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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L |
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管理番号 | 1124024 |
審判番号 | 不服2002-10326 |
総通号数 | 71 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-07-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-06-10 |
確定日 | 2005-10-06 |
事件の表示 | 平成11年特許願第375811号「通信装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月10日出願公開、特開2001-189742〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成11年12月28日の出願であって、平成14年5月2日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日に拒絶査定に対する審判請求がされたものである。 2.本願発明 本願の請求項2に係る発明は、特許請求の範囲の請求項2に記載された次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「【請求項2】 LAN本体と、交換手段の手前で分岐して上記LAN本体に接続された加入者線とを含んで、ブロードキャスト・ドメインを形成する、ネットワークにおいて、通信を行う通信装置であって、 加入者側接続点において上記加入者線に接続され、上記加入者線を介して送信されてくるブロードキャスト情報を受信する第1のホスト装置と、 上記加入者線に接続された分岐手段と、 上記分岐手段の切り換え先の一方に接続された上記交換手段と、 上記分岐手段の切り換え先の他方を介して接続され、上記加入者線を介して上記第1のホスト装置に静止画情報、動画情報、テキスト情報および音声情報の少なくとも1つを含むブロードキャスト情報を送信する第2のホスト装置とを有することを特徴とする通信装置。」 3.引用例の認定 これに対して、当審における平成16年4月22日付けの拒絶理由に用いられた国際公開第99/16212号パンフレット(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1)「技術分野 この発明は、地域に密着した情報を提供するのに適した通信技術に関する。」(明細書1頁5行〜7行) (2)「発明の開示 この発明によれば、上述の目的を達成するために、通信装置に、回線に接続された分岐手段と、上記分岐手段の分岐先の一方に接続された交換手段と、上記交換手段に対応して設けられ、かつ上記分岐手段の切り替え先の他方に接続され、上記回線からの要求に応じて加入者装置に対してサービスを実行するサーバとを設けるようにしている。 上述の回線は、加入者装置に接続された加入者線でもよいし、交換局を上位の交換局に接続する中継回線でもよい。また、回線は有線または無線の回線とすることができる。」(明細書2頁2行〜10行) (3)「発明を実施するための最良の形態 以下、この発明の実施例について説明する。第1図は、この発明の第1の実施例を示しており、この図において、通信端末(例えばモデム付きのパーソナルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスト、インテリジェント電話)11が加入者線12を介して加入者交換局13に接続されている。通信端末11は、後述のサーバ17〜20のサービスを受けるクライアント機能を必要に応じて有している。また、通信端末11は、通話機能を有していてもよい。加入者交換局13は、加入者交換機14、スイッチ15およびLAN(ローカルエリアネットワーク)16を含んで構成されている。加入者線12は対応するスイッチ15を介して加入者交換機14およびLAN16に択一的に接続されている。加入者交換機14およびLAN16は基本的に加入者交換局13に一組設けられている。収容対象の加入者線11を複数組に分け、それぞれに交換機14およびLAN16を設けてもよい。LAN16は、WWWサーバ17、SMTP(Simple Mail Transfer Protocol)サーバ18、POP(Post Office Protocol)サーバ19および代理サーバ20等を含んで構成されている。WWWサーバ17は加入者線12およびスイッチ15を介してHTTPプロトコルでHTML文書および関連ファイルを通信端末11に供給するものである。SMTPサーバ18は、SMTPプロトコルで電子メールを転送するものである。POPサーバ19は、SMTPプロトコルで転送された電子メールを受信するためのものである。代理サーバ20はインターネット21への接続を可能にするものである。 また、加入者交換局13は中継線22を介して中継交換局23に接続されている。この中継交換局23は図示しない上位の交換局に接続されていてもよい。この中継交換局23は中継交換機24を有している。