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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04L
管理番号 1123718
審判番号 不服2003-3454  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-09-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-04 
確定日 2005-09-20 
事件の表示 平成 7年特許願第331271号「コンテンション処理方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月13日出願公開、特開平 8-237281〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年12月20日の出願(パリ条約による優先権主張1994年12月21日、(US)米国)の出願であって、平成14年12月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年3月4日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに平成15年4月3日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年4月3日付けの手続補正についての検討
[結論]
平成15年4月3日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(2-1)補正後の本願請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】共有の資源に対してアクセスする複数の競合者の各々で実行するコンテンション処理方法において、
前記競合者の各々に固有な、所定の赤外信号シーケンスの個々を赤外トランシーバに送信するステップと、
前記個々の信号の送信に応答して前記赤外トランシーバから応答信号を受信するステップと、
前に送信された信号がそれに応答して受信された応答信号に対して所定の関係を有するときにのみ、前記シーケンスの次の信号を使用して前記送信及び受信ステップを継続し、その他の場合は前記コンテンション処理方法から排除するステップとからなり、前記所定の関係は、前記競合者の各々から受信した所定の赤外信号シーケンスを識別し、その結果の信号を論理ORすることに基づくものであり、
該方法はさらに、
前に送信された前記信号がそれに応答して受信された前記応答信号に対して所定の関係を有する間に前記送信及び受信ステップが所定の回数遂行されたときには、前記資源の制御を捕捉するステップを含むことを特徴とするコンテンション処理方法。」と補正された。
上記補正は、「送信された信号がそれに応答して受信された応答信号に対して所定の関係を有する」の「所定の関係」を、「前記所定の関係は、前記競合者の各々から受信した所定の赤外信号シーケンスを識別し、その結果の信号を論理ORすることに基づくものであり」と限定したものであり、特許請求の範囲の請求項1は、減縮を目的とするものに該当し、特許法第17条の2第4項第2号に適合する。また、上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内になされたものであるから、特許法第17条の2第3項の規定に適合している。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際、独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2-2)引用例に記載された発明
原審の拒絶の理由に引用された英国特許出願公開第2252222号明細書(以下、「引用例」という。)には、次のような旨の記載がある。

イ)「データ通信システムでの衝突の解決方法
例えば、”手を使わない”個々の位置制御またはアクセス制御のためのデータ通信システムは、マスタートランシーバ(M)と複数のスレーブトランシーバ(A,B)からなり、スレーブ局は、固有のIDメッセージをあるコード(マンチェスター符号2)に従って、マスターに送信し、あるコードとは、2進の値が、赤外線通信により行われ、各ビット区間の第一の部分か第二の部分に、データが発生するものである。マスターは、一ビット置きに、最後に受信した値に相当する2進の値を送り返す。衝突が生じた場合は、しかしながら、同じビット区間に、異なるスレーブから異なる値が送信されるので、マスターは、ある決められた値を送り返し、スレーブは、その値を送信せず、送信を中止する。このプロセスが、複数のスレーブの内、一つのスレーブが、送信し、そのスレーブの全体のメッセージの全てのビットが送り返されるまで、続けられる。そのスレーブは、送信を止めると、次に、残りのスレーブが、個々のスレーブのメッセージが送信され、送り返されるプロセスがなされ、それが全てのスレーブで行われるまで、再び続けられる。」(抄録)

