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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47J |
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管理番号 | 1123498 |
審判番号 | 不服2003-23544 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-08-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-12-04 |
確定日 | 2005-09-15 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 30985号「電磁誘導式加熱調理器」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月24日出願公開、特開平11-225881〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯・本願発明 本願は、平成10年2月13日の出願であって、平成15年10月30日付け(平成15年11月4日発送)で拒絶査定され、同年12月4日付けで査定不服の審判が請求され、同年12月19日付けで手続補正書が提出された。 2. 平成15年12月19日付けの手続補正についての補正却下の決定 〔補正却下の決定の結論〕 平成15年12月19日付けの手続補正を却下する。 〔理由〕 (1) 補正後の特許請求の範囲の各請求項に係る発明 平成15年12月19日付けの手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)により補正された本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明は、かかる手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1〜8に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】 赤外線を透過する材質や検知部に赤外線透過材をはめ込んだトッププレートを備え、赤外線センサにより調理物や鍋などの被加熱物の温度を計測する加熱調理器において、前記被加熱物に対して投光する発光手段と、前記被加熱物からの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段の出力から換算された前記被加熱物の放射率、及び前記赤外線センサの受光量から前記被加熱物の温度を換算する演算制御部とを備え、前記受光手段の反射率の測定波長として、受光手段の素子としてシリコン組成の受光素子が利用できる600nmから1000nm波長域を使用する電磁誘導式加熱調理器。 【請求項2】 赤外線を透過する材質や検知部に赤外線透過材をはめ込んだトッププレートを備え、赤外線センサにより調理物や鍋などの被加熱物の温度を計測する加熱調理器において、前記被加熱物に対して投光する発光手段と、前記被加熱物からの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段の出力から換算された前記被加熱物の放射率、及び前記赤外線センサの受光量から前記被加熱物の温度を換算する演算制御部とを備え、前記受光手段の反射率の測定波長として、1000nmから2000nm波長域を使用することで被加熱物の色や外光などの影響を低減できる電磁誘導式加熱調理器。 【請求項3】 赤外線を透過する材質や検知部に赤外線透過材をはめ込んだトッププレートを備え、赤外線センサにより調理物や鍋などの被加熱物の温度を計測する加熱調理器において、前記被加熱物に対して投光する発光手段と、前記被加熱物からの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段の出力から換算された前記被加熱物の放射率、及び前記赤外線センサの受光量から前記被加熱物の温度を換算する演算制御部とを備え、前記受光手段の反射率の測定波長として、赤外線センサの受光する赤外線波長域の放射率と相関の高い換算を可能とすべく2000nm以上の波長域を使用する電磁誘導式加熱調理器。 【請求項4】 反射率の測定波長の分光手段として、受光素子の受光感度波長域を使って分光する請求項1〜3のいずれか1項に記載の加熱調理器。 【請求項5】 反射率の測定波長の分光手段として、発光手段にLEDまたはレーザなどの狭波長域の光源を使用することにより分光する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁誘導式加熱調理器。 【請求項6】 反射率の測定波長の分光手段として、一定波長域の波長を通過させる光学的なバンドパスフィルタを使用することにより分光する請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁誘導式加熱調理器。 【請求項7】 赤外線センサが焦電センサである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁誘導式加熱調理器。 【請求項8】 赤外線センサがサーモパイルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の電磁誘導式加熱調理器。」 (2) 引用刊行物及び引用刊行物に記載された発明 原審における平成14年11月5日付けの拒絶理由通知書には、引用刊行物として、 特開平3-184295号公報(以下「刊行物1」という。)と 特開平1-124726号公報(以下「刊行物2」という。) が引用されている。 刊行物1には特に以下に示す事項が図面と共に記載されている。 ア.