また、破線で示すように中継交換局23にスイッチ15およびLAN16を設けるようにしてもよい。」(明細書2頁29行〜3頁27行) (4)「このような構成により、パーソナルコンピュータ等でLAN16上のリソースをアクセスし、例えば、ウェブページを閲覧できる。LAN16のリソースはLAN単位で管理することができ、その地域に適したものとすることができる。例えば、地域行政のサービス案内、地域の学校の情報、公共施設の案内等を利用者に公報するのに最適である。また、地域の商業施設が広告を行うのにも最適である。また、商品の注文を行うのにも適している。この場合、CGI(コモンゲートウェイインターフェース)等を用いてWWWサーバ17においてデータを受け付けるようにしてもよい。また、地域のユーザ間のメールのやり取りを行える。」(明細書4頁26行〜5頁5行) (5)「したがって、旅行先、移動先等において、地域に適合した情報、例えば、交通情報、天気情報、店舗情報等を利用するのに適している。」(明細書6頁14行〜16行) (6)「1.加入者線に接続された分岐手段と、 上記分岐手段の切り替え先の一方に接続された交換手段と、 上記交換手段に対応して設けられ、かつ上記分岐手段の切り替え先の他方に接続され、上記加入者線を介して加入者装置に情報を提供する情報提供サーバとを有することを特徴とする通信装置。」(明細書8頁3行〜7行) したがって、これらの記載、およびこの分野の技術常識によると、引用例1には、 「LANと、交換機の手前で分岐して上記LANに接続された加入者線とを含む、ネットワークにおいて、通信を行う通信装置であって、 加入者側接続点において上記加入者線に接続され、上記加入者線を介して送信されてくる情報を受信する加入者装置と、 上記加入者線に接続された分岐手段と、 上記分岐手段の切り換え先の一方に接続された上記交換手段と、 上記分岐手段の切り換え先の他方を介して接続され、上記加入者線を介して上記加入者装置に地域行政のサービス案内、地域の学校の情報、公共施設の案内や交通情報、天気情報、店舗情報などの地域に適合した情報等を含む情報を送信する情報提供サーバとを有することを特徴とする通信装置。」(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。 また、特開平2-233053号公報(以下、「周知例1」という。)には次の記載がある。 (1)「1)局側に放送センタを備え、加入者宅側に放送受信設備を備え、局側と加入社宅側との間で通信が行われていないオフトーク期間に、局側の放送センタから通信回線を介して加入者宅側の放送受信設備に放送信号を送出するオフトーク通信方式」(1頁左欄5行〜10行) したがって、これらの記載、および技術常識によれば、周知例1には、「局側の放送センタから加入者宅側の放送受信設備に放送信号を送出する」ことが記載されている。 また、特開平4-207254号公報(以下、「周知例2」という。)には、次の記載がある。 (1)「本発明は、電話局の交換機と利用者宅の電話機とを接続する電話回線に空き時間を利用して信号を伝送するオフトーク通信装置に関する。」(2頁左上欄8行〜10行) (2)「ところで、従来、この電話回線の空き時間に、この電話回線を利用して利用者宅に一方向通信により、音楽信号などを放送するオフトーク通信システムが知られている。」(2頁左下欄18行〜右上欄1行) (3)「10は局外に設置したセンタであって、センタ10には音声や音楽などをデジタル信号で発信するセンタ機器A,Bが設けられている。以後、この発信信号を放送信号と称して伝送信号と区別する。」(3頁右下欄3行〜7行) 音声のデジタル信号は音声情報であるから、この記載によれば、周知例2には、「電話局の交換機と利用者宅の電話機とを接続する電話回線に空き時間を利用して信号を伝送するオフトーク通信装置において、センタ機器から端末装置31へ、音声情報や音楽信号を放送する」ことが記載されている。 「放送する」ことは「同報する」ことであるから、周知例1、2によれば、「交換局内の装置から加入者宅の装置へ所定の情報を同報(ブロードキャスト)により送信すること」は周知技術(以下、「周知技術1」という。)である。 また、特開平7-235999号公報(以下、「周知例3」という。)には、次の記載がある。 (1)「【0001】 【産業上の利用分野】本発明はオフトーク通信サービスシステムに関する。 【0002】 【従来の技術】電話通信システムのサービスの一つにオフトーク通信サービスがある。このオフトーク通信サービスとは、電話回線の空き時間を利用して情報提供センタから利用者へ生活情報や行政情報等を一斉に送るようにしたサービスである。このオフトーク通信サービスは、一般通話をいつでも許容できるような形態となっており、オフトークサービスを受けている時でも、電話の発信・着信を許容している。つまり、オフトーク通信サービス中に該当回線に一般通話がかかってきたら、オフトーク通信サービスは中止される。」(2頁2欄12行〜25行) 「一斉に送る」ことは「同報する」ことであるから、この記載によれば、周知例3には、「生活情報や行政情報などをオフトーク通信サービスで同報する」ことが記載されている。 また、電子情報通信学会技術研究報告、IN96-14 中川学他「衛星・地上連携マルチメディアコンピュータ遠隔教育ネットワークシステムの検討」(以下、「周知例4」という。)