ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G04C |
---|---|
管理番号 | 1123958 |
審判番号 | 不服2003-2982 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-10-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-02-25 |
確定日 | 2005-09-29 |
事件の表示 | 特願2001-47580「指針式機能時計」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月5日出願公開、特開2001-272481〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成3年4月11日に出願した特願平3-105203号の一部を平成13年2月23日に新たな出願としたものであって、その特許を受けようとする発明は、平成14年3月28日付け手続補正書、平成14年8月20日付け手続補正書及び平成15年2月25日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1には以下のとおり記載されている。 「【請求項1】時刻を表示する時刻表示装置と、水深計機能の機能信号を作成する水深計機能信号発生手段と、該水深計機能信号発生手段の発生信号によって機能表示を行う機能指針と、該機能指針を駆動するための機能駆動用モータと、該機能駆動用モータの非回転を検出するための非回転検出手段と、該非回転検出手段の非回転検出信号によって前記機能指針以外の表示装置を第1の警告表示と、電池電圧低下警告として前記機能指針以外の表示装置を前記第1の警告表示と異なる第2の警告表示に表示モードを切り換える表示モード切り換え手段と、水深計機能の機能モードから次の機能モードへ移行させる機能モード切換ボタンと、前記水深計機能信号発生手段の発生信号に基づく水深計の計測値が所定の水深値より大きいか小さいかの水深判断を行う水深判断手段とを有すると共に、前記非回転検出信号が出力後から前記水深判断手段にて水深計の計測値が所定の水深値よりも小さくなったことが判断され、かつ更に前記機能モード切換ボタンが操作されるまで、前記機能指針以外の表示装置が第1の警告表示中も前記水深計機能信号発生手段は機能信号の作成を継続し、該機能信号の発生に基づき前記機能指針は駆動を継続することを特徴とする指針式機能時計。」(以下、「本願発明」という。) 2.原査定の理由 これに対して、原査定の拒絶の理由は、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である下記引用文献1ないし3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。 記 引用文献1:特開昭61-34416号公報 引用文献2:特開昭59-17188号公報 引用文献3:特開昭63-223588号公報 3.刊行物に記載された発明 (1)引用文献1(特開昭61-34416号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (1a)「水深を表示する指針等の回転型表示部材と、該表示部材を駆動するための可逆転モータと、該モータを正転方向、逆転方向に駆動するための駆動信号に対応してそれぞれアップ、ダウンの計数動作を行なうことにより、前記表示部材の現在位置を計数するように構成された表示部材位置マーク手段と、所定のサンプリング周期で水圧を検出する水圧検出手段と、該水圧検出手段からのサンプリング・データを前記表示部材の指示するべき位置に対応した表示データに変換するための変換手段と、前回のサンプリング・データと今回のサンプリング・データとを直接的あるいは間接的に比較することにより前記モータの駆動方向を判定するための判定手段と、前記表示部材位置マーク手段の計数内容が前記表示データに一致するまで、前記判定手段の判定結果に応じた方向に前記モータを駆動するためのモータ駆動信号を形成するモータ駆動制御手段とを設けたことを特徴とする水深表示装置。」