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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1123821
審判番号 不服2003-21672  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2002-02-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-06 
確定日 2005-10-18 
事件の表示 特願2000-247497「撮像装置、映像信号処理装置および映像信号処理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月28日出願公開、特開2002- 64834、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.経緯
(1)手続き
本願は、平成12年8月17日の出願である。
(2)査定
原査定の理由は、概略、下記のとおりである。
記(査定の理由)
〈理由1〉
本願明細書の記載は、下記の点で不備と認められるから、特許法第36条項号に規定する要件を満たしていない。

(a)発明の詳細な説明には、第1の信号と第2の信号は、それぞれ別々の2本の信号線(第1の信号用と第2の信号用)でカラー処理装置に伝達されることが記載されているのに対し、請求項1から請求項8までの記載はその点が対応していない。
(b)請求項2の記載表現では、その記載事項が技術的に明確に把握できない。
〈理由2〉
本願各発明は、下記刊行物に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

刊行物1:特開2000-134633号公報
刊行物2:特開平10-164602号公報

2.本願発明
本願の請求項1から請求項8までに係る発明(以下、まとめて本願各発明という)は、本願明細書及び図面(平成14年9月27日付け、平成15年1月8日付け、及び平成15年12月5日付けの各手続補正書により補正された明細書及び図面)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1から請求項8までに記載した次の事項により特定されるとおりのものと認める。
記(特許請求の範囲)
【請求項1】 近傍画素について補間演算を行いR、G、B信号からなる映像信号を生成する映像信号処理装置と別体で構成され、画素一つ一つのデータを信号線を介して上記映像信号処理装置に出力する撮像装置であって、
R、G、Bの出力特性を有する複数種類の画素を有する撮像素子(22)と、
該撮像素子(22)の上記画素を順次読み出してアナログ画素信号を出力する画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)と、
該画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)が出力した上記アナログ画素信号を、その上記画素の上記出力特性が異なる画素ごとに振り分けられた第1のアナログ信号又は第2のアナログ信号に振り分ける信号分離手段(21,26a,26b;21b,26a,26b;21c,25a,25b)と、
上記第1のアナログ信号と上記第2のアナログ信号を、それぞれ別々の2本の上記信号線を介して上記映像信号処理装置に出力する信号出力手段(28,28a)とを有する、撮像装置。
【請求項2】 上記撮像素子(22)の上記画素は、上記画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)が読み出す順に出力特性の種類が異なるように配置されたことを特徴とする、請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】 上記撮像素子(22)は、上記画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)が読み出す一画素おきに同一の上記出力特性の上記画素が配置され、
上記信号分離手段(21,26a,26b)は、上記画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)が読み出す一画素おきの同一の上記出力特性の上記画素についての上記アナログ画素信号を、上記第1のアナログ信号又は上記第2のアナログ信号のいずれか一方に振り分けることを特徴とする、請求項1又は2記載の撮像装置。
【請求項4】 上記信号分離手段(21,26a,26b;21c,25a,25b)は、上記画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)が読み出した上記アナログ画素信号を、交互に上記第1のアナログ信号と上記第2のアナログ信号とに振り分けることを特徴とする、請求項1、2又は3記載の撮像装置。
