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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1123994
審判番号 不服2002-20116  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-08-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-10-16 
確定日 2005-09-30 
事件の表示 平成8年特許願第256244号「オブジェクト指向アプリケーション用パッケージ化アルゴリズム」拒絶査定不服審判事件〔平成9年8月5日出願公開、特開平 9-204300〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年9月27日(パリ条約による優先権主張1995年12月21日、米国)の出願であって、平成14年7月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月16日に審判請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成14年10月16日付け手続補正書についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成14年10月16日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の請求項1に記載された発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「演算環境において、作成中のオブジェクト指向アプリケーションのためにアプリケーション開発環境から必要なコンポーネントの組を決定するシステムであって、
前記アプリケーションの実行に必要な第1のコンポーネントを複数のコンポーネントから識別する手段と、
前記アプリケーションに含めるために、前記第1のコンポーネントによってネームにより参照されるか或いは必要とされる第1の組のコンポーネントを複数のコンポーネントから識別する手段と、
前記第1の組の個々のコンポーネントによってネームにより参照されるか或いは必要とされる第2の組のコンポーネントを複数のコンポーネントから識別する手段と、ここで該識別された第2の組の個々のコンポーネントは、前記アプリケーションに含めるためのものである、
前記第1のコンポーネント、前記第1の組のコンポーネント、及び前記第2の組のコンポーネントから必要なコンポーネントのリストを作成する手段と、
を有するシステム。」

上記補正は、補正前の請求項9に記載した発明を特定するために必要な事項である、「アプリケーション」を「オブジェクト指向アプリケーション」に限定し、「識別する」を「複数のコンポーネントから識別する」に限定し、「ネームにより参照されるか又は必要とされる第1の組のコンポーネント」を、「前記第1のコンポーネントによってネームにより参照されるか或いは必要とされる第1の組のコンポーネント」に限定し、「ネームにより参照されるか又は必要とされる第2の組の個々のコンポーネント」を、「前記第1の組の個々のコンポーネントによってネームにより参照されるか或いは必要とされる第2の組のコンポーネント」に限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の優先日の際に独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項)の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前である平成4年11月27日に出願公開された特開平4-342023号公報(以下「引用文献」という。)には、次の記載がある。

(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はロードモジュール作成方式、特にデータに関する処理を纏めて行なうプログラム(以下部品という)をリンクするプログラムのロードモジュール作成方式に関する。」
(ロ)「【0007】
次に図1の実施例の動作の詳細を説明する。プログラム解析部1では、図2(a)にソースプロララム10のイメージの一例を、図2(b)に解析結果格納テーブル11に格納するイメージの一例をを示すように、ソースプログラム10で使われている部品名と処理区分を表すメソッドとを解析結果格納テーブル11に格納する。次に部品改造部2では、解析結果格納テーブル11をまとめ、ソースプログラム10では、部品はPARTS1のみが使われ、処理メソッドとしてはadd,substractが使われていることを判断し、部品ソースからPARTS1を読込む。図3は改造前部品のPARTS1構造を一例を示す図で、PARTS1構造が図3の構造だとすると、部品改造部2によりmove処理部およびmuliplication処理部がPARTS1から削除される。この結果、改造後PARTS1は図4に示すような構造となる。次にコンパイル・リンク部3では、改造後部品ソース13のコンパイルを行い、さらにコンパイル済みプログラム14とのリンクを行う。」

(ハ)ソースプログラムにおいて、ソースプログラムが使用するメソッドは、部品名(例えば、”PARTS1”)とメソッド名(例えば、”add”)によって参照される。(図2(a))

(ニ)解析結果テーブル11には、部品名とメソッド名の組からなるリストが格納されている。(図2(b))

(ホ)「【0008】
図5(a)は従来のロードモジュールのイメージ、図5(b)は本実施例でのロードモジュール15のイメージの一例を示す図で、本実施例による図5(b)ではPARTS1のmove処理部,multilcation処理部が含まれないため、ロードモジュールのサイズが縮小されている。」