には、次の記載がある。 (1)「4.1 同報アドレス 同報配信サービスを提供する場合、そのあて先アドレスが問題となる。複数のあて先を示すアドレスとしてマルチキャストアドレス、サブネットブロードキャストアドレス、ネットワークブロードキャストアドレスがある。」(27頁左欄2行〜8行) この記載によれば、周知例4には、「同報配信サービスを提供する場合、ブロードキャストアドレスを用いる」ことが記載されている。 4.対比 (ア)引用例1記載の発明の「加入者装置」は、例えば「モデム付きのパーソナルコンピュータ」からなる「通信端末」であって、当該構成は「ホスト」装置であるから、本願発明の「第1のホスト装置」に相当する。 (イ)引用例1記載の発明の「情報提供サーバ」は「ホスト装置」の一種であるから、本願発明の「第2のホスト装置」に相当する。 (ウ)引用例1記載の発明の「地域行政のサービス案内、地域の学校の情報、公共施設の案内や交通情報、天気情報、店舗情報などの地域に適合した情報等を含む情報」と、本願発明の「静止画情報、動画情報、テキスト情報および音声情報の少なくとも1つを含むブロードキャスト情報」は、共に「所定の情報」である点で共通している。 したがって、本願発明と引用例1記載の発明とは、「LAN本体と、交換手段の手前で分岐して上記LAN本体に接続された加入者線とを含む、ネットワークにおいて、通信を行う通信装置であって、 加入者側接続点において上記加入者線に接続され、上記加入者線を介して送信されてくる情報を受信する第1のホスト装置と、 上記加入者線に接続された分岐手段と、 上記分岐手段の切り換え先の一方に接続された上記交換手段と、 上記分岐手段の切り換え先の他方を介して接続され、上記加入者線を介して上記第1のホスト装置に所定の情報を送信する第2のホスト装置とを有することを特徴とする通信装置。」の点で一致し、以下の点で相違する。 (ア)第1の装置から第2の装置に送信する「所定の情報」に関し、引用例1記載の発明では「地域行政のサービス案内、地域の学校の情報、公共施設の案内や交通情報、天気情報、店舗情報などの地域に適合した情報等を含む情報」であるのに、本願発明では「静止画情報、動画情報、テキスト情報および音声情報の少なくとも1つを含むブロードキャスト情報」である点。 (イ)本願発明の「ネットワーク」は「ブロードキャスト・ドメインを形成する」のに対し、引用例1記載の発明では、ブロードキャスト・ドメインを形成していると記載されていない点。 5.当審の判断 上記相違点について検討すると、 相違点(ア)について、 周知技術1として知られるように、「交換局内の装置から加入者宅の装置へ所定の情報を同報(ブロードキャスト)により送信すること」は周知であり、本願発明の「所定の情報」は図2を参照すれば、「学校の情報、市役所からの情報、天気情報、買い物情報、リサイクルマーケット、株価情報」であるところ、周知例3に記載されるように、「生活情報や行政情報などをオフトーク通信サービスで同報する」ことは周知であるから、引用例1記載の発明の交換局内の「地域行政のサービス案内、地域の学校の情報、公共施設の案内や交通情報、天気情報、店舗情報などの地域に適合した情報等を含む情報」を「ブロードキャスト情報」として加入宅内の装置に送信することは設計事項である。なお、ブロードキャスト情報を配信する場合、ブロードキャスト用のアドレスを用いて配信することは周知例4に記載されるように極めて一般的なことである。 そして、配信される情報が「音声情報を含む」情報であることは、周知例2にも記載されているように、ごく一般的な情報に過ぎず、引用例1記載の発明の「地域行政のサービス案内、地域の学校の情報、公共施設の案内や交通情報、天気情報、店舗情報などの地域に適合した情報等を含む情報」も一般的にテキスト情報や静止画情報あるいは動画情報であるから、本願発明のような「静止画情報、動画情報、テキスト情報および音声情報の少なくとも1つを含むブロードキャスト情報」とする程度のことは容易なことである。 相違点(イ)について、 情報を提供する第2の装置と情報を受信する第1の装置は、第1の装置が第2の装置からのブロードキャスト情報を受信するのであるから、ブロードキャスト情報(すなわち、ブロードキャスト用のアドレスを用いて配信される情報)が届く範囲であることは明らかであるから、「LAN本体と、交換手段の手前で分岐して上記LAN本体に接続された加入者線とを含んで、ブロードキャスト・ドメインを形成」していることは自明の構成にすぎないものである。 6.むすび 以上のとおりであるから、請求項1記載の発明は引用例1記載の発明及び周知例1〜4に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-10-05 |
結審通知日 | 2004-10-12 |
審決日 | 2004-10-26 |
出願番号 | 特願平11-375811 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中木 努 |
特許庁審判長 |
佐藤 秀一 |
特許庁審判官 |
吉田 隆之 浜野 友茂 |
発明の名称 | 通信装置 |
代理人 | 澤田 俊夫 |
代理人 | 宮田 正昭 |
代理人 | 山田 英治 |