ロ)「データ通信およびそれに関連する改良
この発明は、データ通信、特には、複数の離れた装置(ここでは、”スレーブ”という。)が、他の装置(ここでは、”マスター”という。)に同時に共通通信チャネルを使用して通信するシステムにおいて、衝突を解決するために設計された通信プロトコルについてのものである。
この発明と特に関係する”マスタースレーブ”通信のある分野には、いわゆる”手を使わない”アクセス制御システムがある。そのようなシステムでは、近づいている人が、出入り口に近づいたとき、特別な処理をすることなく、通過するのを許可された人であるかを決定できるように、”スレーブ”は、異なる人々により、個々のトークンが身につけられるか、運ばれ、建物の出入り口に関連した”マスター”制御ユニットに個々のIDコードを送信できる。同じようなシステムは、建物内の人々の居場所をモニターするために、使用され得る。例えば、病院内の患者さんが、”スレーブ”トークンを身につけ、トークンの送信は、施設中に配置され、中央監視局に接続されている”マスター”制御ユニットにより、受信される。そのようなシステムは、赤外線、超音波、無線発信、電磁誘導または、容量結合技術を含むいろいろな通信媒体により、作動する。特に、しかしながら、この発明は、特別な分野、通信媒体に制限されることなく、無線、もしくは、有線のデータ通信環境で、同時にスレーブからマスターへの通信で起こる衝突を解決する一般的な使用で見られるかもしれない。」(第1頁第1行〜第2頁第4行)

ハ)「通信期間は、制御ユニットM(例えば、”マスター”)が、予め定義された信号を放送するところから始まる。この予め定義された信号は、域内のトークン(例えば、”スレーブ”)により解釈され、各機器のIDコードを送信を促す。この信号もまた、次のデータ交換の同期が維持されるような情報を含む。第2図、第3図で示される簡単な例では、ある領域でたった二つのトークンしかない。すなわち、スレーブA、スレーブBで、どちらも4ビット符号を送信するもので、スレーブAは、”1010”、スレーブbは、”1001”である。結果として、マスターからの要求信号に応じて、両スレーブは、同時に、自分のIDコードの最初のビットを送信する。この場合では、両者とも”1”である。マスターは、要求信号に続くスレーブからの通信を聞く。すなわち、領域内のスレーブのコードの合成を受信する。マスターは、ビット期間の最初の半分(すなわち、全てのスレーブが、”0”を送るような)にある信号のみを受信するかもしれないし、ビット期間の最後の半分(すなわち、全てのスレーブが、”1”を送るような)にある信号のみを受信するかもしれないし、ビット期間の両方とも(2以上の複数のスレーブが、あるものは”0”を送信し、別のものは”1”を送信する)にある信号を受信するかもしれない。さらに、もし、領域内のスレーブがいない場合、マスターは、通信を受信しない。マスターは、スレーブからの信号を受けて、次の規則に従って、次のビット期間に信号を送信する。

”0”を受信した場合 ”0”を送信
”1”を受信した場合 ”1”を送信
”0”も”1”も受信した場合 ”1”を送信
何も受信しなかった場合 別の要求信号を送信

示された例では、スレーブA、Bとも、ビット区間1で、”1”を送信したので、マスターは、ビット区間2で”1”を送り返す。全てのスレーブは、この送信をモニターする。もし、スレーブが受信した値が、スレーブの送信した値であるならば、スレーブのメッセージの次のビットを送信し始める。もし、そうでなければ、スレーブは、送信を止める。これは、2つのメッセージが、特定のビットで違う場合、”1”を送信したスレーブは、送信を続け、”0”を送信したスレーブは、送信を中止する。この例では、スレーブA、Bとも、それぞれ最初に送信した”1”を受信したので、ビット区間3で、それぞれの次の第2のビットを送信し始める。、ここでは、どちらも”0”である。さらに、マスターにより、”0”が送り返されるので、二つのスレーブは、次の個々のビットを送信する。

スレーブAとスレーブBの第3のビットは違うので、ビット区間5では、マスターは、区間の両方とも信号を受信する。これは、衝突と認識し、上述したルールに従い、この送信を”1”として、ビット区間6で、”1”を送信する。スレーブAは、先のビット区間で送信したのと同じ値なので、最後のビットの送信を始める。対して、スレーブBは、先のビット区間で送信した値と同じ値とは認識できなかったので、送信を中止する。マスターが、ビット区間7で、受信した値は”0”だけだったので、ビット区間8で、”0”を送り返す。

