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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1123746
審判番号 不服2003-1978  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-02-06 
確定日 2005-09-22 
事件の表示 平成11年特許願第 52826号「インク噴出方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 2月22日出願公開、特開2000- 52564〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成11年3月1日の出願(国内優先権主張平成10年6月5日)であって、平成14年12月27日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成15年2月6日付けで本件審判請求がされるとともに、同年3月10日付けで明細書についての手続補正(平成14年改正前特許法17条の2第1項3号の規定に基づく手続補正であり、以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成15年2月6日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正目的
本件補正前後の請求項1の記載を比較すると、本件補正は特許請求の範囲の限定的減縮を目的するものと認める。そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。

2.補正発明の認定
補正発明は、本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「スリット状に形成され前記スリット長手方向に所定の幅を有する開口部と、前記開口部に連通して所定の特性を有するインクを満たす液室を形成する支持体と、前記開口部付近に配置された複数の記録電極とを有し、前記開口部に対して所定の間隔をもって配置される対向電極と、前記複数の記録電極と前記対向電極に所定の電圧を印加する手段を少なくとも有し、
前記複数の記録電極のうち、選択電極と前記選択電極に隣接する非選択電極との電極間距離より、前記複数の記録電極と前記対向電極の距離が大きいインク記録ヘッドを用いて記録インクを噴出するインク噴出方法において、
前記対向電極に電圧を印加し、前記複数の記録電極のうち、前記選択電極あるいは前記非選択の電極のいずれかを接地電位とし、前記選択電極と前記対向電極間の電位差が、非選択の電極と前記対向電極間の電位差よりも小さくなるように前記複数の記録電極に電圧を印加し、
前記インクに対し静電力を与えて、発生する電位勾配により前記開口部に形成されたインクメニスカスに部分的な隆起が形成される選択電極位置より前記インクの噴出を行わせることを特徴とするインク噴出方法。」

