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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  C09D
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  C09D
管理番号 1122857
異議申立番号 異議2003-73242  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-10-08 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-06-20 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3437672号「水性塗料用樹脂組成物および耐汚染性に優れた塗膜の形成方法」の請求項1ないし3、5ないし13、16に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3437672号の請求項1ないし3、5ないし13、16に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3437672号の請求項1〜16に係る発明は、平成7年3月27日に特許出願され、平成15年6月6日にその特許権の設定登録がなされ、その後、梅田敏之より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年1月31日に訂正請求(後日取下げられた。)がなされた後、再度の取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成17年4月27日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
A.訂正事項a
請求項1における「シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物」を「シリコン化合物の部分加水分解縮合物」と訂正する。
B.訂正事項b
請求項10及び16における「シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物」を「シリコン化合物の部分加水分解縮合物」と、請求項10における「テトラ-t-ブトキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物」を「テトラ-t-ブトキシシランの部分加水分解縮合物」と各々訂正する。
C.訂正事項c
明細書の段落【0008】、【0009】、【0032】、【0050】及び【0086】における「シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物」を「シリコン化合物の部分加水分解縮合物」と、また、同【0032】における「テトラアルキルシリケートおよび/またはその部分加水分解縮合物」を「テトラアルキルシリケートの部分加水分解縮合物」と、同【0032】における「トリアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物」を「トリアルコキシシランの部分加水分解縮合物」と訂正する。

2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明を特定する事項である「シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物」を、そのうちのひとつである「シリコン化合物の部分加水分解縮合物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
同様に、上記訂正事項bは、発明を特定する事項である「シリコン化合物および/またはその部分加水分解縮合物」を、そのうちのひとつである「シリコン化合物の部分加水分解縮合物」に、同じく「テトラ-t-ブトキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物」を、そのうちのひとつである「テトラ-t-ブトキシシランの部分加水分解縮合物」に限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、上記訂正事項cは、訂正事項a,bの内容と整合させるために明細書の対応する箇所の記載を訂正するものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項a〜cはいずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

2-3.むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
3-1.申立ての理由の概要
特許異議申立人は、甲第1号証(特開平5-287234号公報)及び甲第2号証(国際公開94/06870号パンフレット)並びに参考資料1〜7(参考資料1:特開平6-313088号公報、同2:特開平4-57868号公報、同3:特開平4-214747号公報、同4:特開平5-43821号公報、同5:特開平5-51559号公報、同6:特開平4-175343号公報、同7:特開平5-93071号公報)を提示し、訂正前の本件請求項1,2,10,11,16に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、同請求項1〜3,5〜13,16に係る発明は、甲第1〜2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、訂正前の本件請求項1〜3,5〜13,16に係る発明の特許は取り消されるべきと主張する。
なお、当審で通知した取消しの理由の概要はこれとほぼ同様のもの、及び本件出願は特許法第36条第5項第1号に規定する要件を満たしていないから、訂正前の本件請求項1〜16に係る発明は取り消されるべきというものである。(請求項4,14,15については異議の申立てがされていないので、その請求項については審理を行うことができないから、取消理由通知は請求項1〜3,5〜13,16についてされたものとして以下審理を行う。)

3-2.本件発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1〜16に係る発明(以下、「本件発明1〜16」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1〜16に記載された以下のとおりのものである。
「【請求項1】合成樹脂エマルジョン(A)100重量部と一般式(I):
(R1O)4-aSiR2a (I)
(式中、R1は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物(B)1〜100重量部とからなる水性塗料用樹脂組成物。
【請求項2】前記合成樹脂エマルジョン(A)がアクリル系樹脂を主体とするものである請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項3】 前記(A)成分が、アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつ一般式(II):
X13-bSiR3b (II)
(式中、R3は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、X1は同じかまたは異なり、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基、bは0〜2の整数。)で示すシリル基を有するビニル系単量体を他のビニル系単量体と共重合することによりえられるシリル基含有樹脂であることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項4】前記(A)成分が、アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつウレタン結合を有する樹脂、あるいはウレタン架橋を行う樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項5】前記(A)成分が、アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつカルボニル基含有重合体エマルジョンとヒドラジンおよび/またはヒドラジル基を含有する化合物からなる樹脂であることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項6】前記(A)成分が、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンまたはヘキサフルオロプロピレンなどの含フッ素重合性単量体と共重合可能な他の単量体よりなるフッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項7】前記(A)成分が、メラミン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項8】前記(A)成分が、シリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜7記載のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項9】前記(A)成分が、酸またはアミンで架橋するエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項10】前記(B)成分におけるシリコン化合物の部分加水分解縮合物が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシランの部分加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項11】前記(B)成分における乳化物がノニオン系乳化剤および/またはアニオン系乳化剤を用いてえられる乳化物であり、使用する乳化物がポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン変性ポリジメチルシロキサンなどのノニオン系乳化剤および/またはポリオキシエチレン鎖を有するアニオン系乳化剤であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項12】前記(B)成分100重量部に対し、硬化触媒(C)を0.1〜20重量部配合してなる請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項13】前記(C)成分が、有機アルミニウム化合物または有機スズ化合物をアルキルエーテル型界面活性剤を主体とする界面活性剤で乳化した物-であることを特徴とする請求項12記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項14】前記(C)成分が、酸性リン酸エステル、有機カルボン酸類と有機アミン類の混合物または反応物であることを特徴とする請求項12記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項15】前記(B)成分における乳化物がHLBが7より小さいノニオン系乳化剤とHLBが12より大きいノニオン系乳化剤を用いた乳化物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項16】請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物であり、合成樹脂エマルジョン(A)100重量部に対し、シリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物(B)1〜100重量部を配合し、被処理物に塗布することを特徴とする耐汚染性に優れた塗膜の形成方法。」
(なお、請求項4,14,15は異議申立てがされていない請求項である。)

3-3.甲各号証及び各参考資料の記載事項
甲第1号証(特開平5-287234号公報):
a)「【請求項1】アクリル系重合体エマルジョン(I)100重量部(固形分換算)に対して、加水分解基を有する有機ケイ素系単量体の乳化分散体(II)を有機ケイ素系単量体成分として5〜1,000重量部含有して成り、かつpHが5〜9であることを特徴とする塗布用組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
b)「本発明は、塗布用組成物、特にセメント系成型体塗布用組成物に関し」(段落【0001】)
c)「このような有機ケイ素系単量体としては、テトラメトキシシラン・・・等を挙げることができる。好ましくは、テトラメトキシシラン・・・である。」(段落【0040】)
d)「そして上記有機ケイ素系単量体を乳化するための界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム・・・などを1種又は2種以上挙げることができ、これらのうち好ましくはポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルとの組合せである。」(段落【0042】)
e)アクリル系重合体エマルジョン、イソブチルトリメトキシシラン等の乳化分散体を含有するセメント系成型体塗布用組成物、及びこれと同様の成分であるが、乳化分散体を用いない組成物についての撥水性(接触角)が各々、89及び75である旨(段落【0051】〜【0063】、表1の実施例1、表2の比較例6)
f)「本発明は、・・・中性化防止性・・・撥水性・・・に優れたセメントコンクリート・・・等の各種セメント成型体に適した塗布組成物を提供することを目的とする。」(段落【0006】)

