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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1123524
審判番号 不服2003-21719  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-06 
確定日 2005-09-15 
事件の表示 特願2000-78655「半導体装置およびその組立方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月28日出願公開、特開2001-267491〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成12年3月21日の出願であって、平成14年3月1日付で拒絶理由通知がなされ、平成14年5月27日付で手続補正書が提出され、平成15年4月28日付で再度拒絶理由通知がなされ、平成15年4月28日付拒絶理由通知書に記載した理由によって、同年10月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月5日付で手続補正書が提出されたものである。

[2]平成15年12月5日付手続補正についての補正却下の決定

<補正却下の決定の結論>
平成15年12月5日付手続補正を却下する。

<理由>
(1)補正の内容
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1、2を、
「【請求項1】外部回路と接続される親チップの表面に複数個の子チップを接合したチップ・オン・チップ構造の半導体装置であって、上記複数個の子チップの上記親チップの表面からの高さを異ならせてあり、上記複数個の子チップは、それらのうちで最も高さの高い子チップが上記親チップの表面の周縁部に位置し、当該最も高さの高い子チップから離れるに従って順次高さが低くなるように上記親チップの表面に配置されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】親チップの表面に複数個の子チップを接合してチップ・オン・チップ構造の半導体装置を組み立てる方法であって、互いに高さの異なる複数個の子チップを用意する工程と、上記複数個の子チップを、高さの低い子チップから順次上記親チップの表面に接合し、それらのうちで最も高さの高い子チップが上記親チップの表面の周縁部に位置し、当該最も高さの高い子チップから離れるに従って順次高さが低くなるように上記親チップの表面に配置する接合工程とを含むことを特徴とする半導体装置の組立方法。」
に補正し、また、明細書の段落【0006】〜【0008】の記載を、
「【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、とくに、子チップ同士を極めて近接した位置に配置しようとする場合には、吸着している子チップよりも吸着コレットの吸着面の方が大きいと、この吸着コレットが、既に親チップ上に接合されている別の子チップと干渉する場合がある。
そこで、この発明の目的は、上述の技術的課題を解決し、親チップの表面に複数個の子チップを良好に接合することができる構成の半導体装置およびその組立方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
上記の目的を達成するための請求項1記載の発明は、外部回路と接続される親チップの表面に複数個の子チップを接合したチップ・オン・チップ構造の半導体装置であって、上記複数個の子チップの上記親チップの表面からの高さを異ならせてあり、上記複数個の子チップは、それらのうちで最も高さの高い子チップが上記親チップの表面の周縁部に位置し、当該最も高さの高い子チップから離れるに従って順次高さが低くなるように上記親チップの表面に配置されていることを特徴とする半導体装置である。
また、請求項2記載の発明は、親チップの表面に複数個の子チップを接合してチップ・オン・チップ構造の半導体装置を組み立てる方法であって、互いに高さの異なる複数個の子チップを用意する工程と、上記複数個の子チップを、高さの低い子チップから順次上記親チップの表面に接合し、それらのうちで最も高さの高い子チップが上記親チップの表面の周縁部に位置し、当該最も高さの高い子チップから離れるに従って順次高さが低くなるように上記親チップの表面に配置する接合工程とを含むことを特徴とする半導体装置の組立方法である。
【0008】
この発明によれば、親チップの表面に接合される複数個の子チップは、それぞれ高さを異ならせてある。親チップの表面への複数個の子チップの接合に際しては、高さの低いものから順次に親チップの表面に接合していけば、子チップを親チップの表面に接合する際に用いるチップ保持機構が、すでに親チップの表面に接合されている半導体チップと干渉することがない。
したがって、複数個の子チップを極めて近接させて親チップの表面に配置することができるから、複数個の子チップを高密度に実装したチップ・オン・チップ構造の半導体装置を実現できる。」
に補正しようとするものである。