3.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-201973号公報(以下「引用例」という。)には、次のア〜クの記載が図示とともにある。
ア.「溶媒中に所定極性に帯電した色剤を分散させたインク中の色剤成分に静電力を作用させて少なくとも色剤成分を含むインク滴を吐出させ記録媒体に向けて飛翔させることにより記録を行うインクジェット記録装置において、前記インクが供給される位置に配置された複数の電極と、これら複数の電極に対して、画像信号に応じてインク滴を吐出させる位置に最も近い第1の電極と記録媒体間の電位差が第1の電極に隣接した第2の電極と記録媒体間の電位差より小さくなるように電圧を印加する電圧印加手段とを備えたことを特徴とするインクジェット記録装置。」(【請求項1】)
イ.「従来のインクジェット記録装置は解像度の向上には適していないという問題点もある。つまり蒸気の圧力を使う方法では、直径20μm(これは記録紙上に直径50数μm程度の記録ドットに相当する)以下の粒径のインク粒を生成するのが難しく、また圧電素子が発生する圧力を使う方式では、記録ヘッドが複雑な構造となるために、加工技術上の問題で解像度の高いヘッドを作りにくいからである。」(段落【0005】)
ウ.「これらの欠点を克服するために、薄膜の電極アレイに電圧を印加し、静電力を用いてインク液面からインクあるいはその中の色剤成分をインク滴として飛翔させるインクジェット記録方式が考案された。・・・これらの方式は、記録ヘッドの構成が個別のドット毎のノズルを必要としないスリット状ノズル構成か、あるいは個別のドット毎のインク流路の隔壁を必要としないノズルレス構成であるために、ライン走査型記録ヘッドを実現する上で大きな障害であった目詰まりの防止と復旧に対して有効である。また、特に後者は非常に小さい径のインク粒を安定に生成して飛翔させることができるため、高解像度化に適している。」(段落【0006】)
エ.「本発明のようにインク滴を吐出させる位置に最も近い第1の電極と記録媒体間の第1の電位差をインク滴を飛翔させるに十分な電位差とするとともに、この第1の電位差を第1の電極に隣接する第2の電極と記録媒体間の第2の電位差より小さくすると、第1の電極近辺に供給された帯電した色剤成分は、第2の電極に印加された電圧により形成された電界によって囲まれつつ、インク滴として吐出する。」(段落【0011】)
オ.「記録ヘッド100の先端に対向して配置された記録媒体としての記録紙108は、対向電極としても機能する記録ドラム109に密着した状態で、矢印で示す方向に通過する。・・・記録すべき画像信号に従って所定の個別電極(注目電極)とそれに隣接する個別電極間に所定の電圧が印加されると、色剤成分を含むインク滴110が電極アレイ102と記録ドラム109との間の電界により注目電極上の近傍から吐出して記録紙108上に向けて飛翔し、記録紙108上に画像が記録される。なお、本実施形態では記録ドラム109は接地電位とされている。」(段落【0017】)
カ.「図3は、本実施形態における電極アレイ102の他の駆動方法を示す図であり、図2と同様に第1の個別電極201およびその両隣の第2の個別電極202と、期間A,B,C,Dにおける駆動回路107から個別電極201,202への印加電圧およびインク滴110の飛翔状態を示している。この例では、図2と図3を比較して明らかなように、インク滴110を吐出させる位置に最も近い第1の個別電極201に印加する電圧は一定とし、第2の個別電極202に印加する電圧を記録すべき画像信号に応じて制御することにより、個々の画点を形成する。すなわち、個別電極201に一定の電圧V1を印加しておき、画点を形成するときには、第2の個別電極202に電圧V2を印加することにより第1の個別電極201の近傍位置からインク滴110を吐出・飛翔させ、画点を形成しないときには個別電極202に電圧V1を印加してインク滴110を吐出・飛翔させないようにする。」(段落【0023】)
キ.「図5および図6は本実施形態における電極アレイ102の駆動方法を説明するための図であり、電極アレイ102の全個別電極を2分割して駆動する例を示している。・・・図5(a)に示すように、電極アレイ102は駆動時には斜線で示した偶数番目の個別電極のグループと白抜きで示した奇数番目の個別電極のグループとに2分割され、これらのグループ単位で駆動される。図5(b)のA,B,C,Dは所定の時間間隔で各個別電極に印加される電圧を示している。」(段落【0028】)
ク.「今、ある状態においてAのタイミングで示すように偶数番目の個別電極のグループに第1の電圧V1が印加され、その両隣の奇数番目の個別電極のグループには第2の電圧V2が印加されているとする。ここで、V1<V2であるため、インク106が前述したようにプラス極性に帯電した色剤を含んでいる場合には、色剤成分は偶数番目の個別電極側に引き寄せられて凝集することになる。この状態から一定時間T1後の状態を示したのが図5(b)のBであり、この状態では逆に偶数番目の個別電極のグループには第2の電圧V2が印加され、その両隣の奇数番目の個別電極のグループには第1の電圧V1が印加されるため、色剤成分は今度は奇数番目の個別電極側に引き寄せられ凝集することになる。」(段落【0029】)

4.引用例記載の発明の認定
引用例の記載ウは従来技術について記載したものであるが、「薄膜の電極アレイに電圧を印加し、静電力を用いてインク液面からインクあるいはその中の色剤成分をインク滴として飛翔させる」ことや「記録ヘッドの構成が個別のドット毎のノズルを必要としないスリット状ノズル構成」は記載エ以下にも当てはまる。そして、電極アレイがスリット状ノズルの開口部付近に配置されていることは自明である。
すなわち、引用例に記載の記録ヘッドは「スリット状ノズルの開口部付近に電極アレイを配置したものであり、引用例からはこの記録ヘッドを用いて、記録ドラム(対向電極)に密着した記録紙に対してインク滴を吐出・飛翔させるインク吐出・飛翔方法の発明を把握することができ、それは次のようなものである。
「スリット状ノズルの開口部付近に電極アレイを配置した記録ヘッドを用い、対向電極としても機能する記録ドラムに記録紙を密着した状態で、
対向電極を接地し、
電極アレイの電極を奇数番目と偶数番目にグループ分けし、
奇数番目の電極近傍位置からインク滴を吐出・飛翔させる場合には、奇数番目の電極に第1の電圧V1を印加し、その両隣の偶数番目の電極にはV1よりも大きな第2の電圧V2を印加することにより、色剤成分を奇数番目の電極側に引き寄せ、
偶数番目の電極近傍位置からインク滴を吐出・飛翔させる場合には、偶数番目の電極に第1の電圧V1を印加し、その両隣の奇数番目の電極には第2の電圧V2を印加することにより、色剤成分を偶数番目の個別電極側に引き寄せ、
奇数番目又は偶数番目の電極位置よりインク滴を吐出・飛翔させるインク吐出・飛翔方法。」(以下「引用発明」という。)