甲第2号証(国際公開94/06870号パンフレット):
g)「1.有機塗料組成物に、下記一般式
OR

RO-Si-OR

OR
(式中、Rは同一もしくは異なって水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。)
で表わされるオルガノシリケート及び/又はその縮合物を配合してなる塗料組成物であって、このものから形成された塗膜は、酸処理後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下であることを特徴とする上塗り塗料組成物。」(請求の範囲の請求項1)
h)「16.請求項1に記載の塗料組成物を基材に塗布し、塗膜を形成したのち、塗膜表面を酸で処理することを特徴とする塗膜形成方法。」(請求の範囲の請求項16)
i)「本発明上塗り塗料組成物は、従来の成型品の表面にアルキルシリケートの有機溶剤溶液を塗布する方法及び熱可塑性樹脂中にアルキルシリケートを練り込む方法と比較して耐汚染性の保持性、耐久性に優れた効果を発揮するものである。」(21頁11〜14行)
j)「本発明上塗り塗料組成物で用いる有機塗料組成物は、溶剤系有機塗料組成物、水系有機塗料組成物、溶剤及び水を含有しない液状有機塗料組成物及び粉体塗料組成物などが包含される。」(2頁19〜21行)
k)「水性塗料組成物は従来から公知の例えば硬化もしくは未硬化形のもの、水溶解、水分散もしくはエマルジョン形のもの及びアニオン、カチオンもしくはノニオン形のものが使用できる。具体的には、塗料種としては例えばアルキド樹脂系・・・アクリル樹脂系・・・が挙げられる。また、硬化形としては例えばアミノ硬化形・・・が挙げられる。水性塗料組成物は、形成された塗膜を酸処理した後の塗膜表面が水に対する接触角70度以下となるものが使用される。」(15頁21行〜16頁5行)
l)「本発明で用いるオルガノシリケートの好ましい具体例としては、例えば・・・テトラメトキシシラン・・・などが挙げられる。」(18頁11〜14行)
m)「オルガノシリケート及びその縮合物の配合割合は、前記塗料組成物の樹脂固形分100重量部当たり、約0.1〜50重量部、好ましくは約1〜40重量部の範囲が良い。」(19頁4〜6行)
n)「本発明上塗り塗料組成物は、上記した以外にも必要に応じて着色剤、充填剤、流動調整剤、可塑剤、硬化触媒、紫外線吸収剤、前記以外の樹脂(例えばトリアルコキシシラン・・・など)などを配合することができる。」(19頁10〜13行)

参考資料1(特開平6-313088号公報):
o)シリル基含有樹脂が水性塗料に用いられること(【請求項1】〜【請求項2】、【0001】、表1(実施例1〜3))

参考資料2(特開平4-57868号公報):
p)シリル基含有樹脂が水性塗料に用いられること(2頁左上欄1〜7行、8頁表-1実施例4)

参考資料3(特開平4-214747号公報):
q)アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつカルボニル基含有重合体エマルジョンとヒドラジンおよび/またはヒドラジル基を含有する化合物からなる樹脂が水性塗料に用いられること(【請求項1】、【0001】、【0016】)

参考資料4(特開平5-43821号公報):
r)アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつカルボニル基含有重合体エマルジョンとヒドラジンおよび/またはヒドラジル基を含有する化合物からなる樹脂が水性塗料に用いられること(【請求項1】、【0001】、【0005】)

参考資料5(特開平5-51559号公報):
s)アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつカルボニル基含有重合体エマルジョンとヒドラジンおよび/またはヒドラジル基を含有する化合物からなる樹脂が水性塗料に用いられること(【請求項1】、【0001】、【0006】)

参考資料6(特開平4-175343号公報):
t)加水分解性シランを含有する水性塗料用樹脂組成物に、硬化触媒として有機スズ化合物と界面活性剤の乳化物を配合すること、水性塗料用樹脂組成物にアルキルエーテル型界面活性剤を主体とする界面活性剤を用いること(特許請求の範囲の請求項1、1頁左下欄下から3行〜右下欄1行、3頁右上欄9〜15行、4頁右上欄17行〜左下欄18行)

参考資料7(特開平5-93071号公報):
u)加水分解性シランを含有する水性塗料用樹脂組成物に、硬化触媒として有機スズ化合物と界面活性剤の乳化物を配合すること、水性塗料用樹脂組成物にアルキルエーテル型界面活性剤を主体とする界面活性剤を用いること(【請求項1】、【0001】、【0025】〜【0026】)

3-3.判断
(特許法第29条第1項第3号について)
摘記a〜fからみて、甲第1号証には、「アクリル系重合体エマルジョン(I)100重量部(固形分換算)に対して、テトラメトキシシラン等の加水分解基を有する有機ケイ素系単量体の乳化分散体(II)を有機ケイ素系単量体成分として5〜1,000重量部含有して成り、かつpHが5〜9であることを特徴とする塗布用組成物」についての発明が記載されているものと認める。
しかしながら、甲第1号証に記載された発明においては、「有機ケイ素系単量体成分」とされており、本件発明1における発明特定事項であるシリコン化合物の部分加水分解縮合物について、甲第1号証には記載されていない。
したがって、本件発明1は甲第1号証に記載された発明ではない。
また、本件請求項2,10,11,16はいずれも請求項1を引用する請求項であって、これら請求項に係る発明はいずれも、本件発明1を技術的に更に限定するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1号証に記載された発明ではない。

(特許法第29条第2項について)
摘記g〜nからみて、甲第2号証には、「アクリル樹脂等の樹脂エマルジョンの樹脂固形分100重量部当たり、テトラメトキシシラン等の下記一般式
OR

RO-Si-OR

OR
(式中、Rは同一もしくは異なって水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。)
で表わされるオルガノシリケートの縮合物を0.1〜50重量部配合してなる水性塗料組成物」の発明が記載されているものと認める。
本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比する。甲第2号証に記載されたテトラメトキシシランは本件発明1の一般式(I)において、R1=炭素数1のアルキル基、R2=炭素数1のアルコキシ基に該当するから、本件発明1における「(R1O)4-aSiR2a(I)(式中、R1は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物の部分加水分解縮合物」と甲第2号証に記載された発明の「テトラメトキシシラン等の下記一般式
OR

