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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1123488
審判番号 不服2001-19367  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-10-30 
確定日 2005-09-14 
事件の表示 平成 9年特許願第 21306号「プランターと植物栽培装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月18日出願公開、特開平10-215687〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成9年2月4日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成10年5月11日付けの手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。
「上面を開放した容器本体と、上記容器本体の底部に十字形に一体に形成された溝と、上記溝に対応して上記容器本体の底部に開口した導通口と、上記容器本体の下部領域に形成された保水部と、上記容器本体の上部領域に形成された植物栽培部と、上記容器本体内を下部の保水部と上部の植物栽培部とに上下に仕切って容器本体内に設置され、上記保水部に延びる水吸い上げ用の不織布等の布片が設けられると共に、少なくとも植物栽培部内の土圧により変形しない程度の剛性を保持した仕切体とを具備していることを特徴とするプランター。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平4-135426号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、
「複数の栽培鉢をプランター内に収納し、このプランター内の水槽に水または液肥を供給して、各栽培鉢に植え付けた植物に対するかん水を行う・・・多数のプランターを植物の育成を行う箇所に配置するとともに、前記各栽培鉢を前記プランター内の水槽上に載置して、・・・水または液肥を各プランターの水槽内に所定量貯めて、前記各栽培鉢に対するかん水を行う・・・」(特許請求の範囲、請求項1)、
「例えば道路ぎわに配置される多数の栽培鉢、あるいは大量に鉢植え植物を育成する場合の栽培鉢に対して、水または液肥によるかん水を行う方法、及びこの方法に適用するのに適したプランターに関するものである。」(第1頁右欄下段第18行〜第2頁左欄上段第4行)、
「複数の栽培鉢(10)をプランター(20)内に収納し、このプランター(20)内の水槽(24)に水または液肥を供給して、各栽培鉢(10)に植え付けた植物に対するかん水を行う・・・多数のプランター(20)を植物の育成を行う箇所に配置するとともに、各栽培鉢(10)をプランター(20)内の水槽(24)上に載置して、・・・水または液肥を各プランター(20)の水槽(24)内に所定量貯めて、各栽培鉢(10)に対するかん水を行う・・・」(第2頁右欄下段第5行〜第3頁左欄上段第3行)、
「各プランター(20)においては、その水槽(24)内に一部を浸した給水布(23)がその浸された部分で・・・水等を吸い上げるから、この給水布(23)は水等を十分含んだものとなるのである。・・・、この給水布(23)に代えて、これと同様な材料によって形成したものを各栽培鉢(10)内に入れておき、その他端を水槽(24)内に垂らしておくようにしても、同様な作用が得られるものである。」(第3頁右欄下段第1行〜14行)、
「各プランター(20)は、・・・プラスチック等で一体形成した外箱(20a)の・・・上面を所定量下げることにより水槽(24)を形成したものであり、この水槽(24)の周囲に段部(21)を形成することによって、この段部(21)上に支持板(22)及び給水布(23)を載置できるようにしたものである。また、水槽(24)の底面には取付穴(25)が形成してあり、・・・。給水布(23)は、水槽(24)内の水等を・・・吸い上げるものであり、その一部は水槽(24)内に浸してある。そして、この給水布(23)上に複数の栽培鉢(10)が配置されるのであり、これらの栽培鉢(10)と給水布(23)はプランター(20)の段部(21)に停止させた支持板(22)によって支持されているのである。」(第5頁右欄上段第2行〜同頁左欄下段第1行)、
「第4図及び第5図においては、プランター(20)の外箱(20a)の概略形状を示してあるが、この外箱(20a)は例えば第7図〜第10図に示したような具体的形状のものに形成される。これらの・・・外箱(20a)においては、これが即ち水槽(24)それ自体を構成しているものであり、その長辺方向の二辺側を図示下方に膨出させることにより脚部としてある。これらの脚部の間には、・・・給水管(32)及び配水管(33)を収納するとともに、これらが接続される給水調整装置(30)はその中央底面に図示したように取付けられるものである。なお、この外箱(20a)は、・・・、その各脚部内に、砂利や砂あるいは水を入れてその使用時の安定化を図るようにするものであり、・・・その長辺側側面に何も形成しないようにすることにより、道路に沿って並べたときに全体がスッキリするようにしてある。」(第6頁左欄上段第14行〜同頁右欄上段第14行)、
との記載が認められ、また、上記摘記事項および第7図〜第10図より、プランター(20)は、長辺方向の二辺側を膨出させた脚部間に給水管(32)及び配水管(33)を収納するようにしているので、長辺方向の二辺側を膨出させた脚部で挟まれる空間、即ち、I字形の収納凹み部を有すると認められる。また、上記摘記事項および第4図および第9図より、植物を植え付けた栽培鉢(10)をプランター(20)内の水槽(24)上に載置するようにしたことは、プランター(20)の上部領域に複数の栽培鉢(10)を載置した植物育成部を有すると認められる。
これらの記載によれば、引用例1には、