8ビット区間の最後で、それ故、マスターは、スレーブAの完全なIDコードを受信し、送り返すことになる。このコードを読んで、マスターは、確認信号を送信する。この確認信号を、領域内の全ての他のスレーブが、それぞれのIDコードを送信し始めるための新たな要求と解釈する。この示された例では、8ビット区間の第2のブロックで、スレーブBの送信が行われる。スレーブAは、全てのメッセージがマスターにより送り返されたことにより、メッセージの通信に成功したことを知り、この残りの通信区間では、送信しない。他の場合、もちろん、他のスレーブからのメッセージは、スレーブBに優先して読まれる。スレーブBのメッセージが、受信され、マスターに送り返された場合、別の確認信号を送信する。もし、領域内に他のスレーブが存在しないならば、マスターは、通信を閉鎖するかどうかを検討し、その後、スレーブが領域内にいる場合、新しい要求信号が送信され、全体のプロセスが繰り返される。スレーブから同じマスターへの連続的にIDコードの不必要な繰り返しが起こらないよう、スレーブは、コードを全てを最後に送信してからある予め決められた時間内に、同じマスターに再送信しないようプログラムされるかもしれない。他のマスターからの要求信号は、スレーブが、新しいマスターの領域に移動したことを検出できるよう符号化される。

第3図で示される例では、もちろん、この発明に関連したとても簡単なシステムの例である。この発明の他の状態及び実施例は、ひとつの通信期間で、ひとつのマスターが通信する潜在的なスレーブの数は、非常に多くてもよく、4ビット以上のIDコードを持っていても良い。より長いビット長の多数のスレーブメッセージ間の衝突を解決するためのプロトコルの原則は、全く同じである。一般的に言うと、スレーブ群が、異なるNビット長のメッセージを送信する場合、上記プロトコルは、2Nビット区間後に、マスターが二進数で表現されたもっとも長いメッセージを受信するよう保証し、さらに、そのメッセージを送信したスレーブが、マスターから送り返され、それ故、そのメッセージの受信が成功したことを知り、次の2Nビット区間で、マスターが次に長いメッセージを受信し、送り返す。実用的な実施例では、各ビットは、1ミリ秒を占有し、88ビット長のメッセージを有するスレーブが10個ある通信区間は、いろいろな要求信号、確認信号を含めて、2秒の領域で行われる。」(第5頁第18行〜第8頁第21行)

上記記載を総合し、技術常識を勘案すると、引用例には、
「複数のスレーブがマスターに情報を送信しようと競合して、共通通信チャネルを使用して通信する方法において、
スレーブは、各スレーブ機器のIDコードの1ビットを赤外線で送信し、
複数のスレーブからのIDコードの1ビットの送信に応答して、マスターから信号を赤外線で受信し、
前に送信したIDコードの1ビットと受信された信号が同じ場合、前記IDコードの次のビットを使用して、前記送信、受信を行い、その他の場合は、送信を中止し、
前に送信されたIDコードの1ビットがそれに応答して受信された前記信号が同じ間、前記送信及び受信を所定の回数行って、IDコードが送信されたスレーブを認識することを含む通信する方法」の発明が記載されているものと認められる。(以下、「引用例に記載された発明」という。)