RO-Si-OR

OR
(式中、Rは同一もしくは異なって水素原子又は炭素数1〜10の1価の炭化水素基を示す。)で表わされるオルガノシリケートの縮合物」とに差異はない。
また、甲第2号証に記載された発明における「アクリル樹脂等の樹脂エマルジョン」、「水性塗料組成物」は、本件発明1における「合成樹脂エマルジョン」、「水性塗料用樹脂組成物」に相当する。
したがって、本件発明1と甲第2号証に記載された発明とは、「合成樹脂エマルジョンと一般式(I):(R1O)4-aSiR2a(I)(式中、R1は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物の部分加水分解縮合物を含有する水性塗料用樹脂組成物」である点で一致し、A)シリコン化合物の部分加水分解縮合物について、本件発明1においては該縮合物の乳化物を用いるのに対し、甲第2号証に記載された発明においてはそのように特定されていない点、B)水性塗料用樹脂組成物について、本件発明1においては、合成樹脂エマルジョン100重量部と一般式(I)で表されるシリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物1〜100重量部とからなるものであるのに対し、甲第2号証に記載された発明においてはそのように特定されていない点で相違する。
上記相違点A)について検討する。
甲第1号証には、アクリル系エマルジョンとテトラメトキシシラン等の有機ケイ素系単量体の乳化分散体が配合された塗布用組成物が記載されているが、甲第1号証に記載された発明の目的は、撥水性に優れた、すなわち接触角の大きい塗布用組成物を提供するものである(摘記f)。また、摘記eにおける実施例1と比較例6との比較によって、有機ケイ素系単量体を乳化分散体とすることで、乳化分散体でないものに比べて撥水性が向上、すなわち、接触角が大きくなることが甲第1号証において示されている。
しかし、甲第2号証に記載された発明は、「接触角が70度より大きくなると耐汚染性、耐久性などが劣る」ものであり(甲第2号証19頁20〜21行)、「水に対する接触角が徐々に低下することによって塗膜表面の汚れを防止することができる」(甲第2号証19頁25〜26行)ものであって、塗膜表面の接触角が小さいものを用いるものであるから、甲第1号証に記載された発明とは、接触角の大きさが異なるものを望ましいものとして用いるものである。また、甲第1号証には、乳化分散体とすることで接触角が大きくなることも示されているのである。
したがって、甲第1号証に乳化分散体を用いることが記載されていても、該乳化分散体、すなわち乳化物を甲第2号証に記載された発明に適用することは当業者が容易に行うことであるとはいえない。
また、摘記o〜uのとおり、参考資料1,2には、シリル基含有樹脂が水性塗料に用いられることが、参考資料3〜5には、アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつカルボニル基含有重合体エマルジョンとヒドラジンおよび/またはヒドラジル基を含有する化合物からなる樹脂が水性塗料に用いられることが、参考資料6,7には、加水分解性シランを含有する水性塗料用樹脂組成物に硬化触媒として有機スズ化合物と界面活性剤の乳化物を配合すること、水性塗料用樹脂組成物にアルキルエーテル型界面活性剤を主体とする界面活性剤を用いることが記載されているのみであり、これらの記載を勘案しても、上述の判断は変わらない。
したがって、上記相違点B)を検討するまでもなく、本件発明1は甲第1及び2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

また、本件請求項2,3,5〜13,16はいずれも請求項1を引用する請求項であって、これら請求項に係る発明はいずれも、本件発明1を技術的に更に限定するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲第1及び2号証に記載された発明に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

なお、当審で通知した上記取消理由のうち、特許法第36条第5項第1号については、上記訂正により実質的に削除されたシリコン化合物についてのものであるから、上記訂正により当該取消理由は解消された。

