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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1123816
審判番号 不服2005-7513  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2004-05-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-27 
確定日 2005-09-27 
事件の表示 特願2003-411144「通話方法及び電話機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月13日出願公開、特開2004-140859〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年4月24日に出願した特願2002-121603号の一部を平成15年12月10日に新たな特許出願としたものであって、平成17年3月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月27日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年11月15日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】VOIP回線を含む複数の電話回線に接続された親機及び子機から構成される電話機の通話方法であって、前記親機内に切替器を備え、前記電話回線の状態を把握した出力に応答して前記電話回線へのルートを複数設定するように前記切替器を制御するステップと、前記電話機から前記電話回線へ発信する場合に、優先させる電話回線を登録するステップと、その出力に応答して前記優先させる電話回線へのルートを設定するように前記切替器を制御するステップと、を備え、前記電話回線と前記親機及び子機とのあいだで着信或は発信をして複数の通話を行い、発信の際には前記優先させる電話回線に発信して通話することを特徴とする電話機の通話方法。」

3.引用例に記載された発明
原審の拒絶の理由に引用された特開平5-122304号公報(以下、「引用例1」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【請求項1】 INS通信網に接続された親機と、この親機とは無線回線によって接続された子機とからなるコードレスISDN端末において、
前記親機には、
INS通信を制御する通信制御部と、
この通信制御部を制御してINS通信回線がもつ2つの独立した通話チャネルを管理することにより、前記親機と前記子機とによる2つの通話チャネルの同時使用を制御する主制御部とを備えたことを特徴とするコードレスISDN端末。」(第2頁第1欄第2行〜第11行)