「上面を開放したプランター(20)と、上記プランター(20)の底部にI字形に一体形成された収納凹み部と、上記収納凹み部に対応して上記プランター(20)の中央底面に開口した取付穴(25)と、上記プランター(20)の下部領域に形成された水槽(24)と、上記プランター(20)の上部領域に形成された複数の栽培鉢(10)を載置した植物育成部と、上記プランター(20)内を下部の水槽(24)と上部の複数の栽培鉢(10)を載置した植物育成部とに上下に仕切ってプランター(20)内に設置され、上記水槽(24)に一部を浸してある水吸い上げ用の給水布(23)が設けられると共に、植物を植え付けた複数の栽培鉢(10)を支持する支持板(22)とを具備しているプランター。」
との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「プランター(20)」、「収納凹み部」、「中央底面」、「取付穴(25)」、「水槽(24)」、「複数の栽培鉢(10)を載置した植物育成部」、「一部を浸してある」、「給水布(23)」および「植物を植え付けた複数の栽培鉢(10)を支持する支持板(22)」は、本願発明における「容器本体」、「溝」、「底部」、「導通口」、「保水部」、「植物栽培部」、「延びる」、「不織布等の布片」および「少なくとも植物栽培部内の土圧により変形しない程度の剛性を保持した仕切体」に相当すると認められる。また、引用例1発明の「I字形」と、本願発明の「十字形」は、「特定の形状」で共通する。したがって、両者は、
「上面を開放した容器本体と、上記容器本体の底部に特定の形状に一体に形成された溝と、上記溝に対応して上記容器本体の底部に開口した導通口と、上記容器本体の下部領域に形成された保水部と、上記容器本体の上部領域に形成された植物栽培部と、上記容器本体内を下部の保水部と上部の植物栽培部とに上下に仕切って容器本体内に設置され、上記保水部に延びる水吸い上げ用の不織布等の布片が設けられると共に、少なくとも植物栽培部内の土圧により変形しない程度の剛性を保持した仕切体とを具備しているプランター。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点1:プランター底部の溝の形状において、本願発明では、「十字形」であるのに対し、引用例1発明では、「I字形」である点。

4.判断
上記相違点について検討する。
引用例1には、プランターの安定化を図るため水等を入れる脚部を設けてI字形の凹み部を形成し、プランターの外箱の長辺側側面に何も形成しないで、道路に沿って並べたときに全体がスッキリするようにしている技術事項が記載されており、給水管や配水管等の管状体を収納する等のために、任意形状の溝部を一体成形するのに、引用例1発明のI字形にするか本願発明のように十字形にするかは、そのことによって管状体等を収納等する機能に格別の差異をもたらすものでなく、その形状の選択は、設計に際し、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のものである。

そして、本願発明が上記構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および引用例1に記載された技術事項から当業者が予測できる範囲のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明および引用例1に記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-07 
結審通知日 2005-07-12 
審決日 2005-07-25 
出願番号 特願平9-21306
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂田 誠  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 林 晴男
篠崎 正
発明の名称 プランターと植物栽培装置  
代理人 西村 教光  

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