上記(ロ)及び(ニ)からすると、引用文献に記載の「部品ソース」には、複数のメソッドからなる複数の部品プログラムが格納され、「プログラム解析部」は、ソースプログラムを解析する手段と、その結果に基づいて、部品ソース内の複数のメソッドから、ソースプログラムによって部品名及びメソッド名によって参照されるか或いは必要とされる複数のメソッド(すなわち、メソッドの組)を識別する手段と、その識別結果に基づいて、必要なメソッドをリストとして作成する手段を有している。
また、上記(ロ)からすると、引用文献において、「部品ソース」に格納され、「解析結果テーブル」に含まれるメソッドは、ロードモジュールとして実行されるためにロードモジュールに含められるものであり、「解析結果テーブル」の作成は、ロードモジュールに使用されるメソッドを決定するためになされるものである。
さらに、上記(ロ)からすると、引用文献に記載されたロードモジュール作成方式は、プログラム解析部、部品改造部、コンパイル・リンク部といった複数の機能手段から構成されたロードモジュールの開発環境であり、全体として演算環境を構成していることは自明である。

よって、上記(イ)乃至(ホ)からして、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「演算環境において、作成中のロードモジュールのためにロードモジュール開発環境から必要なメソッドの組を決定するロードモジュール作成方式であって、
前記ロードモジュールの実行に必要なソースプログラムを解析する手段と、
ロードモジュールに含めるために、ソースプログラムによって部品名及びメソッド名により参照されるか或いは必要とされるメソッドの組を、部品ソースに格納された複数のメソッドから識別する手段と、
前記メソッドの組から必要なメソッドのリストを作成する手段と、
を有するロードモジュール作成方式。」

(3)対比

引用発明の「ロードモジュール」、「ロードモジュール作成方式」、「ソースプログラム」、「部品名及びメソッド名」、「メソッドの組」、「部品ソースに格納された複数のメソッド」及び「必要なメソッド」は、本願補正発明の「アプリケーション」、「システム」、「第1のコンポーネント」、「ネーム」、「第1の組のコンポーネント」、「複数のコンポーネント」及び「必要なコンポーネント」にそれぞれ対応する。
したがって、両者は、

「演算環境において、作成中のアプリケーションのためにアプリケーション開発環境から必要なコンポーネントの組を決定するシステムであって、
前記アプリケーションに含めるために、前記アプリケーションの実行に必要な第1のコンポーネントによってネームにより参照されるか或いは必要とされる第1の組のコンポーネントを複数のコンポーネントから識別する手段と、
前記第1の組のコンポーネントから必要なコンポーネントのリストを作成する手段と、
を有するシステム。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
作成対象となるアプリケーションが、本願補正発明は、オブジェクト指向アプリケーションであるのに対し、引用発明では、ソースプログラム、部品プログラム、及び、ロードモジュールがどのようなモデルに基づいたものであるのか具体的に特定していない点。
[相違点2]
識別手段が、本願補正発明においては、アプリケーションの実行に必要な第1のコンポーネントを複数のコンポーネントから識別するのに対し、引用発明では、この点について具体的に特定していない点。
[相違点3]
本願補正発明は、識別された第1の組のコンポーネントを構成する個々のコンポーネントがネームにより参照又は必要とする第2の組のコンポーネントを識別し、当該識別されたコンポーネント及び第1のコンポーネントもリストの作成に使用するのに対し、引用発明では、ソースコードが参照又は使用するメソッドのみを識別し、当該識別したメソッドのみをリストの作成に使用する点。