ロ)「【0010】図1は、コードレスISDN端末の電気的構成を示すブロック図である。
【0011】親機1は、INS通信回線2を介してINS通信網に接続されている。
【0012】INS(Information Network System)通信網は、国際的に標準化されたISDN(Integrated Services Digital Network)通信網に、さらにサービスを付加したシステムであり、電話回線1回線で、64キロビット/秒の伝送速度をもった2つの独立した通話チャネル(Bチャネル)と、16キロビット/秒の伝送速度をもった1つのチャネル(Dチャネル)とを備えている。
【0013】このINS通信回線2は、INS通信網とのインターフェイスをなす親機1の通信制御部11に接続されており、通信制御部11は、親機1全体の動作制御を行う主制御部12と双方向性に接続されている。また、通信制御部11は、通話チャネル接続部14と双方向性に接続されており、通話チャネル接続部14は通話回路部15と双方向性に接続されている。また、通話回路部15には、送受話部18と、アンテナ19が接続された送受信部16とがそれぞれ双方向性に接続されている。
【0014】主制御部12は、親機1全体の動作制御を行うもので、通信制御部11を制御して2つの独立した通話チャネルを管理するようになっている。また、主制御部12には、動作を制御するためのデータが格納されたメモリ部13が双方向性に接続されているとともに、通話回路部15が双方向性に接続されている。また、主制御部12の制御出力は、通話チャネル接続部14と無線通信制御部17とにそれぞれ導かれており、無線通信制御部17の出力は送受信部16に導かれている。通話チャネル接続部14は、主制御部12からの制御により、2つの通話チャネルと親機及び子機との接続を行うようになっている。
【0015】一方、子機3は、親機1との間で電波の授受を行うアンテナ31を備えており、このアンテナ31は送受信部32に接続されている。また、送受信部32は通話回路部33と双方向性に接続されており、通話回路部33は、送受話部34及び制御部35とそれぞれ双方向性に接続されている。
【0016】制御部35は、子機3全体の動作制御を行うもので、動作を制御するためのデータが格納されたメモリ部37が双方向性に接続されている。また、制御部35の制御出力は、無線通信制御部36に導かれており、無線通信制御部36の出力は、送受信部32に導かれた構成となっている。
【0017】上記構成において、主制御部12、制御部35及び無線通信制御部17,36はそれぞれがソフトウエアを含む構成となっている。
【0018】図2は、通話チャネル接続部14をハード的に示したもので、INS通信回線の2つの通話チャネルに対応する2本の信号線b1,b2と、親機1及び子機3に対応する2本の信号線c1,c2との各交差点にスイッチ素子S1〜S4を設け、各スイッチ素子S1〜S4のオン/オフによって2つの通話チャネルと親機1及び子機3との接続制御を行うようになっている。
【0019】次に、上記構成のコードレスISDN端末の動作を説明する。
【0020】通話チャネルが2つとも空状態となっている場合、主制御部12は、この空状態となっている2つの通話チャネルを管理し、親機1の送受話部18による発信又は着信応答、及び子機3の送受話部34による発信又は着信応答のいずれをも受け付ける待機状態となっている。
【0021】そして、この状態において、親機1の送受話部18より発信要求があった場合、主制御部12は、通話チャネル接続部14を制御して、管理している2つの通話チャネルのうちの1つの通話チャネル(例えば、信号線b1)を選択する。すなわち、スイッチ素子S1をオンとして、信号線b1と親機1の信号線c1との接続を行う。これにより、親機1では、選択した1つの通話チャネルを使用して、通話回路部15、通話チャネル接続部14、通信制御部11の経路でINS通信回線2に発信を行い、これに応答した相手方との間で、選択した通話チャネルによる通話路を形成する。
【0022】また、相手方から1つの通話チャネル(例えば、信号線b1)を介して着信があると、主制御部12では、親機1及び子機3に対して着信検出信号を出力し、親機1及び子機3に対して呼び出しを行う。この呼び出しに応答して親機1の送受話部18が取り上げられると(オフフックされると)、主制御部12では、通話チャネル接続部14を制御して、着信のあった通話チャネルに送受話部18の接続を行う。すなわち、スイッチ素子S1をオンとして、信号線b1と親機1の信号線c1との接続を行う。これにより、発信側である相手方との間で、選択した通話チャネルによる通話路が形成される。
【0023】一方、このような親機1による通話状態において、子機3からの発信要求があると、主制御部12では、通話チャネル接続部14を制御して、空となっている他方の通話チャネルと子機3との接続を行う。すなわち、スイッチ素子S4をオンとして、信号線b2と信号線c2との接続を行う。
【0024】また、このような親機1による通話状態において、別の相手方からもう1つの通話チャネル(信号線b2)を介して着信があると、主制御部12では、子機3に対して着信検出信号を出力し、子機3に対して呼び出しを行う。この呼び出しに応答して子機3の送受話部34が取り上げられると(オフフックされると)、主制御部12では、通話チャネル接続部14を制御し、スイッチ素子S4をオンとして信号線b2と信号線c2との接続を行い、着信のあった通話チャネルを子機3との無線通話路にのせて、子機3の送受話部34との接続を行う。
【0025】これにより、親機1が通話中であっても、子機3からの発信又は着信応答が可能となる。
【0026】次に、2つの通話チャネルが空状態において、子機3の送受話部34より無線通話回線を使用して発信要求があった場合、主制御部12は、通話チャネル接続部14を制御して、管理している2つの通話チャネルのうちの1つの通話チャネル(例えば、信号線b1)を選択する。すなわち、スイッチ素子S3をオンとして、信号線b1と子機3の信号線c2との接続を行う。これにより、子機3では、無線通話回線を介して選択した1つの通話チャネルを使用し、通話回路部15、通話チャネル接続部14、通信制御部11の経路でINS通信回線2に発信を行い、これに応答した相手方との間で、選択した通話チャネルによる通話路を形成する。
【0027】また、相手方から1つの通話チャネル(例えば、信号線b1)を介して着信があると、主制御部12では、親機1及び子機3に対して着信検出信号を出力し、親機1及び子機3に対して呼び出しを行う。この呼び出しに応答して子機3の送受話部34が取り上げられると(オフフックされると)、主制御部12では、通話チャネル接続部14を制御して、着信のあった通話チャネルに送受話部34の接続を行う。すなわち、スイッチ素子S3をオンとして、信号線b1と子機3の信号線c2との接続を行う。これにより、発信側である相手方と子機3との間で、選択した通話チャネルによる通話路が形成される。
【0028】一方、このような子機3による通話状態において、親機1からの発信要求があると、主制御部12では、通話チャネル接続部14を制御して、空となっている他方の通話チャネルと親機1との接続を行う。すなわち、スイッチ素子S2をオンとして、信号線b2と信号線c1との接続を行う。
【0029】また、このような子機3による通話状態において、別の相手方からもう1つの通話チャネル(信号線b2)を介して着信があると、主制御部12では、親機1に対して着信検出信号を出力し、親機1に対して呼び出しを行う。この呼び出しに応答して親機1の送受話部18が取り上げられると(オフフックされると)、主制御部12では、通話チャネル接続部14を制御して、スイッチ素子S2をオンとして信号線b2と信号線c1との接続を行い、着信のあった通話チャネルを親機1の送受話部18に接続する。
【0030】これにより、子機3が通話中であっても、親機1からの発信又は着信応答が可能となる。
【0031】なお、上記実施例では、親機1と子機3とによって2つの通話チャネルを使用する場合について説明したが、複数台の子機3,3・・・を有するコードレスISDN端末では、任意の子機3と別の子機3とによる2つの通話チャネルの同時使用が可能となる。
【0032】【発明の効果】
本発明のコードレスISDN端末は、親機に、INS通信を制御する通信制御部と、この通信制御部を制御してINS通信回線がもつ2つの独立した通話チャネルを管理する主制御部とを備えた構成としたので、INS通信回線がもつ2つの独立した通話チャネルと、コードレス電話機がもつ親機及び子機のそれぞれの送受信部とを利用して、2つの通話チャネルによる親機及び子機の同時使用が可能になるといった効果を奏する。」(第2頁第2欄第14行〜第4頁第6欄第6行)