3-4.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1〜3,5〜13,16の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1〜3,5〜13,16についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1〜3,5〜13,16についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
水性塗料用樹脂組成物および耐汚染性に優れた塗膜の形成方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】合成樹脂エマルジョン(A)100重量部と一般式(I):
(R1O)4-aSiR2a (I)
(式中、R1は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物(B)1〜100重量部とからなる水性塗料用樹脂組成物。
【請求項2】前記合成樹脂エマルジョン(A)がアクリル系樹脂を主体とするものである請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項3】前記(A)成分が、アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつ一般式(II):
X13-bSiR3b (II)
(式中、R3は同じかまたは異なり炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、X1は同じかまたは異なり、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシ基、アシロキシ基、アミノキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシ基およびアミノ基よりなる群から選ばれる少なくとも1種の基、bは0〜2の整数。)で示すシリル基を有するビニル系単量体を他のビニル系単量体と共重合することによりえられるシリル基含有樹脂であることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項4】前記(A)成分が、アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつウレタン結合を有する樹脂、あるいはウレタン架橋を行う樹脂からなることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項5】前記(A)成分が、アクリル系樹脂エマルジョンであり、かつカルボニル基含有重合体エマルジョンとヒドラジンおよび/またはヒドラジル基を含有する化合物からなる樹脂であることを特徴とする請求項1記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項6】前記(A)成分が、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデンまたはヘキサフルオロプロピレンなどの含フッ素重合性単量体と共重合可能な他の単量体よりなるフッ素樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項7】前記(A)成分が、メラミン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項8】前記(A)成分が、シリコーン樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜7記載のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項9】前記(A)成分が、酸またはアミンで架橋するエポキシ樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項10】前記(B)成分におけるシリコン化合物の部分加水分解縮合物が、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-i-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシランの部分加水分解縮合物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項11】前記(B)成分における乳化物がノニオン系乳化剤および/またはアニオン系乳化剤を用いてえられる乳化物であり、使用する乳化物がポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン変性ポリジメチルシロキサンなどのノニオン系乳化剤および/またはポリオキシエチレン鎖を有するアニオン系乳化剤であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項12】前記(B)成分100重量部に対し、硬化触媒(C)を0.1〜20重量部配合してなる請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項13】前記(C)成分が、有機アルミニウム化合物または有機スズ化合物をアルキルエーテル型界面活性剤を主体とする界面活性剤で乳化した物であることを特徴とする請求項12記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項14】前記(C)成分が、酸性リン酸エステル、有機カルボン酸類と有機アミン類の混合物または反応物であることを特徴とする請求項12記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項15】前記(B)成分における乳化物がHLBが7より小さいノニオン系乳化剤とHLBが12より大きいノニオン系乳化剤を用いた乳化物であることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物。
【請求項16】請求項1〜9のいずれかに記載の水性塗料用樹脂組成物であり、合成樹脂エマルジョン(A)100重量部に対し、シリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物(B)1〜100重量部を配合し、被処理物に塗布することを特徴とする耐汚染性に優れた塗膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、たとえば建築内外装、自動車、家電用品、プラスチックなどに対する各種塗装、特に耐候性、耐久性の要求される用途において、良好な塗膜性能を有する水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】
近年、塗料や接着剤の分野において、公害対策あるいは省資源の観点より、有機溶剤を使用するものから、有機溶剤を使用しない水溶性あるいは水分散性樹脂や粉体樹脂への転換が試みられている。塗料分野においては、粉体塗料よりも水性塗料への移行が精力的に行われている。しかしながら、従来の水性樹脂は、分子中に架橋性の官能基を持たないため、その結果として、重合に使用する界面活性剤の影響などを強く受け、形成された塗膜の耐候性、耐水性、耐汚染性が著しく悪くなり、溶剤系塗料に較べ塗膜物性が劣るという欠点を有していた。
【0003】
この欠点を改良するため種々の試みが提案されており、例としては、架橋性官能基として加水分解性シリル基を有する重合体エマルジョンを水性塗料に応用する提案(特開平3-227312号公報参照)や、カルボキシル基とヒドラジル基の反応により粒子間の架橋を導入した水性エマルジョン塗料に関する提案(特開平5-59305号公報参照)がなされている。また、溶剤系で高性能を示すフッ素樹脂を水性化した水分散型フッ素樹脂塗料に関する提案(特開平5-25421号公報参照)がなされている。
【0004】
これにより、耐候性、耐水性の点では、ある程度の改善はなされたものの、水性化したことによる問題も生じており、十分とは言えない。
【0005】
また、汚染性についても、溶剤系に比べるとかなり劣るという問題があった。
【0006】
特に、汚染性については、最近、各方面で要求が高まってきており、溶剤系の低汚染型の塗料に近いレベルが求められている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、これらの課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、各種水性塗料または水性樹脂組成物にテトラアルコキシシランおよび/またはその部分加水分解縮合物の乳化剤を特定の割合で混合し、硬化触媒を特定の割合で混合することで、従来の水性塗料では成しえなかった耐汚染性を有し、また耐候性、耐水性にも優れる塗膜を形成することができることをようやく見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、合成樹脂エマルジョン(A)100重量部と一般式(I):
(R1O)4-aSiR2a (I)
(式中、R1は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基または炭素数7〜10のアラルキル基、R2は同じかまたは異なり、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基または炭素数1〜10のアルコキシ基、aは0〜2の整数。)で表されるシリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物(B)1〜100重量部からなる水性塗料用樹脂組成物に関する。
【0009】
また、本発明は、合成樹脂エマルジョン(A)100重量部に対し、シリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物(B)1〜100重量部を配合し、被処理物に塗布することを特徴とする耐汚染性に優れた塗膜の形成方法に関する。
【0010】
【作用】
本発明に用いられる合成樹脂エマルジョン(A)は、一般に市販されているエマルジョン型の水性塗料用樹脂および塗料化されたものであれば、特に限定はないが、たとえば、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリエーテル系樹脂などがあげられるが、これらの中では、えられる硬化性樹脂組成物を用いて形成された塗膜が耐候性および耐薬品性に優れ、また樹脂設計の幅が広くとれることから、アクリル系樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂などが好ましく、さらに、耐汚染性に優れ、低価格という点からアクリル系樹脂が好ましい。
【0011】
前記(A)成分の重合体合成に用いられるビニル系単量体には、特に限定がなく、たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのビニル系単量体;スチレン、α-メチルスチレン、クロロスチレン、4-ヒドロキシスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族炭化水素系ビニル単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、フマル酸、シトラコン酸などのα、β-エチレン性不飽和カルボン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などの重合可能な炭素-炭素二重結合を有する酸;あるいは、それらの塩(アルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩など);無水マレイン酸などの酸無水物またはそれらと炭素数1〜20の直鎖または分岐のアルコールとのハーフエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基を有する(メタ)アクリレート;(メタ)アクリルアミド、α-エチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-メチルアクリルアミド、アクリロイルモルホリンあるいは、それらの塩酸、酢酸塩;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ジアリルフタレートなどのビニルエステルやアリル化合物;(メタ)アクリロニトリルなどのニトリル基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシスチレン、アロニクス5700(東亜合成化学(株)製)、PlaccelFA-1、PlaccelFA-4、PlaccelFM-1、PlaccelFM-4(以上ダイセル化学(株)製)、HE-10、HE-20、HP-10、HP-20(以上日本触媒化学(株)製)、ブレンマーPPシリーズ、ブレンマーPEシリーズ、ブレンマーPEPシリーズ、ブレンマーAP-400、ブレンマーAE-350、ブレンマーNKH-5050、ブレンマーGLM(以上日本油脂(株)製)、MA-30、MA-50、MA-100、MA-150、RA-1120、RA-2614、RMA-564、RMA-568、RMA-1114、MPG130-MA(以上、日本乳化剤(株)製)、水酸基含有ビニル系変性ヒドロキシアルキルビニル系モノマーなどの水酸基含有ビニル系単量体;(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステル類などのα、β-エチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシアルキルエステル類とリン酸エステル基含有ビニル化合物あるいはウレタン結合やシロキサン結合を含む(メタ)アクリレートなどのビニル化合物;東亜合成化学(株)製のマクロモノマーであるAS-6、AN-6、AA-6、AB-6、AK-5などの化合物;ビニルメチルエーテル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン、プロピレン、ブタジエン、N-ビニルイミダゾールなどのその他のビニル系単量体などがあげられる。
【0012】
また、一般式(II):
X13-bSiR3b (II)
で表されるシリル基を含有する単量体も用いることができる。具体例としては、たとえば、
【0013】
【化1】