(特許請求の範囲の欄) (1b)「第1図〜第3図は、本発明の1実施例による指針式水深表示装置を備えたダイバ-用腕時計を示すものである。まず第2図は、その外観を示す平面図であり、本実施例の時計は、外部操作部材としてはリューズ1とプッシュプル・ボタン2とを有しており、また表示部材としては時針、分針、秒針より成る時刻表示用指針3と水深表示用指針4とを有している。」(2頁右上欄17行〜左下欄5行) (1c)「本実施例の水深表示装置はいわゆるマイクロコンピュータ形式の構成を有しており、5はクロック信号形成回路、6はCPU、7はプログラム等を記憶しているROM、8はRAM、9はインプットポート、10はアウトプットポートである。CPU6、ROM7、RAM8、インプットポート(以下Iポート)9およびアウトプットポート(以下Oポート)10は、その相互間を必要に応じてデータバス、アドレスバス、コントロールバスより成るバスライン11によって接続されている。Iポート9に接続されている各スイッチのうち、S1はリューズ1が1段引きの位置1bに設定されているときのみON状態となるように構成されたスイッチであり、またスイッチS2はプッシュプル・ボタン2が押し込み位置2aに設定されたときにON状態となるように構成されたスイッチである。・・・またIポート9の入力部Iには、所定のサンプリング周期ごとに、水圧検出装置12からの水圧検出サンプリング・データが入力されるように構成されている。上記の水圧検出装置12は、水圧検出用センサーを含む水圧検出部13と、該水圧検出部13からの出力信号を増幅するためのアンプ14と、該アンプ14からのアナログ出力信号をデジタル信号に変換するためのA/D変換回路15より構成されている。・・・一方、Oポート10の出力端子O1およびO2は、それぞれワンショット回路16および17を介して、正転用駆動信号形成回路18および逆転用駆動信号形成回路19に接続されている。また該正転用駆動信号形成回路18および逆転用駆動信号形成回路19からの出力信号は、モータ駆動回路20に入力されてステップモータ21を正転方向あるいは逆転方向に駆動し、さらにステップモータ21は、輪列22を介して前述の水深表示用指針4を、正転方向あるいは逆転方向に駆動するように構成されている。」(2頁右下欄7行〜3頁右上欄11行) (1d)「以下、図に従って本実施例の水深表示装置の動作について説明を行う。ただし第1図および第3図においては、時刻表示用指針3の駆動等の制御に関する部分は、本発明の要旨と直接の関係がないために省略されている。まず本実施例の時計においては、ボタン2を押し込み位置2aに設定すると、スイッチS2がON状態となることから水深表示装置が動作ON状態となり、第1図の水深表示装置の動作プログラムがスタートすることになる。」(3頁右下欄8〜17行) 上記摘記事項(1a)〜(1d)から、引用文献1には、次の発明が記載されているものと認められる。 「プッシュプルボタン2と、時針、分針、秒針より成る時刻表示用指針3と、水深を表示する水深表示用指針4と、該水深表示用指針4を駆動するためのステップモータ21と、該ステップモータ21を正転方向、逆転方向に駆動するための駆動信号に対応してそれぞれアップ、ダウン計数動作を行うことにより、前記表示部材の現在位置を計数するように構成された表示部材位置マーク手段と、所定のサンプリング周期で水圧を検出する水圧検出手段と、該水圧検出手段からのサンプリング・データを前記水深表示用指針4の指示するべき位置に対応した表示データに変換するための変換手段と、前回のサンプリング・データと今回のサンプリング・データとを直接的あるいは間接的に比較することにより前記モータの駆動方向を判定するための判定手段と、前記表示部材位置マーク手段の計数内容が前記表示データに一致するまで、前記判定手段の判定結果に応じた方向に前記ステップモータ21を駆動するためのモータ駆動信号を形成するモータ駆動制御手段とを設けた指針式水深表示装置を備え、プッシュプルボタン2を押し込むことで水深表示装置を動作ON状態とするダイバー用腕時計。」(以下、「引用発明1」という。) (2)引用文献2(特開昭59-17188号公報)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。 (2a)「秒針駆動用ステップモータと時・分針駆動用ステップモータの2つのステップモータを有する電子時計に於て、秒針に通常運針と異なる運針を行なわせるための信号を発生する警告秒針駆動用信号発生回路と、前記時・分針駆動用ステップモータのロータの回転、非回転を検出する検出回路と、この検出回路が前記ロータの非回転を検出すると前記信号により前記秒針駆動用ステップモータを駆動させ、秒針が通常運針と異なる運針を行なう様に制御をする制御回路とを設けたことを特徴とする電子時計。」(特許請求の範囲の欄) (2b)「最近になり、種々の機能を有するアナログ電子時計の実現のために、秒針駆動用ステップモータと時・分針駆動用ステップモータとの2つのステップモータを有する電子時計の提案がなされている。この種の時計では、秒針と時・分針とをそれぞれ独立して駆動することが出来るので、電磁修正により短時間で秒針又は時・分針の指示位置を修正することが出来る。しかしながらこの種の時計では、2つのステップモータが独立して駆動されるために、時・分針が何らかの原因により運針を停止しても秒針だけが運針しているという場合が生ずる可能性もある。この様な場合、時計の使用者は、時計が正常に動作しているものと思い、誤まった時刻表示を正しい時計時刻として読みとってしまう危険が大きい。本発明の目的は上記欠点を除去し、時計に異常が生じた場合には秒針が通常運針と異なる運針をするようにし、使用者に時計に異常があったことを知らせることの出来る電子時計を得ることにあり、本発明による電子時計は、秒針に通常運針と異なる運針を行なわせるための信号を発生する警告秒針駆動用信号発生回路と、時・分針駆動用ステップモータのロータの回転・非回転を検出する検出回路と、この検出回路が前記ロータの非回転を検出すると前記信号により前記秒針駆動用ステップモータを駆動させ、秒針が通常運針と異なる運針を行なう様に制御する制御回路とを有することを特徴とする。」(1頁右下欄12〜2頁左上欄19行) (2c)「7は選択回路で、ANDゲート8、9とORゲート10とにより構成され、後記する制御回路35の出力信号により制御され前記した通常秒針駆動用信号と警告秒針駆動用信号のいずれか一方を選択して通過させる。」(2頁左下欄2〜6行) (2d)「30は時・分針駆動用のロータで、電磁コイル29、ステータ(図示せず)と共に時・分針駆動用ステップモータを構成し、電磁コイル29に交互に向きが異なる電流が流れるたびに1ステップ回転し、輪列(図示せず)を介して時・分針を駆動する。31はロータ30の回転、非回転を検出するための検出回路で、インバータ32、33とNANDゲート34とにより構成され、インバータ32,33の出力端はNANDゲート34の入力端に接続され、入力端は電磁コイル29の両端に接続されている。35は制御回路で、ANDゲート36、37、ORゲート38,39、4進のカウンタ40、セットリセットフリップフロップ41(以下S-RFFと記載)とにより構成され、ANDゲート36の入力端はNANDゲート34の出力端及び電磁コイル開閉信号発生回路6の出力端に接続され、ORゲート38の入力端はANDゲート36の出力端とスイッチ42及びパワーオンリセット回路43の出力端に接続され、ORゲート39の入力端はスイッチ42とパワーオンリセット回路43の出力端にそれぞれ接続されている。尚パワーオンリセット回路43は電池44を投入した時のみ1つのパルスを形成する様に構成され、スイッチ42は通常は外部操作部材45が実線の矢印方向に押し込まれているために電池44のマイナス側に接続されている。」(3頁左上欄10〜右上欄16行) (2e)「次にロータ30が正常に回転した場合について説明する。ロータ30が正常に回転すると、・・・NANDゲート34からH信号が出力する。そのため、ANDゲート36,ORゲート38を介してカウンタ40はリセットされ、S-RFF41の出力はL信号を保持したまゝとなる。そのため秒針は通常秒針駆動用信号を基にして駆動される。この様に時・分針駆動用のロータ30が正常に回転した場合には秒針は通常運針を行なうのである。次に衝撃、ゴミ、低温、磁界等の何らかの原因でロータ30が正常に回転出来なかったものとすると、・・・NANDゲート34からはH信号が出力しない。