(2)補正の目的
上記補正において、補正前の請求項1、2の「固体表面」を「外部回路と接続される親チップの表面」乃至「親チップの表面」に限定し、同「半導体チップ」を「子チップ」に限定し、同「半導体装置」の前に「チップ・オン・チップ構造の」を付加して「チップ・オン・チップ構造の半導体装置」に限定する補正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、明細書の段落【0006】〜【0008】の補正は、上記請求項1、2の補正に伴う明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
次いで、特許請求の範囲の減縮を目的とする上記補正後の請求項1、2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

(3-1)補正後の本願発明
上記補正後の請求項1、2に係る発明(以下、「本願補正発明1」、「本願補正発明2」という。)は、平成15年12月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される、上記[2](1)の【請求項1】、【請求項2】に記載したとおりのものと認める。

(3-2)引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前の平成6年9月2日に頒布された特開平6-244238号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、下記の事項が記載されている。
「【請求項1】配線基板あるいは半導体素子の表面に、絶縁性樹脂を塗布し、前記配線基板の電極と前記半導体素子の電極を一致させ、前記半導体素子を前記配線基板に設置する工程A、前記半導体素子を加圧治具で加圧し、前記半導体素子の電極と前記配線基板の電極を電気的に接続させ、前記半導体素子を前記加圧治具で加圧した状態で前記絶縁性樹脂を硬化し、その後、前記加圧を除去し、前記半導体素子を前記配線基板に固定すると共に、前記半導体素子の電極と前記配線基板の電極を電気的に接続する工程Bを具備し、前記工程A、前記工程Bの繰り返しにより、厚みの異なる複数の半導体素子を前記半導体素子の中で厚みの薄い半導体素子より順に同一の加圧治具で前記配線基板に接続することを特徴とするマルチチップモジュールの実装方法。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)、
作用として、「【0010】【作用】・・・隣接する半導体素子のうち、先に実装された半導体素子の厚みより後で実装する半導体素子の厚みの方が厚く、後で実装する半導体素子を加圧する際に、加圧治具が先に実装された半導体素子に接触し加圧不良を起こすことなく、大きさ形状の異なる複数の品種の半導体素子をいずれの半導体素子よりも大きな加圧面を持つ同一の加圧治具で加圧するという目的が達成できる。」(段落【0010】)、
実施例として、「【0018】・・・半導体素子の厚みに差異を設けることにより、図1(b)において、半導体素子1bを加圧する際に半導体素子1aに加圧治具9が接触しないため、半導体素子1bは加圧不良を起こさずに済む。以降も同様に、半導体素子1bに隣接した半導体素子1cを同一の加圧治具9を用いて加圧し樹脂7を硬化していく。したがって、加圧治具9は半導体素子の品種間で大きさや形状がどのように変わっても、同一の治具で対応できるわけである。」(段落【0018】)が【図1】と対応させて記載されており、【図1】には、複数個の半導体素子1a,1b,1cの配線基板表面からの高さを異ならせてあり、上記複数個の半導体素子1a,1b,1cは、それらのうちで最も高さの高い半導体素子1cが上記配線基板表面の右側周縁部に位置し、当該最も高さの高い半導体素子1cから左側に離れるに従って順次高さが低くなるように上記配線基板の表面に配置されているマルチチップモジュールが示されている。

(3-3)対比・判断
上記(3-2)に摘記した事項を総合すると、引用刊行物には、「配線基板の表面に大きさ形状の異なる複数個の半導体素子を同一の加圧治具で加圧して、該複数個の半導体素子を該配線基板に固定すると共に、該半導体素子の電極と該配線基板の電極とを電気的に接続したマルチチップモジュールであって、上記複数個の半導体素子の上記配線基板の表面からの高さを異ならせてあり、上記複数個の半導体素子は、それらのうちで最も高さの高い半導体素子が上記配線基板の表面の周縁部に位置し、当該最も高さの高い半導体素子から離れるに従って順次高さが低くなるように上記配線基板の表面に配置されているマルチチップモジュール」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
そこで、本願補正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「半導体素子」、「固定すると共に・・・電気的に接続した」、「マルチチップモジュール」はそれぞれ、本願補正発明1の「チップ」、「接合した」、「半導体装置」に該当し、また、本願補正発明1の「親チップ」も引用発明のマルチチップモジュールの「配線基板」も共に、半導体チップを接合し搭載する固体であって、外部回路と接続される配線を有する点で共通しているといえるから、両者は、「外部回路と接続される固体表面に複数個のチップを接合した半導体装置であって、上記複数個のチップの上記固体表面からの高さを異ならせてあり、上記複数個のチップは、それらのうちで最も高さの高いチップが上記固体表面の周縁部に位置し、当該最も高さの高いチップから離れるに従って順次高さが低くなるように上記固体表面に配置されている半導体装置」の点で一致し、次の点のみで相違する。
(イ)本願補正発明1では、親チップの表面上に複数個の子チップを接合してチップ・オン・チップ構造としているのに対し、引用発明では、配線基板の表面上に複数個のチップを接合している点。