【0014】
【化2】


【0015】
などがあげられる。これらの中では、特にアルコキシシリル基含有モノマーが安定性の点で好ましい。
【0016】
これらのシリル基含有ビニル系単量体は、1種または2種以上併用してもよく、1〜50重量%共重合されるのが好ましく、更に好ましくは2〜30重量%共重合されるのがよい。共重合する量が、1重量%より少ないと、耐水性、耐候性に劣り、50重量%を超えるとエマルジョンの安定性が低下し、貯蔵安定性も低下する。
【0017】
また、フッ素含有ビニル系単量体には、特に限定がなく、具体的には、たとえば、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、パーフルオロシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピルメタクリレート、β-(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ブロモトリフルオロエチレン、クルルジフルオロエチレン、ジクロロジフルオロエチレンなどのフッ素含有ビニル系単量体があげられる。
【0018】
これらのフッ素含有ビニル系単量体は、1種または2種以上併用してもよく、1〜50重量%共重合されるのが好ましく、更に好ましくは2〜30重量%共重合されるのがよい。共重合する量が、1重量%より少ないと、耐水性、耐候性に劣り、50重量%を超えるとエマルジョンの安定性が低下し、フッ素含有単量体導入の効果がそこなわれる。
【0019】
ウレタン結合を有する樹脂をうるためには、イソシアネート化合物と水酸基含有単量体とを反応させ、共重合体中に導入すればよい。また、ウレタン架橋を行う樹脂をうるためには、遊離イソシアネート基および/またはブロックイソシアネート基を含有するビニル系重合体と水酸基を含有するビニル系重合体と混合し、反応させることによりウレタン架橋を行えばよい。イソシアネート化合物としては、1分子中に2個のイソシアネート基を有するものであり、たとえば、トリレンジイソシアネート、4,4´-ジフェニルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4´-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチルシクロヘキサン-2,4(2,6)-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサンジイソシアネートなどの脂肪族、芳香族および脂環族系のジイソシアネート化合物およびこれらのイソシアネート化合物と1分子中に2個以上の水酸基を含有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネートなどの反応物があげられる。イソシアネート含有単量体としては、前記ジイソシアネート化合物と前記水酸基含有単量体とを反応させて調製すればよいが、たとえば、2-イソシアネートエチルメタクリレート、m-イソプロペニル-α,α´-ジメチルベンジルイソシアネート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートとイソホロンジイソシアネートとの等モル付加物などが好ましい。
【0020】
カルボニル基を含有するビニル系単量体の具体例としては、たとえば、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、ホルミルスチロール、好ましくは、4〜7個の炭素原子を有するビニルアルキルケトン、(たとえば、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルイソブチルケトンなど)、ジアセトンアクリレート、アセトニルアクリレート、ジアセトンメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート-アセチルアセテート、ブタンジオール-1,4-アクリレート-アセチルアセテートなどがあげられる。これらのカルボニル基含有ビニル系単量体は、1種類を用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。このカルボニル基を含有するビニル系単量体の使用量は、全単量体に対し0.1〜30重量部、好ましくは3〜10重量部である。
【0021】
カルボニル基含有重合体と反応させるヒドラジンおよびヒドラジル基を有する化合物としては、1分子中に少なくとも2個のヒドラジン残基を含有するヒドラジン誘導体が好ましく、2〜10個、さらに好ましくは4〜6個の炭素原子を有するジカルボン酸とヒドラジンとの脱水縮合物であるジカルボン酸ジヒドラジド(たとえば、シュウ酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、コハク酸ジヒドラジド、グルタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、マレイン酸ジヒドラジド、フマル酸ジヒドラジド、イタコン酸ジヒドラジドなど);2〜4個の炭素原子を有する脂肪族水溶性ジヒドラジン(たとえば、エチレン-1,2-ジヒドラジン、プロピレン-1,3-ジヒドラジン、ブチレン-1,4-ジヒドラジンなど)があげられる。
【0022】
前記ビニル系単量体の種類は、えられる硬化性樹脂組成物の目的とする物性に応じて選択すればよく、たとえば、エマルジョン(A)の安定性を向上させるためには、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、水酸基含有ビニル系単量体、ポリエチレングリコールメタクリレート、ポリプロピレングリコールメタクリレートなどの親水性単量体を用いることが好ましい。また、えられる樹脂組成物を用いて形成された塗膜の耐水性、耐久性などを向上させるためには、エマルジョンの粒子内および粒子間の架橋を行う官能基を導入したり、フッ素含有ビニル系単量体やシロキサン含有ビニル系単量体を用いることが好ましい。また、酸性ビニル系単量体を用いた場合には、エマルジョン(A)の機械的安定性が向上する。
【0023】
また、前記単量体の中でポリオキシエチレン鎖を有する親水性単量体を用いた場合には、前記単量体中のシリル基の安定性が低下することなく、エマルジョン(A)の機械的安定性、化学的安定性やえられる硬化性樹脂組成物を用いて形成された塗膜の耐水性、光沢などが向上するので好ましい。なお、かかるポリオキシエチレン鎖を有する親水性単量体を用いる場合の配合量は、重合成分全量100重量部に対して0.1〜10重量部となるように調整することが好ましい。かかる配合量が、0.1重量部未満である場合には、エマルジョン(A)の機械的安定性やえられる硬化性樹脂組成物を用いて形成された塗膜の耐水性および光沢が低下する傾向があり、また10重量部を超える場合には、塗膜が軟化し、汚れが付着しやすくなる傾向がある。
【0024】
また、それに加えて、たとえば、ポリエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、トリアリルシアヌレートなどの重合性の不飽和結合を2つ以上持った単量体も使用し、生成するポリマーを架橋構造を持つものとすることも可能である。
【0025】
本発明の製造方法について説明すると、本発明の乳化重合法は、バッチ重合、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合等の乳化重合の手段を適宜選択することができる。特に、モノマー滴下重合、乳化モノマー滴下重合が製造時の安定性を確保する上で適している。
【0026】
乳化重合に使用する乳化剤としては、通常使用される物であれば特に限定はなく、イオン性あるいは非イオン性の界面活性剤があげられる。イオン性界面活性剤としては、ラウリルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;Newcol-723SF、Newcol-707SN、Newcol-707SF、Newcol-740SF、Newcol-560SN(以上日本乳化剤(株)製)などの(ポリ)オキシエチレン基を含むアニオン系乳化剤;イミダリンラウレート、アンモニウムハイドロオキサイドなどのアンモニウム塩;非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどのポリオキシエチレン類;L-77、L-720、L-5410、L-7602、L-7607(以上ユニオンカーバイド社製)などのシリコンを含むノニオン系乳化剤などが代表的なものである。また、乳化剤として、重合反応性を有するアデカリアソープNE-10、NE-20、NE-30、NE-40、SE-10N(以上旭電化工業(株)製)、Antox-MS-60、Antox-MS-2N、RMA-653、(以上日本乳化剤(株)製)を用いると耐水性の向上を図ることができる。
【0027】
重合開始剤としては、通常使用するものを用いればよいが、重合の安定性などの点から、レドックス系触媒を用いるのが好ましく、具体的には、たとえば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムと酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットの組合せ、過酸化水素とアスコルビン酸の組合せ、t-ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイドなどの有機過酸化物と酸性亜硫酸ナトリウム、ロンガリットなどとの組合せなどが用いられる。特に、有機過酸化物と還元剤の組合せが好ましい。また、触媒活性を安定的にえるために硫酸鉄などの2価の鉄イオンを含む化合物とエチレンジアミン4酢酸2ナトリウムの様なキレート剤を併用してもよい。
【0028】
この様な開始剤の使用量は、モノマー100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。
【0029】
合成樹脂エマルジョン(A)の固形分濃度は、本発明の方法による場合は、20〜70重量%までの範囲が好ましい。
【0030】
固形分濃度が70重量%を越えると、系の粘度が著しく上昇するため重合反応に伴う発熱を除去することが困難になったり、重合機からの取り出しに長時間要するなどの不都合を生じる。また、固形分濃度が20重量%以下の場合、重合操作の面では何ら問題は生じないものの、1回の重合操作によって生じる樹脂の量が少なく、経済面から考えた場合、著しく不利となるし、また用途上の要求からも20重量%以下の濃度では、塗膜の膜厚が薄くなってしまい、性能劣化を起こしたり、塗装作業性の点で不利となる。
【0031】
かくしてえられる合成樹脂エマルジョンは平均粒子径が0.02〜0.7ミクロン程度の超微粒子より構成されており、その結果として優れた被膜形成能を有している。
【0032】
前記(B)成分における前記一般式(I)で示されるシリコン化合物の部分加水分解縮合物は、たとえば、テトラメチルシリケート、テトラエチルシリケート、テトラ-n-プロピルシリケート、テトラ-i-プロピルシリケート、テトラ-n-ブチルシリケート、テトラ-i-ブチルシリケート、テトラ-t-ブチルシリケート、MSi51、ESi28、ESi40(以上コルコート(株)製)などのテトラアルキルシリケートの部分加水分解縮合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ペンチルトリメトキシシラン、ペンチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘプチルトリメトキシシラン、ヘプチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシピロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシピロピルトリエトキシシラン、メチルトリ-sec-オクチルオキシシラン、メチルトリブトキシシラン、AFP-1(信越化学(株)製)などのトリアルコキシシランの部分加水分解縮合物;などがあげられる。
【0033】
上記(B)成分は、ノニオン系、アニオン系、カチオン系あるいは両性の乳化剤いずれを用いても乳化可能であるが、シリコン化合物の安定性、乾燥塗膜の耐水性、耐久性などの点からノニオン系乳化剤を使用するのが好ましい。乳化物の分散安定性の点から、アニオン系乳化剤を併用することもできる。
【0034】
ノニオン系乳化剤としては、特に限定はなく、たとえば、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル類;ポリオキシエチレンステアレート、ポリオキシエチレンオレート、ポリオキシエチレンラウレートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル類;グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエートなどのグリセリン脂肪酸エステル類;ソルビタンモノパルミネート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエート、ソルビタンモノセスキオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミネート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンソルビトールテトラオレートなどのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類などがあげられる。
