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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B31B |
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管理番号 | 1123483 |
審判番号 | 不服2002-17535 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-03-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-09-11 |
確定日 | 2005-09-15 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第 34215号「非金属鋸刃製造方法及び非金属鋸刃製造取付装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 3月15日出願公開、特開平 6- 71785〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年1月29日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年10月10日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「ロールのほぼ半径方向外方に突出するように且つロールのほぼ軸線方向に延びるように設けられたカッター刃であって、そのカッター刃を刃先に向かい合う方向から見た時の刃先形状が製造すべき鋸刃の平面内における刃先形状に等しくなっているカッター刃を備えたカッターロールと、前記カッター刃を受ける平坦な受け面と形成される非金属鋸刃を吸着保持する吸引穴とを有する受けロールとを、前記カッター刃が前記受け面に直角に向かい合った時に前記カッター刃と受け面との間に0.005mm〜0.03mmの微小なクリアランスが残る位置関係で配置し、前記カッターロールと受けロールとの間に非金属原反を供給し、前記カッターロールと受けロールとを、カッター刃先端と受け面とが同一速度で移動するように同期回転させ、非金属原反をカッター刃先端と同一速度で搬送しながら、受け面で支持された非金属原反にカッター刃を切り込んで非金属原反の先端部分に非金属鋸刃を形成し、その非金属鋸刃を前記受けロールで吸着保持して搬送すると共に残りの非金属原反にブレーキをかけることで、前記非金属鋸刃を残りの非金属原反から切り離すことを特徴とする非金属鋸刃製造方法。」 2.引用文献の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された特開平2-172722号公報(以下、「引用文献」という)には、以下の事項が記載されている。 [引用文献の記載事項] 記載事項a:非金属製のシートを繰出し、繰出方向と直角の方向に沿って刃切りを行って薄膜体カッタとする刃切り工程と、この薄膜体カッタを吸着搬送して加熱圧接によりカートンに取付ける取付け工程とからなることを特徴とする薄膜体カッタの刃切り及び取付方法。(特許請求の範囲第1項) 記載事項b:しかし、従来の構成では、薄膜体カッタがブリキ製であるので、合成樹脂フィルムの切断に際し、・・・手や指を切ったりして怪我をすることがあった。また、自治体によっては、焼却上、不燃性の薄膜体カッタと可燃性のカートンを区分してゴミ処理するよう指導しているところがあり、この場合、ゴミ処理が面倒であった。・・・そこで、このような問題点に対処するために先の出願(実願昭62-40921号)によって薄膜体カッタとして非金属製のものを開示し、今回はその非金属製の薄膜体カッタの刃切りおよびカートンへの取付けを簡易にし、そのコストの低減化を図ることのできる薄膜体カッタの刃切り及びカートンへの取付方法並びにその装置を提供することを目的とする。 (第2頁左上欄第13行〜右上欄第11行) 記載事項c:この装置は非金属製のシートとしてプラスチック製のシート1を使用し、これを繰出方向と直角の方向に沿って刃切りして薄膜体カッタ2とし、これをカートン3に取付けるためのもので、刃切り部4と取付部5とからなる。刃切り部4はブレーキ付きの繰出リール6を有する。この繰出リール6はシャフト6aにプラスチック製のシート1を巻付けて繰出しできるようにしたものである。