れ防止用樹脂が配合されていることから、炎熱を受けても膨張層が形崩れを起こさず、その形状を保持し続けることができるとされている。
【0005】
しかしながら、上記組成物においても、形崩れ防止性能についてはなお改善の余地がある。特に、上記組成物で使用されている形崩れ防止用樹脂は、それ自身が溶融ひいては燃焼してしまうため、形成された膨張層が燃焼又は灰化によって脆弱するおそれがある。膨張層が脆弱化すれば、火災中に膨張層が脱落又は崩壊して十分な耐火性能が得られなかったり、膨張層が容易に粉化して火災後の処理に支障をもたらす。
【0006】
さらに、上記組成物に用いられている形崩れ防止樹脂は比較的高価であり、コスト面においても問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
このように、満足できる形崩れ防止性能が得られる防火用膨張性材料は未だ開発されるに至っていないというのが現状である。
【0008】
従って、本発明は、より優れた形崩れ防止性能を発揮できる熱膨張性防火用組成物を提供することを主な目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、これら従来技術の問題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、熱膨張性防火用組成物として特定組成を採用することにより、上記目的を達成できることを見出し、ついに本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、樹脂成分及び無機系膨張剤を含み、無機系形崩れ防止剤としてホウ酸を含むことを特徴とする熱膨張性防火用組成物に係るものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の熱膨張性防火用組成物は、樹脂成分及び無機系膨張剤を含み、無機系形崩れ防止剤としてホウ酸を含むことを特徴とする。
【0012】
樹脂成分としては、特に制限されず、公知の防火用膨張性材料に使用されている樹脂類又はゴム類をそのまま用いることができる。樹脂類としては、例えばポリ塩化ビニル、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリウレタン(軟質ウレタンフォームを除く。)等が挙げられる。ゴム類としては、天然ゴム又は合成ゴムのいずれでも良く、例えば天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリブテンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、塩素化ポリエチレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンゴム、エピクロルヒドリンゴム等が挙げられる。その他にも、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、スチレン系熱可塑性エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーが使用できる。これらの樹脂成分は1種又は2種以上を用いることができる。本発明では、これら樹脂成分の中でもゴム類、特にブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム、ポリブテンゴム、ポリブタジエンゴム等が好ましい。
【0013】
また、樹脂成分は、発泡するタイプ又は発泡しないタイプのいずれも使用できる。発泡タイプのものとしては、例えばポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体、ポリスチレン発泡体、フェノール樹脂発泡体、メラミン樹脂発泡体等の公知の発泡体を用いることができる。
【0014】
樹脂成分の含有量は、無機系形崩れ防止剤及び無機系膨張剤の種類及び使用量等に応じて適宜設定できるが、通常は無機系形崩れ防止剤及び無機系膨張剤の合計量が本発明組成物中20〜90重量%程度、好ましくは50〜80重量%となるように樹脂成分を調節すれば良い。上記合計量が90重量%を超える場合は樹脂成分が少ないため、得られる組成物から所定の成形体を得ることが困難になることがある。
【0015】
無機系膨張剤としては、加熱により発泡ないしは膨張する性質を有する無機系材料であれば特に制限されず、公知の発泡性樹脂組成物に使用されている無機系膨張剤をそのまま用いることもできる。例えば、膨張性黒鉛(鱗片黒鉛粉末を濃硫酸等で酸化処理して黒鉛層間に化合物をインターカレーションしたもの、膨張黒鉛ともいう)、ホウ砂、パーライト、ひる石等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を用いることができる。これら無機系膨張剤の中でも、膨張性黒鉛が好ましい。
【0016】
無機系膨張剤の含有量は、樹脂成分の種類、所望の発泡倍率等によって適宜設定することができるが、通常は本発明組成物中5〜45重量%程度、好ましくは10〜30重量%とすれば良い。
【0017】
本発明組成物では、上記2成分に加えて、無機系形崩れ防止剤としてホウ酸を用いる。ホウ酸自体は、公知の製法により得られるもの又は市販品を用いることができる。ホウ酸は、オルトホウ酸(H3BO3)、メタホウ酸(HBO2)等のいずれでも良いが、通常はオルトホウ酸を使用すれば良い。ホウ酸は、通常は粉末の形態で使用すれば良い。この場合、粉末の粒径は特に制限されないが、比較的粒径の小さなもの(通常100μm程度以下、好ましくは20μm程度以下)が好ましく使用できる。
【0018】
ホウ酸の含有量は、使用する無機系膨張剤の種類・使用量等によって適宜設定することができるが、通常は本発明組成物中20〜80重量%程度、好ましくは30〜70重量%程度とすれば良い。この範囲内で特に優れた形崩れ防止性能を得ることができる。
【0019】
また、ホウ酸と無機系膨張剤との割合は、用いる無機系膨張剤の種類等に応じて適宜設定すれば良く、好ましくは重量比で1:1〜10:1程度、より好ましくは2:1〜5:1となるようにすれば良い。この範囲内に設定することによって、より優れた形崩れ防止性能と耐火性とを得ることができる。
【0020】
本発明組成物では、本発明の効果を妨げない範囲内で有機系形崩れ防止剤を配合することも可能である。例えば、コーンスターチ、ポリカーボネート、フェノール樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリエーテル・エーテルケトン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0021】