【請求項5】 上記第1のアナログ信号と上記第2のアナログ信号との少なくとも一方に同期信号を重畳させる同期信号重畳手段(28a)をさらに有することを特徴とする、請求項1記載の撮像装置。
【請求項6】 R、G、Bの出力特性を有する複数種類の画素を有する撮像素子(22)を有する撮像装置と別体で構成され、かつ信号線により上記撮像装置と接続された映像信号処理装置であって、
R、G、Bの出力特性を有する画素を所定順序で読み出して上記画素の上記出力特性が異なる画素ごとに振り分けられた第1のアナログ信号又は第2のアナログ信号としてそれぞれ別々の2本の信号線に出力された上記第1のアナログ信号および上記第2のアナログ信号及び同期信号とを受信する信号受信手段(42,41;42,49;45a,45b,49)と、
該信号受信手段(42,41;42,49;45a,45b,49)が受信した上記第1のアナログ信号および上記第2のアナログ信号と上記同期信号と、上記画素を読み出す上記所定順序とに基づいて、読み出した上記画素についての映像信号を生成する映像信号生成手段(41,44,46,48;41d,47,48d)とを有する、映像信号処理装置。
【請求項7】 上記映像信号生成手段(41,44,46,48;41d,47,48d)は、R、G、Bのデジタル量の輝度信号を上記映像信号として生成することを特徴とする、請求項6記載の映像信号処理装置。
【請求項8】 撮像装置(20;20a;20b;20c)と、該撮像装置(20;20a;20b;20c)と別体で構成され該撮像装置から信号線を介して入力された信号を処理する映像信号処理装置(40;40a;40d)とからなる映像信号処理システム(10;10a;10b;10c;10d)であって、
上記撮像装置(20;20a;20b;20c)は、
R、G、Bの出力特性を有する撮像素子(22)と、
該撮像素子(22)の上記画素を所定順序で読み出してアナログ画素信号を出力する画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)と、
該画素信号読み出し手段(21,22;21b,22;21c,22)が出力した上記アナログ画素信号について、その上記各画素の上記出力特性が異なる画素ごとに振り分けられた第1のアナログ信号又は第2のアナログ信号のいずれか一方に振り分ける信号分離手段(21,26a,26b;21b,26a,26b;21c,25a,25b)と、
同期信号を受信して所定のタイミングで、上記第1のアナログ信号と上記第2のアナログ信号とを、それぞれ別々の2本の上記信号線に出力する信号出力手段(28,28a)とを有し、
上記映像信号処理装置(40;40a;40d)は、
上記第1のアナログ信号および上記第2のアナログ信号と、上記同期信号とを受信する信号受信手段(42,41;42,49;45a,45b,49)と、
該信号受信手段(42,41;42,49;45a,45b,49)が受信した上記第1のアナログ信号および上記第2のアナログ信号と上記同期信号と、上記画素を読み出す上記所定順序とに基づいて、上記画素についてのR、G、B信号からなる映像信号を生成する映像信号生成手段(41,44,46,48;41d,47,48d)とを有することを特徴とする映像信号処理システム。

3.当審の判断
(1)理由1
(a)請求項1から請求項8までのいずれにも、「第1のアナログ信号と第2のアナログ信号を、それぞれ別々の2本の信号線に出力する」との趣旨の記載が認められる。指摘された不備は解消された。
(b)「撮像素子の画素」を主語とする記載に改めたことにより、明確となった。
(2)理由2
(2-1)本願各発明について
(a)査定で引用された各刊行物のいずれにも、本願各発明が備える下記の構成(主要構成)は記載されていない。また、上記各刊行物を組み合わせても、主要構成を導くことはできない。
記(本願各発明が備える主要構成)
請求項1から請求項5までに係る発明にあっては、
アナログ画素信号を、その画素の出力特性が異なる画素ごとに振り分けられた第1のアナログ信号又は第2のアナログ信号に振り分け(信号分離手段)、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号を、それぞれ別々の2本の信号線を介して映像信号処理装置に出力する(信号出力手段)点。
請求項6及び請求項7に係る発明にあっては、
R、G、Bの出力特性を有する画素を所定順序で読み出して画素の出力特性が異なる画素ごとに振り分けられた第1のアナログ信号又は第2のアナログ信号としてそれぞれ別々の2本の信号線に出力された第1のアナログ信号および第2のアナログ信号を受信する(信号受信手段)点。
請求項8に係る発明にあっては、
アナログ画素信号について、その各画素の出力特性が異なる画素ごとに振り分けられた第1のアナログ信号又は第2のアナログ信号のいずれか一方に振り分け(信号分離手段)、第1のアナログ信号と第2のアナログ信号とを、それぞれ別々の2本の信号線に出力する(信号出力手段)点。