【0035】
また、フッ素系あるいはシリコン系ノニオン乳化剤も使用することができ、フッ素系ノニオン乳化剤としては、たとえば、パーフルオロアルキルスルホン酸アミド変性ポリアルキレンオキシドのようなノニオン性パーフルオロアルキル含有ポリオキシエチレンオキシドなどがあげられる。具体的な例としては、EFTOP EF-121、EF-122A、EF-122B、EF-122C、EF-122A3、EF-301、EF-303、EF-305(以上、新秋田化成(株)製)、MERGAFAC F-142D、F-144D、F-171、F-172、F-173、F-177、F-183、F-184、F-815(以上、大日本インキ化学工業(株)製)などがあげられる。
【0036】
シリコン系ノニオン乳化剤としては、たとえば、ポリジメチルシロキサンの片末端およびまたは両末端および/または側鎖をポリアルキレンオキシド変性したノニオン系ポリアルキレンオキシド変性ポリジメチルシロキサンなどがあげられる。具体的な例としては、SILWET L-77、L-720、L-722、L-7001、L-7002、L-7602、L-7604、L-7605、L-7607N、Y-7006、FZ-2104、FZ-2110、FZ-2120、FZ-2161、FZ-2162、FZ-2163、FZ-2164FZ-2165、FZ-2166、FZ-2171(以上、日本ユニカー(株)製)、KF-351、KF-352、KF-353、KF-354、KF-355、KF-615、KF-618、KF-945、KF-907、X-22-6008、X-22-811、X-22-812(以上、信越化学工業(株)製)、PS071、PS072、PS073、PS074(以上、チッソ(株)製)、TAF4200、TEA4300(以上、東芝シリコーン(株)製)、SH3748、SH3749、SH3771、SH8400、SF8410、SF8700(以上、トーレ・シリコーン(株)製)などがあげられる。
【0037】
アニオン系乳化剤としては、通常使用される物であれば特に限定はなく、ドデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、イソオクチルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどのスルホン酸塩;Newcol-723SF、Newcol-707SN、Newcol-707SF、Newcol-740SF、Newcol-560SN(以上日本乳化剤(株)製)等の(ポリ)オキシエチレン基を含むアニオン系乳化剤;FTOP EF-102、EF-103、EF-104、EF-105、EF-112、EF-123A、EF-123B、EF-306A、EF-501、EF-201、EF-204(以上、新秋田化成(株)製)などのフッ素系乳化剤;カルボキシル基含有ポリジメチルシロキサンを塩基で中和したシリコン系乳化剤などがあげられる。
【0038】
これらの乳化剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。乳化剤の使用量は、シリコン化合物100重量部に対して0.05〜50重量部、好ましくは、0.1〜30重量部である。0.05重量部未満では安定なエマルジョンがえられず、機能安定性も悪くなる。50重量部を越えると塗膜外観や耐水性の低下などの問題が発生する。
【0039】
ノニオン系乳化剤を併用して用いる場合、HLBが7より小さいノニオン系乳化剤とHLBが12より大きいノニオン系乳化剤を用いて乳化するのが効果的である。HLBが7より小さいノニオン系乳化剤とHLBが12より大きいノニオン系乳化剤の重量比は、任意の比率を選ぶことができるが、0.5/9.5〜9.5/0.5、好ましくは、1/9〜9/1である。重量比率が0.5/9.5以下あるいは9.5/0.5以上では安定なエマルジョンがえられにくい。
【0040】
また、アニオン系乳化剤を併用する場合には、全乳化剤中のアニオン系乳化剤の割合は、30重量部以下、好ましくは、20重量部である。30重量部を超えると、安定なエマルジョンの製造が難しく、分離し易くなったり、乳化条件が限定されたりする。
【0041】
乳化後の混合物は、pHを6〜10に保つのが好ましい。この範囲外では、縮合が起こり易くなる。特に、pH6未満では加水分解が促進されるため、縮合が速く進行する。また、pH10を超えると不安定になるだけでなく作業上の問題も生じる。
【0042】
pH調製の方法あるいは順序については特に限定しないが、乳化の早い段階で行うことが望ましい。pH調製が遅くなるとそれだけ加水分解が進行するおそれがある。pH調製には、一般に使用するアルカリを用いれば良く、たとえば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、各種アミンなどがあげられる。
【0043】
前記(B)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。(B)成分の配合割合は、(A)成分の樹脂固形分100重量部に対して1〜100重量部、好ましくは、2〜50重量部である。1重量部未満ではえられる塗膜の硬度および親水性が十分ではなく、70重量部を越えると塗膜外観やクラックなどの問題が発生する。
【0044】
また、本発明には、前記(B)成分100重量部に対して、硬化触媒(C)を0.1〜20重量部配合することもできる。(C)成分の硬化触媒の具体例としては、たとえば、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジオクチル錫ジラウレート、ジオクチル錫マレート、オクチル酸錫などの有機錫化合物;リン酸、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェート、モノデシルホスフェート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジデシルホスフェートなどのリン酸またはリン酸エステル類;プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、グリシジルメタクリレート、グリシドール、アクリルグリシジルエーテル、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、油化シェルエポキシ(株)製のカーデュラ(E)、エピコート828、エピコート1001などのエポキシ化合物とリン酸および/または酸性モノリン酸エステルとの付加反応物;有機チタネート化合物;有機アルミニウム化合物;有機ジルコニウム化合物;マレイン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、クエン酸、コハク酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、これらの酸無水物、パラトルエンスルホン酸などの酸性化合物;ヘキシルアミン、ジ-2-エチルヘキシルアミン、N,N-ジメチルドデシルアミン、ドデシルアミンなどのアミン類;これらのアミンと酸性リン酸エステルとの混合物または反応物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ性化合物などがあげられる。
【0045】
前記(C)成分は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。硬化触媒の使用量には特に限定はないが、(B)成分100重量部に対して、通常0.1〜20重量部、好ましくは0.5〜10重量部使用する。使用量が0.1重量部以下では、(B)成分の硬化性が低下する傾向があり、20重量部を越えると塗膜の外観性が低下する傾向にある。
【0046】
前記(C)成分の有機錫化合物、有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物を乳化分散する界面活性剤としては、アルキルエーテル型界面活性剤を主体とする界面活性剤が好ましく、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル類などがあげられる。また、ポリオキシエチレンオキシド基を含有するアニオン性界面活性剤の併用も可能である。
【0047】
(A)成分、(B)成分および、要すれば(C)成分からなる水性塗料用樹脂組成物は、このままでも良好な塗膜形成能を有するが、助溶剤を用いて塗膜形成能をさらに高めることができる。助溶剤の具体例としては、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコールなどのアルコール類;セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノイソブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルなどのエーテル類;ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルエステル類などがあげられる。
【0048】
これらの溶剤の添加は、乳化共重合体(I)の重合時に添加してもよく、また、重合後に添加してもよい。
【0049】
えられた水性塗料用樹脂組成物に、添加剤として、必要に応じて通常塗料に用いられる顔料(二酸化チタン、炭酸カルシルム、炭酸バリウム、カオリンなど白色顔料、カーボン、ベンガラ、シアニンブルーなどの有色系顔料)や可塑剤、溶剤、分散剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、沈降防止剤、レベリング剤、紫外線吸収剤などの通常の塗料用組成分として使用される添加剤を混合して使用することもさしつかえない。水性塗料用樹脂組成物に、二酸化チタンを配合する際に、等電点が7以上の二酸化チタンを用いることにより、光沢、耐候性は向上する。具体的には、JR901、JR603、JR602(テイカ(株)製)などがあげられる。
【0050】
本発明の耐汚染性の付与効果は、合成樹脂エマルジョン(A)100重量部に対し、シリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物(B)1〜100重量部を配合し、被処理物に塗布することにより発現される。その効果発現のメカニズムは、(B)成分が架橋反応の際において、塗膜表面に局在することにより、塗膜表面硬度と親水性が付与される。塗膜の表面硬度が高くなるため、傷がつきにくくなって汚染を防止する。また、これと同時に、該塗膜が親水性であるため、雨などの洗浄効果が発現し、より一層優れた耐汚染性を有する塗膜が形成される。
【0051】
このように、前記(A)、(B)成分よりなる組成物を常法により被塗物に塗布した後、通常10℃以上で養生させることで、被塗物の表面に耐汚染性、耐候性、密着性、耐久性などの物性に優れた硬化物(塗膜)を形成することができる。
【0052】
本発明の組成物は、たとえば、建築内装用、メタリックベースあるいはメタリックベース上のクリアーなどの自動車用、アルミニウム、ステンレス、銀などの金属直塗用、スレート、コンクリート、瓦、モルタル、石膏ボード、石綿スレート、アスベストボード、プレキャストコンクリート、軽量気泡コンクリート、珪酸カルシウム板、タイル、レンガなどの窯業系直塗用、ガラス用、天然大理石、御影石などの石材用の塗料あるいは上面処理剤として用いられる。また、直塗用だけではなく、水系あるいは溶剤系プライマー上、アクリルゴム上、複層仕上げのトップコート、コンクリートなどの無機系機材に水系あるいは溶剤系浸透性吸水防止剤上の塗装にも用いられる。
【0053】
【実施例】
次に、本発明の組成物の調製方法と製造方法を実施例に基づき説明する。
【0054】
製造例1〜4
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水40部(重量部。以下同様)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部(製造例1、3、4)またはポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルフェート1部(製造例2)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1部、酢酸アンモニウム0.5部、ロンガリット0.3部、t-ブチルハイドロパーオキサイド0.1部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。表1に示す組成の混合物158部中の20部を滴下ロートを用いて30分かけて滴下して初期重合を行った。滴下終了1時間後に、前期混合物158部中の残りの138部およびt-ブチルハイドロパーオキサイド0.1部を滴下ロートにより3時間かけて等速滴下した。この後、1時間後重合を行い、脱イオン水を添加して樹脂固形分が40重量%のエマルジョン(A-1)〜(A-4)をえた。
【0055】
【表1】