以上の記載及び技術常識を総合すると、引用例1には、
「複数の電話回線に接続された親機および子機から構成される電話機の通話方法であって、前記親機内に親機の信号線c1と子機の信号線c2を通話チャネルb1、b2に接続する通話チャネル接続部を備え、前記電話回線へのルートを複数設定するように前記通信チャネル接続部を制御するステップと、前記電話回線を前記親機及び子機とのあいだで着信或は発信をして複数の通信を行う電話機の通話方法」の発明が記載されていると認められる。(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

原審の拒絶の理由に引用された特開2001-217929号公報(以下、「引用例2」という。)には、次のような記載がある。

イ)「【0018】第1の実施形態は発信制御に関するものであり、第2の実施形態は着信制御に関するものである。
【0019】(A-1)第1の実施形態の構成
図1に本実施形態の通信システム10を示す。この通信システム10の外観図は図5に示す。
【0020】図1および図5において、通信システム10は、電話機11と、アダプタ装置12と、公衆網13と、IP網14とを備えている。
【0021】このうち、電話機11自体は、通常の電話機としての機能だけを装備した電話機であり、公衆網13は既存の電話用の公衆回線であり、IP網14はインターネットである。
【0022】また、アダプタ装置12は、公衆網13、IP網14と、電話機11とのあいだのユーザ宅などに配置される装置である。
【0023】アダプタ装置12の内部には、TELi/f(電話インタフェース)部20と、ダイヤル検出部21と、Selector(セレクタ)22と、公衆回線i/f(公衆回線インタフェース)部23と、LANi/f(ローカルネットワークインタフェース)部24と、アドレス解決テーブル25と、発信方路テーブル26と、先頭桁設定部27と、桁数設定部28とが設けられている。
【0024】電話インタフェース部20は、通常の電話機11とのインタフェース部としての機能を備えている。本実施形態で着目している発信制御動作は、当該電話インタフェース部20が電話機11のオフフックを検出することによって開始される。
【0025】ダイヤル検出部21は、電話機11のオフフックを検出するとダイヤル待ち状態となり、電話機11のユーザが行ったダイヤル操作(プッシュボタン操作なども含む)の内容を検出する機能と、当該ダイヤル情報やそれに続く通話音声信号などの音声信号(音響信号)ASをセレクタ22に出力する機能を備えている。
【0026】本実施形態では、ユーザの選択によって、ダイヤルされた最初の桁、すなわち先頭桁の値(ダイヤル1桁目の値(その変換コード))だけで、発信先回線(発信方路)が公衆回線13であるかIP回線14であるかを識別する先頭桁識別モードと、当該ユーザが一続きのダイヤル操作で入力した電話番号の桁数(当該先頭桁を含む)と当該先頭桁の値との組み合わせを用いて発信先回線を識別する組合せ識別モードとを選択できるものとする。」(第3頁第4欄第15行〜第4頁第5欄第7行)

ロ)「【0060】前記公衆回線インタフェース部43は、電話機31がIP網14に属する相手電話機と通話中に、公衆網13に属する第3者電話機から着信があった場合、当該着信を検出して着信検出信号を制御部55に供給する機能を備えている。
【0061】この公衆回線インタフェース部43はまた、電話機31が公衆網13に属する相手電話機と通話中に、公衆網13に属する第3者電話機から着信があった場合に、当該着信を検出して着信検出信号を制御部55に供給する機能も装備している。
【0062】また、前記LANインタフェース部44は、当該電話機31が公衆網14に属する相手電話機と通話中に、IP網14に属する第3者電話機から着信があった場合に着信検出信号を制御部55に供給する機能を備えている。」(第5頁第8欄第29行〜第43行)