(b)そして、本願各発明は、上記主要構成を備えることにより、「同一又は類似の出力特性の画素についての画素信号を第1の信号又は第2の信号のいずれか一方に振り分けることにより、第1の信号と第2の信号とのそれぞれについて、出力特性の変動をなくし、あるいは出力特性の変動をできるだけ小さくし、安定した信号を伝送することができる。第1の信号と第2の信号とはそれぞれ別々の信号線で伝送され、受信側でも、画素単位で出力特性が大きく変化する信号ではなくなるので、例えばPLLなどまったく実施せず、適当なタイミングにてAD変換することも可能である。」(段落0009)、「一方、撮像装置からの信号出力線は、従来の一線式システムと比較して1本だけ増加して2本となるが、一線式システムと同様に、撮像装置の本体内には各種の信号処理回路を組み込む必要はない。」(段落0010)、「したがって、撮像装置を小型化することができ、かつ安定した信号を伝送することができる。」(段落0011)等の明細書記載の顕著な効果を奏するものと認められる。
(c)本願各発明は、いずれも、上記各刊行物に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。
(2-2)刊行物の記載等
以下、刊行物の記載について検討しておく。
(a)刊行物1(特開2000-134633号公報)
(a1)原査定の拒絶理由で引用された刊行物1には、「撮像装置、映像信号処理装置、ならびにこれらの装置による映像信号処理システム」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
(ア)「図1は、この発明が適用されたカラー画像処理システムの構成を示す。このカラー画像処理システムは、認識対象物のカラー画像を生成して、所定の認識処理を実施するためのもので、単板CCDカメラ1(以下単に「カメラ1」という)、このカメラ1からの映像信号を取り込んで処理用のカラー画像を生成する映像信号処理装置2、およびカラー画像処理用の画像処理装置3とにより構成される。 前記カメラ1の本体部には、CCD4,同期信号発生部5,信号合成部6が組み込まれている。CCD4は、画素を構成する各フォトダイオード上に、R,G,Bの各色フィルタを所定の配列順序に基づき配して成り、各画素毎の蓄積電荷は、インターライン転送方式によりシリアルに出力される。信号合成部6は、CCD4からの出力信号に同期信号発生部5により生成された同期信号を重畳してNTSC方式の映像信号を生成し、外部に出力する。」(段落0015〜段落0016)
(イ)「図1に戻って、映像信号処理装置2は、カメラ1からの映像信号を取り込んで、画像処理用の三原色の各画像信号を生成するもので、A/D変換回路8,同期信号分離回路9,PLL回路10,補間処理回路11などが含まれている。 前記カメラ1からの映像信号は、A/D変換回路8および同期信号分離回路9に入力される。PLL回路10は、同期信号分離回路9により抽出された水平同期信号の位相に合わせて、映像信号のサンプリングのタイミングをとるためのクロック信号ADCLK(以下この信号を「サンプリングクロックADCLK」という)を生成する。A/D変換回路8は、このサンプリングクロックADCLKのタイミングに応じて、前記映像信号をディジタル変換し、各画素毎のディジタル量の輝度信号を生成する。これにより前記CCD4の画素数に応じた解像度のディジタル画像信号が生成され、補間処理回路11に出力される。 補間処理回路11は、前記CCD4上の色フィルタの配列順序を記憶するメモリを具備しており、A/D変換回路8から入力されたディジタル量の各輝度信号に後記する補間処理を施すことにより、各画素毎に、その画素に含まれていない色彩光の輝度値を算出する。これによりR,G,Bの各原色毎に、前記CCD4の画素数分の輝度信号より成るディジタル画像信号が生成されるもので、各画像信号は、個別の伝送ラインを介して画像処理装置3へと出力される。」(段落0018〜段落0020)
(a2)刊行物1には、単板CCDカメラ1からの映像信号を取り込んでカラー画像を生成する映像信号処理装置2、およびカラー画像処理用の画像処理装置3とにより構成されるカラー画像処理システムにおいて、前記カメラ1の本体部には、CCD4,同期信号発生部5,信号合成部6が組み込まれ、CCD4は、画素を構成する各フォトダイオード上に、R,G,Bの各色フィルタを所定の配列順序に基づき配して成り、各画素毎の蓄積電荷は、インターライン転送方式によりシリアルに出力され、信号合成部6は、CCD4からの出力信号に同期信号発生部5により生成された同期信号を重畳して、外部に出力すること(上記記載ア)、また、映像信号処理装置2は、カメラ1からの映像信号を取り込んで、画像処理用の三原色の各画像信号を生成するもので、A/D変換回路8,同期信号分離回路9,PLL回路10,補間処理回路11などを含むこと(上記記載イ)が記載されている。
これによれば、刊行物1に記載の発明も、補間演算を行いR、G、B信号からなる映像信号を生成する映像信号処理装置と別体で構成され、画素一つ一つのデータを信号線を介して上記映像信号処理装置に出力する撮像装置であって、R、G、Bの出力特性を有する複数種類の画素を有する撮像素子と、該撮像素子の上記画素を順次読み出してアナログ画素信号を出力する画素信号読み出し手段とを有する点では、本願各発明と類似している。
