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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1123711
審判番号 不服2002-17910  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-07-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-17 
確定日 2005-09-21 
事件の表示 平成11年特許願第361820号「分解可能な噴霧ヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月11日出願公開、特開2000-191061〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 本願発明
本願は、平成11年12月20日(優先権主張1998年12月29日、仏国)の出願であって、その請求項1ないし13に係る発明は、平成14年5月22日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。
「【請求項1】流体製品(P)をジェットまたはスプレーの形態で噴霧するための噴霧器(1)に装着することを意図した噴霧ヘッド(18,118)であって、
-前記噴霧器のポンプまたはバルブ(12)のステム(14)に連通する流入コンジット(30a〜30c;130a〜130c)を備えたボディ(20,120)と、
-前記流入コンジットのクリーニングを行うために前記流入コンジットを露出させ得るよう前記ボディに対して移動可能に設けられているとともに、着脱可能な態様で前記流入コンジットに対して連通状態とされた噴霧オリフィス(24,124)を備えた可動部材(22,122)と、
を具備してなり、
前記噴霧オリフィスは、その全体が前記可動部材内において形成されており、
前記流入コンジットのクリーニングを可能とするよう、前記可動部材(22,122)は、前記製品の前記ジェットまたはスプレーの吐出方向(Y)とは異なる方向(X)において、前記ボディに対して移動可能とされていることを特徴とする噴霧ヘッド。
【請求項2】ないし【請求項13】(記載を省略)」
(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2 引用例の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、米国特許第2989251号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
a「この発明は、バルブステムと、加圧詰めされた物質用、特に、一般に推進剤を構成する液体媒体中に分散する有効な固形微粒子成分を含む物質、一般に推進剤が含まれる物質用の操作ボタンに関する。……この種の加圧詰めされた物質を噴霧する際、微細形状の固体成分が均一に散布される様なスプレー、パターンがより望まれる。」(1欄10ないし20行の翻訳)
b「前記図面中で、1は、バルブステムの上端部分であり、その下端は、圧力容器内に設置されたバルブに取り付けられている」(2欄4ないし6行の翻訳)
c「通路3は、ステムの内部又は内腔から、ステムの円形凹所2に、該凹所の中心からずれて、好ましくは接線方向に連通している。」(2欄11ないし14行の翻訳)
d「6はバルブの操作ボタンである。‥‥それは、バルブステムの上端部を収容する形状のソケット7と、側面にソケットから外部凹所9に連通する放出オリフィス8を備えている。この形式のボタンは、多くの人々の使用により、通常のスプレーパターンの良好な形成に高い効果があることが証明されているので、好ましい。」 (2欄20ないし28行の翻訳)
以上の記載及び図面によれば、引用例1には、
「液体中に分散する有効な固形微粒子成分を含む物質を、微細形状の固体成分が均一に分散される様なスプレーパターンで噴霧するための部材であって、バルブステムの内部に連通する通路3と円形凹所2を備え、且つ、下端が圧力容器内に設置されたバルブに取り付けられているバルブステムの上端部分と、通路3に連通する円形凹所3に面した放出オリフィス8を備えたバルブの操作ボタン6とを具備し、放出オリフィス8は、その全体がバルブの操作ボタン6内に形成されている噴霧部材」
の発明が記載されていると認められる。

同じく原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である、国際公開第96/31412号パンフレット(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下の記載がある。
e「本発明は、ジェット又はスプレーとして流体を放出するノズル開口を有する中空本体を包含し、この本体が加圧流体を流入させるための入り口を有する第1部分と、この第1部分に相対的に移動できる第2部分とを包含する種類の、噴射装置で用いるノズル装置の改良に関する。」(1頁2ないし8行)
f「第1〜6図を参照して、ノズル装置10は、本体11と、入口12Aに通じる供給パイプ12と、清掃部材13とを包含する。本体11は、入口12Aが開口している接合部すなわち室15の部分を構成する第1部分14と、分離可能な第2部分16とを包含する。これら2つの部分14、16は、装置の作動状態のとき、凹部17Bの境界をなす表面部分17間の境界面17Aのところで互いに衝合して、それらの間に室15を構成する。第1、3図に示すように、供給通路18(第6図)がこの室15から装置のノズル端30のところの開口またはオリフィス19(第6図)に通じている。‥‥部分16は第1部分14にあるくぼみにすべりばめされており、通路18、オリフィス19の軸線に対して直角の方向Aに移動するように拘束されており、その結果、表面17を分離して通路、すなわち開口またはオリフィス19を分割(すなわち、開放)することができ、第1図では室15も形成している。 」(9頁4ないし25行)
g「上記ノズル装置のすべてのバージョンにおいて、第2部分は第1部分から分離して空所を露出させ、拭えるように配置する。」(11頁26ないし28行)
以上の記載及び図面によれば、引用例2には、
「互いに衝合して室15、供給通路18を構成する第1部分14と第2部分16とを有し、供給通路18はオリフィス19に通じており、第2部分16はオリフィス19の軸線に対して直角の方向Aに移動するように配置され、第2部分を第1部分から分離して空所を露出させて拭えるようにした、噴射装置で用いるノズル装置」
の発明が記載されていると認められる。

