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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B66D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B66D |
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管理番号 | 1123978 |
審判番号 | 不服2002-2113 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-08-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-02-07 |
確定日 | 2005-09-30 |
事件の表示 | 平成11年特許願第29709号「レバーホイスト」拒絶査定不服審判事件〔平成12年8月15日出願公開、特開2000-226190〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
【1】手続きの経緯 本願は、平成11年2月8日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は特許を受けることができないとして、平成13年12月26日に前審において拒絶査定がなされた。 これに対し、平成14年2月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年3月8日付けで手続補正がなされたものである。 そして、この補正は、明細書の「特許請求の範囲」を補正対象項目として変更するものを含むものであって、該変更は、願書に添付された明細書の特許請求の範囲を、平成15年改正前の特許法第17条の2第1項第3号の規定により平成14年3月8日付けの手続補正書に記載のとおりに補正するものである。 【2】平成14年3月8日付けの手続補正について ・[補正却下の決定の結論] 平成14年3月8日付けの手続補正を却下する。 ・[理由] (1)補正の内容 出願人が求めている特許請求の範囲に関する補正の内容は、次のとおりである。 特許請求の範囲の記載を、 「【請求項1】 駆動軸上を進退可能に螺合された押圧駆動部材を、操作ハンドルの往復動によって回動させ、ラチェットギア及びその両面に配置された一対の摩擦部材を介して、駆動軸に固定された受圧部材を押圧して回転させるレバーホイストにおいて、駆動軸及びロードシーブを保持する側板に、ラチェットギアを捲上方向にのみ回転させるラチェット爪が、爪用軸に保持されて設けられており、押圧駆動部材から受圧部材までの各部材は、側板に固定されたブレーキカバーや、操作ハンドルのハンドルカバーによって覆われ、ブレーキカバーに、側板に設けられる爪用軸と対応する位置に円形状の凹部が形成され、前記爪用軸は、基端部が前記側板に保持される一方、先端頭部が前記ブレーキカバーに形成された凹部に嵌合されて傾くことなく保持されることを特徴とするレバーホイスト。 【請求項2】 ……(省略)……。」 と補正する。 そして、上記下線部を付した事項を新たに付け加えるこの補正は、新規事項を追加するものではなく、しかも、補正前の請求項1に記載された発明と補正後の請求項1に記載された発明とは、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、平成15年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当すると認める。 そこで、補正後の請求項1に記載された発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか否か)について、以下に検討する (2)補正後の発明 上記補正後の請求項1、2に係る発明は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「補正発明1」という。)は、(1)の箇所で既述したとおりのものである。 (3)引用刊行物の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した実願平1-6290号(実開平2-97393号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)、及び、実願昭62-11791号(実開昭63-120558号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、次の技術的事項が記載されている。 ・引用例1; 「従来の牽引巻上機に於て、ラチェットホイルに係合する制動用爪片を揺動自在に枢着したいわゆるポールピンは、短寸のものをサイドプレートの外側へ片持梁状に突設して固定していた。 [考案が解決しようとする課題] 従来のこのようなポールピンの固着構造では、爪片に大きな外力が作用した場合に、ポールピンがサイドプレートに対して傾いたり、時には離脱することもあって、ブレーキが作用しなくなる危険があった。また、第9図IIIに示すように、このポールピンa,aはステーボルトb…とは位置をずらせて設けるために、サイドプレートcの大きさが増加して、機体全体のコンパクト化を妨げていた。」(明細書第1頁第15行〜第2頁第8行) 「第1図に於て、ピニオンシャフト1とロードシーブ2とは、その間に歯車減速機構3を介して連動連結され、また、サイドプレート4,5等から成る機体6に、上記シャフト1とロードシーブ2とは同一軸心上に回動自在に枢着されている。