「以下、本発明の第一の手段の実施例について第1図を参照しなから説明する。1は内部に誘導加熱コイル4及び赤外線センサー5を有する誘導加熱調理機本体(以下単に本体と称する)である。本体1の上面は、例えば一部または全体が結晶化シリコン等の赤外線を透過する赤外線透過材で構成されている調理容器載置面3で覆われている。2は使用者によって調理容器載置面3上に載置される調理容器(以下鍋と称する)である。前記赤外線センサー5は鍋2の表面から発生する赤外線を調理容器載置面3を通して検知する。次に本実施例の動作を説明する。使用者がスイッチ(図示せず)をONすると、誘導加熱コイル4に電力が供給され高周波磁界が生する。この高周波磁界によって鍋2に渦電流が生じ、鍋2は加熱される。この時、鍋2の底面からは温度に応じた赤外線が発せられる。この赤外線は赤外線透過材で構成されている調理容器載置面3を透過して赤外線センサー5に到達する。赤外線センサー5はこれを捕らえ温度に応じた信号を図示していない制御回路に出力する。このように、本実施例では赤外線センサー5を用いて鍋2の温度を直接検知する構成としているため、時間遅れは全くなくしかも正確な温度を検知することができるものである。」(第2頁右下欄第7行〜第3頁左上欄第11行) イ.「以下本実施例の動作を説明する。第3図の状態において、鍋2が加熱されると温度上昇するが、本実施例においては調理容器載置面10の一部だけが赤外線透過材9で構成されており、これと対向して設けている赤外線センサー5の視野角は制限されている。」(第3頁左下欄第18行〜右上欄第3行) 刊行物2には特に以下に示す事項が図面と共に記載されている。 ウ.「・・・放射温度計による温度測定は、被加熱物の放射率の影響を受ける・・・・・したがって放射温度計を用いて温度測定を行なう場合には、加熱中にも絶えず被加熱物の放射率による影響を除去する補正をする必要がある。・・・」(第2頁右上欄第3行から第20行) エ.「まず、本発明の一実施例による加熱装置について、第1図を参照し説明する。第3図に示した従来の加熱装置と比較し、光源11、受光量測定部12、放射率算出部13とから構成される放射率測定部が新たに付加され、さらに温度測定装置14に温度測定値に補正を行なう機能が付加された点が異なる。従来の場合の同一物に対しては同一番号を付し説明を省略する。光源11は、半導体基板1に光を照射するものである。受光量測定部12は、光源11から照射された光を半導体基板1が反射した反射光の光量を測定するものである。放射率算出部13は、光源11が半導体基板1に照射した光の光量と受光量測定部12が測定した反射光の光量とに基づいて半導体基板1の反射率を求め、放射率測定信号を発生するものである。温度測定装置14は、半導体基板1から放射される赤外線の強度を放射温度計5が測定した値に基づいて半導体基板1の温度を求める機能と、この温度の測定値を放射率算出部13で求めた放射率の測定値に基づいて補正する温度補正を行なう機能とを合わせ持っている。この温度補正は、放射率の測定値と所定値とを比較し、放射率の測定値の方が大きい場合には放射温度計5で測定した赤外線の強度から求めた温度測定値をより低い値に補正し、放射率の測定値の方が小さい場合には温度測定値をより高い値に補正することにより行なう。」(第3頁右上欄第2行〜左下欄第8行) (3) 対比 補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)と刊行物1に記載された発明を対比すると、刊行物1に記載された発明の「赤外線センサー5」、「鍋2」及び「誘導加熱調理器」は、それぞれ本願補正発明の「赤外線センサ」、「調理物や鍋などの被加熱物」及び「電磁誘導式加熱調理器」に相当し、刊行物1の「一部または全体が結晶化シリコン等の赤外線を透過する赤外線透過材で構成されている調理容器載置面3」の記載(上記ア.参照)と、「調理容器載置面10の一部だけが赤外線透過材9で構成されており、これと対向して設けている赤外線センサー5」の記載(上記イ.参照)は、本願補正発明の「赤外線を透過する材質や検知部に赤外線透過材をはめ込んだトッププレート」に相当する。そうすると、本願補正発明と刊行物1に記載された発明は下記の一致点で一致し、相違点で相違する。 [一致点] 「赤外線を透過する材質や検知部に赤外線透過材をはめ込んだトッププレートを備え、赤外線センサにより調理物や鍋などの被加熱物の温度を計測する電磁誘導式加熱調理器。」 [相違点] 本願補正発明が、「被加熱物に対して投光する発光手段と、被加熱物からの反射光を受光する受光手段と、前記受光手段の出力から換算された前記被加熱物の放射率、及び赤外線センサの受光量から前記被加熱物の温度を換算する演算制御部とを備え、前記受光手段の反射率の測定波長として、受光手段の素子としてシリコン組成の受光素子が利用できる600nmから1000nm波長域を使用する」ものであるが、刊行物1には斯かる手段を設け、斯かる演算制御部を備える点及び受光素子の組成と使用波長域についての記載がない点。 (4) 相違点についての当審の判断 刊行物2は、加熱装置に関する発明であって、刊行物2には、放射温度計の問題点として「放射温度計による温度測定は、被加熱物の放射率の影響を受ける・・・・・被加熱物の放射率による影響を除去する補正をする必要がある。」(上記ウ.参照)と、そして、問題点の解決手段として「従来の加熱装置と比較し、光源11、受光量測定部12、放射率算出部13とから構成される放射率測定部が新たに付加され、さらに温度測定装置14に温度測定値に補正を行なう機能が付加され・・・・放射率算出部13は、光源11が半導体基板1に照射した光の光量と受光量測定部12が測定した反射光の光量とに基づいて半導体基板1の反射率を求め、放射率測定信号を発生する・・・・・温度測定装置14は、半導体基板1から放射される赤外線の強度を放射温度計5が測定した値に基づいて半導体基板1の温度を求める機能と、この温度の測定値を放射率算出部13で求めた放射率の測定値に基づいて補正する温度補正を行なう機能とを合わせ持っている。」