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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1122951
異議申立番号 異議2003-72605  
総通号数 70 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1997-09-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-10-20 
確定日 2005-08-31 
異議申立件数
事件の表示 特許第3406773号「フッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物およびフッ素樹脂被覆定着ロール」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3406773号の請求項1ないし5に係る特許を取り消す。 
理由
[1].手続きの経緯

本件特許第3406773号に係る出願は、平成8年3月26日に特願平8-96278号として出願されたものであって、平成15年3月7日に特許の設定がなされ、その後、その請求項1ないし5に係る特許について、異議申立人:ジーイー東芝シリコーン株式会社及び信越化学工業株式会社より2件の特許異議の申立がなされ、平成16年6月9日付の取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年8月17日に訂正請求書及び意見書が提出されたところ、平成17年1月21日付けの訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である平成17年4月5日付けの(訂正拒絶理由通知に対する)意見書が提出されたものである。

[2].訂正の可否

〈1〉.訂正事項
1.訂正事項a
特許請求の範囲の【請求項1】「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、少なくとも以下の(A)〜(E)からなり、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものであることを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。……… 」を
「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、少なくとも以下の(A)〜(E)からなり、その硬化物であるシリコーンゴムはJIS K6301に規定されるJIS A硬度が20以下であり、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものであることを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。……… 」と訂正する。

2.訂正事項b
発明の詳細な説明の【0006】の「すなわち、本発明の目的は、フッ素樹脂被覆定着ロール表面のフッ素樹脂層にしわが生じないような70〜140℃という比較的低温で硬化させてもロール軸およびフッ素樹脂層に対する接着性が良好なシリコーンゴムを形成できるフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物を提供することにあり、ひいては、信頼性が優れるフッ素樹脂被覆定着ロールを提供することにある。」を
「すなわち、本発明の目的は、フッ素樹脂被覆定着ロール表面のフッ素樹脂層にしわが生じないような70〜140℃という比較的低温で硬化させてもロール軸およびフッ素樹脂層に対する接着性が良好な、JIS K6301に規定されるJIS A硬度が20以下であるシリコーンゴムを形成できるフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物を提供することにあり、ひいては、信頼性が優れるフッ素樹脂被覆定着ロールを提供することにある。」と訂正する。

3.訂正事項c
発明の詳細な説明の段落【0007】【課題を解決するための手段】の「本発明のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物は、ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、少なくとも以下の(A)〜(E)からなり、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものであることを特徴とする。………」を
「本発明のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物は、ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、少なくとも以下の(A)〜(E)からなり、その硬化物であるシリコーンゴムはJIS K6301に規定されるJIS A硬度が20以下であり、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものであることを特徴とする。………」と訂正する。

4.訂正事項d
発明の詳細な説明の段落【0017】の「(D)成分の配合量は、(A)成分と(C)成分中のアルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10の範囲内となる量であり、特に、0.3〜5の範囲内となる量であることが好ましい。これは、(A)成分と(C)成分中のアルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1未満である組成物は十分に硬化しないためであり、また、これが10をこえる組成物は、得られるシリコーンゴムに気泡が生じたり、また、硬度が著しく大きくなって、比較的低硬度、すなわち、JIS A硬度が20以下であるシリコーンゴムが要求されるフッ素樹脂被覆定着ロールにはしばしば好ましくないからである。」を
「(D)成分の配合量は、(A)成分と(C)成分中のアルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10の範囲内となる量であり、特に、0.3〜5の範囲内となる量であることが好ましい。これは、(A)成分と(C)成分中のアルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1未満である組成物は十分に硬化しないためであり、また、これが10をこえる組成物は、得られるシリコーンゴムに気泡が生じたり、また、硬度が著しく大きくなって、比較的低硬度、すなわち、JIS K6301に規定されるJIS A硬度が20以下であるシリコーンゴムが要求されるフッ素樹脂被覆定着ロールにはしばしば好ましくないからである。」と訂正する。

〈2〉.訂正の可否の判断

1.訂正事項aについて
本件特許明細書の何処にも、本件特許請求の範囲の請求項1の、「少なくとも(A)〜(E)からなるシリコーンゴムの硬化物」が「JIS K6301に規定されるJIS A硬度が20以下である」ことについては記載されていない。
本件特許明細書の【0003】には「このフッ素樹脂被覆定着ロールは、一般に、外周面を予めプライマー処理したロール軸をフッ素樹脂チューブに挿入して、このロール軸とチューブとのキャビティにシリコーンゴム組成物を圧入した後、これを硬化させることにより作成される。この際、ロール軸およびフッ素樹脂層とシリコーンゴム層とを十分に接着させるためには、このシリコーンゴム組成物を比較的高温、例えば、150〜200℃で硬化させることが必要であるが、このシリコーンゴム組成物とフッ素樹脂との熱膨張率の差から、得られたフッ素樹脂被覆定着ロール表面のフッ素樹脂層にしわが生じるという問題がしばしば生じた。この問題は、比較的低硬度、例えば、JIS A硬度が20以下であるようなシリコーンゴムを形成するシリコーンゴム組成物において特に顕著であった。」との記載があり、これが本件発明が解決すべき課題を述べたものであったとしても、それによって(即ちJIS A硬度20以下にすることによって)課題が解決したということまで記載している訳ではない。
また、本件特許明細書の【0017】には「(D)成分の配合量は、(A)成分と(C)成分中のアルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10の範囲内となる量であり、特に、0.3〜5の範囲内となる量であることが好ましい。これは、(A)成分と(C)成分中のアルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1未満である組成物は十分に硬化しないためであり、また、これが10をこえる組成物は、得られるシリコーンゴムに気泡が生じたり、また、硬度が著しく大きくなって、比較的低硬度、すなわち、JIS A硬度が20以下であるシリコーンゴムが要求されるフッ素樹脂被覆定着ロールにはしばしば好ましくないからである。」との記載があるが、これは、JIS A硬度が20以下であるシリコーンゴムが要求されるフッ素樹脂被覆定着ロールには好ましくないというに止まり、本件発明がJIS A硬度が20以下であるということには直ちにはならない。
さらにまた、本件特許明細書の【0029】には「【実施例】本発明のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物およびフッ素樹脂被覆定着ロールを実施例により詳細に説明する。なお、実施例中の粘度は25℃において測定した値である。また、シリコーンゴムの評価は次のようにして行った。
[シリコーンゴムの硬度]
シリコーンゴム組成物を120℃の加熱プレス機により30分間で硬化させた。得られたシリコーンゴムを、さらに200℃のオーブン中で4時間熱処理した。このようにして得られたシリコーンゴムの硬度をJIS K 6301に規定のJIS A硬度計により測定した。
[シリコーンゴムの圧縮永久ひずみ率]
シリコーンゴム組成物を120℃の加熱プレス機により30分間で硬化させた。得られたシリコーンゴムを、さらに200℃のオーブン中で4時間熱処理した。このようにして得られたシリコーンゴムの圧縮永久ひずみ率をJIS K 6301に規定の圧縮永久ひずみ試験方法に従って測定した。なお、圧縮試験時の熱処理温度は180℃であり、加熱処理時間は22時間とした。
[シリコーンゴムの接着性]
…………
「シリコーンゴムの体積抵抗率]上記の方法により作成したシリコーンゴム…………」と記載され、シリコーンゴムの硬度を測定する方法については記載されているが、JIS A6301に規定するJIS A硬度が20以下であることについては何も記載されていない。
また、「JIS K6301に規定されるJIS A硬度が20以下である」ことが本件特許明細書の記載から自明な事項ということもできない。
以上のとおりであるから、訂正事項aは願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正ではない。