(第2頁右下欄第19行〜第3頁左上欄第6行、第1〜4図) 記載事項d:薄膜体カッタ2の刃切り及びカートン3への取付けを行う場合、プラスチック製のシート1を使用し、これを送りローラ8によって繰出リール6から薄膜体カッタ2の幅に相当するピッチで間欠的に繰出すと・・・刃切りカッタ部7では、クランク方式により下向きに移動するダイカッタ10と吸着搬送ドラム16の真上に停止する受台17とでシート1は繰出方向と直角の方向に押切り方式で刃切りされ、鋸刃状の薄膜体カッタ2として供給される。供給された薄膜体カッタ2は同じ受台17にその吸引孔19の負圧により吸着され、この吸着状態で吸着搬送ドラム16の間欠的な回転とともに移動し・・・。(第3頁右下欄第3〜18行、第1〜4図) 記載事項e:第10図ないし第12図は刃切りカッタ部の変形例を示す断面図である。・・・第11図に示す刃切りカッタ部7はロータリー押切り式のものであって、回転ドラム43、44を上下2個設けて上側の回転ドラム43に第12図に示すような上刃41を4個等間隔で設け、下側の回転ドラム44を受けドラムとして上側の回転ドラム43に対接させて設けたものである。また、この実施例ではプラスチック製の薄膜体カッタの場合について説明したが、これに限らず、硬質紙や樹脂処理紙からなる厚紙製の薄膜体カッタに対して本発明を適用することもできる。(第4頁右上欄第16行〜同頁左下欄15行、第11〜12図) 記載事項f:第11図及び第12図からは、「回転ドラムのほぼ半径方向外方に突出するように且つ回転ドラムのほぼ軸線方向に延びるように設けられた上刃と、その上刃を刃先に向かい合う方向から見た時の刃先形状が製造すべき鋸刃の平面内における刃先形状に等しくなっている上刃を備えたロータリー押切り式の刃切りカッタ部」が記載されているものと認められる。(第11〜12図) 3.対比 引用文献の「回転ドラム43」、「上刃」、「吸着搬送ドラム」は、本願発明の「カッターロール」、「カッター刃」、「受けロール」に対応し、引用文献第1図に記載されている薄膜体カッタの刃切り及びカートンへの取付装置において、刃切りカッタ部は第11図に示すロータリー押切り式の刃切りカッタ部に変形することができるのであるから(記載事項e及びf)、これを考慮して本願発明と引用文献に記載されたものとを対比すると、 両者は、「ロールのほぼ半径方向外方に突出するように且つロールのほぼ軸線方向に延びるように設けられたカッター刃であって、そのカッター刃を刃先に向かい合う方向から見た時の刃先形状が製造すべき鋸刃の平面内における刃先形状に等しくなっているカッター刃を備えたカッターロールと、前記カッター刃を受ける平坦な受け面と形成される非金属鋸刃を吸着保持する吸引穴とを有する受けロールとを配置し、前記カッターロールと受けロールとの間に非金属原反を供給し、受け面で支持された非金属原反にカッター刃を切り込んで非金属原反の先端部分に非金属鋸刃を形成し、その非金属鋸刃を前記受けロールで吸着保持して搬送する非金属鋸刃製造方法」で一致し、 本願発明では、カッター刃が受け面に直角に向かい合った時にカッター刃と受け面との間に0.005mm〜0.03mmの微小なクリアランスが残る位置関係にあるが、引用文献にはこれについて記載がない点(相違点1) 本願発明では、カッターロールと受けロールとを、カッター刃先端と受け面とが同一速度で移動するように同期回転させ、非金属原反をカッター刃先端と同一速度で搬送しながら非金属鋸刃を形成するものであるが、引用文献には、カッターロールと受けロールの回転の態様と非金属原反の搬送速度について記載がない点(相違点2) 本願発明では、残りの非金属原反にブレーキをかけることで、非金属鋸刃を残りの非金属原反から切り離すものであるが、引用文献にはこれについて記載がない点(相違点3) で相違している。 4.当審の判断 相違点1について 引用文献には、カッター刃と受け面との間に微小なクリアランスを残す点については記載がなされていない。 本願発明においてクリアランスを残すのは、受け面にカッター刃がぶつかって損傷したり、摩耗したりするということがなく、カッター刃の寿命を長くすることができるようにするため(本願明細書段落【0020】の記載参照)であるが、カッター刃を有するロールと受けロールとの間で物品を切断する切断装置において、カッター刃の寿命を長くすることを目的として該カッター刃と該受けロールとの間に微小な間隔すなわちクリアランスを残すことは、実願昭59-55371号(実開昭60-167697号)のマイクロフィルム、特開昭59-115198号公報及び実願昭52-121281号(実開昭54-46665号)のマイクロフィルムにも記載されているように切断の技術分野においては周知の技術的事項である。 