5.補正発明と引用発明との一致点及び相違点の認定
以下、本審決では「発明を特定するための事項」という意味で「構成」との用語を用いることがある。
引用発明の「スリット状ノズルの開口部」が「スリット長手方向に所定の幅を有する」ことは自明であり、そのような開口部を有するために「開口部に連通して所定の特性を有するインクを満たす液室を形成する支持体」を有することも自明である(「所定の幅」や「所定の特性」との文言は何も限定しない。)。引用例に直接記載がないことを、仮に相違点として認定するとしても、例えば本願明細書に従来技術として紹介されている特開昭56-167465号公報に記載されている事項であり、ここに発明の特徴があるわけではないから、独立特許要件又は進歩性の判断に影響を及ぼすことはあり得ない。
引用発明の「電極アレイ」と補正発明の「複数の記録電極」に相違はなく、引用発明の「対向電極」が「開口部に対して所定の間隔をもって配置され」ていることも自明である。なお、補正発明では「対向電極」が「インク記録ヘッド」の一部であるとされているが、本願明細書には出願当初から一貫して、「記録電極の間隔をヘッドと対向電極間の距離より十分小さく設定」(段落【0003】)、「図4(a)〜図4(c)はヘッド、対向電極に印加する電位の関係を示した」(段落【0033】)などの記載があり、対向電極がヘッドの一部でない旨記載されているほか、「ヘッド先端で前記開口部11はスリット状に形成される。」(段落【0012】)との記載によれば、開口部がヘッド先端であるのだからそれより前方にある対向電極はヘッドの一部でないと解すべきであって、【図1】の「対向電極20」もヘッドとは別物と理解するのが自然である。そうすると、補正発明では「対向電極」が「インク記録ヘッド」の一部であるとされているものの、通常はヘッドとは別物と理解すべき対向電極を含む意味合いで、「インク記録ヘッド」との用語を用いていると理解するしかなく、その意味では引用発明の「記録ヘッド」と「対向電極」(記録ドラム)を併せたものが補正発明の「インク記録ヘッド」に相当する。
引用発明において、奇数番目の電極近傍位置からインク滴を吐出・飛翔させる場合の奇数番目の電極、及び偶数番目の電極近傍位置からインク滴を吐出・飛翔させる場合の偶数番目の電極は補正発明の「選択電極」に相当し、それぞれの場合における「両隣の偶数番目の電極」及び「両隣の奇数番目の電極」が補正発明の「選択電極に隣接する非選択電極」に相当する。そして、「前記選択電極と前記対向電極間の電位差が、非選択の電極と前記対向電極間の電位差よりも小さくなるように前記複数の記録電極に電圧を印加」する点において、補正発明と引用発明は一致する。当然、引用発明は「前記複数の記録電極と前記対向電極に所定の電圧を印加する手段」を有する「インク記録ヘッド」を用いることを前提としている。
本願明細書には出願当初から一貫して、「対向電極に対するより、記録電極間の距離が十分狭いため、正に帯電した記録電極13c以外の電極付近のインクは記録電極13cに引き寄せられる。そのため、結果として記録電極13c付近でインク液面が隆起し」(段落【0024】)との記載があるから、補正発明において「前記インクに対し静電力を与えて、発生する電位勾配により前記開口部に形成されたインクメニスカスに部分的な隆起が形成される」とは、帯電したインクが記録電極間の電界(電位勾配)により選択電極に引き寄せられることの結果として、「インクメニスカスに部分的な隆起が形成される」ことを意味する。他方、引用発明では帯電した色剤成分が選択電極側に引き寄せられるのであって、補正発明においてもインクのすべての成分が帯電するとは理解しがたいから、帯電した成分が選択電極側に引き寄せられ点で、補正発明と引用発明に相違はない。そして、「インクメニスカスに部分的な隆起が形成される」のは、帯電した成分が選択電極側に引き寄せられることの結果であるから、引用発明においても隆起の度合いはわずかかもしれないが、「インクメニスカスに部分的な隆起が形成される」と解さざるを得ない。補正発明は隆起の度合いを限定しているのではないから、隆起がわずかかどうかは相違点にはならない。
また、補正発明の「記録インクを噴出するインク噴出方法」と引用発明の「インク滴を吐出・飛翔させるインク吐出・飛翔方法」に相違がないことも明らかである。
したがって、補正発明と引用発明とは、
「スリット状に形成され前記スリット長手方向に所定の幅を有する開口部と、前記開口部に連通して所定の特性を有するインクを満たす液室を形成する支持体と、前記開口部付近に配置された複数の記録電極とを有し、前記開口部に対して所定の間隔をもって配置される対向電極と、前記複数の記録電極と前記対向電極に所定の電圧を印加する手段を少なくとも有するインク記録ヘッドを用いて記録インクを噴出するインク噴出方法において、
選択電極と前記対向電極間の電位差が、非選択の電極と前記対向電極間の電位差よりも小さくなるように前記複数の記録電極に電圧を印加し、
前記インクに対し静電力を与えて、発生する電位勾配により前記開口部に形成されたインクメニスカスに部分的な隆起が形成される選択電極位置より前記インクの噴出を行わせるインク噴出方法。」である点で一致し、次の各点で相違する。
〈相違点1〉補正発明では「前記複数の記録電極のうち、選択電極と前記選択電極に隣接する非選択電極との電極間距離より、前記複数の記録電極と前記対向電極の距離が大きい」とされているが、引用発明ではこれら距離の大小関係が明らかでない点。
〈相違点2〉補正発明では「前記対向電極に電圧を印加し、前記複数の記録電極のうち、前記選択電極あるいは前記非選択の電極のいずれかを接地電位とし」ているのに対し、引用発明では対向電極を接地電位としている点。