2.訂正事項bについて
訂正事項bは、本件発明の目的について記載した【0006】において、「本発明の目的は………JIS A6301に規定するJIS A硬度が20以下である………シリコーンゴムを提供することであり、………」と追記するものであるが、本件発明のシリコーンゴムがJIS A6301に規定するJIS A硬度が20以下であることについては本件明細書に何も記載されていないことは、訂正事項aでも述べたとおりであるから、訂正事項bは願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正ではない。
特許権者は特許請求の範囲についての訂正である訂正事項aが許容されることを前提に、特許請求の範囲と整合するように発明の詳細な説明を訂正することは明瞭でない記載を釈明するものであると主張するが、その前提が成り立たない以上、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものであると認めることもできない。

3.訂正事項cについて
訂正事項cは特許請求の範囲の請求項1の記載に対応する発明の詳細な説明の記載である【課題を解決するための手段】を訂正後の請求項1と整合するように請求項1と同様な訂正をするものであるから、訂正事項cは訂正事項aと同様に願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正ではない。
特許権者は特許請求の範囲についての訂正である訂正事項aが許容されることを前提に、特許請求の範囲と整合するように発明の詳細な説明を訂正することは明瞭でない記載を釈明するものであると主張するが、その前提が成り立たない以上、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものであると認めることもできない。

4.訂正事項dについて
訂正事項dは特許請求の範囲の請求項1の記載に対応する発明の詳細な説明の記載である段落【0017】を訂正後の請求項1と整合するように請求項1と同様な訂正をするものであるから、訂正事項dは訂正事項aと同様に願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてした訂正ではない。
特許権者は特許請求の範囲についての訂正である訂正事項aが許容されることを前提に、特許請求の範囲と整合するように発明の詳細な説明を訂正することは明瞭でない記載を釈明するものであると主張するが、その前提が成り立たない以上、明瞭でない記載を釈明することを目的とするものであると認めることもできない。

5.まとめ
以上のとおりであるから、訂正事項a〜dは特許法第120条の4第3項において準用する特許法第126条第2項の規定に適合しない。
よって、当該訂正は認められない。

[3].本件発明
本件発明は、特許明細書に記載された事項からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された、次のような事項によって特定されるものである。

【請求項1】ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、少なくとも以下の(A)〜(E)からなり、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものであることを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)無機質充填剤 5〜500重量部、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する環状ジオルガノポリシロキサン 0.005〜5重量部、
(D)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン {(A)成分および(C)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10となる量}、および
(E)白金系触媒 触媒量

【請求項2】(A)成分が、分子鎖側鎖に平均0.5個以上のケイ素原子結合アルケニル基を含有し、かつ、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。

【請求項3】(C)成分が、一般式:【化1】

(式中、R1 はアルケニル基を除く、同一もしくは相異なる一価炭化水素基であり、R2 はアルケニル基であり、mは2〜20の整数であり、nは0〜18の整数であり、かつ、m+nは3〜20の整数である。)で表される、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する環状ジオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。

【請求項4】 (D)成分が、一般式:【化2】

(式中、R1 はアルケニル基を除く、同一もしくは相異なる一価炭化水素基であり、R3 はアルケニル基を除く、同一もしくは相異なる一価炭化水素基または水素原子であり、pは0以上の整数であり、qは0以上の整数であり、但し、qが0のときは、R3 はともに水素原子である。)で表され、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサンであることを特徴とする、請求項1記載のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。

【請求項5】ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおいて、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で請求項1記載のシリコーンゴム組成物を70〜140℃で硬化させたものであることを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール。」

[4].異議申立理由の概要

特許異議申立人の主張する申立理由はおおよそ次のようなものである。

1.特許異議申立人:ジーイー東芝シリコーン株式会社の申立理由

同人は甲第1〜3号証を提出し、本件請求項1〜5に係る発明は同人の提出した甲第1〜3号証の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得たものであるから、本件請求項1〜5に係る発明は特許法第29条第2項により特許を受けることができないものである、と主張する。

2.特許異議申立人:信越化学工業株式会社の申立理由

同人は甲第1〜15号証を提出し、本件請求項1〜5に係る発明は同人の提出した甲第1号証の刊行物に記載された発明であるか、または、同人の提出した甲第1号証、甲第2号証、甲第3号証あるいは甲第4号証の各刊行物を基に、甲第1〜15号証の刊行物を参酌すれば当業者が容易に発明し得るものであるから、本件請求項1〜5に係る発明は特許法第29条第1項第3号あるいは同条第2項により特許を受けることができないものである、と主張する。

[5].当審が通知した取消理由の概要

平成16年6月9日付け取消理由通知の内容は次のようなものである。
〈1〉.引用刊行物

刊行物1:特開平7-207163号公報(ジーイー東芝シリコーン株式会 社の特許異議申立ての甲第1号証)
刊行物2:特開平8-48885号公報(ジーイー東芝シリコーン株式会社 の特許異議申立ての甲第2号証)
刊行物3:特開平4-359059号公報(ジーイー東芝シリコーン株式会 社の特許異議申立ての甲第3号証、信越化学工業株式会社の特許異議申立 ての甲第2号証)
刊行物4:特開平6-316690号公報(信越化学工業株式会社の特許異 議申立ての甲第1号証)
刊行物5:特開平5-297747号公報(信越化学工業株式会社の特許異 議申立ての甲第3号証)
刊行物6:特開平4-164741号公報(信越化学工業株式会社の特許異 議申立ての甲第4号証)
刊行物7:特開平6-167900号公報(信越化学工業株式会社の特許異 議申立ての甲第5号証)
刊行物8:特開平6-95545号公報(信越化学工業株式会社の特許異議 申立ての甲第6号証)
刊行物9:特公昭61-36868号公報(信越化学工業株式会社の特許異 議申立ての甲第7号証)
刊行物10:特開昭60-217262号公報(信越化学工業株式会社の特 許異議申立ての甲第8号証)
刊行物11:特開昭62-27460号公報(信越化学工業株式会社の特許 異議申立ての甲第9号証)
刊行物12:特開平4-311766号公報(信越化学工業株式会社の特許 異議申立ての甲第10号証)
刊行物13:特開昭54-48853号公報(信越化学工業株式会社の特許 異議申立ての甲第11号証)
刊行物14:米国特許第4472563号明細書(信越化学工業株式会社の 特許異議申立ての甲第12号証)
刊行物15:米国特許第3923705号明細書(信越化学工業株式会社の 特許異議申立ての甲第13号証)
刊行物16:米国特許第4340709号明細書(信越化学工業株式会社の 特許異議申立ての甲第14号証)
刊行物17:特公昭46-29731号公報(信越化学工業株式会社の特許 異議申立ての甲第15号証)

〈2〉.取消理由の概要

(請求項1〜5について)
(1)本件請求項1〜5に係る発明は刊行物1に記載された発明であり、本件請求項1〜5に係る発明の特許は特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものである。

(2)本件請求項1〜5に係る発明は、刊行物1〜3に記載された発明に基づき当業者が容易に想到し得るものである。
したがって、本件請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。

(3)本件請求項1〜5係る発明は、刊行物4に記載された発明または刊行物4の記載から当業者が容易に発明しえたものであり、あるいは、刊行物3,5,6の各発明または刊行物3〜17に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明しえたものである。
したがって、本件請求項1〜5に係る発明の特許は、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定に違反してなされたものである。

