• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61B
管理番号 1123579
審判番号 不服2001-4170  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1994-11-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-03-19 
確定日 2005-07-20 
事件の表示 平成4年特許願第510211号「レーザ透過性の針を用いた装置」拒絶査定不服審判事件〔平成4年10月15日国際公開、WO92/17243、平成6年11月10日国内公表、特表平6-509949〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 〔1〕手続の経緯・本願発明
本願は、1992年3月24日(パリ条約による優先権主張、外国庁受理1991年4月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年12月1日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。)
「レーザ光を提供するレーザと、
光透過材料で形成され、略円筒状の外側表面と組織を刺すことができる閉じた端部組織侵入先端とを具備する細長い光放出器と、
該光放出器内に配置された光拡散材料と、
該光放出器内に配置された末端を有する、レーザ光を伝達するための光ファイバとを具備し、
該光ファイバの該末端が、該光放出器の該端部組織侵入先端の内側表面から所定の距離を置いて位置付けられている
ことを特徴とする前立腺の良性の拡大を処理する装置。」

〔2〕引用例
これに対して、当審における、平成16年5月25日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の出願の日前の刊行物1(欧州公開特許第0292695号公報。なお、平成16年5月25日付け拒絶理由通知書において、「刊行物1:欧州特許第0292695号明細書」とあるのは、「刊行物1:欧州公開特許第0292695号明細書」の誤りである。)には、物体の円周方向照射のための装置に関して、FIG.1〜6とともに以下の事項が記載されている。
(1)「Die Erfindung betrifft eine Einrichtung zur zirkumferenziellen Bestrahlung von Objekten, insbesondere von Gefaessen, Hohlorganen und soliden Geweben, mittels optischer Strahlung hoher Intensitaet, welche ueber eine flexible Lichtleitfaser gefuehrt wirt.」(公報第1欄第1〜6行、なお、翻訳は、同公報の米国特許ファミリーである米国特許第4878725号明細書の同じ箇所を参照にして、当審が行った。以下この欄において同じ。「本発明は、可撓性の光ファイバーを介して伝達される高密度光放射により、物体、特に血管、中空臓器、中実組織を円周方向に照射するための装置に関する。」)
(2)「Diese radiale Komponente Laesst sich nun noch weiter vergroessern, wenn gemaess Patentanspruch 3 um das distale Ende der Lichtleitfaser herum eine Grenzflaeche zweler transparenter Medien mit unterschiedlichem Brechungsindex geschaffen wird, auf die die Strahlung schraeg auftrifft. Dies laesst sich in einfacher Weise dadurch realisieren, dass um das distale Ende eine Kappe aehnlich derjenigen aus “Laser in Surgery and Medicine”geschoben wird, die jedoch keine Massnahmen zur diffusen Streuung des Lichtes aufweist, sondern moeglichst klar und transparent ist. Je nach Anwendungsfall ist dann dafuer zu sorgen, dass die an die Innenwand und an die Aussenwand der Kappe angrenzenden Medien unterschiedliche Brechungsindezes haben,was beispielsweise dadurch bewirkt wird ,dass der Hohlraum innerhalb der Kappe mit Luft und die Aussenwand der Kappe entweder mit dem zu bestrahlenden Gewebe,der Gewebefluessigkeit oder mit einer Spuelfluessigkeit in Beruehrung steht.」(第2欄第16〜35行、「この半径方向成分は、もし特許請求の範囲の請求項3に従って、異なった屈折率を有する二つの透光手段の境界面が、放射光がある角度をもって起こるところの光ファイバの末梢端部周辺に設けられたならば、より増加したであろう、即ち、それは普通の方向から異なっていることを意味する。これは、“Laser in Surgery and Medicine”からと同様なキャップを、光を拡散させ散乱させるための手段ではないができるだけ鮮明で透明なものでできた抹消端部の上に滑り込ませることによって簡単な方法で理解できるであろう。出願に従って、キャップの内壁及び外壁の近くの媒体が違った屈折率を有し、それは例えばキャップの内側の中空空間が空気と接触し、キャップの外壁が光が放射される組織、組織の液体又はあふれた液体に接触することによって生ずることに注意しなければならない。」)
(3)「Bei dem in Fig.3 dargestellten Ausfuehrungsbeispiel ist das distale Ende der Lichtleitfaser 30 mit einer transparenten Teflonkappe 31 umgeben, die mit dem Faserende einen luftgefuellten Hohlraum 34 einschliesst. Das distale Ende der Lichtleitfaser 30 mit der Kappe 31 steckt tief in einem zu behandelnden Gewebe 33. Die kegelmantelfoermig aus dem Lichtleiter 30 austretende Laserstrahlung 32 wird hier an der Grenzflaeche Luft-Gewebe bzw. Gewebefluessigkeit entsprechend den optischen Eigenschaften gebrochen; die optischen Eigenschaften der Teflonklappe 31 koennen unberuecksichtigt bleiben. Mit einer solchen Anordnung lassen sich z.B. tief liegende arrhythmogene Strukturen im Myokard koagulieren.」(第6欄第1〜15行、「Fig.3 に示された具体例では、光ファイバー30の末梢端部は、ファイバー端部を有する空気で満たされた空隙34を包み込んだ透明なテフロンキャップ31により包囲されている。キャップ31を有する光ファイバー30の末梢端部は、処理される組織33内に深く没入する。円錐状表面の形状で光ファイバー30からから発したレーザー放射光32は、空気と組織又は組織の液体との境界面で光学的特性に従って分散する。すなわち、テフロンキャップ31の光学的特性は考える必要がない。そのような装置により、例えば、心筋層の深部の不整脈遺伝組織を、凝固させることができる。」)
(4)「Bei dem in Fig.4 dargestellten Ausfuehrungsbeispiel ist am distalen Ende einer Lichtleitfaser 40 eine tropfen- bzw. olivenfoemige Kappe 41 aus Glas angeordnet, die eine Eintrittsbohrung 44 fuer die Lichtleitfaser 40 aufweist. Das distale Ende der Lichtleitfaser 40 schliesst mit der Bohrung 44 wiederum einen luftgefuellten Hohlraum 45 ein, so dass die aus der Lichtleitfaser 40 austretende Laserstrahlung 42 an der Wandung der Bohrung 44 erneut gebrochen und somit der Strahlungskegel noch weiter aufgeweitet wird. Mit einer derartigen Einrichtung lassen sich z.B. Tumore 43 im Oesophagus und in den Bronchen koagulieren.」(第6欄第16〜28行、「Fig.4に示された具体例には、オリーブの実の形をしたガラスキャップ41が、光ファイバー40のための入口穴44を有する末梢端部に配置されている。光ファイバー40の末梢端部は、穴44で、すなわち空気に満ちた空隙45で包囲されている。光ファイバー40を離れたレーザー放射42が穴44の壁で再び分散し、これにより放射の円錐がさらに大きくなる。このような装置により、例えば食道の或いは気管支の腫瘍43を凝固させることができる。」)
上記の記載及びFig.3、4に示された内容を総合すると、刊行物1には、以下のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「レーザ光を提供するレーザと、ファイバー端部をテフロンキャップ31で包み込み、該テフロンキャップ31は透明であり、該テフロンキャップ31を有する光ファイバー30の末梢端部は、処理される組織33内に深く没入し、該テフロンキャップ31を有する光ファイバー30は、レーザ光を伝達し円錐状のレーザ放射光32を発し、光ファイバの末端は、テフロンキャップ31端部組織没入先端の内側表面から所定の距離を置いている、腫瘍等の処理装置。」