6.相違点についての判断及び補正発明の独立特許要件の判断
(1)相違点1について
引用例の記載ウにあるように引用発明は「高解像度化に適し」たものであり、ヘッドと記録ドラム(対向電極)との距離は通常1mm前後であるから、相違点1に係る補正発明の構成を採用しない限り、高解像度にならない。すなわち、相違点1は実質的な相違でないか、せいぜい設計事項にとどまる。
そればかりか、引用発明において、対向電極との電位差については、選択電極よりも非選択電極の方が大きいから、対向電極に向かう静電力は非選択電極位置の方が大きい。それにもかかわらず、非選択電極位置ではなく選択電極位置からインク滴を吐出・飛翔させるのであるから、帯電した色剤成分は速やかに選択電極位置に集まらなければならない。他方、引用発明において、電圧V2を電圧V1よりも相当程度大きくすれば、非選択電極と対向電極間の電界がそれだけ大きくなり、非選択電極位置から色剤成分が吐出・飛翔するおそれが大きくなるから、V2はそのおそれがない限度でしか大きくすることができない。そして、帯電した色剤成分に作用する静電力は、電極間の電界に比例し、それは電極間距離に反比例するから、色剤成分を速やかに選択電極位置に引き寄せるためには、隣接電極間距離を短くしなければならない。もちろん、引用例に「帯電した色剤成分は、インクの表面張力に打ち勝つ仕事が不必要な隣接電極の方向への泳動で散逸しやすくなる。」(段落【0010】)と記載されているとおり、隣接電極間での色剤成分の移動にはインクの表面張力に打ち勝つ仕事が不必要であるから、隣接電極間の電界は対向電極との間の電界ほど強くなくてもよいかもしれないが、極端に弱くてよいわけではない。そうであれば、V1に比してV2を極端に大きくすることなく、隣接電極間電界を大きくするために、隣接電極間距離を記録電極と対向電極の距離よりも小さくすることは、高解像化に資することを考慮すれば、極めて自然であり、少なくとも設計事項の域をでるものではない。