そのためカウンタ40はリセットされず、カウンタ40は時・分針駆動用信号によりカウントされて”L”、”H”信号を出力する。・・・20秒間経過すると駆動回路28には次の時・分針駆動用信号が印可されるが、ロータ30は前回に正常回転出来なかったために今度の時・分針駆動用信号との位相が合わず、今度も正常に回転出来ない。・・・そのためカウンタ40は時・分針駆動用信号によりカウントされ、”H”、”L”信号を出力する。・・・次に20秒間が経過すると今度は時・分針駆動用信号によりカウンタ40はカウントされ、”H”、”H”信号を出力するようになる。そのためS-RFF41はセットされ、S-RFF41の出力はH信号に切換保持される。この状態はその後ロータ30が正常に回転するようになっても変わることがない。S-RFF41からH信号が出力すると、選択回路7からは第2図の波形Bに示す如き警告秒針駆動用信号が通過することになり、秒針は通常運針とは異なる2秒毎の連続した運針を行なうようになる。この様にロータ30が続けて2度正常に回転出来ないと、その後ロータ30が正常に回転するようになっても秒針は2秒毎の連続した運針を行なうようになる。そのため時計の使用者は時計に異常があったことに気づき、時刻表示が正しくないことがわかる。」(3頁右下欄19行〜4頁左下欄11行) (2f)「次に使用者は、針合せのために外部操作部材45を点線の矢印方向に引き出す。そして例えば外部操作部材45を回転させると、・・・ロータ30が回転して針合わせが行なわれる。この時、スイッチ42は電池44のプラス側に接続されるため、カウンタ40及びS-RFF41はリセットされ、S-RFF41の出力はL信号に切換保持される。・・・正しい時刻に針合せを行なった後に、外部操作部材45を実線の矢印方向に押し込むと、スイッチ42は再び電池44のマイナス側に接続され・・・る。従って次のステップからは秒針は1秒毎の通常運針を行なうことになる。」(4頁左下欄11行〜右下欄7行) 上記摘記事項(2a)〜(2f)から、引用文献2には、次の発明が記載されているものと認められる。 「秒針と時・分針とをそれぞれ独立して駆動するアナログ電子時計において、時・分針を駆動するロータ30と、該ロータ30の回転、非回転を検出するための検出回路31と、該検出回路31からの信号と外部操作部材45の操作による信号を入力する制御回路35と、該制御回路35からの出力により通常秒針駆動用信号と警告秒針駆動用信号のいずれか一方を選択して通過させる選択回路7とを有し、前記検出回路31が前記ロータ30の非回転を検出したとき、前記警告秒針駆動用信号により前記秒針駆動用ステップモータを駆動させ、秒針が通常運針と異なる2秒毎の連続した運針を行なう様に制御するとともに、外部操作部材45の操作により針合せ動作を行なった後は、前記通常秒針駆動用信号により前記秒針駆動用ステップモータを駆動させることで、時計に異常が生じた場合には秒針が通常運針と異なる運針をするようにし、使用者に時計に異常があったことを知らせることの出来る電子時計。」(以下、「引用発明2」という。) (3)引用文献3(特開昭63-223588号公報)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (3a)「基準信号発生回路、モータ駆動回路、パルスモータおよび運針表示装置を備え、かつ太陽電池等の発電手段によって充電される蓄電器を電源とする電子時計に於いて、第1の変調信号を発生する第1変調信号発生回路、第2の変調信号を発生する第2変調信号発生回路、前記蓄電器の充電電圧の低下を検出する電圧検出回路、及び前記基準信号発生回路の基準信号の停止を検出し、記憶する基準信号停止記憶回路と、前記パルスモータの停止を検出し、記憶するパルスモータ停止記憶回路と、前記電圧検出回路の動作信号によって第1の変調信号を、又前記基準信号停止記憶回路および前記パルスモータ停止記憶回路の動作信号によって第2の変調信号を選択し前記モータ駆動回路に供給する信号選択回路とから成り、かつ前記電圧検出回路からの動作信号を前記パルスモータ停止記憶回路に供給する事により前記電圧検出回路が蓄電器の充電電圧の低下を検出している時のみ前記パルスモータ停止記憶回路が動作する様に構成した事を特徴とする警告表示付電子時計。」