〈3〉.引用刊行物の記載

1.刊行物1:特開平7-207163号公報(異議申立人;ジーイー東芝シリコーン株式会社の提出した甲第1号証)
(1-1)「【請求項1】(A)分子鎖側鎖に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基を有し、かつ一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)分子鎖末端に2個以下のケイ素原子結合アルケニル基を有し、その平均値が0.5〜1.5個であり、かつ分子鎖側鎖にケイ素原子結合アルケニル基を有しないジオルガノポリシロキサン 10〜1000重量部、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン {(C)成分の配合量は、(A)成分中と(B)成分中の合計のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(C)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜20モルとなる量である。}および
(D)触媒量の白金系触媒からなる組成物であり、該組成物を硬化して得られるシリコーンゴムのJISK 6301に規定されるJIS A硬度が10以下であり、かつ圧縮永久歪率が15%以下であることを特徴とする、ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を有し、該シリコーンゴム層の外周面にフッ素樹脂層を有するフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。」(特許請求の範囲)
(1-2)「【0011】このような(A)成分のジオルガノポリシロキサンとして具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,………分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体,………が例示される。」(公報第3欄20〜41行)
(1-3)「【0016】(C)成分のオルガノポリシロキサンは、本組成物を硬化させるための架橋剤として作用し、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有することが必要であり、好ましくは一分子中にケイ素原子結合水素原子が2〜6個の範囲内である。………【0017】このような(C)成分のオルガノポリシロキサンとして具体的には、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン,………分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシキ封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン………が例示される。」(公報第5欄14行〜6欄11行)
(1-4)「【0021】本発明のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物は、上記(A)成分〜(D)成分を均一に配合することにより得られるが、得られた該組成物の貯蔵安定性を向上させ、取扱作業性を向上させるための任意の成分として、………等のアセチレン系化合物;………等のエンイン化合物;1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロトトラシロキサン、ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類,フォスフィン類,メルカプタン類,ヒドラジン類等の硬化抑制剤を配合することができる。これらの硬化抑制剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲内であることが好ましい。」(公報第6欄45行〜第7欄11行)
(1-5)「【0022】また、本発明のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物には、硬化して得られるシリコーンゴムの機械的強度を向上するための任意の成分として無機質充填剤を配合することができる。本組成物に配合することができる無機質充填剤としては、例えば、沈澱シリカ微粉末,ヒュームドシリカ微粉末,焼成シリカ微粉末,ヒュームド酸化チタン微粉末,粉砕石英微粉末,ケイ藻土微粉末,アルミノケイ酸微粉末,酸化鉄微粉末,酸化亜鉛微粉末,炭酸カルシウム微粉末,カーボンブラックが例示され、さらにこれらの無機質充填剤をオルガノアルコキシシラン,オルガノクロロシラン,オルガノジシラザン等の有機ケイ素化合物により表面処理した無機質充填剤が挙げられる。これらの無機質充填剤の配合量は、(A)成分100重量部に対して50重量部以下であることが好ましい。」(公報第7欄12〜26行)
(1-6)「【0024】本発明のフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物は、従来の定着ロールを製造するために用いられる周知の装置および方法において成形することができる。例えば、ロール形成用金型の内部に鉄製またはアルミニウム製等の金属製ロール軸を載置して、さらにこのロール成形用金型の内壁に、好ましくは厚さ0.1mm以下であり、さらに好ましくは0.1〜50μmのテトラフルオロエチレン樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーエテル共重合体およびテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素樹脂製チューブを載置し、次いで、この金型内部の金属製ロール軸とフッ素樹脂製チューブの間にフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物を注入した後、該組成物を硬化させることによりフッ素樹脂被覆定着ロールを成形することができる。………この際、上記シリコーンゴム組成物の硬化温度は低すぎると、該組成物の硬化速度が遅くなり、生産性が低下し、また硬化温度が高すぎると、金型から取り出した後のシリコーンゴムの硬化収縮が大きくなり、フッ素樹脂にしわが生じやすくなるので、その硬化温度としては50〜220℃の範囲内であることが好ましく、さらに100〜170℃の範囲内であることが好ましい。」(公報第7欄46行〜第8欄26行)
(1-7)「【0029】直径10mmの円筒状鉄製ロール芯金の周面に市販プライマー(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製;商品名DY39-051A/Bプライマー)を均一に塗布後、プライマー層を十分乾燥させた。また、膜厚50μmで、内面がアルカリ処理されたテトラフルオロエチレン樹脂チューブの内面に市販プライマー(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製;商品名DY39-067プライマー)を均一に塗布後、プライマー層を十分乾燥させた。次いで、ロール成形用金型内部に上記ロール芯金および該金型内壁に上記テトラフルオロエチレン樹脂チューブを載置し、このキャビティー内部に上記シリコーンゴム組成物を注入後、120℃で30分間加熱した。その後、テトラフルオロエチレン樹脂被覆した肉厚10mmの定着ロールを取り出し、これを200℃の熱風循環式オーブン中で4時間加熱した。その後、これを冷却した。このテトラフルオロエチレン樹脂被覆定着ロールの硬度は19であった。」(公報第11欄3〜19行)
(1-8)「【0018】本組成物において、(C)成分の配合量は、(A)成分中と(B)成分中の合計のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(C)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜20モルの範囲内となる量であることが必要であり、好ましくは0.8〜3モルの範囲内となる量である。これは、(C)成分の配合量が、(A)成分中と(B)成分中の合計のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(C)成分のケイ素原子結合水素原子が0.5モル未満となる量では、得られた組成物が十分に硬化しなくなり、良好な定着ロールを形成することができなくなるためであり、またこれが20モルをこえる量では、得られた組成物が硬化途上で発泡しやすく、硬化して得られるシリコーンゴムの機械的強度が小さく、また耐熱性が著しく低下するようになるからである。」(公報第6欄12行〜25行)

2.刊行物3:特開平4-359059号公報(異議申立人;ジーイー東芝シリコーン株式会社の提出した甲第3号証、同;信越化学工業株式会社の提出した甲第2号証)
(2-1)「【請求項1】(A)アルケニル基を一分子中に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)珪素原子に直結した水素原子を一分子中に少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金又は白金族化合物、
(D)無機充填剤を組成物全体に対して10容積%以上、及び
(E)トリアゾール系化合物
を含有する組成物からなることを特徴とする下巻き用ロール材料。
【請求項2】芯材上に請求項1記載のロール材料からなる下巻きロール層を形成し、該下巻きロール層表面にフッ素ゴム又はフッ素樹脂からなる表面被膜層を形成したことを特徴とする定着ロール。」(特許請求の範囲)
(2-2)「【0005】従来、このようなシリコーンゴムロールの欠点を解決するため、低硬度のシリコーンゴムやシリコーンゴム発泡体によって形成したロールの表面にフッ素ゴムラテックス又はパーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)等のフッ素樹脂からなる可撓性の被膜を形成することが行われている。」(公報第1欄下から7〜2行)
(2-3)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記被膜を形成することにより、定着ロールの寿命を向上させることができるものの、以下の問題点を生じることとなる。
【0007】即ち、フッ素系の被膜は、シリコーンゴムほどの可撓性がなく、コピー紙等の通紙により歪が生じ易く、更に定着ロールは、定着時に200℃を超える高温になることもあるため、シリコーンゴムとフッ素系被膜層との接着界面に剥離が生じる場合もある。このため、被膜層に部分的に皺が生じやすく、ひどい場合には通紙不能になる場合もあり、従ってこの点の改善が求められる。
………
【0009】本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、表面にフッ素系被膜を密着性よく形成することができ、200℃以上に高温化において皺の発生や被膜の剥離といった不都合を生じることもなく、かつ優れた難燃性を有し、しかも十分な低硬度化が達成された高性能な高速処理用定着ロールを形成することができる下巻き用ロール材料及び該ロール材料を用いた高性能な定着ロールを提供することを目的とする。」(公報第2欄1〜26行)
(2-4)「【0010】【課題を解決しようとするための手段及び作用】本発明者は、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、
(A)アルケニル基を一分子中に少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)珪素原子に直結した水素原子を一分子中に少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを好ましくは(A)成分のアルケニル基1モルに対して水素原子に直結した水素原子が0.5〜5モルとなる量、
(C)白金又は白金族化合物を触媒量、
(D)無機充填剤を組成物全体に対して10容積%以上、好ましくは10〜50容積%、及び
(E)トリアゾール系化合物を好ましくは(A)成分100重量部に対して0.005〜1重量部
含有する組成物を用いて定着ロールの下巻きロール層を形成することにより、低硬度で、かつ表面にフッ素系被膜を形成した場合、該被膜との間に良好な密着性を有し、しかも良好な難燃性を有する定着ロールを得ることができることを見出し、本発明を完成したものである。」(公報第2欄27〜46行)
(2-5)「【0015】(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとして具体的には、下記の化合物を例示することができる。………
【0016】………


