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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1123502
審判番号 不服2004-8605  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-26 
確定日 2005-09-15 
事件の表示 平成 4年特許願第255941号「動きベクトル検出装置及び方法、並びにビデオカメラ」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 3月25日出願公開、特開平 6- 86149〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯、本願発明
本願は、平成4年8月31日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に係る各発明は、平成11年8月23日付け、平成14年1月22日付け、平成14年12月27日付け、平成15年7月2日付け、および平成16年4月26日付けの各手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、上記各請求項にそれぞれ記載されるとおりのものと認められるところ、これら発明のうち、請求項1に係る発明(以下これを「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「画面を複数の領域に分割し、上記各領域での複数の代表点を定め、上記各領域での複数の代表点を用いて動きベクトルを求めるようにした動きベクトル検出装置において、
上記各領域での複数の代表点の周辺の画素の絵柄の変化をラプラシアンを算出して検出する手段と、
上記各領域での上記複数の代表点周辺の画像の絵柄の変化が所定値より大きいかどうかを判断する手段と、
上記各領域での上記複数の代表点周辺の画像の絵柄の変化が所定値より大きい代表点を選択する選択手段と、
上記選択された代表点での動きベクトルを求める手段と
を備えるようにした動きベクトル検出装置。」

2.引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された特開平4-151982号公報(平成4年5月25日公開、以下「引用例」という。)には、名称を「動きベクトル検出装置」とする発明について次のことが記載されている。
(a)上記発明の動きベクトル検出装置は、供給される画像の所定領域について、代表点に関し現在と所定時間前のフレーム間差分値を得る手段と、代表点付近の濃度勾配を求める手段と、フレーム間差分値について絶対値または2乗値を求めて動きベクトル基礎データを得る手段と、濃度勾配値に応じて動きベクトル基礎データに重みづけをする手段と、各代表点について重みづけられた動きベクトル基礎データの累積を求め、この累積値の極値をとる位置から動きベクトルを抽出する手段とを備えていること(第718頁4欄13行目〜同頁5欄3行目)。
(b)上記所定の領域は、供給されたフレーム画像を4分割したもので、そのうちの1ブロックについてb×c=p個の代表点が選ばれること(第717頁2欄16行目〜最下行、及び第2図)。
(c)上記動きベクトル基礎データに対する重みづけは、実施例では、濃度勾配値が閾値B未満のときには重みを0に、閾値B以上のときには重みを1にするようにしたものであり(第719頁7欄6〜8行目)、第1図の具体例では、上記濃度勾配値を比較器33に入力し、該比較器33で上記濃度勾配値が閾値B以上であるか、閾値Bよりも小さいかを判別し、その判別結果に応じてスイッチ38を切換制御して、閾値B以上のときには絶対値器22の出力(上記動きベクトル基礎データ)を加算器23(該基礎データの累積を行うための加算器)に入力し、閾値Bよりも小さいときには、上記出力を累積させない(加算器23に入力させない)ようにしたもの(第721頁16欄下から5行目〜同頁17欄5行目)であること。
(d)上記代表点付近の濃度勾配を求める手段は、第1図の具体例では濃度勾配検出回路30であって、該回路30は、ソーベルオペレータ、あるいはプレウィットオペレータ等により濃度勾配値を算出するものであること(第720頁13欄4行目〜同頁14欄3行目、及び第10図)。

3.対比
[3.1]本願発明と引用例に記載された発明(以下「引用発明」という。)とを対比すると、次のことが認められる。
(イ)両者はいずれも「動きベクトル検出装置」に係るものであって、引用発明の動きベクトル検出装置も、本願発明と同じく「画面を複数の領域に分割し、上記各領域での複数の代表点を定め、上記各領域での複数の代表点を用いて動きベクトルを求めるようにした」ものといえることは、引用例の前掲記載(a),(b)から明らかである。
(ロ)本願発明では、「上記各領域での複数の代表点の周辺の画素の絵柄の変化をラプラシアンを算出して検出する手段」を設けているところ、引用発明でも、上記“代表点周辺の画素の絵柄の変化”に相当することが明らかな“代表点付近の濃度勾配”を求める手段が設けられているから、この点では両者は共通するものであるが、引用発明での上記手段は、濃度勾配(絵柄の変化)を「ソーベルオペレータ、あるいはプレウィットオペレータ等により算出する」ものであるから〔引用例の前掲記載(d)〕、本願発明のように、絵柄の変化を「ラプラシアンを算出して検出する」ものであるとはいえない。
(ハ)本願発明における上記絵柄の変化が「所定値より大きいかどうかを判断する手段」について、引用発明も、比較器33により上記濃度勾配(絵柄の変化)が閾値B以上であるか否かを判別しているのであるから〔引用例の前掲記載(c)〕、本願発明の上記「判断する手段」を有しているといえる。
(ニ)本願発明における「選択手段」と「動きベクトルを求める手段」について、これら手段は、上記絵柄の変化の大きさについての判断を前提に、「絵柄の変化が所定値より大きい代表点を選択」し、「選択された代表点での動きベクトルを求める」ものであるところ、引用発明では、引用例の前掲記載(a),(c)から明らかなように、各代表点毎に動きベクトル基礎データを求め、これら基礎データを累積して得た累積値から動きベクトルを抽出する上で、濃度勾配値が閾値Bより大きい代表点の動きベクトル基礎データのみを選択して累積加算するようにしているのであるから、引用発明が本願発明での上記「代表点を選択」する選択手段を有しているとはいえず、したがってまた、該選択手段で選択された代表点での動きベクトルを求めているともいえない。しかしながら、そのような違いがあるにしても、本願発明と引用発明とは、いずれも絵柄の変化(濃度勾配)が所定値より大きい代表点のみに基づいて動きベクトルを求める手段を有するものといい得ることが明らかで、この点で両者は共通している。