ハ)「【0072】(B-2-1)電話機31が公衆網13に属する相手電話と通話中に第3者電話から着信したケースであって、なおかつ次の(B-2-1-1)〜(B-2-1-3)のいずれかに属するケースである。
【0073】(B-2-1-1)当該第3者電話がIP網14に属するケース
キャッチホンサービスの提供を受けているかどうかに関係なく、S1〜S3の各ステップからなる手順を進める。
【0074】前記表示機54によって当該第3者からの着信を出力する(S1)。
【0075】フッキング検出部52が前記フッキング信号FSに基づいてフッキング操作を検出し、前記フッキング検出信号FDを出力すると、当該相手電話との接続を断ち、フッキング操作を検出しなければそれまでの接続状態を継続する(S2)。
【0076】ここで、相手電話との接続を断った場合には、当該第3者電話に着信応答し、当該第3者電話を相手電話として新たな通話を開始する(S3)。」(第6頁第9欄第36行〜第10欄第4行)

ニ)「【0084】(B-2-2)次は、電話機31がIP網14に属する相手電話と通話中に第3者電話から着信したケースであって、なおかつ次の(B-2-2-1)または(B-2-2-2)のいずれかに属するケースである。」(第6頁第10欄第36行〜第40行)

ホ)「【0091】(B-2-2-2)キャッチホンサービスの提供が行われないケース
このケースでは、S41〜S43の各ステップからなる手順を進める。
【0092】前記表示機54によって、公衆網13に属する第3者電話から着信したことを表示する(S41)。
【0093】フッキング検出部52が前記フッキング信号FSに基づいてフッキング操作を検出し、前記フッキング検出信号FDを出力すると、当該相手電話のユーザに聴取させるために保留音送出部50から送出された保留音を、IP網14に送出する(S42)。なお、このステップS42で、相手電話との接続を断った場合には、当然、当該保留音の送出は必要ない。
【0094】そのあと、当該第3者電話に着信応答し、当該第3者電話を相手電話として新たな通話を開始する(S43)。」(第7頁第11欄第13行〜第29行)

以上の記載及び技術常識を総合すれば、引用例2には、
「NTT公衆回線とVoIP回線とを含む複数の電話回線に接続された電話機の通信方法であって、電話機が、公衆網に属する相手電話と通話中に、IP網もしくは公衆網に属する第3者から着信した場合、通話中の回線を制御して、第3者電話に着信応答をし、電話機がIP網に属する相手電話と通話中に、公衆網に属する第3者が着信した場合、通話中の回線を保留して、第3者電話に着信応答をする通話方法」が記載されている。

原審の拒絶の理由に引用された特開平5-327933号公報(以下、「周知例1」という。)には、以下のことが記載されている。

イ)「【0011】図2は、本実施例の制御手順を示すフローチャートである。
【0012】先ず、電話番号入力手段5により発信番号を入力する(ステップS101)。次に、ISDN回線用コネクタ1にISDN回線が接続されているか否かのチェックを行うと共に(ステップS102)、アナログ電話回線用コネクタ2にアナログ電話回線が接続されているか否かのチェックを行う(ステップS103)。次のステップS104で、ISDN回線に対して発信を行うか、またはアナログ電話回線に対して発信を行うかの特別の指定がなされているか否かをチェックする。チェックの結果、指定がされていると判定されると、更に、ステップS105で該指定された回線が接続されているか否かをチェックする。チェックの結果、接続されていると判定されると接続されている回線に対し発信を行い(ステップS106)、接続されていないと判定されると発信エラーの表示を行う(ステップS107)。
【0013】また、ステップS104で回線の指定がされていないと判定されると、次のステップS108で接続されている回線が有るか否かを判別し、接続されている回線があれば、ステップS109でいずれの回線が接続されているかを判別する。即ち、ISDN回線及びアナログ電話回線の双方が接続されている場合には、ステップS110及びステップS111で優先的に発信を行うように設定された回線を判定する。ISDN回線に優先的に発信を行うように設定されていれば、ISDN回線に発信を行い(ステップS112)、アナログ電話回線に優先的に発信を行うように設定されていればアナログ電話回線に発信を行う(ステップS113)。」(第3頁第3欄第19行〜第47行)