次いで、上記相違点(イ)について検討するに、多数個の子チップを互いに近接させ高密度に親チップ表面上に接合してチップ・オン・チップ構造としたものは本願出願前周知[例えば、特開昭59-117251号公報,第2頁左下欄7行〜右下欄2行,第2図、特開平1-157561号公報,第4頁右下欄7〜17行,FIG.2、特開平4-326757号公報,第8欄27〜34行(段落【0021】〜【0022】),第17欄47〜50行(段落【0067】),図1,図14(a),図16、特開平5-109977号公報,段落【0015】,【0016】,図7,図8、特開平11-168185号公報,段落【0095】,図11参照]であり、また、該周知の親チップへの子チップの接合が、引用発明の配線基板へのチップの接合と同様に、加圧治具による加圧不良を起こすことなく行えることは、配線基板と親チップのどちらであれ、それら固体表面上に複数個のチップを高密度で接合する点に変わりはなく、それらの接合手段、接合条件に格別な差異がないところから、当業者にとって普通に予測し得ることである。
そうすると、引用発明において、配線基板に代えて親チップとし、その表面に配線基板の場合と同様に複数個の子チップを接合してチップ・オン・チップ構造とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、それによってもたらされる、吸着コレットが既に親チップ上に接合されている子チップと干渉することがなく、複数個の子チップを極めて近接させて親チップ上に配置して高密度に実装できるという効果も、引用発明の効果から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明1は、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないため、本願補正発明2について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[3]本願発明
平成15年12月5日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1、2に係る発明は、平成14年5月27日付手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。
「固体表面に複数個の半導体チップを接合した半導体装置であって、上記複数個の半導体チップの上記固体表面からの高さを異ならせてあり、上記複数個の半導体チップは、それらのうちで最も高さの高い半導体チップが上記固体表面の周縁部に位置し、当該最も高さの高い半導体チップから離れるに従って順次高さが低くなるように上記固体表面に配置されていることを特徴とする半導体装置。」

[4]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物(特開平6-244238号公報)には、上記[2](3-2)に摘記した事項が記載されており、同引用刊行物には、上記[2](3-3)で認定したとおりの引用発明が記載されている。

[5]対比・判断
上記[2](3-3)で説示したとおり、本願補正発明1と引用発明とは、相違点(イ)のみで相違し、該相違点(イ)は、引用発明での複数個のチップを接合する対象が「配線基板」であるのに対し、本願補正発明1のそれは「親チップ」であるというものである。
しかしながら、本願発明1は、本願補正発明1の上記「親チップ」を「固体」としたものに相当し、本願明細書の段落【0001】の「この発明は、固体表面(配線基板や半導体チップの表面)に・・・」との記載によれば、該「固体」には「配線基板」が含まれることが明らかである。そうすると、本願発明1と引用発明とは、複数個のチップを「配線基板」に接合する点において重複し、その他の実質的な相違点も存在しない。
したがって、本願発明1と引用発明とは、実質的に相違するところがないので、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明であるといえる。

[6]むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明1が特許を受けることができないため、本願の請求項2に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-13 
結審通知日 2005-07-19 
審決日 2005-08-04 
出願番号 特願2000-78655(P2000-78655)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 113- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正加藤 浩一  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 瀬良 聡機
市川 裕司
発明の名称 半導体装置およびその組立方法  
代理人 稲岡 耕作  
代理人 川崎 実夫  

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