(特許請求の範囲の欄) (3b)「指針式電子時計は蓄電器の充電電圧の低下を検出すると運針駆動形態が通常表示状態である通常駆動から変調表示状態である2秒ステップ駆動に切り換わる。そして、携帯者が充電を促す意味の変調表示状態である2秒ステップ駆動に気付かないで充電せずに引続き使用した場合には蓄電器の電圧はさらに低下して時間基準信号の発生、あるいはパルスモータは停止するが、その時間基準信号停止状態あるいはパルスモータ停止状態から再充電されて時計が再び駆動し始める電圧レベルに復活した場合、時間基準信号の発生、あるいはパルスモータが停止していた時間分だけ時計が遅れている事を警告する意味での第2の変調表示状態である変則2秒ステップ駆動に切り換わる。ここで停止について2系統考えた理由は、電源電圧が低下すると時間基準信号の発生が停止する条件下に於いてはパルスモータも停止するので、前記基準信号の発生が辛じて停止しなかった場合でもパルスモータが停止していた時間だけ時間が遅れて基準信号停止の場合と同じ問題が生ずるためである。また蓄電器の電圧低下以外の要因(例えばゴミによる過負荷)によってパルスモータが停止した状態から復活した場合を鑑みて、パルスモータの停止検出は電源電圧が低下時の変調表示である2秒ステップ駆動状態のみとせず通常表示である通常(1秒ステップ)駆動状態でも行う。そして、第2の変調表示状態である変則2秒ステップ駆動はリューズ引き操作によって解除されるよう構成された電子時計である。」(2頁右上欄20行〜右下欄10行) (3c)「第10図のモード1は通常表示状態である通常駆動時であり、その状態について説明する。この状態においては、・・・前記電圧検出回路7の前記コンデンサ3の電位の検出の結果として低電圧検出信号P7は”L”レベルである。この結果前記第1選択回路13では駆動パルスP10が選択出力され、前記第2選択回路14でも駆動パルスP10が選択出力信号P14として出力されて、前記リセット信号P20は”L”レベルなので前記モータ駆動回路15からは駆動用信号P15として第6図のモード1に示す電圧波形が出力される。その駆動用信号P15に基づいてパルスモータ17を駆動し、該パルスモータ17に連動する運針表示装置18は通常表示状態である通常駆動(1秒ステップ駆動)する。次に、第10図のモード2は第1の変調表示状態である2秒ステップ駆動時であり、その状態について説明する。この状態においては、・・・前記コンデンサ3の電位が通常駆動可能な電圧レベルより低下している。ゆえに前記OR19からの停止記憶信号P19は”L”レベルであり、前記電圧検出回路7の前記コンデンサ3の電位の検出の結果として低電圧検出信号P7は”H”レベルである。この結果前記第1選択回路13では2秒ステップパルスP11が選択出力され、前記第2選択回路14でも2秒ステップパルスP11が選択出力信号P14として出力され、前記リセット信号P20は”L”レベルなので前記モータ駆動回路15からは駆動用信号P15として第10図のモード2に示す電圧波形が出力される。その駆動用信号P15に基づいてパルスモータ17を駆動し、該パルスモータ17に連動する運針表示装置18は第1の変調表示状態である2秒ごとに秒針がまとめて2回続けて動く2秒ステップ駆動する。次に、第10図のモード3は第2の変調表示状態である変則2秒ステップ駆動時であり、その状態について説明する。この状態は、・・・基準信号停止記憶回路8からの基準停止記憶信号P8、あるいはパルスモータ停止記憶回路9からのパルスモータ停止記憶信号P9のいずれかは”H”レベルであるので、前記OR19からの停止記憶信号19は”H”レベルである。すると、・・・前記第2選択回路14では変則2秒ステップパルスP12が選択出力信号P14として出力されて、前記リセット信号P20は”L”レベルなので、前記モータ駆動回路15からは駆動用信号P15として第10図のモード3に示す電圧波形が出力される。その駆動用信号P15に基づいてパルスモータ17を駆動し、該パルスモータ17に連動する運針表示装置18は、第2の変調表示状態である2秒ごとに秒針がまとめて2回続けて動き、かつ2回続けて動く周期が交互に変化する変則2秒ステップ駆動する。」