原審の拒絶の理由に引用された特開平10-327463号公報(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

イ)「【0018】図5は、この通話料金の大小によるセルラー電話部4とPHS電話部5の切換を可能とした実施例を示すブロック図である。検出手段9は携帯端末装置の現在位置を検出する手段である。現在位置の検出は、公開特許公報(特開平6-120876)に開示されているように、携帯用情報端末装置で無線基地局が指向性を変化させながら送信する基地局識別情報及び指向性情報を含むバースト信号を受信し、受信電界強度情報を基に携帯用情報端末装置の位置を検出する。また、4個以上の衛星から送信される電波を受信して、携帯用情報端末装置の位置を測定するGSP(Global Positioning System:グローバル ポジショニング システム)により検出してもよい。発信番号は、使用者が無線通信部のダイヤルボタンを押下することにより得られるのでこれを制御手段6に供給する。またはデータ処理手段1に発信番号が含まれている場合は検知手段2にてこれを検知して制御手段6に供給するようにしてもよい。この場合、送信データとは別に電話番号を識別できるヘッダー部をデータ処理手段が出力するようにすれば、検知手段はこのヘッダー部を認識することで発信番号を認識することができる。
【0019】記憶手段10はPHS電話またはセルラー電話それぞれの発信エリアから着信エリア別の通信料金のテーブルを記憶しておくものである。この通信料金のテーブルは出荷時にROMに記憶しておき、将来料金が改定された場合にこのROMを交換するだけで対応できるようにしておく。また、料金に関する情報が通信事業者から基地局を介して配信される場合には、携帯情報端末装置に書き換え可能なメモリを設け、この情報を記憶するようにすることもできる。さらにICカードなどの記憶媒体を利用することもできる。制御手段6は、検知手段2から得られる優先度情報と、通話料金の優先度と、無線通信部Aから得られる信号Sとから無線通信手段Aの最適な電話部を選択し、切換手段3に切換信号を出力する。最適な電話部の選択については図6に基づいて後述する。
【0020】ここで通話料金の優先度は、検出手段9で検出された携帯用情報端末装置の現在位置から発信エリアを判断し、発信番号から着信エリアを判断し、記憶手段10に記憶された通信料金のテーブルから電話機能ごとの通信料金の比較を行うことで決定される。」(第4頁第6欄第18行〜第5頁第7欄第8行)

周知例1、周知例2によれば、「複数の回線に接続されている回線の内、発信の際、優先度を高く設定されている回線を選択する」ことは、周知技術である。

原審の拒絶の理由に引用された特開2001-223748号公報(以下、「周知例3」という。)には、以下のことが記載されている。

イ)「【0110】また、本通話装置アダプタは、一般的な電話機(ダイヤル、プッシュボタン等)が接続されたPBXなどからの電話回線を、公衆回線網とIPネットワークのそれぞれに接続し、電話機から電話をかけた場合にも、IPネットワークを経由して相手先の電話に接続できるかどうか判定し、判断結果に基づいて接続回線の切り換えを行う回線接続切換手段100により自動切換を行い、IPネットワーク経由での通話が可能である時にIPネットワーク経由で電話をかけることができ、電話番号をIPアドレスに変換できない場合や相手側の電話機がIPネットワークに接続されていない場合や電話機20とIPネットワーク24との間の通話装置アダプタが通話装置アダプタ12と互換性のない装置であった場合などIPネットワークでの通話が不可能である場合には、公衆回線網経由で電話をかけることできる。
【0111】以上のように、電話をかける相手先の電話がIPネットワーク経由で通話できるものである場合は、IPネットワーク側から電話をかけられるようにしており、そうでない場合は、公衆回線側から電話かけるようにすることで、自動的に両者の切換をするようにしているので、利用者は一度通話装置アダプタと電話機とを設置すれば、手をわずらわすことなく、必要に応じて公衆回線、IPネットワークのどちらを介しても通話情報を送受信することができる。」(第19頁第36欄第16行〜第39行)

ロ)「【0114】また、通話装置アダプタに接続された電話機に対して、同じ種類の通話装置アダプタに接続された他の電話機の一般公衆回線の電話番号を入力することで、IPネットワーク経由で電話をかけることができることが判明したときに、その一般公衆回線の電話番号をインターネットプロトコルアドレス(以降IPアドレス)に自動的に変換する電話番号IPアドレス変換手段300を備え、利用者が従来の電話番号をそのまま使用して、IPネットワーク経由で電話をかけることができることを特徴とするインターネット電話ネットワークシステムについて説明を行った。」(第20頁第37欄第13行〜第23行)

