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審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 取り消して特許、登録 H04N 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H04N |
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管理番号 | 1123538 |
審判番号 | 不服2003-21332 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-03-22 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-11-04 |
確定日 | 2005-10-04 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第 18180号「両方向の動き推定方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 3月22日出願公開、特開平 8- 79768、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
【1】手続の経緯 本願は、平成7年2月6日(パリ条約による優先権主張1994年8月30日、大韓民国)の出願であって、原審において、平成14年9月20日付けで拒絶理由が通知され、平成15年7月28日付けで拒絶査定がなされた。 これに対して、平成15年11月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月4日付けで手続補正がなされたものである。 (なお、平成15年4月7日付けの手続補正は、補正をすることができる期間経過後の提出であることにより、手続却下の処分が確定している。) 【2】平成15年12月4日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成15年12月4日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成15年12月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、願書に最初に添付した明細書(以下、「出願当初の明細書」という。)の発明の詳細な説明の段落【0002】、【0005】、【0007】、【0010】〜【0012】、【0016】、【0017】、【0021】、【0022】、【0025】〜【0027】、【0030】、【0033】〜【0035】、及び願書に最初に添付した図面(以下、「出願当初の図面」という。)の図1を補正するものである。 そのうち、段落【0025】〜【0027】、【0030】は、以下に示す補正がなされ、その他の段落は、誤記の訂正または表現の変更のみの補正であり発明の内容に変更はない。 また、図1の補正は、出願当初の図面の図1の「再生メモリ37」の出力を「第1動きベクトル抽出部34」へ入力する構成(矢印)を、「再生メモリ37」の出力を「同一の動き物体抽出部33」へ入力する構成(矢印)に変更するものである。 (出願当初の明細書) 「【0025】 減算器31では、直ぐ以前に送られたフレームの形状情報と動き情報を利用して伝送端で参照するために、局部的に再生された画像が貯蔵されている再生メモリ37の出力データとフレームメモリ20に貯蔵された現在フレームデータの差成分を計算し、動き成分抽出部32では減算器31から出力される差成分からフレーム間の動き成分を抽出して実際に動きが発生した部分のみを貯蔵する。 【0026】 同一の動き物体抽出部33では、動き成分抽出部32から抽出された実際に動きが発生した部分のうち、同一の方向へ動きを有する成分を一団にして、同一の物体を1つの単位でインデクシングした後、それぞれのインデクシングした物体を順に貯蔵する。 【0027】 第1動きベクトル抽出部34では、同一動き物体抽出部33に貯蔵された同一の動きを有する物体を利用し、以前に再生され再生メモリ37に貯蔵された画像を参照しながら、現在の物体がどの方向へ移動したかを推定するが、この際物体を構成しているそれぞれの画素値と再生された画素値との平均絶対値(MAE:Mean Absolute Error)が最小になる部分を動きベクトルとして選択する。その結果、制限された一定の領域をサーチしながら捜された動きベクトルは第1動きベクトル抽出部34に貯蔵され、物体の境界成分は形状情報抽出部35に貯蔵される。このように、求められた形状情報と動き情報とはモードおよびデータ選択器50に入力される。」 「【0030】 動き推定部41では、以前フレームから求めた物体の形状情報と現在フレームの動き成分の領域による情報とを利用して物体の動きを推定し、第2動きベクトル抽出部42では、図4に示したように、以前フレームから求めた形状情報のみを利用し、形状情報に該当する再生画像が現在フレームのどの部分へ移動したかを示す動きベクトルを捜し出す。この際、MAE値が動き推定の基準として用いられる。」 (本件補正後の明細書) 「【0025】 減算器31では、フレームメモリ20から提供される現フレームデータと再生メモリ37から提供される局部的に再生された前フレームデータとの差成分を計算する。動き成分抽出部32では減算器31から出力される差成分からフレーム間の動き成分を抽出して実際に動きが発生された部分だけを貯蔵する。動き補償部36は、第1動きベクトル抽出部34から提供される動きベクトルによって、形状情報抽出部35から提供される形状情報によって構成される同一動きを有する物体単位で前フレームデータについて動き補償を行い、動き補償された前フレームデータは再生メモリ37に貯蔵される。【0026】 同一の動き物体抽出部33では、動き成分抽出部32から抽出された実際動きが発生される部分、すなわち制限された一定領域をサーチ領域にし、再生メモリ37から提供される局部的に再生された前フレームデータを参照して現フレームデータについて動き推定を行い、動き推定の結果生成される同一の動きベクトル値を有する領域を共に束ねて1つの物体でインデックシングして同一の動き物体として抽出する。この際、動き推定は従来と同様に、サーチ領域内に存在する現フレームデータの任意の画素値について平均絶対値(MAE)が最小の前フレームデータの画素値を探すことを意味する。【0027】 第1動きベクトル抽出部34では、同一動き物体抽出部33から提供される同一動き物体単位で動きベクトルを抽出して貯蔵し、形状情報抽出部35では、同一動き物体抽出部33から提供される同一動き物体の境界成分から形状情報を抽出して貯蔵する。このように求められた動きベクトル、すなわち動き情報と形状情報はモードおよびデータ選択器50に提供される。」 「【0030】 動き推定部41では、図4に示したとおり、動き成分抽出部32から抽出された現フレームで実際動きが発生される部分、すなわち制限された一定の領域をサーチ領域にし、サーチ領域内で前フレームから求められた物体の形状情報を用いて現フレームで各物体の動きを推定して、現フレームで該当物体が移動する位置を捜し出す。この場合もMAEが動き推定の基準として使われる。第2動きベクトル抽出部42では動き推定部41の動き推定の結果同一動き物体単位で動きベクトルを抽出する。」 2.補正の適否についての判断 本件補正の適否について以下に検討する。 (1)本件補正後の段落【0025】に記載される「動き補償部36は、第1動きベクトル抽出部34から提供される動きベクトルによって、形状情報抽出部35から提供される形状情報によって構成される同一動きを有する物体単位で前フレームデータについて動き補償を行い、動き補償された前フレームデータは再生メモリ37に貯蔵される。」は、出願当初の明細書に記載されていない事項であり、かつ、出願当初の明細書の記載からみて自明の事項でもない。 (2)本件補正後の段落【0026】に記載される「すなわち制限された一定領域をサーチ領域にし、再生メモリ37から提供される局部的に再生された前フレームデータを参照して現フレームデータについて動き推定を行い、動き推定の結果生成される同一の動きベクトル値を有する領域を共に束ねて」、「この際、動き推定は従来と同様に、サーチ領域内に存在する現フレームデータの任意の画素値について平均絶対値(MAE)が最小の前フレームデータの画素値を探すことを意味する。」は、出願当初の明細書では「同一の動き物体抽出部33」が有する構成ではなく「第1動きベクトル抽出部34」が有する構成として記載されており、「同一の動き物体抽出部33」が上記構成を有するという当該補正事項は出願当初の明細書に記載された事項ではない。 また、本件補正後の図1の「再生メモリ37」の出力を「同一の動き物体抽出部33」へ入力する構成(矢印)も、出願当初の図面には記載されていない事項である。 (3)段落【0027】、【0030】の補正は、拒絶の理由に示す事項についてする明りょうでない記載の釈明に相当する。 よって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書、又は図面に記載した事項の範囲内においてするものではない。 3.むすび 以上のとおり、本件補正は、平成6年改正前特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 【3】本願発明について 1.本願の明細書、図面 平成15年12月4日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の明細書及び図面は、願書に最初に添付した明細書及び図面である。 2.原査定の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、「発明の詳細な説明の実施例の欄の記載は不明瞭であり、本願発明の構成が当業者が容易に実施できる程度に記載されていないため、この出願は、明細書及び図面の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。」というものであり、次の点について記載不備が指摘されたものである。 (1)段落【0018】の「境界成分(形状情報)」が、境界であるか否かの2値情報であるのか、あるいは、境界部分の画素値を表す多値情報であるのかが明確でないため、段落【0019】の記載、及び、どのようにして「物体単位で動きを推定して動きベクトルを捜し出す」のかが把握できない。 (2)図1に記載の動き推定装置の各部の構成及び動作と、それらを踏まえた装置全体の構成及び動作が不明瞭である。特に、以下の点。 (a)段落【0025】の減算器31についての「直ぐ以前に送られたフレームの形状情報と動き情報を利用して」という記載は、直ぐ以前に送られたフレームの形状情報と動き情報をどのように利用するのかが不明である。 (b)段落【0026】に「同一の動き物体抽出部33では、動き成分抽出部32から抽出された実際に動きが発生した部分のうち、同一の方向へ動きを有する成分を一団にして、同一の物体を1つの単位でインデクシングし」と記載されているが、動き成分抽出部では、段落【0025】に記載のように単にフレーム間差分を計算しているだけであるから、動きの有無(動きが発生した部分)は判別できても、動きの方向を判別することはできない(すなわち、動き成分抽出部では、動きベクトルを検出しているわけではない)。 したがって、同一の動き物体抽出部において、一体どのようにして同一の方向へ動きを有する成分を一団にするのか、その構成が記載されていない。 (c)段落【0027】に「同一動き物体抽出部33に貯蔵された同一の動きを有する物体を利用し」と記載されているが、一体どのように利用して動きベクトルを抽出するのかが不明である。 また、図1を参酌すると、第1動きベクトル抽出部には、現在フレームデータ(フレームメモリ20の出力)自体は入力されていないが、現在フレームデータを用いずに一体どのようにして動きベクトルを抽出するのかも不明である。 (d)段落【0030】に「動き推定部41では、以前フレームから求めた物体の形状情報と現在フレームの動き成分の領域による情報とを利用して」と記載されているが、それらの情報を一体どのように利用して物体の動きを推定するのかが全く不明である。 また、上記動きの推定の結果(動き推定部41の出力)を、第2動きベクトル抽出部42で一体どのように用いるのかが何ら記載されていない。したがって、第2動きベクトル抽出部において、一体どのようにして動きベクトルを抽出するのか、その構成が全く不明である。また、段落【0030】には、第2動きベクトル抽出部42では、「以前フレームから求めた形状情報のみを利用し」と記載されているが、だとすると、動き推定部41は必要ないことになり、その点も不明瞭である(そもそも、図1では、第2動きベクトル抽出部42には、以前フレームから求めた形状情報は入力されていない)。 3.当審の判断 記載不備として指摘された上記(1)、(2)について検討する。 (1)記載不備(1)について 段落【0025】〜【0030】の記載によれば、本願の実施例は、以前のフレームの形状情報と現在のフレーム画像データを利用して一定の領域をサーチしながら画素値どうしを演算し、MAE値が最小になる部分を動きベクトルとして抽出するという動作を行っていることから、「境界成分(形状情報)」は多値情報であると把握できる。また、段落【0019】にも記載される動きベクトルの算出方法は、段落【0027】にもその概略が記載されているが、当業者にとって周知の技術である。 (2)記載不備(2)について 段落【0025】〜【0027】の記載は、「減算器31」、「動き成分抽出部32」、「同一の動き物体抽出部33」、及び「第1動きベクトル抽出部34」の各構成要素の説明に間違いと思われる点は見受けられるが、全体としては、「減算器31」と「動き成分抽出部32」により動きの存在する部分を抽出し、「同一の動き物体抽出部33」と「第1動きベクトル抽出部34」により、同一方向へ動きを有する成分を一団として物体単位でインデクシングし、物体単位の境界情報とその動きベクトルを合わせて貯蔵するものと把握できる。そして、その具体的方法も当業者であれば周知の技術から想定可能なものである。また、段落【0030】の記載についても同様である。 本願発明の特徴は、後方動き予測と前方動き予測を組み合わせて伝送することにより伝送情報量を低減可能にすることであって、上記の記載不備として指摘された部分はその具体的構成の一例にすぎないことを考慮すれば、本願の発明の詳細な説明は、当業者であればその技術内容が十分把握可能なものであり、当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載していないとはいえない。 4.むすび 以上のとおり、本願の発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2005-09-21 |
出願番号 | 特願平7-18180 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
WY
(H04N)
P 1 8・ 561- WY (H04N) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 菅原 道晴、國分 直樹 |
特許庁審判長 |
新宮 佳典 |
特許庁審判官 |
清水 正一 北岡 浩 |
発明の名称 | 両方向の動き推定方法および装置 |
代理人 | 野上 敦 |
代理人 | 八田 幹雄 |
代理人 | 藤井 敏史 |
代理人 | 奈良 泰男 |
代理人 | 宇谷 勝幸 |
代理人 | 齋藤 悦子 |