…………」(公報第3欄44〜第4欄18行)
(2-6)「【0017】次に、(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、…………………。この(B)成分は上記(A)成分と反応し、架橋剤として作用するもので、その配合割合は、その珪素原子に直結した水素原子が上記(A)成分のアルケニル基1モルに対して0.5〜5モル、特に0.8〜2モルとすることが好ましい。この配合量が水素原子/アルケニル基モル比で0.5未満であると、架橋密度が低くなり、硬化した後のシリコーンゴムの耐熱性が低下し、ロール材料として不適となる場合があり、一方5を超えると、脱水素反応による発泡の問題を生じたり、やはり耐熱性の問題を生じるおそれが生じる。」(公報第4欄19〜36行)
(2-7)「【0023】本発明の下巻き用ロール材料は、上記(A)〜(E)成分を混合することにより得られるが、このロール材料には、必要に応じて上記は配合成分以外に種々の添加剤を添加することができる。例えば、着色剤、耐熱性向上剤(酸化セシウム、水酸化セシウム、カーボン、酸化チタン、ベンガラなど)、付加反応制御剤としてビニルシクロテトラシロキサンのようなビニル基含有オルガノポリシロキサン、トリアリルイソシアネート、アルキルマレエート、アセチレンアルコール類及びそのシラン、シロキサン変性物、ハイドロパーオキサイド、テトラメチルエチレンジアミン、ベンゾトリアゾールなどを添加することができる。」(公報第6欄16〜27行)
(2-8)「【0027】〔実施例、比較例〕表1に示した各部分をダルトン社製万能撹拌機で均一に撹拌混合して組成物A及び組成物Bを得た。この組成物AとBとを等量均一に混合し、6種類の下巻き用ロール材料を得た。なお、表1の各成分は、以下に示す通りであり、その配合量はすべて重量部である。
ポリシロキサンI
常温での粘度が2,000cpであり、環状低分子シロキサン(n=3〜20)の含有量が780ppmであるビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルポリシロキサン
………
ハイドロジェンポリシロキサン
下記構造式で示されるハイドロジェンポリシロキサン
【0028】


【0029】次に、射出成形機の金型内にプライマー処理を施したアルミニウム製芯金と表面をナトリウム蒸気で処理し、更にその上にプライマー処理を施したPFAチューブとをセットし、上記各ロール材料を該芯金とPFAチューブとの間に射出注入して150℃/30分加熱硬化した後、脱型し、200℃/4時間の後硬化を行って6種類の定着ロールを作成した。」
(公報第7欄20行〜第8欄29行)
(2-9)【0031】【表1】には、実施例1にAとして、ポリシロキサンI:100重量部、石英粉:75重量部、ベンガラ:2重量部、白金族触媒:0.8重量部、煙霧質シリカ:2重量部を含む組成物が、同Bとして、ポリシロキサンI:100重量部、ハイドロジェンポリシロキサン:2重量部、石英粉:75重量部、ベンガラ:2重量部、煙霧質シリカ:2重量部を含む組成物が記載されている。(公報第6頁の表1)

3.刊行物9:特公昭61-36868号公報(異議申立人;信越化学工業株式会社の提出した甲第7号証)

(3-1)「ビニルジオルガノシロキシ基で末端ブロツクされているポリジオルガノシロキサン、ポリオルガノハイドロジエンシロキサン及び白金触媒の混合物は室温における混合で直ちに硬化し始め、従つてその組成物を使用前に貯蔵すべき場合には、室温における触媒の作用を白金触媒抑制剤で抑制する必要がある。」(公報第15欄30〜36行)
(3-2)「使用に適した白金触媒抑制剤の第三のタイプは式



(式中、R”はメチル、エチル、フエニル又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、そしてWは3〜6の平均値を有する)のビニルオルガノシクロシロキサンである。このビニルオルガノシクロシロキサン、特にR”がメチル基であり、そしてWが3,4又は5のビニルオルガノシクロシロキサンはオルガノシリコンの分野では周知である。
本実施態様の組成物において用いられるべき白金触媒抑制剤の量は単に所望とする保存寿命を得るのに必要な量であつて、………。白金1モル毎に1モル程度の量で加えられる抑制剤が触媒の抑制作用を奏し、満足すでき保存寿命に与える場合も若干あるが、それ以外の場合においては、かなり多量の抑制剤、例えば白金の1モル毎に10モル、50モル、100モル、500モル及びそれ以上のモル数の抑制剤が、所望とする保存寿命と硬化時間の組合せを達成するのに必要である。」(公報第16欄26行〜17欄11行)

[6].対比・判断

〈1〉.特許法第29条第2項について(取消理由(2))

I.理由1

1.本件請求項1に係る発明について

まず、刊行物1記載の発明と本件請求項1(以下単に「本件発明1」と略すことあり、本件請求項2以降も同様)に係る発明を対比することになるが、刊行物1記載の発明もまた、その特許請求の範囲の【請求項1】にも記載(摘示記載1-1)されているように、定着ロール用のシリコーンゴム組成物に係るものであるから、同様に定着ロール用シリコーンゴム組成物に係る本件発明1とは発明の対象を同じくするものであるといえる。
本件発明1は、少なくとも(A)〜(E)の成分からなる組成を有するシリコーンゴム組成物に係るものであるところ、(A)〜(E)で各成分及び配合量を規定する他に、用途(定着ロール用)及び硬化成形条件についても規定しているので、これ等の各項目ごとに分節して以下にその異同を検討する。

(1).(A)の主たるポリシロキサン成分について

刊行物1の(A)成分はその特許請求の範囲の【請求項1】に記載されているように「分子鎖側鎖に少なくとも1個のケイ素原子結合アルケニル基を有し、かつ一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合アルケニル基を有するジオルガノポリシロキサン」(摘示記載1-1)であるから、本件発明1の(A)成分の「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン」の要件を満足するものであり、ただ、刊行物1の特許請求の範囲の【請求項1】の(A)にはそれが本件発明1の(A)で規定する「直鎖状」であるか否かについては明記されていないが、刊行物1の発明の詳細な説明の【0011】には該(A)成分のジオルガノポリシロキサンの具体的な例示化合物として「分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体」(摘示記載1-2)が示されており、これは主鎖がジメチルシロキサンとメチルビニルシロキサン単位からなるものであり、シロキサン単位の側鎖を含まないものであるから実質的に直鎖状であるといえるものである。
してみれば、刊行物1の(A)成分と本件発明1の(A)成分は同一のものである。
また、配合量は組成物の主たる基本的な成分で配合割合の基準となる100重量部である点で本件発明1のそれ(100重量部)と一致している。

(2).(B)無機質充填剤成分について

刊行物1には、刊行物1記載の発明は無機質充填剤を(A)成分〔これは1.で述べたように本件発明1の(A)成分と同じものである。〕100重量部に対して50重量部以下で使用することが好ましいことが記載(摘示記載1-5)されているのであるから、本件発明の無機充填剤を(A)成分100重量部に対して5〜500重量部配合する本件発明1とは、配合成分が一致し、また、その配合量5〜50重量部において重複一致している。

(3).(C)アルケニル基含有環状シロキサン成分について

刊行物1には、刊行物1記載の発明は組成物の貯蔵安定性を向上させ、取扱作業性を向上させるための任意の成分として1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等の硬化抑制剤を配合することができることが記載(摘示記載1-4)され、該1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサンはいうまでもなく一分子中に4個のアルケニル基(ビニル基)を有する環状(シクロ)ジオルガノポリシロキサンであるから、これは本件発明の(C)成分の「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する環状ジオルガノポリシロキサン」に該当するものである。
そして、配合量についても、刊行物1には、該1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン等の硬化抑制剤の配合量は(A)成分100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲内であることが好ましいと記載(摘示記載1-4)されているのであり、これは正しく本件発明の(C)成分の配合量即ち(A)成分100重量部に対し0.005〜5重量部と一致している。