周知例3によれば、「複数の回線に接続されている回線の内、IPによって接続が可能な場合には、IPネットワーク経由の通話を選択する」ことは、周知技術である。

4.対比
本願発明と引用例1に記載された発明を比較する。
引用例1に記載された発明の「通話チャネル接続部」は、親機の信号線c1と子機の信号線c2を通話チャネルb1、b2に接続しており、電話回線へのルートを複数設定しており、本願発明の「切替器」は、電話回線へのルートを複数設定しており、引用例1に記載された発明の「通話チャネル接続部」は、本願発明の「切替器」に相当する。

してみれば、本願発明と引用例1に記載された発明を比較すると、「複数の電話回線に接続された親機及び子機から構成される電話機の通話方法であって、前記親機内に切替器を備え、前記電話回線へのルートを複数設定するように前記切替器を制御するステップと、を備え、前記電話回線と前記親機及び子機とのあいだで着信或は発信をして複数の通話する電話機の通話方法」の点で、一致し、以下の点で、相違する。

[相違点]
本願発明は、VOIP回線を含む電話回線を有し、前記電話回線の状態を把握した出力に応答して、VOIP回線を含む複数の電話回線へのルートを複数設定するように切替器を制御し、電話機から電話回線へ発信する場合に、優先させる電話回線を登録するステップと、その出力に応答して前記優先させる電話回線へのルートを設定するように前記切替器を制御するステップとを備え、発信の際には前記優先させる電話回線に発信して通話するのに対して、引用例1には、複数の電話回線へのルートを複数設定するように切替器(通信チャネル接続部)を制御しているが、他の部分は、記載されていない点。

5.判断
[相違点]について
引用例2には、「NTT公衆回線とVoIP回線とを含む複数の電話回線に接続された電話機の通信方法であって、電話機が、公衆網に属する相手電話と通話中に、IP網もしくは公衆網に属する第3者から着信した場合、通話中の回線を制御して、第3者電話に着信応答をし、電話機がIP網に属する相手電話と通話中に、公衆網に属する第3者が着信した場合、通話中の回線を保留して、第3者電話に着信応答をする通話方法」が記載されており、電話機が、公衆網に属する相手電話と通話中に、IP網もしくは公衆網に属する第3者から着信した場合、通話中の回線を制御して、第3者電話に着信応答をし、電話機がIP網に属する相手電話と通話中に、公衆網に属する第3者が着信した場合、通話中の回線を保留して、第3者電話に着信応答をすることは、VOIP回線を含む電話回線の状態を把握した出力に応答してルートを設定することに相当し、「複数の回線に接続されている回線の内、発信の際、優先度を高く設定されている回線を選択する」ことは、周知例1、2に示されるように周知技術であり、「複数の回線に接続されている回線の内、IPによって接続が可能な場合には、IPネットワーク経由の通話を選択する」ことは、周知例3に示されるように周知であり、IPネットワークに高い優先度を設定していることは明らかであり、優先度の設定を行うのに、登録するステップにより行うことは、当業者が回線の設定する際に、適宜なすべきことで、複数の電話機と複数の回線を接続する場合、引用例1にあるように、何らかの切替器が必要で、出力する電話回線へのルートを設定するよう切替器を制御することは当業者の設計的事項に過ぎないから、引用例1に記載された発明において、VOIP回線を含む電話回線を有し、前記電話回線の状態を把握した出力に応答し、VOIP回線を含む複数の電話回線へのルートを複数設定するように切替器を制御し、電話機から電話回線へ発信する場合に、優先させる電話回線を登録するステップと、その出力に応答して前記優先させる電話回線へのルートを設定するように前記切替器を制御するステップとを備え、発信の際には前記優先させる電話回線に発信して通話することは、当業者が容易になし得ることと認められる。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1及び引用例2に記載された発明、及び、周知例1〜3に示される周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明、及び、周知例1〜3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明、及び、周知例1〜3に示される周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-07-20 
結審通知日 2005-07-26 
審決日 2005-08-08 
出願番号 特願2003-411144(P2003-411144)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 佐藤 秀一
特許庁審判官 野元 久道
望月 章俊
発明の名称 通話方法及び電話機  

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