7はギヤボックス、8はラチェットカバーである。ブレーキ構造体Bは、第1図、第3図及び第10図と第11図に於て、サイドプレート5に支軸9,9にて枢着された制動用爪片10,10と、これに係合するラチェットホイル11と、これを両面から挟着自在のブレーキライニング12,12と、ディスクハブ13と、該ディスクハブ13の小径円筒部13aに回動可能に外嵌した円筒型の連動リング14と、シャフト1のネジ部15に螺合すると共に制動時にディスクハブ13の外鍔部13bと共働してブレーキライニング12,12とディスクハブ13を共に挟圧するディスクナット16等から、構成される。そして、連動リング14の外周に、ラチェットホイル11及びブレーキライニング12,12を、軸心方向には可動でありかつ周方向には常に一体に回転する軸心方向可動一体回転機構Mを介して、外嵌する。」(明細書第3頁第2行〜第4頁第2行) 「次に19はレバーであり、機体6にその基部が回動自在に取り付けられ、また、ディスクナット16の外周に設けらた歯車部20に、係脱自在に係合する正回転用と逆回転用の爪片を有する切換爪金具21が、レバー19の基部の内部に設けられている。」(明細書第4頁第13〜17行) そして、第1図の記載から、「レバー19」は、内蔵した「ディスクナット16」等を覆うカバーの機能も奏するから、前記「ディスクナット16」等の部材は、「レバー19」の「レバーカバー」というべきものに覆われていることがわかる。 以上の記載、及び、第1、9図の記載、等からみて、引用例1には、 「ピニオンシャフト1上を進退可能に螺合されたディスクナット16を、レバー19の往復動によって回動させ、ラチェットホイル11及びその両面に配置された一対のブレーキライニング12を介して、ピニオンシャフト1に固定されたディスクハブ13を押圧して回転させる牽引巻上機において、ピニオンシャフト1及びロードシーブ2を保持するサイドプレート5に、ラチェットホイル11を捲上方向にのみ回転させる制動用爪片10が、ポールピンaに保持されて設けられており、ディスクナット16からディスクハブ13までの各部材は、サイドプレート5に固定されたラチェットカバー8や、レバー19のレバーカバーによって覆われ、前記ポールピンaは、基端部が前記サイドプレート5に保持される牽引巻上機」、 という発明が記載されているものと認められる。 ・引用例2; 「本考案は上記構成になり、支持軸の先端部の外周が凹所に嵌入しているから、支持軸が歯車のかみ合いにより作用する力によって倒れることのないように確実に支持されるとともに、その先端面が凹所の奥に当接するようになっているから、カバーの外面に押圧力が作用しても、支持軸が内側へわん曲して中間歯車に接触することがなく、中間歯車の自由な回転が確保される効果がある。」(明細書第3頁第5〜12行) 「ギヤーケース4の底面板6に数本の支持軸15a、15b、15c、15d、15eがその下端部を圧入して立設され、…(後略)…」(明細書第4頁第13〜15行) 「第5図に示す第3実施例においては、エンボス加工によってカバー35の上面36側を突出させた奥行きの深い嵌合凹部37が形成されて、この嵌合凹部37内に上記第1、第2実施例の支持軸15よりも長尺の支持軸38の上端部が深く遊嵌されていて、…(後略)…」(明細書第8頁第10〜15行) (4)対比 (対比) そこで、補正発明1と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、 引用例1に記載された発明の「牽引巻上機」は、その機能からみて、補正発明1の「レバーホイスト」に相当し、以下同様に、「ピニオンシャフト1」は「駆動軸」に、「ロードシーブ2」は「ロードシーブ」に、「ラチェットホイル11」は「ラチェットギヤ」に、「制動用爪片10」は「ラチェット爪」に、「ディスクナット16」は「押圧駆動部材」に、「ディスクハブ13」は「受圧部材」に、「ブレーキライニング12」は「摩擦部材」に、「サイドプレート5」は「側板」に、「ラチェットカバー8」は「ブレーキカバー」に、「レバー19」は「操作ハンドル」に、「レバーカバー」は「ハンドルカバー」に、「ポールピンa」は「爪用軸」に、それぞれ、相当する。 それゆえ、両者は、 「駆動軸上を進退可能に螺合された押圧駆動部材を、操作ハンドルの往復動によって回動させ、ラチェットギア及びその両面に配置された一対の摩擦部材を介して、駆動軸に固定された受圧部材を押圧して回転させるレバーホイストにおいて、駆動軸及びロードシーブを保持する側板に、ラチェットギアを捲上方向にのみ回転させるラチェット爪が、爪用軸に保持されて設けられており、押圧駆動部材から受圧部材までの各部材は、側板に固定されたブレーキカバーや、操作ハンドルのハンドルカバーによって覆われ、前記爪用軸は、基端部が前記側板に保持されるレバーホイスト」で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) ・補正発明1は、ブレーキカバーに、側板に設けられる爪用軸と対応する位置に円形状の凹部が形成され、前記爪用軸は、先端頭部が前記(ブレーキカバーに形成された)凹部に嵌合されて傾くことなく保持されるものであるのに対し、引用例1に記載された発明は、そのような事項を備えていない点。 (5)判断 以下、前記相違点について検討する。 (相違点の検討) (a)歯車等の回転部材を保持する軸の先端を、「ケース」や「カバー」に形成した円形状の凹部に嵌合し、もって、「ケース」や「カバー」で前記軸を保持することは、一例として、上記引用例2[第5図参照]、実願昭50-71541号(実開昭51-150373号)のマイクロフィルム[第2図参照]、実願昭52-9317号(実開昭53-104880号)のマイクロフィルム[第6図参照]、実公昭42-8418号公報[第2図参照]、…等に記載されるように、本願出願前、当業者にとって周知の事項であり、また、 (b)引用例2の上記記載によれば、上記のような構成を採用することが、回転部材を保持する軸を、歯車等の回転部材から受ける力で傾かないように確実に支持するという機能をもつものであり、そして、 (c)このようなことは、回転部材を保持する軸が、回転部材を「片持ち」梁で支持できない場合には、該軸を「片持ち」ではなく、両端(「両持ち」)支持とすることが、当業者にとって常套手段であることからも明らかである。 それゆえ、以上のことを総合して勘案すれば、引用例1に記載された発明の爪用軸(ポールピンa)を両端(「両持ち」)支持となし、もって、「ブレーキカバーに、側板に設けられる爪用軸と対応する位置に円形状の凹部を形成し、爪用軸の先端頭部を前記凹部に嵌合させる」ことは、引用例1記載の発明のブレーキカバーに(爪用軸を嵌合させる)円形状の凹部を形成できないとする特段の事情もない以上、当業者が容易になし得るものと言うべきである。 (効果について) そして、補正発明1の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載された発明及び上記周知事項から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 (まとめ) 以上のとおりであるから、補正発明1は、引用例1に記載された発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (6)むすび したがって、本願の請求項2に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかの検討をするまでもなく、上記補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合しないので、当該補正は認められない。 それゆえ、本件補正は、特許法第159条第1項の規定によって準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 【3】本願発明について (1)本願発明 平成14年3月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成13年12月7日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりである。 「【請求項1】 駆動軸上を進退可能に螺合された押圧駆動部材を、操作ハンドルの往復動によって回動させ、ラチェットギア及びその両面に配置された一対の摩擦部材を介して、駆動軸に固定された受圧部材を押圧して回転させるレバーホイストにおいて、駆動軸及びロードシーブを保持する側板に、ラチェットギアを捲上方向にのみ回転させるラチェット爪が、爪用軸に保持されて設けられており、押圧駆動部材から受圧部材までの各部材は、側板に固定されたブレーキカバーや、操作ハンドルのハンドルカバーによって覆われ、前記爪用軸は、基端部が前記側板に保持される一方、先端頭部が前記ブレーキカバーに形成された凹部に嵌合されて傾くことなく保持されることを特徴とするレバーホイスト。」 (2)引用例の記載事項 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した実願平1-6290号(実開平2-97393号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)、及び、実願昭62-11791号(実開昭63-120558号)のマイクロフィルム(以下、「引用例2」という。)には、上記【2】(3)で既述したとおりの技術的事項が記載されている。 (3)対比・判断 そこで、本願発明1と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、本願発明1は、【2】で検討した補正発明1から、【2】(1)の箇所における下線部を付した事項を省いたものである。 そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、さらに他の構成事項を付加したものに相当する補正発明1が、前記【2】(5)に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も、同様の理由により、引用例1に記載された発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 【4】むすび 以上のとおりであって、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-07-20 |
結審通知日 | 2005-07-26 |
審決日 | 2005-08-10 |
出願番号 | 特願平11-29709 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B66D)
P 1 8・ 121- Z (B66D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鳥居 稔 |
特許庁審判長 |
大橋 康史 |
特許庁審判官 |
平城 俊雅 清田 栄章 |
発明の名称 | レバーホイスト |
代理人 | 野中 誠一 |
代理人 | 小山 方宜 |
代理人 | 福島 三雄 |