【0056】
製造例5
撹拌機、還流冷却器、窒素ガス導入管および滴下ロートを備えた反応容器に、脱イオン水55部、ドデシルベンゼンスルホン酸1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部を仕込み、窒素ガスを導入しつつ50℃に昇温した。オクタメチルシクロテトラシロキサン40部を滴下ロートを用いて1時間かけて滴下した。3時間重合を行った後、炭酸ナトリウムで中和して、脱イオン水を添加して樹脂固形分が40重量%の分子鎖両末端が水酸基で封鎖されたジメチルポリシロキサンのエマルジョン(A-5)をえた。
【0057】
製造例6〜7
市販エポキシ樹脂(油化シェルエポキシ(株)製:エピコート1001、製造例6)または市販メラミン樹脂(三井東圧化学(株)製:ユーバン2028、製造例7)40部、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルスルフェート1部およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル1部を50℃に加温しながら混合し、室温で脱イオン水58部を混合した後に、ホモジナイザーを用いて乳化し、エポキシ樹脂のエマルジョン(A-6)、メラミン樹脂のエマルジョン(A-7)をえた。
【0058】
水性(白エナメル)塗料の調整(a-1)〜(a-7)
表2に示す配合でエマルジョン(A-1)〜(A-7)と酸化チタン(石原産業(株)製:GR95)を一般的に用いられる顔料分散剤、顔料湿潤剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、pH調整剤などを配合して調製した顔料ペーストを用い、PWC(全固形分に対する顔料の重量%)40%、塗料固形分濃度50%となるように水性(白エナメル)塗料を調製した。
【0059】
【表2】