例えば、特開平5-56062号公報(以下、「周知例1」という。)には、次の事項が記載されている。

イ)「【0019】【実施例】
以下、本発明の実施例を図を用いて説明する。
【0020】図1に本発明が適用されるシステムの基本的な構成を示す。このステムは、中央の中継装置101と複数の端末111,112,113,…,118とを接続する双方向リンク121,122,123,…,128を持ち、端末間のデータ交換を行なう。なお双方向リンクの伝送媒体には、ツイストペア線、同軸ケーブル、光ファイバなどが考えられる。ここでは伝送媒体として光ファイバを用いることにする。また、端末111は制御端末を兼ねるものとする。
【0021】先ず、制御端末111は一定時間、伝送路にデータがないことを検出するとポーリングデータを送信する。ポーリングデータは中継装置によって全端末111〜118へ中継される。ここで双方向リング121〜128の伝送遅延時間が等しい場合、ポーリングデータはどの端末にも同時に到達する。
【0022】ポーリングデータを受信した端末は送信すべきデータがあれば、図2に示すように送信すべきデータ203の前に、競合解決パターン201と遅延データ202を付加して送信を開始する。ここで競合解決パターン201のビット数はネットワークに接続される端末数以上とし、各端末に1ビットずつ割り当てておく。ここでは端末数は“8”なので競合パターンは8ビットとし、端末111から順にLSB(最下位ビット)から割り当てる。各端末は競合解決パターンの中で自分に割り当てられたビットを“1”に、他のビットを“0”にして送信する。例えば、端末111が送信する競合解決パターンは(01H)であり、端末112が送信する競合解決パターンは(02H)である。
【0023】複数の端末に送信すべきデータがある場合、各端末に同時に到着したポーリングデータがトリガとなって、複数の端末が同時に競合解決パターン201から送信を開始する。従って、中継装置においては競合解決パターン201の衝突が発生するが、各端末が同時に送信した競合パターン201は伝送遅延時間が等しいことから同時に中継装置101に到着するため、衝突後の中継データは各端末からの競合解決パターンの論理和となっている。例えば、端末111の競合解決パターン(01H)と端末112の競合解決パターン(02H)の論理和である(03H)として中継装置101から再び全端末111〜118に送られる。
【0024】遅延データ202は、端末が送信した競合解決パターンが中継装置によって再び戻ってくるまでの間送信する。遅延データ202の内容は意味を持たない。競合解決パターン201を送信した端末は、遅延データ202の送信中に、他の端末の競合解決パターンと論理和をとった中継データを受信する。これによって送信を希望している端末が他にいるかどうかを知ることができる。
【0025】他に送信を希望している端末がない場合は、続いて送信データ203を送信する。
【0026】他に送信を希望している端末がある場合は、予め決められたアルゴリズムに基づき送信を続ける端末を決定する。例えば、優先順位の低い端末は送信を中断し、優先順位の高い端末が送信を続ける。そして、中継された競合解決パターンは全端末が受信するので、各端末はどの端末が送信権を獲得したかを記憶しておく。次に競合が発生した場合は、中継された競合パターンの中から、前回送信権を獲得した端末の次に優先度の高い端末が送信権を獲得する。前回送信権を獲得した端末が最も優先度の低い端末の場合は、最も優先度の高い端末が送信権を獲得する。送信を続けるか中断するかの判断は遅延データ202の送信中に行なう。」(第3頁第3欄第41行〜第4頁第5欄第5行)

上記周知例1により、「端末から競合解決パターンを中継装置に送信し、中継装置で、各端末からの競合解決パターンの論理和をとって、各端末に送り返し、送信権を獲得すると伝送媒体を占有する方法」は、周知である。