(10頁左下欄14行〜11頁左下欄1行) 上記摘記事項(3a)〜(3c)から、引用文献3には、次の発明が記載されているものと認められる。 「蓄電器を電源とする電子時計において、第1の変調信号を発生する第1変調信号発生回路、第2の変調信号を発生する第2変調信号発生回路、前記蓄電器の充電電圧の低下を検出する電圧検出回路、パルスモータ17の停止を検出して記憶するパルスモータ停止記憶回路と、前記電圧検出回路の動作信号によって第1の変調信号を選択し、又前記パルスモータ停止記憶回路の動作信号によって第2の変調信号を選択して前記モータ駆動回路に供給する信号選択回路とから成り、パルスモータ17に連動する運針表示装置18は、第1の変調信号により携帯者が充電を促す意味の変調表示状態である2秒ごとに秒針がまとめて2回続けて動く2秒ステップ駆動をし、第2の変調信号により2秒ごとに秒針がまとめて2回続けて動き、かつ2回続けて動く周期が交互に変化する変則2秒ステップ駆動をする警告表示付電子時計。」(以下、「引用発明3」という。) 4.対比 本願発明と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「時針、分針、秒針より成る時刻表示用指針3」及びその駆動等の制御に関する部分は、本願発明の「時刻を表示する時刻表示装置」に相当する。そして、引用発明1は、「表示部材位置マーク手段」、「水圧検出手段」、「変換手段」、「判定手段」及び「モータ駆動制御手段」によって、水深表示用指針4に水深となる表示データを表示させるようステップモータ21を駆動させるものであるから、引用発明1の「表示部材位置マーク手段」、「水圧検出手段」、「変換手段」、「判定手段」及び「モータ駆動制御手段」は、本願発明の「水深計機能の機能信号を作成する水深計機能信号発生手段」に相当し、また、引用発明1の「水深表示用指針4」、「ステップモータ21」は、それぞれ本願発明の「水深計機能信号発生手段の発生信号によって機能表示を行う機能指針」、「機能駆動用モータ」に相当するものである。さらに、引用発明1の「ダイバー用腕時計」は、本願発明の「指針式機能時計」に相当する。 したがって、本願発明と引用発明1とは、以下の【一致点】で一致し、【相違点】の【相違点1】ないし【相違点3】で相違する。 【一致点】 時刻を表示する時刻表示装置と、水深計機能の機能信号を作成する水深計機能信号発生手段と、該水深計機能信号発生手段の発生信号によって機能表示を行う機能指針と、該機能指針を駆動するための機能駆動用モータとを有する指針式機能時計。 【相違点】 【相違点1】 本願発明は、機能駆動用モータの非回転を検出するための非回転検出手段と、該非回転検出手段の非回転検出信号によって前記機能指針以外の表示装置を第1の警告表示と、電池電圧低下警告として前記機能指針以外の表示装置を前記第1の警告表示と異なる第2の警告表示に表示モードを切り換える表示モード切り換え手段を有するものであるのに対し、引用発明1は、このような警報表示を行うものではない点。 【相違点2】 本願発明は、水深計機能の機能モードから次の機能モードへ移行させる機能モード切換ボタンと、水深計機能信号発生手段の発生信号に基づく水深計の計測値が所定の水深値より大きいか小さいかの水深判断を行う水深判断手段を有するものであるのに対し、引用発明1は、プッシュプルボタン2を押し込むことで水深表示装置を動作ON状態とするものの、水深計機能の機能モードから次の機能モードへ移行させることについては明らかでなく、また、水深判断を行うものではない点。 【相違点3】 本願発明では、非回転検出信号が出力後から前記水深判断手段にて水深計の計測値が所定の水深値よりも小さくなったことが判断され、かつ更に前記機能モード切換ボタンが操作されるまで、前記機能指針以外の表示装置が第1の警告表示中も前記水深計機能信号発生手段は機能信号の作成を継続し、該機能信号の発生に基づき前記機能指針は駆動を継続するものであるのに対し、引用発明1は、どの時点まで、水深表示用指針4を駆動するステップモータ21の駆動を継続するか明らかでない点。 5.当審の判断 上記【相違点】について、以下に検討する。 (1)【相違点1】について 引用文献2には、摘記事項(2b)に「しかしながらこの種の時計では、2つのステップモータが独立して駆動されるために、時・分針が何らかの原因により運針を停止しても秒針だけが運針しているという場合が生ずる可能性もある。」と記載されている。そして、引用発明1も、時針、分針、秒針より成る時刻表示用指針3を駆動するためのモータと、水深表示用指針4を駆動するためのステップモータ21という少なくとも2つの独立して駆動されるモータを有する指針式時計となっており、引用発明1及び2は、ともに2つの独立して駆動されるモータを有する指針式時計という共通の技術分野に属する。したがって、引用発明1に、引用発明2の警告表示を適用して、水深表示用指針4を駆動するためのステップモータ21の非回転を検出するための検出回路(本願発明の「非回転検出手段」に相当)と、該検出回路からの信号によって、選択回路(本願発明の「表示モード切り換え手段」に相当)が警告秒針駆動用信号を選択して通過させることで、秒針(本願発明の「機能指針以外の表示装置」に相当)が通常運針と異なる運針を行う(本願発明の「第1の警告表示」に相当)構成とすることは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。 一方、電池電圧低下の警告表示を行うことは、引用発明3にみられるごとく従来より知られている。そして、引用発明1及び3は、ともに指針式時計という共通の技術分野に属することから、引用発明1に引用発明3の警告表示を適用して、信号選択回路(本願発明の「表示モード切り換え手段」に相当)が、蓄電器の充電電圧の低下を検出する電圧検出回路の動作信号によって(本願発明の「電池電圧低下として」に相当)、第1の変調信号を選択することで、秒針(本願発明の「機能指針以外の表示装置」に相当)が2秒ごとにまとめて2回続けて動く2秒ステップ駆動する(本願発明の「第2の警告表示」に相当)構成することは、当業者であれば容易に想到し得る事項である。 ここで、上記のように引用発明1に引用発明2及び3の警告表示をそれぞれ適用すると、秒針により2種類の警告表示を行うことになるが、引用発明3には「2秒ステップ駆動」及び「変則2秒ステップ駆動」のように2種類の警告表示を異なる表示モードで切換表示することが示されているから、両表示モードを表示モード切り換え手段にて切り換えるよう構成とすることは、当業者が適宜なし得る事項である。 (2)【相違点2】について 引用発明1の「プッシュプルボタン2」は、水深表示装置を動作ON状態(本願発明の「水深計機能の機能モード」に相当)とするものであり、機能モードを移行させるための機能モード切換ボタンといえるものである。また、水深計の計測値が所定の水深値より大きいか小さいかの水深判断を行う水深判断手段を有し、前記水深判断手段にて水深計の計測値が所定の水深値よりも小さくなったことが判断され、かつ更に前記機能モード切換のためのスイッチが操作されるまでは、次の機能モードへ移行させることなく、水深計機能の機能モード状態を継続させることは、例えば特開昭62-71890号公報(特に3頁右上欄6〜16行参照)及び特開昭62-79308号公報(特に3頁右上欄6〜12行参照)に記載されているようにダイバー時計における周知技術である。したがって、引用発明1に上記周知技術を適用して、プッシュプルボタン2の操作により水深計機能の機能モードから次の機能モードへ移行させるとともに、変換手段にて変換された水深表示用指針4の指示するべき位置に対応した表示データ(本願発明の「水深計機能信号発生手段の発生信号に基づく水深計の計測値」に相当)が所定の水深値より大きいか小さいかの水深判断を行う水深判断手段を設けるよう構成することに格別の困難性はない。 (3)【相違点3】について 引用発明2は、外部操作部材45の操作により針合せ動作を行うまで、警告秒針駆動用信号により秒針駆動用ステップモータを駆動するものであるから、警報を表示する必要がある限り、警告秒針駆動用信号により秒針駆動用ステップモータを駆動し続けるものとなっている。また、引用文献2の第1図の回路ブロック図からも明らかなように、警告秒針駆動用信号により秒針駆動用ステップモータを駆動する状態でも、時・分針を駆動するロータ30への駆動信号の作成を継続し、該駆動信号の発生に基づきロータ30は駆動を継続するよう構成されている。