(4).(D)ケイ素結合水素含有オルガノポリシロキサン成分について

刊行物1の(C)成分はその特許請求の範囲の【請求項1】に記載されているように「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン」(摘示記載1-1)であるから、本件発明1の(D)成分の「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン」と同じものである。
ただ、その配合割合については、刊行物1記載の発明は「{(C)成分の配合量は、(A)成分中と(B)成分中の合計のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(C)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜20モルとなる量である。}」と規定している〔なお、ここにおいて、(B)成分は「分子鎖末端に2個以下のケイ素原子結合アルケニル基を有し、その平均値が0.5〜1.5個であり、かつ分子鎖側鎖にケイ素原子結合アルケニル基を有しないジオルガノポリシロキサン」である。〕のに対し、本件発明では「{(A)成分および(C)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10となる量}」と規定している点で、一応相違する。

(5).(E)白金系触媒について

刊行物1の(D)成分はその特許請求の範囲の【請求項1】に記載されているように「触媒量の白金系触媒」(摘示記載1-1)であるから、本件発明1の(E)成分の「白金系触媒 触媒量」と成分及び配合量で一致するものである。

(6).シリコーンゴム組成物の用途について

刊行物1記載のシリコーンゴム組成物は、特許請求の範囲の【請求項1】に「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を有し、該シリコーンゴム層の外周面にフッ素樹脂層を有する定着用ロール用」(摘示記載1-1)のものであるから、本件発明1の「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって」と実質的には同じものである。

(7).成形、硬化条件について

刊行物1には、硬化温度としては50〜220℃の範囲内であることが好ましく、さらに100〜170℃の範囲内であることが好ましい(摘示記載1-6)と記載されている。また、実施例1には、刊行物1記載の発明のシリコーンゴム組成物を用いて定着ロールを成形したことが記載され、その成形、架橋については「次いで、ロール成形用金型内部に上記ロール芯金および該金型内壁に上記テトラフルオロエチレン樹脂チューブを載置し、このキャビティー内部に上記シリコーンゴム組成物を注入後、120℃で30分間加熱した。」と記載されている(摘示記載1-7)が、「このキャビティー」とはロール芯金(即ち軸)とテトラフルオロエチレン樹脂(即ちフッ素樹脂)チューブの間のキャビティ(空間部分)に他ならないから、そこへシリコーンゴム組成物を注入後、120℃で30分間加熱したことは、シリコーンゴム組成物が「ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化する」(本件発明1)ことに他ならない。

(8).一致点・相違点

上記のとおりであるから、本件発明1と刊行物1に記載された発明との一致点・相違点は以下のとおりである。

【一致点】
「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、少なくとも以下の(A)〜(E)からなり、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものであることを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)無機質充填剤 5〜50重量部、
(C)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する環状ジオルガノポリシロキサン 0.005〜5重量部、
(D)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン、および
(E)白金系触媒 触媒量 」

【相違点】
本件発明1では(D)成分の配合割合が{(A)成分および(C)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10となる量}であるのに対し、刊行物1記載の発明は「{(C)成分の配合量は、(A)成分中と(B)成分中の合計のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して(C)成分中のケイ素原子結合水素原子が0.5〜20モルとなる量である。}」と規定している点。
〔なお、ここにおいて、(B)成分は「分子鎖末端に2個以下のケイ素原子結合アルケニル基を有し、その平均値が0.5〜1.5個であり、かつ分子鎖側鎖にケイ素原子結合アルケニル基を有しないジオルガノポリシロキサン」である。〕

(9).相違点に対する判断
刊行物1の(C)も本件発明1の(D)も共にケイ素原子結合水素原子を含有するポリシロキサンであり、共に架橋剤(硬化剤)として働くものであり(摘示記載1-3、本件明細書【0015】)、刊行物1では(A)と(B)の総ケイ素原子結合アルケニル基量に対して(C)成分のケイ素原子結合水素原子量を規定しているのに対し、本件発明1では(A)と(C)の総ケイ素原子結合アルケニル基量に対して(D)のケイ素結合水素原子量を規定しているのであるから、両者はケイ素原子結合アルケニル基量に対してケイ素原子結合水素原子量を規定している点では同一である。そして、その配合割合は、ケイ素原子結合アルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子量が、刊行物1ではモル比で0.5〜20、本件発明1では0.1〜10であるから、両者はその配合割合においても重複している。
ただ、刊行物1に記載された発明においては、本件発明1の(C)成分に相当する「1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン」に対する(C)成分の配合割合は明記されてはいない。
しかしながら、上記の(C)成分の架橋剤(硬化剤)としての作用からみて、ケイ素結合アルケニル基を有する点で(A)、(B)成分と共通する「1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン」に対しても、(C)成分が架橋剤(硬化剤)として働くことが予測される。
そうすると、(A)、(B)成分に対して特定の割合で配合された(C)成分が「1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン」に対しても架橋剤(硬化剤)として作用することになり、(A)と(B)の総ケイ素原子結合アルケニル基量に対して(C)成分を特定の割合で配合することを規定した技術的意義が損なわれることが予測される。
したがって、刊行物1において(C)成分の配合割合を総ケイ素結合アルケニル基量、すなわち、{((A)+(B)+「1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン」}の総ケイ素結合アルケニル基量に対する割合で規定することは当業者が適宜行う事項である。
そして、その際に、刊行物1に記載された0.5〜20モルの範囲を中心にして、架橋(硬化)速度や目的物である架橋物(硬化物)の硬度、発泡、機械的強度等(摘示記載1-8)を考慮して適宜設定し得るものであるから、刊行物1に記載された0.5〜20モルの範囲を中心に設定することが自然であり本件発明1のモル比0.1〜10と重複する割合となることは明らかである。
そして、刊行物1にはしわの発生防止という効果も記載されており(摘示記載1-6)、本件発明1の効果も格別顕著なものということはできない。

(10).まとめ

以上のとおりであるから、本件発明1は、本出願前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

2.本件発明2について

本件発明2は同1に対して、(A)成分について、(A)成分の「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン」が「分子側鎖に平均0.5個以上のケイ素原子結合アルケニル基を含有する」ことをさらに要件として限定するものであるが、刊行物1の(A)成分の例示化合物の一つである「分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体」(摘示記載1-2)は側鎖にビニル基を少なくとも1つは有するものであるから(両末端に2つのビニル基を有すると共に)、これは本件発明1の「分子側鎖に平均0.5個以上のケイ素原子結合アルケニル基を含有する」ことに他ならず、本件発明2で限定したことは刊行物1に記載された事項である。
してみれば本件発明2も、上記[6].〈1〉.I.1.で示したように、本出願前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

3.本件発明3について

本件発明3は同1に対して、(C)成分について、(イ)(C)成分の環状ジオルガノポリシロキサンの化学構造を一般式で規定すると共に、(ロ)一分子中のケイ素原子結合アルケニル基の数を少なくとも3以上含有するものに限定するものであるが、刊行物1で硬化抑制剤として用いられる「1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン」(摘示記載1-4)は、本件発明3の該一般式においてR1 =メチル、R2 =ビニル、n=0、m=4、である化合物に相当するものであり、ビニル基(即ちアルケニル基)は3個以上存在するから、本件発明3でさらに規定したり限定したことはことごとく刊行物1に記載されたものである。
してみれば本件発明3も、上記[6].〈1〉.I.1.で示したように、本出願前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