【0060】
乳化シリコン化合物の調整(b-1)
ESI40(コルコート(株)製:テトラエチルシリケート部分加水分解縮合物)20部をHLBが17.2のポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル4部と混合し、1000rpm以上で高速撹拌して、これに、脱イオン水76部をゆっくりと加えて、乳化物(b-1)を調製した。
【0061】
乳化シリコン化合物の調整(b-2)、(b-3)
乳化シリコン化合物(b-1)と同様の条件にて、PSI23(コルコート(株)製:テトラ-n-プロピルシリケート部分加水分解縮合物)の乳化物(b-2)およびBSI20(コルコート(株)製:テトラ-n-ブチルシリケート部分加水分解縮合物)の乳化物(b-3)を調製した。
【0062】
乳化シリコン化合物の調整(b-4)
MSI51(コルコート(株)製:テトラメチルシリケート部分加水分解縮合物)10部とESI40(コルコート(株)製:テトラエチルシリケート部分加水分解縮合物)10部の混合物をHLBが16.3のポリオキシエチレンソルビタンラウレート2部、HLBが6.4のソルビタンオレート2部と混合し、1000rpm以上で高速撹拌して、これに、脱イオン水76部をゆっくりと加えて、乳化物(b-4)を調製した。
【0063】
乳化シリコン化合物の調整(b-5)
ESI40(コルコート(株)製:テトラエチルシリケート部分加水分解縮合物)20部をHLBが16.5のポリオキシエチレンラウリルエーテル3.5部、ポリオキシエチレン(40モル)ノニルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩0.5部と混合し、1000rpm以上で高速撹拌して、これに、脱イオン水76部をゆっくりと加えて、乳化物(b-5)を調製した。
【0064】
乳化シリコン化合物の調整(b-6)
ESI40(コルコート(株)製:テトラエチルシリケート部分加水分解縮合物)20部をポリエチレンオキシド変性ポリジメチルシロキサン4部と混合し、1000rpm以上で高速撹拌して、これに、脱イオン水76部をゆっくりと加えて、乳化物(b-6)を調製した。
【0065】
乳化シリコン化合物の調整(b-7)
BSI20(コルコート(株)製:テトラ-n-ブチルシリケート部分加水分解縮合物)を20部をポリオキシエチレン(40モル)ノニルフェニルエーテルサルフェートアンモニウム塩4部を混合し、脱イオン水76部をゆっくりと加えて、乳化物(b-7)を調製した。
【0066】
乳化シリコン化合物の調整(b-8)
ESI40(コルコート(株)製:テトラエチルシリケート部分加水分解縮合物)20部をTD-10014(日本乳化剤(株)製:ノニオン系/アニオン系乳化剤混合物)3部、TD-1006(日本乳化剤(株)製:ノニオン性乳化剤)4部と混合し、1000rpm以上で高速撹拌して、これに、脱イオン水76部をゆっくりと加えて、乳化物(b-8)を調製した。
【0067】
実施例1
白エナメル(a-1)100部に対し、乳化シリコン化合物(b-1)30部とジブチル錫ジラウレートの乳化物10部(固形分濃度10%)を配合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0068】
実施例2〜7
白エナメル(a-2)100部に対し、乳化シリコン化合物(b-1)(実施例2)、(b-4)(実施例3)、(b-5)(実施例4)、(b-6)(実施例5)、(b-7)(実施例6)または(b-8)(実施例7)30部とジブチル錫ジラウレートの乳化物10部(固形分濃度10%)を配合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0069】
実施例8
白エナメル(a-3)100部に対し、ブロックイソシアネート化合物(住友バイエルウレタン(株)製:デスモジュールBL3175)20部を添加し、さらに乳化シリコン化合物(b-3)30部とジブチル錫マレートの乳化物10部(固形分濃度10%)を配合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0070】
実施例9
白エナメル(a-4)100部に対し、アジピン酸ジヒドラジド10部を添加し、さらに乳化シリコン化合物(b-3)30部とジブチル錫マレートの乳化物10部(固形分濃度10%)を配合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0071】
実施例10
白エナメル(a-5)100部に対し、乳化シリコン化合物(b-2)30部とジブチル錫ジラウレートの乳化物10部(固形分濃度10%)を配合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0072】
実施例11
白エナメル(a-6)50部と(a-7)50部を混合して、さらに乳化シリコン化合物(b-2)30部とジブチル錫ジラウレートの乳化物10部(固形分濃度10%)を配合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0073】
実施例12〜14
市販の白エナメルである水性フッ素塗料(旭硝子C&R(株)製:ボンフロン水性)(実施例12)、水性シリコン系塗料(SK化研(株)製:コンポシリコン)(実施例13)または水性アクリルウレタン塗料(関西ペイント(株)製:アクアレタン)(実施例14)100部に対し、乳化シリコン化合物(b-1)30部とジブチル錫ジラウレートの乳化物10部(固形分濃度10%)を配合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0074】
比較例1、2および5
白エナメル(a-1)、(a-2)および(a-5)を脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0075】
比較例3
白エナメル(a-3)に、ブロックイソシアネート化合物(住友バイエルウレタン(株)製:デスモジュールBL3175)20部を添加し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0076】
比較例4
白エナメル(a-4)に、アジピン酸ジヒドラジド10部を添加し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0077】
比較例6
白エナメル(a-6)50部と(a-7)50部を混合し、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0078】
比較例7〜9
市販品の水性フッ素塗料(旭硝子C&R(株)製:ボンフロン水性)、水性シリコン系塗料(SK化研(株)製:コンポシリコン)、水性アクリルウレタン塗料(関西ペイント(株)製:アクアレタン)を、それぞれ、脱イオン水を用いて適当な塗装粘度に希釈した後に、スレート板にエアースプレーで塗装した。その後、塗装板を20℃で10日間養生した。
【0079】
上記した実施例1〜14および比較例1〜9でえられたそれぞれの塗膜について、耐汚染性、親水性、硬度を調べた。それぞれの物性の測定・評価方法は以下の通りであり、その結果を表3〜表5に示す。
【0080】
耐汚染性
曝露初期のL*a*b*表色系で表される明度を色彩色差計(ミノルタ(株)製:CR300)で測定し、大阪府摂津市で南面30°の屋外曝露を3カ月実施した。曝露後の明度と曝露前の明度差の絶対値(ΔL値)を汚染性の尺度とした。なお、数値の小さい方が耐汚染性に優れ、数値の大きい方が汚れていることを示す。
【0081】
親水性
親水性は、接触角測定機(協和界面科学(株)製:CA-S150型)を用い、大阪府摂津市で南面30°の屋外曝露3カ月後の接触角を測定することにより評価した。数値が小さいほど親水性が高いことを示す。
【0082】
硬度
振子式硬度計(エリクセン(株)製:PERSOZ硬度計)を用い、大阪府摂津市で南面30°の屋外曝露3カ月後の硬度を測定した(ペロゾス硬度)。数値が大きいほど、硬度が高いことを示す。
【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
【表5】

【0086】
【発明の効果】
本発明の水性塗料用樹脂組成物は、これを被処理物に塗布した場合、該被処理物の表面に耐候性、耐久性に優れ、さらに耐汚染性に優れた塗膜が形成される。また、本発明の塗膜形成方法、すなわち、合成樹脂エマルジョンとシリコン化合物の部分加水分解縮合物の乳化物を被処理物に塗布することにより、被処理物の表面に屋外曝露における耐汚染性に優れた塗膜が形成される。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-05-30 
出願番号 特願平7-68058
審決分類 P 1 652・ 113- YA (C09D)
P 1 652・ 121- YA (C09D)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉住 和之  
特許庁審判長 脇村 善一
特許庁審判官 佐藤 修
冨永 保
登録日 2003-06-06 
登録番号 特許第3437672号(P3437672)
権利者 株式会社カネカ
発明の名称 水性塗料用樹脂組成物および耐汚染性に優れた塗膜の形成方法  
代理人 福井 宏司  
代理人 小寺 淳一  
代理人 小寺 淳一  
代理人 福井 宏司  

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