(2)相違点2について
帯電した色剤成分の挙動は、選択電極の電圧、非選択電極の電圧及び対向電極の電圧の相対関係のみに支配され、それら電圧(ここでいう電圧とは、基準電位(通常は接地電位)を適宜定めたときの、それに対する相対電位である。)の絶対値には依存しない。
引用例の記載オに「本実施形態では記録ドラム109は接地電位とされている。」とあるのも、何を基準電位(接地電位)としてもインク滴の吐出・飛翔態様に影響はなく、実施形態では対向電極を接地電位に選んだ旨の記載であって、接地電位を対向電極以外とすることを排除しているのではない。4.では、実施形態に基づいて引用発明を認定したけれども、接地電位を対向電極以外にしてはならない理由はない以上、選択電極又は非選択電極を接地電位とすることに別段困難性があるということはできない。
したがって、相違点2に係る補正発明の構成を採用することは、当業者にとって想到容易といわざるを得ない。

(3)補正発明の独立特許要件の判断
以上述べたとおり、相違点1は実質的相違でないか、相違点1,2に係る補正発明の構成を採用することは設計事項又は当業者にとって想到容易であって、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、本件補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおりであるから、本件補正は平成14年改正前特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての当審の判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成12年5月10日付け及び平成14年2月18日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「開口部と、前記開口部に連通してインクを満たす液室を形成する支持体と、前記開口部付近に配置された複数の記録電極とを有し、前記開口部に対して所定の間隔をもって配置される対向電極と、前記複数の記録電極と前記対向電極に電圧を印加する手段を少なくとも有し、
前記複数の記録電極のうち、選択電極と非選択電極との電極間距離より、前記複数の記録電極と前記対向電極の距離が大きいインク記録ヘッドを用いて記録インクを噴出するインク噴出方法において、
前記対向電極に電圧を印加し、前記複数の記録電極のうち、前記選択電極あるいは前記非選択の電極のいずれかを接地電位とし、前記選択電極と前記対向電極間の電位差が、非選択の電極と前記対向電極間の電位差よりも小さくなるように前記複数の記録電極に電圧を印加し、前記インクに対し静電力を与えて、選択電極位置より前記インクの噴出を行わせることを特徴とするインク噴出方法。」

2.本願発明の進歩性の判断
本願発明と引用発明とは、
「開口部と、前記開口部に連通してインクを満たす液室を形成する支持体と、前記開口部付近に配置された複数の記録電極とを有し、前記開口部に対して所定の間隔をもって配置される対向電極と、前記複数の記録電極と前記対向電極に電圧を印加する手段を少なくとも有るインク記録ヘッドを用いて記録インクを噴出するインク噴出方法において、
選択電極と前記対向電極間の電位差が、非選択の電極と前記対向電極間の電位差よりも小さくなるように前記複数の記録電極に電圧を印加し、前記インクに対し静電力を与えて、選択電極位置より前記インクの噴出を行わせるインク噴出方法。」である点で一致し、「第2[理由]5」で述べた相違点2において相違する(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)ほか、次の相違点1’で相違する。
〈相違点1’〉本願発明では「前記複数の記録電極のうち、選択電極と非選択電極との電極間距離より、前記複数の記録電極と前記対向電極の距離が大きい」とされているが、引用発明ではこれら距離の大小関係が明らかでない点。

相違点1’が実質的相違でないか、せいぜい設計事項であることは「第2[理由]6(1)」で述べたと同様であり、相違点2に係る本願発明の構成を採用することが当業者にとって想到容易であることは「第2[理由]6(2)」で述べたとおりである(「補正発明」を「本願発明」と読み替える。)。また、相違点1’,2に係る本願発明の構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-12 
結審通知日 2005-07-19 
審決日 2005-08-05 
出願番号 特願平11-52826
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大元 修二後藤 時男  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 藤本 義仁
谷山 稔男
発明の名称 インク噴出方法  
代理人 松下 義治  
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