4.本件発明4について

本件発明4は同1に対して、(D)成分について、(D)成分のケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンの化学構造を一般式で規定しているが、刊行物1の(C)成分の例示化合物として挙げられた「分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシキ封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン」(摘示記載1-3)は、本件発明4の一般式においてR3 =水素、R1 =メチル、p=0、q=ポリ(即ち2以上の整数)の場合に該当するものであるから、本件発明4でさらに規定したことは刊行物1に記載されたものである。
してみれば本件発明4も、上記[6].〈1〉.I.1.で示したように、本出願前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

5.本件発明5について

本件発明1はその発明の対象がシリコーンゴム組成物であるのに対し、本件発明5はその発明の対象がフッ素樹脂被覆定着ロールである点で表現上は相違する。しかしながら、本件発明5のシリコーンゴム組成物は請求項1記載のシリコーンゴム組成物であるから、本件発明1の(A)〜(E)の成分すべてを必須とするものである点で本件発明1のシリコーンゴム組成物と組成の点で異なるものではなく、また、本件発明5の「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロール」は、本件発明1のシリコーンゴムが用いられる用途である「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロール」と同じであり、さらにまた、本件発明5の「ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で請求項1記載シリコーンゴム組成物を70〜140℃で硬化させたものである」は本件発明1の「………フッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、………ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものである」と同じである。
してみれば本件発明1と本件発明5とは、発明を構成する技術的事項は表現上は異なるが実質的にはすべて同じであるから、結局両者の発明は同じ発明を発明の対象が異なるように表現を代えて2つの発明としたものにすぎない関係にあるといえる。
そうであれば、上記[6].〈1〉.I.1.で示したのと同様な理由により、本件発明5も本出願前に頒布された刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

なお、特許権者は特許異議意見書(平成16年8月17日付け)において、「刊行物1は(B)成分を必須成分としているのに対し、本件発明1〜5はこの(B)成分に該当する成分を含有していないから、本件発明1〜5は刊行物1に記載された発明ではない。」旨の主張をしている。
しかしながら、本件発明1〜5は、その特許請求の範囲に記載されたとおり、「少なくとも(A)〜(E)からなる」ものであるから、それ以外の成分を排除しているものではないから、上記特許権者の主張は失当である。

II.理由2

1.本件発明1について

まず、刊行物3記載の発明と本件発明1を対比することになるが、刊行物3記載の発明は、その特許請求の範囲の【請求項1】及び【請求項2】にも記載(摘示記載2-1)されているように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを主成分とする組成物の発明(請求項1)とそれを使用した定着ロールの発明(請求項2)について記載され、該組成物はオルガノハイドロジェンポリシロキサンや白金触媒等の硬化成分を含有するものでいわゆるシリコーンゴム組成物と称せられるべきものであるから、刊行物3には本件発明1と同様に発明の対象を定着ロール用シリコーンゴム組成物とする発明が記載されていたということができる。
本件発明1は、少なくとも(A)〜(E)の成分からなる組成を有するシリコーンゴム組成物に係るものであるところ、(A)〜(E)で各成分及び配合量を規定する他に、用途(定着ロール用)及び硬化成形条件についても規定しているので、以下これ等の各項目ごとに分節して以下にその異同及び容易性を検討する。

(1).(A)の主たるポリシロキサン成分について

刊行物3の(A)成分はその特許請求の範囲の【請求項1】に記載(摘示記載2-1)されているように「アルケニル基を一分子中に少なくとも2個以上有するジオルガノポリシロキサン」であるから、本件発明1の(A)成分の「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン」と同じであり、ただ、刊行物3の特許請求の範囲の【請求項1】の(A)にはそれが本件発明1の(A)で規定する「直鎖状」であるか否かまたアルケニル基がケイ素原子に結合しているのか否かについては明記されていないが、刊行物3の発明の詳細な説明のの実施例(摘示記載2-8)で使用されるポリシロキサンIのビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルポリシロキサンは(A)成分として使用されるものであり、これは主鎖がジメチルシロキサン単位からなるものであり、シロキサン単位の側鎖を含まないものであるから実質的に直鎖状であるといえるものであり、また、ビニル基(アルケニル基)はケイ素原子に結合していることは明白である。
してみれば、刊行物3の(A)成分と本件発明1の(A)成分は同一のものである。
また、刊行物3の(A)成分の配合量は【表1】(摘示記載2-9)では組成物の主たる基本的な成分で配合割合の基準となる100重量部であり(触媒系の組成物A100重量部と架橋剤系の組成物B100重量部、計200重量部で表示されているが、これを100重量部を基準として換算する。)、この点で本件発明1のそれ(100重量部)と一致している。

(2).(B)無機質充填剤成分について

刊行物3には、その特許請求の範囲の【請求項1】に(D)無機充填剤を組成物全体に対して10容量%以上使用することが記載(摘示記載2-1)されており、無機充填剤を配合する点では本件発明と一致している。
ただ、刊行物3記載の発明は、無機充填剤の配合量の規定の仕方が全体に対する容量%で規定されているのに対し、本件発明1は基準となるポリマー100重量部に対する重量部で規定されている点で相違するが、刊行物3の発明の実施の態様である実施例1(【表1】摘示記載2-9)では(A)成分のポリシロキサンI(ビニルジメチルシロキシ末端封鎖ジメチルポリシロキサン)100重量部に対して石英粉75重量部及び煙霧質シリカ2重量部計77部を配合した例が記載されているのであるから、無機充填剤を(A)成分100重量部に対して5〜500重量部配合する本件発明1とは、その配合量において一致するものが刊行物3に記載されているといえる。

(3).(C)アルケニル基含有環状シロキサン成分について

刊行物3には、その発明の詳細な説明に(A)〜(E)成分の他に必要に応じ付加反応制御剤としてビニルシクロテトラシロキサンのようなビニル基含有オルガノポリシロキサンを添加できることが記載され、ケイ素原子結合アルケニル基を含有する環状オルガノポリシロキサンを添加、配合することは記載(摘示記載2-7)されているが、該環状オルガノポリシロキサンはケイ素原子結合アルケニル基が少なくとも2個含有するものであるかとかその添加、配合量について記載がない。

(4).(D)ケイ素結合水素含有オルガノポリシロキサン成分について

刊行物3の(B)成分はその特許請求の範囲の【請求項1】に記載(摘示記載2-1)されているように「珪素原子に直結した水素原子を一分子中に少なくとも2個有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン」であるから、本件発明1の(D)成分の「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン」の同じものである。
ただ、その配合割合については、刊行物3の【課題を解決するための手段】には「(A)成分のアルケニル基1モルに対し水素原子(注;珪素原子の誤りと考えられる。)に直結した水素原子が0.5〜5モルとなる量」と記載(摘示記載2-4)しているのに対し、本件発明では「{(A)成分および(C)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10となる量}」と規定している点で、一応相違する。

(5).(E)白金系触媒について

刊行物3の(C)成分は、その発明の詳細な説明の【課題を解決するための手段及び作用】に「(C)白金又は白金化合物を触媒量」と記載(摘示記載2-4)されているであるから、本件発明1の(E)成分の「白金系触媒 触媒量」と成分及び配合量で一致するものである。

(6).シリコーンゴム組成物の用途について

刊行物3の特許請求の範囲の【請求項1】には「(A)………(E)………を含有する組成物からなることを特徴とする下巻き用ロール材料。」(これがいわゆるシリコーンゴム組成物であることはすでに1.の冒頭で述べた)と記載され、この下巻き用ロール材料については同【請求項2】には「芯材上に請求項1記載のロール材料からなる下巻きロール層を形成し、該下巻きロール層表面にフッ素ゴム又はフッ素樹脂からなる表面被膜層を形成したことを特徴とする定着ロール。」と記載され、芯材上に該シリコーンゴム組成物の下巻き用材料からなる層を形成し、その表面にフッ素樹脂被膜を設けた定着ロールの下巻き用に用いられるのであるから、本件発明1の「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって」と実質的には同じものである。