(2-3)対比
本願補正発明と引用例に記載された発明を対比する。
a.引用例に記載された発明の「スレーブ」は、複数のスレーブがマスターに情報を送信しようと競合しており、本願補正発明の「競合者」に相当する。
b.引用例に記載された発明の「競合して、・・・通信する方法」は、コンテンション(競合)状態を処理すること、すなわち、コンテンション処理方法であるから、本願補正発明の「共有の資源に対してアクセスする複数の競合者の各々で実行するコンテンション処理方法」と引用例に記載された発明の「複数のスレーブがマスターに情報を送信しようと競合して、共通通信チャネルを使用して通信する方法」は、「複数の競合者の各々で実行するコンテンション処理方法」の点で、一致する。
c.引用例に記載された発明の「各スレーブ機器のIDコードの1ビットを赤外線で送信し」は、「IDコード」は、各スレーブ機器固有のものであり、「赤外線で送信」していることから、「IDコード」は、赤外信号シーケンスと言え、a.を考慮すると、本願補正発明の「前記競合者の各々に固有な、赤外信号シーケンスの個々を送信するステップ」に相当する。
d.引用例に記載された発明の「信号」は、スレーブからの信号に応答しており、本願補正発明の「応答信号」に相当する。
e.引用例に記載された発明の「複数のスレーブからのIDコードの1ビットの送信に応答して、マスターから信号を赤外線で受信し」は、引用例に記載された発明の「IDコードの1ビット」が、本願補正発明の「個々の信号」に相当し、d.を考慮すると、本願補正発明の「前記個々の信号の送信に応答して、応答信号を受信するステップ」に相当する。
f.引用例に記載された発明の「前に送信したIDコード」は、本願補正発明の「前に送信された信号」に相当する。引用例に記載された発明の「受信された信号」は、送信したIDコードに応答した信号であり、d.を考慮すると、本願補正発明の「それに応答して受信された応答信号」に相当する。引用例に記載された発明の「前記IDコードの次のビット」は、IDコードは、シーケンスになっているので、本願補正発明の「前記シーケンスの次の信号」に相当する。
g.引用例に記載された発明の「前に送信したIDコードの1ビットと受信された信号が同じ場合、前記IDコードの次のビットを使用して、前記送信及び受信を行い」は、同じ場合とは、所定の関係であり、同じ場合、前記送信及び受信を行うということは、その他の場合は、前記送信及び受信を行わないのであるから、同じ場合の時のみ、送受信を行うのであり、前記送信及び受信を行うということは、前の送信に続いて継続して送受信を行っており、f.を考慮すると、本願補正発明の「前に送信された信号がそれに応答して受信された応答信号に対して所定の関係を有するときにのみ、前記シーケンスの次の信号を使用して前記送信及び受信ステップを継続し」に相当する。
h.引用例に記載された発明の「送信を中止」することは、競合状態から抜け出させられること、すなわち、コンテンション処理方法から排除することであるから、引用例に記載された発明の「その他の場合は、送信を中止し」は、本願補正発明の「その他の場合は前記コンテンション処理方法から排除するステップ」に相当する。
i.引用例に記載された発明の「前に送信したIDコード」は、本願補正発明の「前に送信された前記信号」に相当し、引用例に記載された発明の「前記信号」は、本願補正発明の「前記応答信号」に相当する。
j.引用例に記載された発明の「前に送信されたIDコードの1ビットがそれに応答して受信された前記信号が同じ間、前記送信及び受信を所定の回数行って」は、同じ間とは、所定の条件を有する間のことで、所定の回数行っては、所定の回数遂行されたときと言えるから、本願補正発明の「前に送信された前記信号がそれに応答して受信された前記応答信号に対して所定の関係を有する間に前記送信及び前記受信ステップが所定の回数遂行されたとき」に相当する。
k.本願補正発明の「前記資源の制御を捕捉するステップ」と引用例に記載された発明の「IDコードが送信されたスレーブを認識する」とは、「所定の処理を行うステップ」の点で、一致する。

してみれば、本願補正発明と引用例に記載された発明とは、
「複数の競合者の各々で実行するコンテンション処理方法において、
前記競合者の各々に固有な、所定の赤外信号シーケンスの個々を送信するステップと、
前記個々の信号の送信に応答して応答信号を受信するステップと、
前に送信された信号がそれに応答して受信された応答信号に対して所定の関係を有するときにのみ、前記シーケンスの次の信号を使用して前記送信及び受信ステップを継続し、その他の場合は前記コンテンション処理方法から排除するステップとからなり、
該方法はさらに、
前に送信された前記信号がそれに応答して受信された前記応答信号に対して所定の関係を有する間に前記送信及び受信ステップが所定の回数遂行されたときには、所定の処理を行うステップを含むコンテンション処理方法」の点で、一致し、以下の点で、相違する。

相違点1
本願補正発明では、コンテンション処理方法が共有の資源に対してアクセスし、その資源の制御を捕捉するのに対して、引用例では、共通通信チャネルを使用しているが、IDコードを認識してしまうと、そこで、処理を終了し、さらに、共有の資源にアクセスすることなく、資源の制御の捕捉を行わない点。