そして、クリアランスの大きさをどの程度にするかはカッター刃の硬度や被切断物の性状等種々の条件を考慮して定め得るものであって、0.005mm〜0.03mmという数値範囲自体に格別の技術的意義があるものとは認められず、当業者が適宜容易に定め得る程度のことにすぎない。 相違点2について 本願発明では、カッターロールと受けロールの回転と非金属原反の搬送の操業状態に関して限定している。 まず、カッターロールと受けロールとを、カッター刃先端と受け面とが同一速度で移動するように同期回転させることについては、両者が同期回転していなければカッター刃で押切りをすることができないのであるから、引用文献においても文言上の明記はなくとも当然のこととしてそのような操業が行われているものと認められる。 また、非金属原反をカッター刃先端と同一速度で搬送しながら非金属鋸刃を形成することについても、非金属原反とカッター刃先端との間に速度差があると両者の間に剪断力が生じ、正確な押切りができないのであるから、この点についても引用文献において文言上の明記はなくとも当然のこととしてそのような操業が行われているものと認められる。 以上のとおり、本願発明におけるカッターロールと受けロールの回転と非金属原反の搬送の操業状態に関する限定は当然必要とされる操業状態を単に記載したものにすぎず、当業者が適宜容易になし得ることにすぎない。 相違点3について 本願発明では、残りの非金属原反にブレーキをかけることで、非金属鋸刃を残りの非金属原反から切り離すものである。 本願発明においてこのような措置が必要となるのは、微小なクリアランスを形成したことによりカッター刃が非金属原反に切り込んだ際、原反を確実には切り離すことができず、薄皮1枚残った形となるので残っている薄皮を引き裂き、非金属鋸刃を原反から切り離すためである。そして、薄皮自体に特段の技術的効果があるものではなく、単にクリアランスを残したことにより不可避的に残されるものである。 引用文献1に記載された発明において、プラスチック製のシートは、ブレーキ付きの繰出リールにより、薄膜体カッタの幅に相当するピッチで間欠的に繰出されるものである(記載事項c及びd)。すなわち、該シートは、回転ドラムに設けられた上刃により薄膜体カッタが押切られて形成されるように上記ピッチに対応する分だけ繰出されたのち、次の繰出しに備えて、ブレーキがかけられるものである。 よって、引用文献1に記載された発明においては、上刃によりプラスチック製のシートが押切られて形成される薄膜体カッタが受ドラムにより吸着搬送される一方、該シートにはブレーキがかけられるのであるから、薄膜体カッタが微小なクリアランスの厚み分だけ該シートとつながった状態であったとしても搬送される薄膜体カッタとブレーキがかけられる該シートとの間に引張り力が作用して、つながった部分は当然のこととしてシートから分離されることになる。 そして、引用文献に記載の発明においてはクリアランスについて記載がないので、薄膜体カッタとシートが薄皮1枚残った形となっているかどうかは不明であるが、薄皮の有無にかかわらず本願発明と同様の作用が生じているものであり、また、上記したように薄皮自体に格別の技術的意義があるものとは認められないのでから、残りの非金属原反にブレーキをかけることで、非金属鋸刃を残りの非金属原反から切り離すという本願発明において限定している事項は引用文献に記載されている発明においても当然生じている作用を記載したものにすぎない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用文献1乃至2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-07-06 |
結審通知日 | 2005-07-12 |
審決日 | 2005-08-01 |
出願番号 | 特願平5-34215 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B31B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 3L案件管理書架D、白川 敬寛、大町 真義、谷治 和文 |
特許庁審判長 |
寺本 光生 |
特許庁審判官 |
市野 要助 中西 一友 |
発明の名称 | 非金属鋸刃製造方法及び非金属鋸刃製造取付装置 |
代理人 | 乗松 恭三 |