しかし、刊行物1には、上記主要構成については何も記載がなく、示唆もない。
(b)刊行物2(特開平10-164602号公報)
(b1)同じく引用された刊行物2には、「画素補間装置及びその画素補間方法」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
(ウ)「図3において、最初にステップ#1で、画素の配置がベイヤー配列となっているCCD3によって撮影された画像がベイヤー配列の撮影データとなり、上記A/D変換部13は該撮影データをA/D変換してベイヤー配列の画像データを形成し、該画像データは、一次メモリ14に記憶され再び一次メモリ14から読み出される。次に、色分離部15は、ステップ#2からステップ#4において、上記画像データをR(赤),G(緑),B(青)の各色ごとのデータ系列に分離する色分離処理を行う。上記色分離部16による色分離処理が行われた後、画素補間部16は、ステップ#5で、上記ステップ#2で色分離されて形成されたGのデータ系列における各画素をそれぞれ画素値で示したGデータに対して、後述する画素補間法に従って画素補間を行い、・・・(中略)・・・画素補間処理が終わる。」(段落0017〜段落0019)
(b2)刊行物2には、CCD3によって撮影された撮影データをA/D変換してベイヤー配列の画像データを形成し、該画像データを色分離部15で、R(赤),G(緑),B(青)の各色ごとのデータ系列に分離する色分離処理を行い、色分離処理が行われた後、画素補間処理を行うことが記載されており(上記記載ウ)、ここには各色ごとに信号を分離することは示されているものの、それは単に各画素間における色の補間処理を行うためのものであり、しかもA/D変換された後の処理である。本願各発明のような「アナログ画素信号を画素の出力特性が異なる画素毎に2つのアナログ信号に振り分け、伝送することで信号劣化を少なくする」という課題認識については何ら記載がなく、示唆もないばかりでなく、上記主要構成についても何も記載がなく、示唆もない。
(c)前置報告書で示された文献(特開平10-276441号公報)
(c1)前置報告書で示された文献には、「ヘッド分離型多板式カメラ装置」(発明の名称)に関し、図面と共に次に掲げる事項が記載されている。
(エ)「図11はヘッド分離型の3板式カメラを示したものであり、図示しないレンズによりとらえられた光学像を3原色に分解する色分解プリズム1と、3原色それぞれに分解された光のうち、ブルー(B)を光電変換により電気信号の画素に分解すると共にCCD(B)出力66としてカメラケーブル接合コネクタ13に出力するCCD固体撮像素子2と、グリーン(G)を光電変換により電気信号の画素に分解すると共にCCD(G)出力67としてカメラケーブル接合コネクタ13に出力するCCD固体撮像素子3と、レッド(R)を光電変換により電気信号の画素に分解すると共にCCD(R)出力68としてカメラケーブル接合コネクタ13に出力するCCD固体撮像素子4」(段落0022)
(c2)上記文献には、ヘッド分離型の3板式カメラに関し、3原色それぞれに分解された光のR、G、Bを光電変換により電気信号の画素に分解すると共にCCD出力としてカメラケーブル接合コネクタに出力することは記載されているものの、それは3板式CCDを用いて、3原色それぞれに分解された光のR、G、Bを光電変換により電気信号の画素に分解するものであって、単板式のCCDを用いるものとはその前提を異にし、撮像素子からのアナログ信号を画素の出力特性が異なる画素ごとに振り分けるものとはいえない。すなわち、上記主要構成については何も記載がなく、示唆もない。
(d)以上のように、上記各刊行物及び上記文献のいずれにも上記主要構成について記載がなく、示唆もないのであるから、これらを組み合わせても、本願各発明に至ることはできない。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1から請求項8までに係る発明が上記各刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたという原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2005-10-04 
出願番号 特願2000-247497(P2000-247497)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 井上 健一  
特許庁審判長 新宮 佳典
特許庁審判官 堀井 啓明
西谷 憲人
発明の名称 撮像装置、映像信号処理装置および映像信号処理システム  
代理人 河宮 治  
代理人 和田 充夫  
代理人 中塚 雅也  
代理人 青山 葆  

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