(4)判断
以下、上記各相違点について検討する。

[相違点1について]
引用発明では、メソッドがロードモジュールの作成に使用されているが、この「メソッド」という用語は、通常、オブジェクト指向プログラミングにおいて用いられる用語であることは当業者における技術常識であるから、引用発明におけるロードモジュールを、オブジェクト指向のモデルによるものに限定することは単なる設計変更にすぎない。また、そのことにより、引用発明のソースプログラムもオブジェクト指向におけるメソッドとして構成しなければならないことも必然的な設計変更にすぎない。
よって、相違点1に係る本願補正発明の構成は、技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点2について]
引用発明において、プログラム解析部は、解析対象となるソースプログラムを何らかの手段により入力し、これがロードモジュールの作成に必要なものであることを識別していることは自明である。また、処理対象となるプログラムを、外部又は内部からファイル名等により指定することにより、計算機に識別させることはコンピュータの分野における技術常識であるから、引用発明において、複数のソースプログラムから、解析対象とするソースプログラムを識別する手段を設けることに格別な困難性はない。また、本願補正発明においては、複数のコンポーネントからアプリケーションの実行に必要なものをどのようにして識別しているのか何ら特定していないので、あらゆる手法によるものが含まれると解されるべきであるから、上記の技術常識による手法をも包含している。
よって、相違点2に係る本願補正発明の構成は、技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

[相違点3について]
アプリケーションの構造として、3段以上の参照が行われる場合があることは技術常識である。例えば、特開平7-319676号公報の図17に記載されているように、クラスAのメソッドが、クラスBのメソッドを参照し、クラスBのメソッドがクラスEのメソッドを参照するという3段の参照も、ごく一般的なアプリケーションの構造の一つである。また、このように3段以上の参照が行われるアプリケーションにおいて、3段目以降のプログラムもアプリケーションの実行に必要であり、アプリケーションに含めなければならないことは自明である。したがって、引用発明において、ソースプログラムが参照或いは必要とするメソッドが、他の組のメソッドを参照或いは必要とする場合には、そのような他の組のメソッドがあるかどうかについても個々のメソッドについて解析を行い、他の組のメソッドをもリストの作成に用いるよう構成しなければならないことは、当業者ならば当然に想到し得たものである。また、アプリケーションの構造を理解するために、参照先のみならず、参照元のクラスをも併せて管理することが上記特開平7-319676号公報の図14及び図17に記載されているように周知であることからして、引用発明において、参照の元となるソースコードをもリストの作成に使用することは、当業者が適宜なし得た程度の設計変更にすぎない。
よって、相違点3に係る本願補正発明の構成は、技術常識に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲内のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づき、技術常識等を勘案することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する特許法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について、
(1)本願発明
平成14年10月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項9に係る発明は(以下、「本願発明」という。)は、平成13年4月23日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項9に記載された次のとおりのものである。

「演算環境において、作成中のアプリケーションのためにアプリケーション開発環境から必要なコンポーネントの組を決定するシステムであって、
前記アプリケーションの実行に必要な第1のコンポーネントを識別する手段と、
前記アプリケーションに含めるために、ネームにより参照されるか又は前記第1のコンポーネントにより必要とされる第1の組のコンポーネントを識別する手段と、
ネームにより参照されるか又は前記第1の組の個々のコンポーネントにより必要とされる第2の組のコンポーネントを識別しかつ該識別された第2の組の個々のコンポーネントがその後前記アプリケーションに含めるためのものである手段と、
前記第1のコンポーネント、前記第1の組のコンポーネント、及び前記第2の組のコンポーネントから必要なコンポーネントのリストを作成する手段とを有する
システム。」

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用文献、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「アプリケーション」の限定事項である「オブジェクト指向」の構成を省き、「識別する」の限定事項である「複数のコンポーネントから」との構成を省き、「ネームにより参照されるか又は必要とされる第1の組のコンポーネント」の限定事項である「前記第1のコンポーネントによって」との構成を省き、及び、「ネームにより参照されるか又は必要とされる第2の組の個々のコンポーネント」の限定事項である「前記第1の組の個々のコンポーネントによって」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用文献に記載された発明に基づき、技術常識等を勘案することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用文献に記載された発明に基づき、技術常識等を勘案することにより当業者が容易に発明することができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明に基づき、技術常識等を勘案することにより当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-05-09 
結審通知日 2005-05-11 
審決日 2005-05-24 
出願番号 特願平8-256244
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 漆原 孝治  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 松浦 功
林 毅
発明の名称 オブジェクト指向アプリケーション用パッケージ化アルゴリズム  
復代理人 五十嵐 裕子  
代理人 坂口 博  
復代理人 松井 光夫  
代理人 市位 嘉宏  

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