(7).成形、硬化条件について
刊行物3の実施例1には、刊行物3記載の発明のシリコーンゴム組成物を用いて定着ロールを成形したことが記載(摘示記載2-8)され、その成形、架橋については「次に、射出成形機の金型内にプライマー処理を施したアルミニウム製芯金と表面をナトリウム蒸気で処理し、更にその上にプライマー処理を施したPFAチューブとをセットし、上記各ロール材料を該芯金とPFAチューブとの間に射出注入して150℃/30分加熱硬化した後、脱型し、200℃/4時間の後硬化を行って6種類の定着ロールを作成した。」と記載されているが、ここで「ロール材料」とはシリコーンゴム組成物のことであり、「PFA」とはパーフルオロアルキルビニルエーテル(即ち、フッ素樹脂)のことであるから(摘示記載2-2)、刊行物3には、シリコーンゴム組成物が「ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で硬化する」ことが記載され、この点では本件発明1と一致している。
ただ、その硬化温度条件については刊行物3の実施例では150℃であり、本件発明1の「70〜140℃」である点で相違している。

(8).目的、効果について

本件発明は、フッ素樹脂層にしわを生ぜず、また、ロール軸及びフッ素樹脂とシリコーンゴムの接着が良好であることを目的、効果とするものであると認められるが(本件明細書【0005】【発明が解決しようとする課題】【0006】、【0038】【本件発明の効果】)、このようなことはそもそも定着用ロールとして当然備えるべき性質の事柄であり、また、刊行物3にも「本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、表面にフッ素系被膜を密着性よく形成することができ、200℃以上に高温化において皺の発生や被膜の剥離といった不都合を生じることなく、かつ優れた難燃性を有し、しかも十分な低硬度化が達成された高性能な高速処理用定着ロールを形成することができる下巻き用ロール材料及び該ロール材料を用いた高性能な定着ロールを提供することを目的とする。」(摘示記載2-3【0009】)と記載されているように、刊行物3記載の発明も皺の発生や(フッ素系樹脂)皮膜の剥離のない定着ロールを提供することを目的とするものであるから(なお、刊行物1にもフッ素樹脂にしわが生ずることをさける旨の記載が存在する摘示記載1-6)、本件発明の目的、効果は刊行物3に記載ないし示唆されていたことであり、何等格別のものではない。

(9).一致点・相違点

上記のとおりであるから、本件発明1と刊行物3に記載の発明との一致点・相違点は以下のとおりである。

【一致点】
「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、少なくとも以下の(A)〜(E)からなり、ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で硬化させるものであることを特徴とするフッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物。
(A)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有する直鎖状ジオルガノポリシロキサン 100重量部、
(B)無機質充填剤 77重量部、
(C)一分子中にケイ素原子結合アルケニル基を含有する環状ジオルガノポリシロキサン 、
(D)一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を含有するオルガノポリシロキサン、および
(E)白金系触媒 触媒量 」

【相違点1】
本件発明1では、(C)成分は、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有し、かつ(C)成分の配合割合が0.005〜5重量部であるのに対し、刊行物3に記載の発明では、本件発明1の(C)成分に相当する「ビニルシクロテトラシロキサンのようなビニル基含有オルガノポリシロキサン」のケイ素原子結合アルケニル基の数が不明であり、また、その配合割合が記載されていない点。

【相違点2】
本件発明1では(D)成分の配合割合が{(A)成分および(C)成分中のケイ素原子結合アルケニル基の合計量に対する(D)成分中のケイ素原子結合水素原子のモル比が0.1〜10となる量}であるのに対し、刊行物3に記載の発明では「(B)成分の配合量は、(A)成分のアルケニル基1モルに対して水素原子に直結した水素原子が0.5〜5モルとなる量。」と規定している点。

【相違点3】
本件発明1では「ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させる」のに対し、刊行物3に記載の発明では、150℃で加熱硬化している点。

(10).相違点に対する判断

【相違点1】について
刊行物9には、本件発明1や刊行物3記載の発明と共通するビニル基(アルケニル基)含有ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノハイドロジエンシロキサン及び白金触媒の混合物(組成物)について、「ビニルジオルガノシロキシ基で末端ブロックされているポリジオルガノシロキサン、ポリオルガノハイドロジエンシロキサン及び白金触媒の混合物は室温における混合で直ちに硬化し始め、従ってその組成物を使用前に貯蔵すべき場合には、室温における触媒の作用を白金触媒抑制剤で抑制する必要がある。」(摘示記載3-1)と記載され、抑制剤がこの種の組成物で必要な成分であることを示す他、
「使用に適した白金触媒抑制剤の第三のタイプは式



(式中、R”はメチル、エチル、フエニル又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、そしてWは3〜6の平均値を有する)のビニルオルガノシクロシロキサンである。このビニルオルガノシクロシロキサン、特にR”がメチル基であり、そしてWが3,4又は5のビニルオルガノシクロシロキサンはオルガノシリコンの分野では周知である。」(摘示記載3-2)と記載されているように、白金触媒抑制剤として周知のビニルオルガノシクロシロキサンはWが3,4又は5、即ち、ビニル基(アルケニル基)が3,4又は5個有するものであることを示している。してみれば、刊行物3において付加反応制御剤として使用されるビニルシクロテトラシロキサンはビニル基(アルケニル基)を2個以上含有することは当業者が直ちに理解するところである。
また、刊行物9に「白金1モル毎に1モル程度の量で加えられる抑制剤が触媒の抑制作用を奏し、満足すでき保存寿命に与える場合も若干あるが、それ以外の場合においては、かなり多量の抑制剤、例えば白金の1モル毎に10モル、50モル、100モル、500モル及びそれ以上のモル数の抑制剤が、所望とする保存寿命のと硬化時間の組合せを達成するに必要である。」(摘示記載3-2)と記載されているように、白金1モルに1モル程度で抑制作用を示すが、満足すべき保存寿命を与えるためには白金1モルに10〜500モル必要であることが理解されるのである。
一方、刊行物3の実施例では(A)成分のポリシロキサンI 200重量部に対し白金触媒を0.8重量部(但し白金金属量1重量%)配合しており、刊行物9に示されるように白金1モルに10〜500モルの抑制剤が満足すべき保存寿命を与えるために必要だとすると、(A)成分100重量部に対し抑制剤は0.07〜3.44重量部必要であるという計算になる。
〔計算の根拠:白金のモル数=(0.8/2)×0.01/195(分子量)=0.00002、抑制剤の分子量(テトラメチルビニルシクロシロキサンと仮定して)344、抑制剤の量(10〜500モル)=0.00002×344×10〜500=0.07〜3.44重量部〕
してみれば、刊行物3における付加反応制御剤の添加量は、(A)成分100重量部に対して0.07〜3.44重量部となることは計算によって導き出せることであるといえる。これは本件発明1の(C)成分の配合量、(A)成分100重量部に対して0.005〜5重量部と重複するものである。
したがって、本件発明1の(C)成分に関する点は刊行物3に示唆されていたことであり、当業者が容易に導き出せることである。