[3.2]以上の対比結果によれば、本願発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりであると認めることができる。
【一致点】両者はいずれも、
「画面を複数の領域に分割し、上記各領域での複数の代表点を定め、上記各領域での複数の代表点を用いて動きベクトルを求めるようにした動きベクトル検出装置において、
上記各領域での複数の代表点の周辺の画素の絵柄の変化を検出する手段と、
上記各領域での上記複数の代表点周辺の画像の絵柄の変化が所定値より大きいかどうかを判断する手段と、
上記絵柄の変化が所定値より大きい代表点のみに基づいて動きベクトルを求める手段と
を備えるようにした動きベクトル検出装置」
であるといえる点。
【相違点】
(1)上記絵柄の変化を検出する手段が、本願発明では、絵柄の変化を「ラプラシアンを算出して」検出するものであるのに対し、引用発明では、絵柄の変化を「ソーベルオペレータ、あるいはプレウィットオペレータ等により算出する」ものである点。
(2)上記絵柄の変化が所定値より大きい代表点のみに基づいて動きベクトルを求める手段が、本願発明では、「絵柄の変化が所定値より大きい代表点を選択する選択手段」と「上記選択された代表点での動きベクトルを求める手段」とより成るものであるのに対し、引用発明では、上記代表点の選択手段はなく、各代表点について得た動きベクトル基礎データのうち、絵柄の変化が所定値より大きい代表値についての動きベクトル基礎データのみを選択して動きベクトルを求めるようにしたものである点。

4.判断
[4.1]そこで以下、上記相違点について検討すると、
まず相違点(1)について、画像の絵柄の変化を検出する上で、本願発明のように「ラプラシアンを算出」する、つまりラプラシアンフィルタによるフィルタリング処理を行うことは、画像の絵柄変化(濃度勾配)の一検出手法として常套のものであり(この点、必要があれば、原査定の拒絶理由で引用する特開昭64-27380号公報等参照)、引用発明でもその絵柄変化(濃度勾配)の検出手段に代え、適宜上記常套のラプラシアンフィルタによる検出手段を用い得ることは明らかであるから、相違点(1)において本願発明が格別のものであるとすることはできない。
次に相違点(2)について、同相違点は、絵柄の変化が所定値より大きい代表点のみに基づいて動きベクトルを求める上で、代表点自体の選択を行うか否かの違いといえるところ、代表点自体の選択を行わない引用発明でも、結果的には上記手法で動きベクトルを求める上で絵柄の変化に応じた代表点の選択がなされているに等しいことは技術的に当業者には明らかな事項というべきであり、そうすると本願発明のように代表点自体の選択を行うようにすることは、当業者が容易に想到し得た程度の事項というべきであるから、相違点(2)においても本願発明が格別のものであるとすることはできない。
[4.2]以上判断したとおり、本願発明の上記相違点(1)、(2)に係る構成は、いずれも当業者に想到困難な格別のものであるとはいえず、また本願発明を全体として考慮しても、その技術的効果に格別顕著なものがあるとも認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、請求項1に係る本願発明は、前記引用例に記載された発明および常套技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願の他の請求項2ないし4に係る各発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-12 
結審通知日 2005-07-19 
審決日 2005-08-01 
出願番号 特願平4-255941
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山本 章裕益戸 宏木方 庸輔  
特許庁審判長 藤内 光武
特許庁審判官 西谷 憲人
堀井 啓明
発明の名称 動きベクトル検出装置及び方法、並びにビデオカメラ  
代理人 杉浦 正知  

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