相違点2
本願補正発明では、赤外トランシーバを有し、競合者が、赤外トランシーバに送信し、赤外トランシーバから応答信号を受信しているが、引用例には、それについての記載がない点。

相違点3
本願補正発明では、所定の関係が、前記競合者の各々から受信した所定の赤外信号シーケンスを識別し、その結果の信号を論理ORすることに基づくものであるのに対して、引用例には、それについての記載がない点。

(2-4)判断
相違点について、判断する。

相違点1、3について
「端末から競合解決パターンを中継装置に送信し、中継装置で、各端末からの競合解決パターンの論理和をとって、各端末に送り返し、送信権を獲得すると伝送媒体を占有する方法」は、周知例1に示されるように周知であり、伝送媒体を占有することは、共有の資源に対してアクセスし、資源の制御を捕捉することに相当し、端末から競合解決パターンを中継装置に送信し、中継装置で、各端末からの競合解決パターンの論理和をとることは、競合者(端末)の各々から受信した所定のシーケンスを識別し、その結果の信号を論理ORすることに基づくものに相当するから、引用例に記載された発明において、周知技術を適用して、コンテンション処理方法を、共有の資源に対してアクセスし、前記資源の制御を捕捉し、所定の関係として、競合者の各々から受信した所定のシーケンスを識別し、その結果の信号を論理ORすることに基づくものにすることは、当業者が容易になし得ることと認められる。

相違点2について
引用例では、イ)に、赤外線を使用して、スレーブトランシーバからマスタートランシーバへ送信し、スレーブトランシーバがマスタートランシーバから受信を行うことが示されており、信号を送受信するために、トランシーバを使用しているから、引用例に記載された発明において、競合者からの信号を赤外トランシーバに送信し、赤外トランシーバから応答信号を受信するようにすることに、技術的な困難性は認められない。

本願補正発明の作用効果も、引用例及び周知例1に示される周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例及び周知例1に示される周知技術に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
(1)本願発明について
平成15年4月3日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成14年1月8日付けの特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】共有の資源に対してアクセスする複数の競合者の各々で実行するコンテンション処理方法において、
前記競合者の各々に固有な、所定の赤外信号シーケンスの個々を赤外トランシーバに送信するステップと、
前記個々の信号の送信に応答して前記赤外トランシーバから応答信号を受信するステップと、
前に送信された信号がそれに応答して受信された応答信号に対して所定の関係を有するときにのみ、前記シーケンスの次の信号を使用して前記送信及び受信ステップを継続し、その他の場合は前記コンテンション処理方法から排除するステップと、
前に送信された前記信号がそれに応答して受信された前記応答信号に対して所定の関係を有する間に前記送信及び受信ステップが所定の回数遂行されたときには、前記資源の制御を捕捉するステップを含むことを特徴とするコンテンション処理方法。」(以下、「本願発明」という。)

(2)引用例に記載された発明
引用例に記載された発明は、前記「2.(2-2)」に記載したとおりのものである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「所定の関係」の限定事項である「前記競合者の各々から受信した所定の赤外信号シーケンスを識別し、その結果の信号を論理ORすることに基づくものであり」を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加した構成を有する本願補正発明が、前記「2.(2-4)」に記載したとおり、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知例1に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-04-13 
結審通知日 2005-04-18 
審決日 2005-05-09 
出願番号 特願平7-331271
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04L)
P 1 8・ 121- Z (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 江嶋 清仁萩原 義則  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 衣鳩 文彦
望月 章俊
発明の名称 コンテンション処理方法及びシステム  
代理人 臼井 伸一  
代理人 吉澤 弘司  
代理人 朝日 伸光  
代理人 本宮 照久  
代理人 高梨 憲通  
代理人 高橋 誠一郎  
代理人 岡部 正夫  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 藤野 育男  
代理人 産形 和央  
代理人 越智 隆夫  

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