【相違点2】について
刊行物3の(B)も本件発明1の(D)も共にケイ素原子結合水素原子を含有するポリシロキサンであり、共に架橋剤(硬化剤)として働くものであり(摘示記載2-6、本件明細書【0015】)、刊行物3では(A)のケイ素原子結合アルケニル基量に対して(B)成分のケイ素原子結合水素原子量を規定しているのに対し、本件発明1では(A)と(C)の総ケイ素原子結合アルケニル基量に対して(D)のケイ素結合水素原子量を規定しているのであるから、両者はケイ素原子結合アルケニル基量に対してケイ素原子結合水素原子量を規定している点では同一である。そして、その配合割合は、ケイ素原子結合アルケニル基に対するケイ素原子結合水素原子量が、刊行物3ではモル比で0.5〜5、本件発明1では0.1〜10であるから、両者はその配合割合においても重複している。
刊行物3に記載された発明においては、本件発明1の(C)成分に相当する「ビニル基含有オルガノポリシロキサン」に対する(B)成分の配合割合は明記されてはいないが、上記(B)成分の架橋剤(硬化剤)としての作用からみて、ケイ素原子結合アルケニル基を有する点で(A)成分と共通する「ビニル基含有オルガノポリシロキサン」に対しても(B)成分が架橋剤(硬化剤)として作用することが予測される。
そうすると、(A)成分のケイ素原子結合アルケニル基量に対して特定の割合で配合した(B)成分が「ビニル基含有オルガノポリシロキサン」に対しても架橋剤(硬化剤)として作用することになり、(A)成分に対する配合割合を規定した技術的意義が損なわれることが予測される。
したがって、刊行物1において(B)成分の配合割合を総ケイ素結合アルケニル基量、すなわち、{((A)+「ビニル基含有オルガノポリシロキサン」}の総ケイ素結合アルケニル基量に対する割合で規定することは当業者が適宜行う事項である。
そして、その際に、刊行物3に記載された0.5〜5モルの範囲を中心にして、架橋(硬化)速度や目的物である架橋物(硬化物)の硬度、発泡、耐熱性等(摘示記載2-6)を考慮して適宜設定し得るものであるから、刊行物1に記載された0.5〜20モルの範囲を中心に設定することが自然であり本件発明1のモル比0.1〜10と重複する割合となることは明らかである。

【相違点3】について
刊行物3には、シリコーンゴム組成物の硬化温度についての一般的な記載はなく、たまたま唯一の実施例では150℃なのであるから、150℃の前後の温度、例えば140℃程度でも硬化させることは当業者が当然考えることであり、また、刊行物1には「また硬化温度が高すぎると、金型から取り出した後のシリコーンゴムの硬化収縮が大きくなり、フッ素樹脂にしわが生じやすくなるので、その硬化温度としては50〜220℃の範囲内であることが好ましく、さらに100〜170℃の範囲内であることが好ましい。」(摘示記載1-6)と記載され、しわの発生を防ぐには好ましくは100〜170℃の範囲内とすることが示されているのであり、その実施例では120℃で30分で硬化しているのであるから(摘示記載1-6,1-7)、本件発明1の「70〜140℃」で硬化することは当業者が容易に試みる事項であり、しわの発生防止という効果も予測し得る程度のものである。

(11).まとめ

以上のとおりであるから、本件発明1は刊行物3の記載事項に刊行物1の記載事項および(刊行物9に示されるような)周知の事項を併せればそれらに基づいて当業者が容易に考えつくものであるから、本件発明1は特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

2.本件発明2について

本件発明2は同1に対して、(A)成分について、(A)成分の「一分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合アルケニル基を含有するジオルガノポリシロキサン」が「分子側鎖に平均0.5個以上のケイ素原子結合アルケニル基を含有する」ことをさらに要件として限定するものであるが、刊行物3の(A)成分の例示化合物の一つである「


」(摘示記載2-5【0016】)は側鎖にビニル基を少なくとも1つは有するものであるから(mは正の整数)、これは本件発明1の「分子側鎖に平均0.5個以上のケイ素原子結合アルケニル基を含有する」ことに他ならず、本件発明2で限定したことは刊行物3に記載されたものである。
してみれば本件発明2は、上記[6].〈1〉.II.1.で示したように、刊行物3記載の事項に刊行物1記載の事項および(刊行物9に示されるような)周知の事項を併せればそれらに基づいて当業者が容易に考えつくものであるから、本件発明2は特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

3.本件発明3について

本件発明3は同1に対して、(C)成分について、(イ)(C)成分の環状次オルガノポリシロキサンの化学構造を一般式で規定すると共に、(ロ)一分子中のケイ素原子結合アルケニル基の数を少なくとも3以上含有するものに限定するものであるが、[6].〈1〉.II.1.(10).で述べたように、刊行物3のビニルシクロテトラシロキサンは、白金触媒抑制剤として周知(刊行物9)のビニルオルガノシクロシロキサンのWが3,4又は5、即ち、ビニル基(アルケニル基)が3,4又は5個有するものであることを考慮すれば、本件発明3の一般式においてm=3又は4でm+n=4の化合物(即ち、一分子中に少なくとも3個のケイ素原子結合アルケニル基を有する化合物)は当業者にとって直ちに思い浮かぶところである。よって、この点も当業者が容易に考えつくことであるといえる。
してみれば本件発明3は、上記[6].〈1〉.II.1.で示したように、刊行物3の記載事項に刊行物1の記載事項および(刊行物9に示されるような)周知の事項を併せればそれらに基づいて当業者が容易に考えつくものであるから、本件発明3は特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

4.本件発明4について

本件発明4は同1に対して、(D)成分について、(D)成分のケイ素原子結合水素原子含有オルガノポリシロキサンの化学構造を一般式で規定しているが、刊行物3の(B)成分の化合物(ハイドロジェンポリシロキサン)として実施例で使用されている「


(摘示記載2-8【0028】)は、本件発明4の一般式においてR3 =水素、R1 =メチル、p=6、q=4の場合に該当するものであるから、本件発明4でさらに規定したことは刊行物3に記載されたものである。
してみれば本件発明4は、上記[6].〈1〉.II.1.で示したように、刊行物3の記載事項に刊行物1の記載事項および(刊行物9に示されるような)周知の事項を併せればそれらに基づいて当業者が容易に考えつくものであるから、本件発明4は特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

5.本件発明5について

本件発明1はその発明の対象がシリコーンゴム組成物であるのに対し、本件発明5はその発明の対象がフッ素樹脂被覆定着ロールである点で表現上は相違するが、本件発明5のシリコーンゴム組成物は請求項1記載のシリコーンゴム組成物であるから、本件発明1の(A)〜(E)の成分すべてを必須とするものである点で本件発明1のシリコーンゴム組成物と異なるものではなく、また、本件発明5の「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロール」は、本件発明1のシリコーンゴムが用いられる用途である「ロール軸の外周面にシリコーンゴム層を介してフッ素樹脂層を設けてなるフッ素樹脂被覆定着ロール」と同じであり、さらにまた、本件発明5の「ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で請求項1記載シリコーンゴム組成物を70〜140℃で硬化させたものである」は本件発明1の「………フッ素樹脂被覆定着ロールにおけるシリコーンゴム層を形成するためのシリコーンゴム組成物であって、………ロール軸の外周面とフッ素樹脂層間で70〜140℃で硬化させるものである」と同じである。
してみれば本件発明1と本件発明5とは、発明の対象が異なるものの、発明を構成する技術的事項は表現的には異なるが実質的にはすべて同じであるから、結局両者の発明は同じ発明を発明の対象が異なるように表現したものにすぎない関係にあるといえる。
そうであれば、上記[6].〈1〉.II.1.で示したのと同様な理由により、本件発明5も刊行物3の記載事項に刊行物1の記載事項および(刊行物9に示されるような)周知の事項を併せればそれらに基づいて当業者が容易に考えつくものであるから、本件発明5は特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。

[7].むすび

以上のとおりであるから、本件発明1ないし5はいずれも特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本件発明1ないし5についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、上記の結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2005-07-08 
出願番号 特願平8-96278
審決分類 P 1 651・ 121- ZB (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 一色 由美子
特許庁審判官 石井 あき子
大熊 幸治
登録日 2003-03-07 
登録番号 特許第3406773号(P3406773)
権利者 東レ・ダウコーニング株式会社
発明の名称 フッ素樹脂被覆定着ロール用シリコーンゴム組成物およびフッ素樹脂被覆定着ロール  
代理人 小林 克成  
代理人 重松 沙織  
代理人 須山 佐一  
代理人 小島 隆司  

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