〔3〕対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、後者の「透明」なテフロンキャップ31は前者の「光透過材料」で形成された光放出器に相当し、後者は円錐状のレーザ放射光を発するから技術常識からみて光ファイバーは円筒状の外側表面を有すると認められ、後者の「テフロンキャップ31を有する光ファイバー30の末梢端部は、処理される組織33内に深く没入」することは前者の「略円筒状の外側表面と組織を刺すことができる閉じた端部組織侵入先端とを具備する細長い光放出器」を有することに相当し、後者の「テフロンキャップ31を有する光ファイバー30がレーザ光を伝達することは前者の「光放出器内に配置された末端を有するレーザ光を伝達するための光ファイバとを具備」することに相当し、後者の「光ファイバの末端は、テフロンキャップ31端部組織没入先端の内側表面から所定の距離を置い」ていることは前者の「光ファイバの該末端が、該光放出器の該端部組織侵入先端の内側表面から所定の距離を置いて位置付け」られていることに相当するものと認められる。また、光ファイバーをレーザー放射が通り分散することから、「レーザ光を提供するレーザ」を有することは技術常識から当然である。
そうすると、両者は、「レーザ光を提供するレーザと、
光透過材料で形成され、略円筒状の外側表面と組織を刺すことができる閉じた端部組織侵入先端とを具備する細長い光放出器と、
該光放出器内に配置された末端を有する、レーザ光を伝達するための光ファイバとを具備し、
該光ファイバの該末端が、該光放出器の該端部組織侵入先端の内側表面から所定の距離を置いて位置付けられている
組織を処理する装置」の点で一致しており、以下の点で相違する。
(相違点1)
光放出器において、前者は、「光放出器内に配置された光拡散材料」を有しているのに対し、後者は、レーザ光を屈折して拡散させてはいるが、「光拡散材料といえるもの」を備えているのかどうか不明である点。
(相違点2)
組織を処理する装置において、前者は「前立腺の良性の拡大 」を処理したのに対し、後者は腫瘍等を処理した点。

上記相違点について検討する。
上記相違点1について、「光拡散材料」が例えばレンズのように材料の形状を利用して拡散するものも含むとすれば、刊行物1あるいは刊行物5に示されるといえるし、金属のような不透過物に衝突させて拡散する材料を意味するとしても、そのような材料を用いて光拡散させることは国際公開WO84/4879号のFig.2により従来周知の技術であるから、いずれにしても、相違点1における本願発明の構成は、引用発明に従来周知の技術を適用して当業者が容易に想到しうるものと認められる。
上記相違点2について、前立腺をレーザ光で処理することは、従来周知の技術(特開平1-94843号公報、特開昭62-213748号公報等参照。)であるから、相違点2における本願発明の構成は、引用発明に従来周知の技術を適用して当業者が容易に想到しうるものと認められる。

そして、本願発明の作用効果をみても、引用発明及び従来周知の技術から当業者が容易に予測できる程度のものであって格別なものでない。

〔4〕むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-07 
結審通知日 2005-02-15 
審決日 2005-02-28 
出願番号 特願平4-510211
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 寛見目 省二  
特許庁審判長 大元 修二
特許庁審判官 一色 貞好
和泉 等
発明の名称 レーザ透過性の針を用いた装置  
代理人 小田島 平吉  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