したがって、上記「(1)【相違点1】について」で述べたように、引用発明1に引用発明2を適用した場合には、ステップモータ21の非回転を検出するための検出回路からの信号の出力後、秒針は通常運針と異なる運針を行う警告表示中であっても、水深計機能信号発生手段である表示部材位置マーク手段、水圧検出手段、変換手段、判定手段及びモータ駆動制御手段は、その動作を継続するとともに、モータ駆動制御手段からの信号に基づきステップモータ21の駆動を継続することとなり、また、このような秒針が通常運針と異なる運針を行う警告表示は、警報を表示する必要がある水深計機能の機能モード状態である限り継続し、水深計機能の機能モードから次の機能モードへ移行された場合には不要となることも明らかである。 一方、上記「(2)【相違点2】について」で述べたように、引用発明1に上記周知技術を適用した場合には、水深判断手段にて表示データが所定の水深値よりも小さくなったことが判断され、かつ更にプッシュプルボタン2が操作されるまでは、水深計機能の機能モード状態が継続されることとなる。 以上のことから、引用発明1に、引用発明2及び上記周知技術を適用した場合には、ステップモータ21の非回転を検出するための検出回路からの信号の出力後から、水深判断手段にて表示データが所定の水深値よりも小さくなったことが判断され、かつ更にプッシュプルボタン2が操作されるまで、秒針は通常運針と異なる運針を行う警告表示中であっても、水深計機能信号発生手段である表示部材位置マーク手段、水圧検出手段、変換手段、判定手段及びモータ駆動制御手段は、その動作を継続するとともに、モータ駆動制御手段からの信号に基づきステップモータ21の駆動を継続するよう動作するものとなる。よって、【相違点3】に係る構成は、引用発明1に、引用発明2及び上記周知技術を適用した場合に当然になされる動作を単に記載したものに過ぎない。 そして、本願発明の奏する効果も、引用発明1ないし3及び上記周知技術から当業者が容易に予測しうる程度のものである。 なお、審判請求人は、請求の理由として「引用文献1、引用文献2及び引用文献3には水深計機能用の機能駆動用モータの非回転検出後に水深計の計測値が所定の水深値よりも小さくなり、かつ更に使用者が機能モード切換ボタンにより水深計機能の機能モードから次の機能モードへ移行させるまで、水深計機能の機能動作自体は継続して、生命の危険に係わるような機能である水深計機能の機能動作自体を使用者が意識的に水深計機能の使用を中止するまで確実に継続する記載はなく、本願発明は引用文献1、引用文献2及び引用文献3から容易に想到できるものではない。」と主張している。しかし、上記「(3)【相違点3】について」において述べたとおり、引用発明1に引用発明2及び上記周知技術を適用した場合には、非回転検出信号が出力後から前記水深判断手段にて水深計の計測値が所定の水深値よりも小さくなったことが判断され、かつ更に前記機能モード切換ボタンが操作されるまで、前記機能指針以外の表示装置が第1の警告表示中も前記水深計機能信号発生手段は機能信号の作成を継続し、該機能信号の発生に基づき前記機能指針は駆動を継続することになることから、請求人の上記主張は採用できない。 6.むすび したがって、本願発明は、引用発明1ないし3及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2及び3に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-07-20 |
結審通知日 | 2005-07-26 |
審決日 | 2005-08-17 |
出願番号 | 特願2001-47580(P2001-47580) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G04C)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 五閑 統一郎、榮永 雅夫 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
福田 裕司 後藤 時男 |
発明の名称 | 指針式機能時計 |