さらに、本発明組成物では、必要に応じて公知の防火用膨張性材料で用いられている各種添加剤も適宜含まれていても良い。例えば、界面活性剤、架橋剤、整泡剤、触媒、発泡剤、鎖延長剤、難燃剤、安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料、老化防止剤、繊維類、フィラー等を挙げることができる。また、必要に応じてアゾジカルボンアミド、ジニトロペンタメチレンテトラミン、p,p’-オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド等の有機系膨張剤も添加することができる。
【0022】
本発明組成物は、これらの各成分を均一に混合すれば製造できる。混合順序等も均一な混合ができる限り特に制限されない。例えば、これらの成分の所定量を公知のミキサー、混練機、ニーダー、バンバリーミキサー、二軸混練押出機等に投入し、必要に応じて加熱及び/又は加圧し、均一に混合されるまで攪拌すれば良い。本発明組成物はいずれの形態でも用いることができる。例えば、シート状、テープ状、粒状等に成形したり、あるいはパテ状で用いることもできる。
【0023】
本発明組成物は、その熱膨張性、熱膨張後の形状保持性、遮熱性、耐火性等の特性が要求される様々な分野に使用できるが、防火用膨張性材料を用いる公知の工法にも適用でき、各工法における使用方法に従って用いれば良い。使用部位も特に制限されず、防火区画体をはじめ、防火性(特に火災における延焼防止)が要求される箇所に幅広く適用することができる。
【0024】
特に、本発明組成物は、防火区画体に設けられた貫通口の一部又は全部を閉塞するために好適に用いられる。具体的には、防火壁、床スラブ等の防火区画体に設けられた貫通口を通るケーブル、パイプ等の周囲又は周辺を本発明組成物で被覆したり、あるいは本発明組成物によるシート、テープ等を取り付けることによって施工することができる。
【0025】
【発明の効果】
本発明組成物によれば、特に、無機系形崩れ防止剤としてホウ酸を無機系膨張剤との組み合わせで採用しているので、従来技術よりも優れた耐火性能を発揮することができる。すなわち、膨張層の形崩れを有効に防止できるだけでなく、長時間高温でさらされても脆弱化しにくい。その結果、どのような火災においても優れた耐火性能を安定して得ることができる。また、火災後においても、膨張層が崩れにくいため、火災後の処理も円滑かつ安全に行うことができる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0027】
実施例1〜6
表1に示す成分をニーダーで均一に混練することによって熱膨張性防火用組成物を調製した。ブチルゴムは商品名「BUTYL 268」(JSR製)、ポリブテンは商品名「INDOPOL H300」(AMOCO製)、ホウ酸はオルトホウ酸(微粉型、U.S.BORAX製)、膨張性黒鉛は商品名「CA-60」「50-LTE-U」(ともに住金ケミカル製)をそれぞれ用いた。次いで、各混練物をロールで厚さ8mmのシート状に成形した。各実施例について、混練性、シート成形性及び硬度とともに、加熱時の膨張倍率及び形状保持性を調べた。その結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
各物性の測定方法を以下に示す。
(1)混練性
各成分を混練したときの混練物の状態を調べた。流動可能で均一な混練物が得られる場合を○、パサパサした状態で流動性のない場合又は均一な混練物が得られない場合を×と評価した。
(2)シート成形性
得られた混練物をロールで厚さ8mmのシートに成形し、得られたシートの外観等を観察した。ひび割れ等の問題がないシートを○、シートにひび割れ、ちぎれ等が生じたものを△、混練物がロールに付着し、シート成形できなかったものを×とした。
(3)硬度
シート成形体にC型ゴム硬度計(高分子計器(株)製)を当て、シート成形体に上記硬度計を当てた直後の指示を読み取ることにより測定した。
(4)加熱時の膨張倍率及び形状保持性
シート成形体を300℃で保持された雰囲気内に0.5時間放置した後の膨張倍率を測定した。
【0030】
また、シート成形体の形状保持性は、シート成形体(厚さ8mm)を図1に示す装置に取り付け、JIS A 1304に規定される標準加熱曲線に従って室温から1050℃まで加熱した時における膨張体(シート成形体)の上記装置段差部分への落下の有無と膨張体の硬さを触感で評価した。膨張体が堅くしっかりしているものを○、やや脆いが容易に壊れないものを△、非常に脆く容易に崩壊するものを×とした。
【0031】
比較例1
表1に示す成分を用いたほかは、実施例1と同様にしてシート成形体を作製した。また、実施例1と同様に、混練性、シート成形体等を調べた。その結果を表2に示す。
【0032】
比較例2
形崩れた防止用樹脂を用いた市販の熱膨張性耐火組成物について、加熱時の膨張倍率及び形状保持性を実施例1と同様にして調べた。その結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【図1】
実施例1においてシート成形体の形状保持性を調べるための加熱装置の概要(断面)を示す図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-04-25 
出願番号 特願2000-168796(P2000-168796)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 森川 聡  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 藤原 浩子
船岡 嘉彦
登録日 2003-08-01 
登録番号 特許第3455801号(P3455801)
権利者 日本インシュレーション株式会社 シー・アール・ケイ株式会社
発明の名称 熱膨張性防火用組成物  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 藤井 淳  
代理人 三枝 英二  
代理人 藤井 淳  
代理人 齋藤 健治  
代理人 掛樋 悠路  
代理人 関 仁士  
代理人 齋藤 健治  
代理人 掛通 悠路  
代理人 小原 健志  
代理人 小原 健志  
代理人 関 仁士  
代理人 小原 健志  
代理人 関 仁士  
代理人 中野 睦子  
代理人 三枝 英二  
代理人 中野 睦子  
代理人 斉藤 健治  
代理人 三枝 英二  
代理人 藤井 淳  
代理人 中野 睦子  

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