(上記エ.参照)が記載されている。 相違点の構成と刊行物2に記載された発明を比較すると、後者の「光源11」及び「受光量測定部12」は、前者の「発光手段」及び「受光手段」に相当し、後者の「放射率算出部13」と「温度測定装置14」は、「放射率算出部13」が光源11が照射した光の光量と受光量測定部12が測定した反射光の光量とに基づいて反射率を求め、放射率測定信号を発生し、「温度測定装置14」が、赤外線の強度を放射温度計5が測定した値に基づいて温度を求める機能と、この温度の測定値を放射率算出部13で求めた放射率の測定値に基づいて補正する温度補正を行なう機能とを合わせ持っているのであるから、前者の「演算制御部」に相当する。そうすると、相違点の構成と刊行物2に記載された発明は「受光手段の反射率の測定波長として、受光手段の素子としてシリコン組成の受光素子が利用できる600nmから1000nm波長域を使用する」ことが具体的に開示されていない点で相違するが、その余において一致している。 そして、受光手段である赤外線のセンサに、「シリコン組成の受光素子を使用する」こととその「使用波長域」は、例えば、電気学会編「電気工学ポケットブック(第4版)」株式会社オーム社、昭和62年7月25日第4版第1刷発行、第1071頁〜第1075頁にも記載されているように従来周知の技術であり、使用波長域を600nmから1000nmに限定したことによる効果も当業者が予測し得た範囲内のものであるから、「受光手段の反射率の測定波長として、受光手段の素子としてシリコン組成の受光素子を使用できる600nmから1000nm波長域を使用する」ことは当業者が必要に応じ適宜設定できる設計的事項にすぎないというべきである。 したがって、本願補正発明と刊行物1及び刊行物2に記載された各発明は、赤外線により温度測定をし、温度制御を行うことに関し同様の課題を有するものでから、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に刊行物2に記載された発明と周知技術を適用し、設計的事項を適宜設定することにより当業者が容易に想到できたものであるというべきである。 また、本願補正発明の効果も、刊行物1に記載された発明に、刊行物2に記載された発明と周知技術に基づいて当業者が予測し得た範囲内のものである。 (5) まとめ したがって、本願補正発明は、刊行物1、2記載の各発明と周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第4項に違反するから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3. 本願発明について (1) 本願の特許請求の範囲の請求項に係る発明 平成15年12月19日付けの手続き補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年1月10日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるものである。 「【請求項1】 赤外線センサにより調理物や鍋などの被加熱物の温度を計測する加熱調理器において、前記被加熱物に対して投光する発光手段と、前記被加熱物からの反射光を受光する受光手段を備え、前記受光手段の出力から換算された前記被加熱物の放射率、及び前記赤外線センサの受光量から前記被加熱物の温度を換算してなり、反射率の測定波長として、受光手段の素子としてシリコン組成の受光素子が利用できる600nmから1000nm波長域を使用する加熱調理器。」 (2) 引用刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、および、その記載事項は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。 (3) 対比・判断 本願発明(前者)は、前記「2.(3)」で検討した本願補正発明(後者)に対して、トッププレートの構成について、前者が構成の限定をしていないものを、後者が「赤外線を透過する材質や検知部に赤外線透過材をはめ込んだトッププレート」とし、被加熱物の温度を換算する手段について、前者が換算する手段について限定していないものを、後者は温度を換算する「演算制御部を備え」とし、前者が「加熱調理器」であるものを、後者は「電磁誘導式加熱調理器」としたものであって、後者は、前者の内容を具体化し減縮したものに相当する。 そして、本願補正発明が、前記「2.(4)」で示したとおり、刊行物1、2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1、2記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4) むすび したがって、本願の請求項1に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。 よって、本願のその余の請求項に係る発明について判断するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-06-28 |
結審通知日 | 2005-07-05 |
審決日 | 2005-07-22 |
出願番号 | 特願平10-30985 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A47J)
P 1 8・ 121- Z (A47J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 豊島 唯 |
特許庁審判長 |
橋本 康重 |
特許庁審判官 |
佐野 遵 岡本 昌直 |
発明の名称 | 電磁誘導式加熱調理器 |
代理人 | 岩橋 文雄 |
代理人 | 坂口 智康 |
代理人 | 内藤 浩樹 |