3 対比
本願発明と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「液体中に分散する有効な固形微粒子成分を含む物質」は、本願発明の「流体製品」に相当し、以下同様に、「スプレーパターン」は「ジェットまたはスプレーの形態」に、「噴霧部材」は「噴霧ヘッド」に、「通路」及び「円形凹所」は「流入コンジット」に、「放出オリフィス」は「噴霧オリフィス」に、「バルブの操作ボタン」は「噴霧オリフィスを備えた部材」にそれぞれ相当する。また、本願発明の「流入コンジットを備えたボディ」と引用例1記載の発明の「バルブステムの上端部分」は、共に「流入コンジットを備えた部材」ということができ、さらに引用例1記載の発明の「噴霧部材」が、噴霧器に装着されるものであることは明らかであるから、両者は、
「流体製品をジェットまたはスプレーの形態で噴霧するための噴霧器に装着することを意図した噴霧ヘッドであって、前記噴霧器のバルブのステムに連通する流入コンジットを備えた部材と、前記流入コンジットに対して連通状態とされた噴霧オリフィスを備えた部材と、を具備してなり、前記噴霧オリフィスは、その全体が前記部材内において形成されている噴霧ヘッド」
である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1
本願発明では、流入コンジットを備えた部材が、パルブのステムとは別の「ボディ」であるのに対して、引用例1記載の発明では、バルブのステムの上端部分である点。
相違点2
本願発明では、噴霧オリフィスを備えた部材が、流入コンジットのクリーニングを行うために流入コンジットを露出させ得るよう流入コンジットを備えた部材に対して移動可能に設けられているとともに、着脱可能な態様で流入コンジットに対して連通状態とされた噴霧オリフィスを備えた可動部材であり、可動部材は、流入コンジットのクリーニングを可能とするよう、前記製品のジェットまたはスプレーの吐出方向とは異なる方向において、流入コンジットを備えた部材に対して移動可能とされているのに対して、引用例1記載の発明では、噴霧オリフィスを備えた部材が可動であるのか否か不明である点。

4 相違点の検討
そこで、上記相違点について検討する。
相違点1について
噴霧ヘッドを構成する流入コンジットを備えた部材を、バルブのステムとは別の「ボディ」とすることは、引用例2にも見られるように、当業者が必要に応じ適宜なし得たことである。

相違点2について
引用例2には、「互いに衝合して室15、供給通路18を構成する第1部分14と第2部分16とを有し、供給通路18はオリフィス19に通じ、第2部分16はオリフィス19の軸線に対して直角の方向Aに移動するように配置され、第2部分を第1部分から分離して空所を露出させて拭えるようにした、噴射装置で用いるノズル装置」の発明が記載されている。
引用例2記載の発明の「室15、供給通路18」、「オリフィス19」、「オリフィス19の軸線に対して直角の方向A」は、それぞれ本願発明の「流入コンジット」、「噴霧オリフィス」、「製品のジェットまたはスプレーの吐出方向とは異なる方向」に相当するから、引用例2記載の発明は、本願発明でいう「可動部材は、流入コンジットのクリーニングを可能とするよう、製品のジェットまたはスプレーの吐出方向とは異なる方向において、ボディに対して移動可能とされている」との事項を開示している。
ところで、引用例1記載の発明において、本願発明の「噴霧オリフィスを備えた部材」に相当する「バルブの操作ボタン」が、「流入コンジットを備えた部材」である「バルブステムの上端部分」に対しどのような状態で取り付けられているのか明らかではないが、「バルブの操作ボタン」が「バルブステムの上端部分」とは別の部材として構成されていることは、引用例1の図面等から明らかであり、引用例1記載の発明において、本願発明の「流入コンジット」に相当する「通路及び円形凹所」を露出させて拭えるように、「バルブの操作ボタン」を、「バルブステムの上端部分」に対して移動可能に設け、相違点2に係る本願発明の事項とすることは、引用例2記載の発明に接した当業者であれば容易に想到し得たことである。

しかも、本願発明が奏する作用、効果も、引用例1及び2記載の発明から当業者が予測できる範囲のものであって、格別のものではない。

5 むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び2記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-14 
結審通知日 2005-04-19 
審決日 2005-05-06 
出願番号 特願平11-361820
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石田 宏之  
特許庁審判長 鈴木 公子
特許庁審判官 山崎 豊
渡邊 豊英
発明の名称 分解可能な噴霧ヘッド  
代理人 志賀 正武  
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